輪廻

YUKI

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カーテンが風に煽られ、ひらひらと踊っている。
ベットには俺一人、祐樹の姿はない。

「祐樹!」
「は~い!!シオン、起きたの?僕、お庭だよ」
「何してんだ?一人になるんじゃない!!」
「僕、一人じゃないよ!」
えっ!部屋を駆け出る俺に

「坊やは俺が見てるから、お前は寝てろよ!」

俺達の会話に割り込んできたのは、間違いなくあの男!俺をからかうような顔が思い浮かぶ。
くそ~~、俺の寝てる間に・・・・。



庭に飛び出た俺の目に移ったものは、庭に水遣りをしている祐樹とその傍らで、水の雫を自由に操り、祐樹を笑わせてる男。
俺に気付いた男の瞳が一瞬鋭くなったと思ったと同時に、俺の顔面にピシャッっと雫がぶつかってきた。

続けて、祐樹が撒いた水が、空中で止まり、男が俺を指差すと同時に俺めがけて向かってくる。

俺は、びっしょりと濡れていた。
「シオン、びっしょり~ごめんなさい・・・風が吹いたのかな~???」
「大丈夫だ・・・祐樹のせいじゃないさ」


この男、俺に喧嘩売ってるのか??
「どうゆうつもりだ?」
「はてさて~何のことやら???」
「今のは、貴様がやったことだろ!!!ふざけるな!!」
「知らね~な~~~、突風でも吹いたんじゃないか~~~。なあ~祐樹ちゃん!」
「シオン、何怒ってるの?タオル持ってくるから待っててね!」
俺が睨みつけても男は、余裕で笑ってる。
「シオンちゃんは、何を怒ってるんだか?お前が寝てる間、大事な祐樹ちゃんを守ってやったっていうのにさ~~~」
嫌味たっぷりにふざけてる様な言葉。だが、隙のない男。
「何者だ!!!お前は!」
身構える俺に
「恐いね~~~、坊やを守ってくれてありがとうが先じゃないか~~~ん?」
「ふざけるな!!!」


飛びかかった俺をするりと余裕で交わし、


「短気だね~~、そんなことで守れるのかな?」
「だまれ!!!貴様には関係ない!!」
俺の怒りに肩をすくめ、
「今のお前じゃ無理だな~~、なんなら俺が坊やを貰っていってもいいんだぜ!可愛いからな~~、それに綺麗な核を持ってるしな・・・」
「黙れ!!祐樹に近づくな!!」
「さて、どうするかな~~~」


俺が、飛びかかろうと姿勢を低く構えたとき
「シオン、お待たせ!!タオル持ってきたよ~、早く拭こうね!」

祐樹が庭に姿を現し、俺は気勢をそがれる。
「じゃ~俺はおいとまするよ!」
と、祐樹の頬にチュッとキスを落とし背中を向けた。


門を抜ける時、俺に向けてニヤリと挑発する事を忘れない。

祐樹は、頬に手を当て赤くなった顔のまま立ち尽くしている。
悔しい!!!完璧に俺の負けだ!!
キスをする時軽く抱き寄せた腕は、祐樹を包み込み、守るのは俺だよ。お前じゃないと言われてるような気がした。

ホンの短い間に男は、俺に力の差と大人の余裕をしっかりと見せ付けていった。
「シオン?どうしたの?なんかイライラしてる?」
「・・・・・・」
「あっ!!解った!!シオン、お腹が空いているんだね!!ゴメンネ!すぐご飯にするね」
脳天気な祐樹の言葉に肩の力が抜けていく。
「そうだな、飯にしよう」
「うん!」
家に入っていく祐樹の後ろをついていきながら、ふと視線を感じ振り返る。

気配はない。だが、見られてる感じは拭えない。
あの男か?いや、違う・・・・俺の知らない、背筋が凍るような視線・・・・。
辺りを探っていると、電気がはじけるような音とともに俺の思考は遮られた。


「お前はバカか?犯人に同調してどうする!!坊やを危険な目に合わせたいのか?」
男の声が俺を馬鹿にしたように叱り付ける。
「うるさい!!!」
「素直じゃないね~~~」


俺は無視をした。だが今度は、ふざけを感じさせない声が


「守りたいなら気をつけろ!お前にとって一番大切なものなんだろ?それなら、成長しろ!馬鹿だね~」
最後の馬鹿の言葉は、からかいが含まれていたような・・・・
悔しい・・・だが、正しい。だから余計悔しい。
堂々巡りの感情・・・・台所で呑気にニコニコと食事の用意をする祐樹をホンの少し恨めしく思う。
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