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***
とぼとぼと、シャーロットが丘を行く。
領主館の建つ丘に、少しずつ、秋の匂いが混ざり始めた。
夏の名残の強い日差しと、秋の乾いた空気が共存している。
季節の移り変わりを鼻と肌で感じられて、シャーロットは、目を細める。
塔にいた長い日々、季節の変化は、小さな窓から入る日差しの角度からしか、推し量る術がなかった。
行く当てもないまま、歩いて来たシャーロットは、適当な場所を見つけて、ぽすん、と座り込む。
シャーロットの部屋付きメイドは、カティアからジェラルドの妻カトリに代えられた。
カティアがまだ、領主館にいるのか、解雇されたのか、シャーロットには知る術がない。
布団の中に潜む生き物がいないのだけは、確かだ。
以前と同じように、厨房や洗濯場にも顔を出すが、彼等は世間話に応えてくれるものの、その反応は何処か固い。
ただ逗留している人族の娘ではなく、領主の花嫁としてやって来た人族の娘だ。
見る目が変わるのも仕方がない事なのだろう。
ヴィンセントに、会えない。
カーシャに長期間滞在していたから、領地の視察があるのだと言う。
それは事実だろうが、シャーロットを避ける口実であろう事も、気が付いていた。
「…一言、言って下さればいいのに」
王族と貴族の結婚であり、恋愛感情を前提としたものではないのだから、例え政略的に有意義なものでなくとも、政略結婚なのだ。
王族としての教育を受けていないシャーロットだって、政略結婚がどのようなものなのか、判っている。
バーナディス辺境伯家の為にならない縁談ならば、破談になる。
そもそも、ハビエルが望んでいたのは客分としての滞在なのだから、王家側としては、破談となった所でシャーロットがノーハンに滞在さえ出来れば、問題はない。
それを理解した上で、ここまで来たつもりでいる。
例え、シャーロット個人の感情として、ヴィンセントの傍にいたいと望んでいても、彼の事情がそれを許さないのであれば、受け入れる。
その覚悟を持って、ここにいる。
けれど、彼は、シャーロットに婚約解消を告げる時期を、先延ばしにしているようだった。
ヴィンセントからシャーロットの降嫁を願い出たのだから、破談を口にするのは相当躊躇いがあるであろう事は、予想出来る。
「知りたくなかった…」
恋に、憧れていた。
ずっと傍にいたカーラが、ロベルトと恋に落ちたのを、見ていた。
カーラは、シャーロットの気持ちを慮って、何も言う事はなかったけれど、確かに、恋をしてカーラは綺麗になった。
身なりを整えると言う意味ではなく、内側から溢れるような輝きに満ちていた。
カーラの輝きが曇ったのは、ロベルトの求婚を断った日から。
恋とは、美しいものだと思っていた。
彼等の恋の障害が、自分自身だと気が付いたシャーロットは、いつの日か、カーラを侍女から外す事を考えるようになった。
塔から出られないシャーロットは、食事も湯浴みも一人では出来ない。
誰もが恐れる『祝福の姫』の侍女を、誰も引き受けてくれない事を言い訳に、長い事、カーラを己の世話に縛り付けてしまった後悔がある。
あんなに輝いていたカーラの笑顔を、大好きなカーラを、悲しませたくない。
王命だから、と状況に流された振りをして、ヴィンセントとノーハンに旅をした。
そして、彼の優しさと柔らかな眼差しに恋をした。
夜会で会った時から、特別だったヒト。
彼の事を知る度に、想いが深まっていった。
彼の手が優しく触れてくれると、固く縮こまっていた心が、ゆるゆると綻んでいく。
恋とは、幸せなものだと思っていた。
彼と共にいると、満たされる。
心の隅の隅まで、温かな気持ちで一杯になって、シャーロットにとって冷たい場所でしかなかった世界の全てに、穏やかな気持ちで接する事が出来る気がする。
生まれた時から傍にいるカーラですら、シャーロットは祝福の影響を恐れて、全身で頼る事が出来なかった。
けれど、ヴィンセントなら。
彼になら、全身で寄りかかって大丈夫だと思えた。
同時に、周囲が気圧される程の威圧感を放つ彼でも、全く怖いと思わなかった。
他の誰でもない。
ヴィンセントだから。
恋をした人、だから。
