人の心が読める少女の物語 -貴方が救ってくれたから-

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六章 -交わる関係-

Day2③溢れ出る光芒

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 これでもかとはしゃぎ回るみんなについて行き、そろそろ帰りの時間が近づいてきた頃。
 最後にお土産屋さんに寄り、それぞれが買うものを選んでいった。


「あっ、このお菓子可愛い~」

「ほんとだ。可愛すぎでしょ」


 千佳ちゃんと葵ちゃんが可愛いものや面白いものを見つける度に立ち止まっていることに苦笑する。


「そろそろ買わないと時間無くなっちゃうよ」

「あれ?ヤバっ。もうこんな時間経ってんじゃん」
 
「そう言えば!私買ってきてって言われたやつあるんだった」


 時計を見ると、最初に決めていた集合時間まで残り少し。
 焦りながらお土産を決め始める二人の様子を見ながら、自分も何となく気になっていたものを見に行く。


「わかっては、いるんだけどな」

 
 目の前に置かれた箱を一つ持って裏面を覗くと、そこには期限まで短い時間しか残されていなことが記載されていた。 
 当然、日持ちするお土産の方が融通が利くし、いいとは分かっている。
 しかし、これを渡すことがすぐに会う理由になるのならばという考えが先ほどから頭から離れない。

 
「…………ほんと、小賢しいよね」


 きっと、私が会いたいと言えば誠君は会ってくれるだろう。
 予定が無いのならば、絶対に。私の意志を尊重してくれる、そんな人だから。


「うん、今回だけ。そう、今回だけ」


 でもだからこそ、私は自分に枷を嵌めることを意識しなければいけない。
 そうしなければ、きっと私は毎日彼の予定を埋めにいってしまう。
 
 時間も、声も、温もりも、匂いも、優しさも、全部を求め続けてしまう。 
 壊れた蛇口のように、独占欲が溢れ出して、ただひたすらに。


「ほんと、困っちゃうなぁ」 


 学校が始まれば、どうせずっと一緒にいることはできない。
 誠君に興味を持たれないために、良いところにあまり気づいて欲しくないために、学校の中で適度な距離を保とうと考えているのならば、余計に今のうちに慣れていかなければいけない。
 

「…………とりあえず、大人になるまでは、ね?」
  

 誠君の意志は最大限尊重する。
 でも、絶対に誰にも渡すつもりはない。
 今も、この先も、それこそ最後まで。
 
 そして私は、そんなことを考えながら目の前の箱をレジへと持っていった。 



 



◆◆◆◆◆




 
 
 帰りの車内。運転手に座るお兄さんと、助手席に座る自分以外の寝息が後ろから微かに聞こえてくる。


「眠くない?ぜんぜん寝てていいけど」(運転変わって貰えるわけでもないしな)

「いえ、大丈夫です。でも、眠くなったら寝させて貰いますね」


 基本的に、他の人がいるところで眠ることはできないけれど、気を遣わせるのも悪いのでそう答えをぼかして伝える。


「ああ、そうしてくれればいいよ」(俺も寝たいくらいだけど)

「ありがとうございます。それと、ガム持ってるんですけどもしよかったら食べますか?」

「ほんとに?ありがとう」(ほんと、気が利く子だなぁ)


 相手の好感度を稼ぎたいわけではない。
 でも、自分達のためにわざわざついてきてくれた人に対して、自分勝手な理由で拒むことは嫌だった。
 
 純粋な好意には、純粋な好意を。
 せめて、私が自分の意志で受けた分だけでもそれを返すのが筋だと思うから。
 
 
「そう言えば、夏休みは他に何かするの?」(遊んでるタイプでは無さそうだけど、友達も多そうだよな)

「……誰かと会うとか、そんなとこです」

「そうなんだ。もしかして、彼氏とか?」(まっ絶対いるか)

 
 恐らく本人すらもわかっていないのではと思えるほどの淡い期待の感情。
 

「…………彼氏はいないです。好きな人はいますけど」

「……そっか。上手くいくといいね」(だよな)

「はい」 


 その芽に水をあげ、育て上げることはできない。
 いい人であるのは分かっていても、それでも、心がもう決まっているのなら決して。 








◆◆◆◆◆







 断続的に続く会話と、車の走っている音。
 それが繰り返されているうちに、最寄りの高速出口を示す看板が見えてきた。
 


「ふぅ。後ろの子達そろそろ起こして貰ってもいい?」(さすがに疲れてきたか。めちゃくちゃ肩凝ってるし)

「わかりました」

 
 とりあえず、手の届く範囲から起こし、それが連鎖するように順番に目を覚ましていく。
 やがて、全員が眠そうな欠伸をしながらも目を覚ました時には、最初に待ち合わせた場所がもう目の前に近づいてきていた。


「じゃあ、みんな気を付けてね」

「「ありがとうございました」」

「バイバイ!また学校で」


 窓から手を振る千佳ちゃんに手を振り返しつつ離れていく車を見送る。
 そして、車がある程度離れた頃、電車と自転車それぞれのグループに分かれて固まっていった。
 

「透ちゃんはバスだっけ?」

「うん。葵ちゃんは電車?」

「そうそう。じゃあ、また学校で」

「そうだね。じゃあ、また」


 あの釘を刺した瞬間から、千佳ちゃんの想い人がこちらにアプローチをかけてこようとすることはほとんどなくなった。
 眠そうな背中が自転車に乗るのを一瞬確認した後、自分もスマホを開きながらバス停の方へと向かう。


「今、着きましたっと」


 おやすみで止まっていたメッセージ。
 その最後に、帰りのバスを待っていることを打ち込み、送信すると少し経った頃に返信が返ってきた。


 ≪大丈夫か?≫

 
 飾り気がなく、素っ気ないただそれだけの文章。
 だけど、それでもやっぱり彼の言葉は優しさに溢れていた。


「ふふっ。誠君らしい」

 
 以前なら、たぶん言わなかっただろう弱音も、今なら吐きだせる。
 全部、半分こすると約束したから。

≪ちょっと、色々と疲れちゃったかも≫
≪そっか。お疲れ≫
≪荷物、半分持って欲しいくらいなんだけどなー≫
≪そりゃ無理だ。今家だし≫
≪残念。未来の誠君が瞬間移動できるようになるってことに期待しとくよ≫
≪ああ。任せろ≫

 寝そべったままテレビを見るゆるキャラのスタンプが送られてきて、少しだけ吹き出す。

≪それ、ぜんぜんやる気ないよね≫

 その返信を丁度打ち込み終えた時、バスが目の前に停まったのを見て乗り込む。
 

「ご飯でも食べてるのかな」


 既読が付かずに止まってしまったメッセージ。
 時間を見ると、丁度いい時間だ。もしかしたら、夕食でも食べているのかもしれない。


「早く、会いたいな」


 次にしようと思っていたお土産の話。
 そして私は、持っているうちに消えてしまった画面をただ見つめながら、ぼーっとバスに揺られ続けた。
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