「知りたく、なかった」
恋なんて、知らなければ良かった。
知らなければ、己の心の痛みに気づく事もなく、これまでの十五年と同様、諦める事が出来ただろうに。
シャーロットは不意に、清涼な風を感じて、背後を振り返る。
逆光になっている為、顔は影になって見えないが、広い肩幅と長身の人物が、こちらを見ていた。
シャーロットは、それが誰か、知っている。
彼の足ならば、駆ければ数舜の距離に、ヴィンセントが立っていた。
「…」
「…」
無言で、互いに見つめ合う。
シャーロットは、彼が泣いているのではないかと不意に思って、立ち上がろうとした。
「!」
その時、ヴィンセントが、視線を外して鋭く遠くを見つめる。
彼が向けた顔の先を追って、シャーロットが丘の麓に目を遣ると、小型の荷馬車が、領主館への道に向かって来ている事に気づいた。
「…シャーロット」
馬車に気を取られているうちに、いつの間に傍に来たのか、シャーロットは、ヴィンセントの腕の中にいた。
守るように、背後から抱きかかえられている。
「見慣れぬ馬車です。ご注意を」
耳元で囁かれる低い声に、シャーロットは、全身の力が抜けたのを感じる。
久し振りに感じる、彼の温もりと、香り。
思わず、彼の厚い胸板に縋るように寄りかかると、一瞬、ヴィンセントの腕がぴくりと震えた後、恐る恐る、彼女の髪を撫でた。
「…申し訳、ありません。私のせいですね…貴女に、不要なご心労を与えてしまっています」
「いいえ…ヴィンセント様。お辛いのは、ヴィンセント様でしょう」
領主として、マハト貴族として、彼は立場があるヒトだ。
シャーロットを不憫に思う気持ちがあろうと、己の感情のみで動く事が出来ないのは、判っている。
そもそも、結婚とは、同情でなされていいものではない。
そのような事は、初めから、判っていた筈なのに。
シャーロットは、耐えるように目を閉じた後、彼の顔を仰ぎ見て、微笑みかけた。
「こちらに向かっている馬車なのですから、ヴィンセント様にご用でしょう。屋敷に、戻らなくては」
受け入れなくてはならない。
彼が、苦悩しながら出した結論が、どんなものであっても。
「姫様…!」
客人が来る前に、と、領主館の自室に戻ったシャーロットは、応接間に来るよう呼び出された。
シャーロットが、領主館に滞在している事を知る者は、限られている。
不審に思いながら、髪だけ梳かし直して応接間に向かったシャーロットは、そこで待っていた人物に驚いて、声を失う。
「…カーラ…?」
三ヶ月前、王都で別れた侍女の姿を見て、シャーロットは立ち尽くした。
目を潤ませて、両手を握りしめてシャーロットの名を呼んだのは、確かに、生まれた時から傍にいてくれたカーラだ。
茫然として動けないシャーロットの手を取って、ヴィンセントがソファに座らせる。
「カーラ殿とロベルト殿は、王宮を辞したそうです」
「え?」
言われて初めて、カーラの隣に、男性が一人立っている事に気が付いた。
北翼部隊の隊服ではなく、麻で作られた装飾のない衣服を纏っているから、気づかなかったが、確かに、麦わら色の髪に紺色の瞳を持つ彼は、カーラの恋人であるロベルトだった。
「カーラ…どう言う事…?」
「…姫様が、ノーハンにお発ちになった後、二ヶ月経ってから、陛下は『シャーロット王女』が病を得てお亡くなりになった、と発表なさいました」
「!」
シャーロットは、頬が強張るのに気が付いた。
シャーロットの命を守る為に、父が企てた事だろうと頭では判っていても、己の死を告げられるのは、辛い。
「簡略化したものではありましたが、国葬も行われております。『シャーロット王女』の逝去に伴い、北翼部隊は解散、私も、姫様付きの侍女から王宮侍女に異動となりました」
こくん、と頷いて、聞いている事を示す。
「北翼部隊が解散した事で、私も王宮を辞して、彼…ロベルトの故郷に行こうと考えていたのですが…その矢先、事件が起きました」
「事件?」
「何者かが、姫様の墓所を発いたのです」
「何て事…」
墓を発けば、そこが空である事は明白だ。
『シャーロット王女の死』が、王家の偽りである事は、直ぐに発覚する。
「王家の墓には、墓守がおります。毎日朝晩の見回りと手入れをしているのですが、夜間の出来事だったそうです。棺が空であると噂になる前に、すぐさま、陛下は、姫様のご遺体が盗まれたと発表なさいましたが、現在の所、犯人は捕縛されておりません。何を目的に、犯人がこのような不敬を行ったか、動機は不明です。ですが、陛下は、姫様の祝福を狙ったものではないか、と…」
「あぁ…」
宝石の涙を生み、触れたものが黄金になる姫。
その遺体にも、何らかの力が宿っていると考える者が、いないとは限らない。
死してなお、父の負担となり続けるのか、と昏い気持ちになる。
「しかし…少しでも、頭の回る者であれば、シャーロットが生存している事、王家がそれを秘す為に偽りの葬式を上げた事に気が付きますね」
ヴィンセントの言葉に、カーラは頷く。
「北翼部隊は解散し、私も塔には長く行っておりませんので、王宮に引き続き滞在なさっているようには、見えないでしょう。国葬を上げたとは言え、実際には未使用の棺を埋めただけですから、犯人の一味には、姫様が王宮を出ていらっしゃる事は、容易に推測されると思います」
問題は、その情報を誰が手に入れるか、だ。
シャーロットの女婿となり、王位を虎視眈々と狙っているマハトの者か。
王女の身柄と引き換えに、マハトの領地を手に入れんとするナランの者か。
遅いか早いかの違いはあるにせよ、いずれ、シャーロットの身柄を求める者が、ノーハンまで手を伸ばすだろう。
旅籠に泊まった事で、獣人族と人族の娘一行がノーハンに向かった事は、何処からか漏れる。
「情報に感謝する」
「姫様の御為ですので」
ヴィンセントの謝辞にカーラは固い声で答えると、気遣わし気にシャーロットの顔を見た。
「…私の故郷は、アテム領と接する小さな村です。王宮から故郷に戻り、行商の体で、今回、ノーハンを訪れました。何処に目があるか判りませんから、一度は故郷に戻らねばなりませんが、可能でしたら、こちらで雇用して頂けないでしょうか」
ロベルトの言葉に、ヴィンセントとシャーロットは顔を見合わせる。
「ノーハンでは、私の騎士としての腕等、取るに足らないものでしょう。下働きでも何でも致します。カーラをどうか、王女殿下のお傍に」
カーラが、深く頭を下げた。
「…姫様のご温情は、重々、理解しております。けれど…姫様にお仕えする事もまた、私の幸せなのです」
ロベルトを伴ってきたと言う事は、どちらも諦めない、と言う意思表示なのだろう。
「それは、有難い」
シャーロットが口を開く前に、ヴィンセントが返答する。
「知っての通り、ノーハンに人族は少ない。シャーロットも、長く仕えてくれたカーラ殿が傍にあれば、心安いでしょう」
ロベルトは、取り敢えずは領兵の修練に参加し、適性を見極めればいい、と言われ、頷いた。
行商の夫婦に扮した二人は、一度、ロベルトの故郷に戻って、準備を整えてから戻ってくると約束する。
それが、いい事なのかどうか、シャーロットには判断が出来ない。
何せ、シャーロット自身がいつまで、ここにいられるのか判らないのだ。
あの口振りであれば、ヴィンセントから婚約解消を告げられた後も、ノーハンに住む事は可能だろう。
ノーハンの片隅で、ロベルトが領主館で仕事をし、カーラがシャーロットの身の回りの世話をし、シャーロットは…?何をすればいいと言うのか。
何よりも、夫婦となるカーラとロベルトの邪魔をする気は、シャーロットにはない。
それに、人族と隔意がある獣人族は、人族のみで暮らす事を受け入れてくれるのだろうか。
沈んだ顔で考え込むシャーロットの横顔を、ヴィンセントが決意の籠った目で見ていた。
***
「…シャーロット、お話が」
カーラとロベルトの訪問翌日。
固い顔と声のヴィンセントに、シャーロットは、来るべき時が来た、と直感した。
促されるままに、無言で応接間に向かうと、見慣れた顔が待っていて驚く。
「ウィル」
ウィルヘルムは、シャーロットがマチルダの家を出てからの二週間で、一層、日焼けしたようだった。
浅黒い肌が、彼の顔を一層、精悍に見せている。
シャーロットに気づいた彼が、ソファから立ち上がって挨拶をするのを見て、礼の美しさに気がついた。
こうして見ると、彼もバーナディス辺境伯家――マハト貴族の一員なのだと判る。
「…さて」
ヴィンセントが、話を切り出した。
応接間には、ヴィンセント、シャーロット、ウィルヘルムの他、ロビンとヘンリクがいる。
「シャーロットの身柄を狙う者が、そう遠くないうちにノーハンにもやってくるだろう事は、説明した通りだ。そこで…熟慮を重ねた上で、一つの結論を見た。…私は、辺境伯の地位を弟ウィルヘルムに譲り、隠居する事とする」
「はぁ?!」
がたり、と、ウィルヘルムが立ち上がって声を上げた。
「ちょ、何だよ、それ…!兄さんが辺境伯辞める事と、シャーロットが狙われてる事と、何の関係があるんだ?…まさか、シャーロットを連れて、逃げ回るって言うんじゃないよな。シャーロットは、そんなに丈夫じゃねぇぞ」
ウィルヘルムの質問に答えず、ヴィンセントは表情を変えないまま、
「ウィルヘルム、お前は成人を迎えたな?」
と、問う。
「…まぁ、そうだけど」
確かに、この二週間でまた背が伸びたようだが、それだけで「成人」と認定されるものなのか。
シャーロットが首を傾げると、ウィルヘルムが気まずそうに視線を逸らした。
「ウィルヘルムが辺境伯となり、シャーロットを娶れ。辺境伯の妻であれば、容易に手出し出来るものではない」
「な…っ!兄さん、自分が何言ってんのか、判ってんのか!シャーロットは、兄さんの花嫁だろう?!」
「違う。『バーナディス家の』花嫁だ。シャーロットの後見の方とも、バーナディス家の花嫁とする事で合意を得ている。お前が当主となり、結婚すれば、何も問題はない」
予想と異なる勧告に蒼白となったシャーロットは、混乱した中で、冷静に受け止めている自分にも気が付いた。
あぁ。
違和感の正体は、これだったのか。
当初は、シャーロットを苦境から救う為とは言え婚約した事に、ヴィンセントが複雑な思いを抱いているせいだと思っていた。
彼は、異種族間結婚した両親と、何らかの辛い経験をした筈なのだから。
しかし、ヴィンセントは、シャーロットが大切であると繰り返し、言葉と態度で好意を示してくれた。
シャーロットを前にしたヴィンセントは、いつでも好意に溢れていたから、シャーロットと全く同じ気持ちで恋しく想ってくれているのではなくとも、それなりに異性として想ってくれているのだと自惚れていた。
だが…違和感は、シャーロットの中からなくなりはしなかった。
彼は一度も、「私の婚約者」「私の花嫁」とは、言わなかったのだ。
それは、つまり。
彼は、シャーロットを自分自身の妻にしたい、と欲しているわけではない、と言う事。
「バーナディス家家令のヘンリクも、この意見に賛同している。…私ではなく、ウィルヘルムであれば、シャーロットを花嫁として認める、と」
ヴィンセントがヘンリクを見ると、彼は無言で頭を下げた。
「…っおい!シャーロット、何か言ってやれよ!」
「………ヴィンセント様のお言葉に、従います」
政略結婚は、家と家の結婚。
婚約中に何らかの事情で結婚出来ない事が判明した場合、その兄弟や姉妹が代わりになる事など、よくある話だ。
思い返せば、ヴィンセントは最初からこの結婚を、バーナディス家と王家の、家と家の結婚として扱っていた。
とは言え、人族との結婚に反対する者達を説得出来れば、ヴィンセントとシャーロットの婚姻として扱うつもりだったのだろう。
だが、思った以上に、獣人族の反発は大きかった。
シャーロットの身柄を狙う者の存在が明らかになった事で、地道に説得を続ける時間的猶予がない事も判った。
兄であるヴィンセントとの婚姻が認められないから、弟のウィルヘルムが代わりになる。
政略的に有意義ではない婚姻なのに、婚約解消ではなく、婚約者を変更するのは、ノーハンの為ではない。
シャーロットを、守る為だ。
――…だから。
シャーロットがここで、ヴィンセントへの思慕を示すわけにはいかない。
ヴィンセントを愛しているから、婚約の変更は受け入れられない、なんて、ただの我儘だ。
好きな人と結婚したいだなんて、王女として生まれたシャーロットに、許される筈もなかった。
「お話が、以上でしたら、失礼致します」
シャーロットは、深く息をして、涙を零さないように堪える。
声が震えたが、何とか立ち上がった。
引き留められる前に、素早く応接間を辞す。
最後に見たヴィンセントの顔からは、全ての感情が抜け落ちていた。
とぼとぼと、シャーロットが丘を行く。
領主館の建つ丘に、少しずつ、秋の匂いが混ざり始めた。
夏の名残の強い日差しと、秋の乾いた空気が共存している。
季節の移り変わりを鼻と肌で感じられて、シャーロットは、目を細める。
塔にいた長い日々、季節の変化は、小さな窓から入る日差しの角度からしか、推し量る術がなかった。
行く当てもないまま、歩いて来たシャーロットは、適当な場所を見つけて、ぽすん、と座り込む。
シャーロットの部屋付きメイドは、カティアからジェラルドの妻カトリに代えられた。
カティアがまだ、領主館にいるのか、解雇されたのか、シャーロットには知る術がない。
布団の中に潜む生き物がいないのだけは、確かだ。
以前と同じように、厨房や洗濯場にも顔を出すが、彼等は世間話に応えてくれるものの、その反応は何処か固い。
ただ逗留している人族の娘ではなく、領主の花嫁としてやって来た人族の娘だ。
見る目が変わるのも仕方がない事なのだろう。
ヴィンセントに、会えない。
カーシャに長期間滞在していたから、領地の視察があるのだと言う。
それは事実だろうが、シャーロットを避ける口実であろう事も、気が付いていた。
「…一言、言って下さればいいのに」
王族と貴族の結婚であり、恋愛感情を前提としたものではないのだから、例え政略的に有意義なものでなくとも、政略結婚なのだ。
王族としての教育を受けていないシャーロットだって、政略結婚がどのようなものなのか、判っている。
バーナディス辺境伯家の為にならない縁談ならば、破談になる。
そもそも、ハビエルが望んでいたのは客分としての滞在なのだから、王家側としては、破談となった所でシャーロットがノーハンに滞在さえ出来れば、問題はない。
それを理解した上で、ここまで来たつもりでいる。
例え、シャーロット個人の感情として、ヴィンセントの傍にいたいと望んでいても、彼の事情がそれを許さないのであれば、受け入れる。
その覚悟を持って、ここにいる。
けれど、彼は、シャーロットに婚約解消を告げる時期を、先延ばしにしているようだった。
ヴィンセントからシャーロットの降嫁を願い出たのだから、破談を口にするのは相当躊躇いがあるであろう事は、予想出来る。
「知りたくなかった…」
恋に、憧れていた。
ずっと傍にいたカーラが、ロベルトと恋に落ちたのを、見ていた。
カーラは、シャーロットの気持ちを慮って、何も言う事はなかったけれど、確かに、恋をしてカーラは綺麗になった。
身なりを整えると言う意味ではなく、内側から溢れるような輝きに満ちていた。
カーラの輝きが曇ったのは、ロベルトの求婚を断った日から。
恋とは、美しいものだと思っていた。
彼等の恋の障害が、自分自身だと気が付いたシャーロットは、いつの日か、カーラを侍女から外す事を考えるようになった。
塔から出られないシャーロットは、食事も湯浴みも一人では出来ない。
誰もが恐れる『祝福の姫』の侍女を、誰も引き受けてくれない事を言い訳に、長い事、カーラを己の世話に縛り付けてしまった後悔がある。
あんなに輝いていたカーラの笑顔を、大好きなカーラを、悲しませたくない。
王命だから、と状況に流された振りをして、ヴィンセントとノーハンに旅をした。
そして、彼の優しさと柔らかな眼差しに恋をした。
夜会で会った時から、特別だったヒト。
彼の事を知る度に、想いが深まっていった。
彼の手が優しく触れてくれると、固く縮こまっていた心が、ゆるゆると綻んでいく。
恋とは、幸せなものだと思っていた。
彼と共にいると、満たされる。
心の隅の隅まで、温かな気持ちで一杯になって、シャーロットにとって冷たい場所でしかなかった世界の全てに、穏やかな気持ちで接する事が出来る気がする。
生まれた時から傍にいるカーラですら、シャーロットは祝福の影響を恐れて、全身で頼る事が出来なかった。
けれど、ヴィンセントなら。
彼になら、全身で寄りかかって大丈夫だと思えた。
同時に、周囲が気圧される程の威圧感を放つ彼でも、全く怖いと思わなかった。
他の誰でもない。
ヴィンセントだから。
恋をした人、だから。
「知りたく、なかった」
恋なんて、知らなければ良かった。
知らなければ、己の心の痛みに気づく事もなく、これまでの十五年と同様、諦める事が出来ただろうに。
シャーロットは不意に、清涼な風を感じて、背後を振り返る。
逆光になっている為、顔は影になって見えないが、広い肩幅と長身の人物が、こちらを見ていた。
シャーロットは、それが誰か、知っている。
彼の足ならば、駆ければ数舜の距離に、ヴィンセントが立っていた。
「…」
「…」
無言で、互いに見つめ合う。
シャーロットは、彼が泣いているのではないかと不意に思って、立ち上がろうとした。
「!」
その時、ヴィンセントが、視線を外して鋭く遠くを見つめる。
彼が向けた顔の先を追って、シャーロットが丘の麓に目を遣ると、小型の荷馬車が、領主館への道に向かって来ている事に気づいた。
「…シャーロット」
馬車に気を取られているうちに、いつの間に傍に来たのか、シャーロットは、ヴィンセントの腕の中にいた。
守るように、背後から抱きかかえられている。
「見慣れぬ馬車です。ご注意を」
耳元で囁かれる低い声に、シャーロットは、全身の力が抜けたのを感じる。
久し振りに感じる、彼の温もりと、香り。
思わず、彼の厚い胸板に縋るように寄りかかると、一瞬、ヴィンセントの腕がぴくりと震えた後、恐る恐る、彼女の髪を撫でた。
「…申し訳、ありません。私のせいですね…貴女に、不要なご心労を与えてしまっています」
「いいえ…ヴィンセント様。お辛いのは、ヴィンセント様でしょう」
領主として、マハト貴族として、彼は立場があるヒトだ。
シャーロットを不憫に思う気持ちがあろうと、己の感情のみで動く事が出来ないのは、判っている。
そもそも、結婚とは、同情でなされていいものではない。
そのような事は、初めから、判っていた筈なのに。
シャーロットは、耐えるように目を閉じた後、彼の顔を仰ぎ見て、微笑みかけた。
「こちらに向かっている馬車なのですから、ヴィンセント様にご用でしょう。屋敷に、戻らなくては」
受け入れなくてはならない。
彼が、苦悩しながら出した結論が、どんなものであっても。
「姫様…!」
客人が来る前に、と、領主館の自室に戻ったシャーロットは、応接間に来るよう呼び出された。
シャーロットが、領主館に滞在している事を知る者は、限られている。
不審に思いながら、髪だけ梳かし直して応接間に向かったシャーロットは、そこで待っていた人物に驚いて、声を失う。
「…カーラ…?」
三ヶ月前、王都で別れた侍女の姿を見て、シャーロットは立ち尽くした。
目を潤ませて、両手を握りしめてシャーロットの名を呼んだのは、確かに、生まれた時から傍にいてくれたカーラだ。
茫然として動けないシャーロットの手を取って、ヴィンセントがソファに座らせる。
「カーラ殿とロベルト殿は、王宮を辞したそうです」
「え?」
言われて初めて、カーラの隣に、男性が一人立っている事に気が付いた。
北翼部隊の隊服ではなく、麻で作られた装飾のない衣服を纏っているから、気づかなかったが、確かに、麦わら色の髪に紺色の瞳を持つ彼は、カーラの恋人であるロベルトだった。
「カーラ…どう言う事…?」
「…姫様が、ノーハンにお発ちになった後、二ヶ月経ってから、陛下は『シャーロット王女』が病を得てお亡くなりになった、と発表なさいました」
「!」
シャーロットは、頬が強張るのに気が付いた。
シャーロットの命を守る為に、父が企てた事だろうと頭では判っていても、己の死を告げられるのは、辛い。
「簡略化したものではありましたが、国葬も行われております。『シャーロット王女』の逝去に伴い、北翼部隊は解散、私も、姫様付きの侍女から王宮侍女に異動となりました」
こくん、と頷いて、聞いている事を示す。
「北翼部隊が解散した事で、私も王宮を辞して、彼…ロベルトの故郷に行こうと考えていたのですが…その矢先、事件が起きました」
「事件?」
「何者かが、姫様の墓所を発いたのです」
「何て事…」
墓を発けば、そこが空である事は明白だ。
『シャーロット王女の死』が、王家の偽りである事は、直ぐに発覚する。
「王家の墓には、墓守がおります。毎日朝晩の見回りと手入れをしているのですが、夜間の出来事だったそうです。棺が空であると噂になる前に、すぐさま、陛下は、姫様のご遺体が盗まれたと発表なさいましたが、現在の所、犯人は捕縛されておりません。何を目的に、犯人がこのような不敬を行ったか、動機は不明です。ですが、陛下は、姫様の祝福を狙ったものではないか、と…」
「あぁ…」
宝石の涙を生み、触れたものが黄金になる姫。
その遺体にも、何らかの力が宿っていると考える者が、いないとは限らない。
死してなお、父の負担となり続けるのか、と昏い気持ちになる。
「しかし…少しでも、頭の回る者であれば、シャーロットが生存している事、王家がそれを秘す為に偽りの葬式を上げた事に気が付きますね」
ヴィンセントの言葉に、カーラは頷く。
「北翼部隊は解散し、私も塔には長く行っておりませんので、王宮に引き続き滞在なさっているようには、見えないでしょう。国葬を上げたとは言え、実際には未使用の棺を埋めただけですから、犯人の一味には、姫様が王宮を出ていらっしゃる事は、容易に推測されると思います」
問題は、その情報を誰が手に入れるか、だ。
シャーロットの女婿となり、王位を虎視眈々と狙っているマハトの者か。
王女の身柄と引き換えに、マハトの領地を手に入れんとするナランの者か。
遅いか早いかの違いはあるにせよ、いずれ、シャーロットの身柄を求める者が、ノーハンまで手を伸ばすだろう。
旅籠に泊まった事で、獣人族と人族の娘一行がノーハンに向かった事は、何処からか漏れる。
「情報に感謝する」
「姫様の御為ですので」
ヴィンセントの謝辞にカーラは固い声で答えると、気遣わし気にシャーロットの顔を見た。
「…私の故郷は、アテム領と接する小さな村です。王宮から故郷に戻り、行商の体で、今回、ノーハンを訪れました。何処に目があるか判りませんから、一度は故郷に戻らねばなりませんが、可能でしたら、こちらで雇用して頂けないでしょうか」
ロベルトの言葉に、ヴィンセントとシャーロットは顔を見合わせる。
「ノーハンでは、私の騎士としての腕等、取るに足らないものでしょう。下働きでも何でも致します。カーラをどうか、王女殿下のお傍に」
カーラが、深く頭を下げた。
「…姫様のご温情は、重々、理解しております。けれど…姫様にお仕えする事もまた、私の幸せなのです」
ロベルトを伴ってきたと言う事は、どちらも諦めない、と言う意思表示なのだろう。
「それは、有難い」
シャーロットが口を開く前に、ヴィンセントが返答する。
「知っての通り、ノーハンに人族は少ない。シャーロットも、長く仕えてくれたカーラ殿が傍にあれば、心安いでしょう」
ロベルトは、取り敢えずは領兵の修練に参加し、適性を見極めればいい、と言われ、頷いた。
行商の夫婦に扮した二人は、一度、ロベルトの故郷に戻って、準備を整えてから戻ってくると約束する。
それが、いい事なのかどうか、シャーロットには判断が出来ない。
何せ、シャーロット自身がいつまで、ここにいられるのか判らないのだ。
あの口振りであれば、ヴィンセントから婚約解消を告げられた後も、ノーハンに住む事は可能だろう。
ノーハンの片隅で、ロベルトが領主館で仕事をし、カーラがシャーロットの身の回りの世話をし、シャーロットは…?何をすればいいと言うのか。
何よりも、夫婦となるカーラとロベルトの邪魔をする気は、シャーロットにはない。
それに、人族と隔意がある獣人族は、人族のみで暮らす事を受け入れてくれるのだろうか。
沈んだ顔で考え込むシャーロットの横顔を、ヴィンセントが決意の籠った目で見ていた。
***
「…シャーロット、お話が」
カーラとロベルトの訪問翌日。
固い顔と声のヴィンセントに、シャーロットは、来るべき時が来た、と直感した。
促されるままに、無言で応接間に向かうと、見慣れた顔が待っていて驚く。
「ウィル」
ウィルヘルムは、シャーロットがマチルダの家を出てからの二週間で、一層、日焼けしたようだった。
浅黒い肌が、彼の顔を一層、精悍に見せている。
シャーロットに気づいた彼が、ソファから立ち上がって挨拶をするのを見て、礼の美しさに気がついた。
こうして見ると、彼もバーナディス辺境伯家――マハト貴族の一員なのだと判る。
「…さて」
ヴィンセントが、話を切り出した。
応接間には、ヴィンセント、シャーロット、ウィルヘルムの他、ロビンとヘンリクがいる。
「シャーロットの身柄を狙う者が、そう遠くないうちにノーハンにもやってくるだろう事は、説明した通りだ。そこで…熟慮を重ねた上で、一つの結論を見た。…私は、辺境伯の地位を弟ウィルヘルムに譲り、隠居する事とする」
「はぁ?!」
がたり、と、ウィルヘルムが立ち上がって声を上げた。
「ちょ、何だよ、それ…!兄さんが辺境伯辞める事と、シャーロットが狙われてる事と、何の関係があるんだ?…まさか、シャーロットを連れて、逃げ回るって言うんじゃないよな。シャーロットは、そんなに丈夫じゃねぇぞ」
ウィルヘルムの質問に答えず、ヴィンセントは表情を変えないまま、
「ウィルヘルム、お前は成人を迎えたな?」
と、問う。
「…まぁ、そうだけど」
確かに、この二週間でまた背が伸びたようだが、それだけで「成人」と認定されるものなのか。
シャーロットが首を傾げると、ウィルヘルムが気まずそうに視線を逸らした。
「ウィルヘルムが辺境伯となり、シャーロットを娶れ。辺境伯の妻であれば、容易に手出し出来るものではない」
「な…っ!兄さん、自分が何言ってんのか、判ってんのか!シャーロットは、兄さんの花嫁だろう?!」
「違う。『バーナディス家の』花嫁だ。シャーロットの後見の方とも、バーナディス家の花嫁とする事で合意を得ている。お前が当主となり、結婚すれば、何も問題はない」
予想と異なる勧告に蒼白となったシャーロットは、混乱した中で、冷静に受け止めている自分にも気が付いた。
あぁ。
違和感の正体は、これだったのか。
当初は、シャーロットを苦境から救う為とは言え婚約した事に、ヴィンセントが複雑な思いを抱いているせいだと思っていた。
彼は、異種族間結婚した両親と、何らかの辛い経験をした筈なのだから。
しかし、ヴィンセントは、シャーロットが大切であると繰り返し、言葉と態度で好意を示してくれた。
シャーロットを前にしたヴィンセントは、いつでも好意に溢れていたから、シャーロットと全く同じ気持ちで恋しく想ってくれているのではなくとも、それなりに異性として想ってくれているのだと自惚れていた。
だが…違和感は、シャーロットの中からなくなりはしなかった。
彼は一度も、「私の婚約者」「私の花嫁」とは、言わなかったのだ。
それは、つまり。
彼は、シャーロットを自分自身の妻にしたい、と欲しているわけではない、と言う事。
「バーナディス家家令のヘンリクも、この意見に賛同している。…私ではなく、ウィルヘルムであれば、シャーロットを花嫁として認める、と」
ヴィンセントがヘンリクを見ると、彼は無言で頭を下げた。
「…っおい!シャーロット、何か言ってやれよ!」
「………ヴィンセント様のお言葉に、従います」
政略結婚は、家と家の結婚。
婚約中に何らかの事情で結婚出来ない事が判明した場合、その兄弟や姉妹が代わりになる事など、よくある話だ。
思い返せば、ヴィンセントは最初からこの結婚を、バーナディス家と王家の、家と家の結婚として扱っていた。
とは言え、人族との結婚に反対する者達を説得出来れば、ヴィンセントとシャーロットの婚姻として扱うつもりだったのだろう。
だが、思った以上に、獣人族の反発は大きかった。
シャーロットの身柄を狙う者の存在が明らかになった事で、地道に説得を続ける時間的猶予がない事も判った。
兄であるヴィンセントとの婚姻が認められないから、弟のウィルヘルムが代わりになる。
政略的に有意義ではない婚姻なのに、婚約解消ではなく、婚約者を変更するのは、ノーハンの為ではない。
シャーロットを、守る為だ。
――…だから。
シャーロットがここで、ヴィンセントへの思慕を示すわけにはいかない。
ヴィンセントを愛しているから、婚約の変更は受け入れられない、なんて、ただの我儘だ。
好きな人と結婚したいだなんて、王女として生まれたシャーロットに、許される筈もなかった。
「お話が、以上でしたら、失礼致します」
シャーロットは、深く息をして、涙を零さないように堪える。
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引き留められる前に、素早く応接間を辞す。
最後に見たヴィンセントの顔からは、全ての感情が抜け落ちていた。
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