25 / 27
<番外編>
と或る夫婦の物語。
しおりを挟む
「トマス・ラングリード様」
社交界デビューの夜会で、背後からそう声を掛けられて、トマスは振り返った。
十八とは思えない見上げる程の巨躯の彼の視線の先には、何もない。
「こちらです」
思っていたよりも下から声が聞こえて、慌てて視線を下げると、艶やかな栗色の髪に、とろりとした蜜のような瞳を持つ美しいご令嬢が、微笑んでいた。
社交界デビューのご令嬢は、皆、一様に白いドレスを纏っている筈だが、彼女が身に着けているのは、深い緋色――トマスの、瞳の色のような。
…見覚えは、ない。
少なくとも、自己紹介した記憶はない。
「トマス・ラングリード様」
改めて名を呼ばれて、トマスの背が自然と伸びる。
優し気な風貌であるにも関わらず、彼女の声には、人を従わせるような響きがあった。
「わたくしと、結婚して下さい」
***
「ナイジェル、大変な事が起きた」
「ぅおっ?!トマス、お前ねぇ。何回、正面玄関から入って来い、って言ったら覚えるんだ?」
「やだね、面倒臭い」
「そう言うから、顔パスにしてやっただろ?」
「お前こそ、どうかしてる。正面玄関なんて、騎士の溜まり場だろが。あそこでメンフィスに見つかると、手合わせしろ、ってしつけぇんだよ」
「…うん、あのね、トマス。王宮の正面玄関なんだから、騎士がいないと困るだろう…?」
顔パスだろうが何だろうが、何重もの厳重なチェックがある正面玄関を、正式な手順で通過するのは面倒だ。
トマスが、幼馴染である王太子ナイジェルに会いに来る時、専ら使う手段が、王宮の屋根に愛騎である飛竜ゴンザレスで乗り付け、ナイジェルの部屋のバルコニーから中に侵入する、と言うものだった。
勿論、相手がナイジェルでなければ、手が後ろに回る所業である。
なお、トマスがナイジェルの部屋にいる間、ゴンザレスは好きなように王都の空を飛び回っている。
飛竜が出た~!と王都騎士団に通報が入るのは、いつもの事。
「そんな事よりも、大変なんだ」
「…うん…判ってるよ、お前はそう言うヤツだって。王宮にノーチェックで忍び込む事こそ、大変なんだけどね…?」
「求婚された」
「はぁ、そう、求婚。求婚ねぇ…求婚?!」
求婚、と言う言葉が脳に到達するまで、たっぷりと時間が掛かったのは、聡明なナイジェルとしては珍しい事だった。
「だ、誰が?!」
「俺が」
「誰に?!」
「知らん」
「…あぁ、何だ、夢の話か」
「違ぇよ!昨夜の!夜会で!見知らぬ女に!」
「こらこら、ご令嬢、と言いなさい」
昨夜の夜会と言えば。
「…東域では、昨夜が社交界デビューの夜会だったよね?」
「そうだよ!親父がうるせぇから、俺だって、着たくもねぇ礼装着て、ちゃんと参加したんだよ!」
トマスは、血走った目でそう叫んだ。
「うん、偉いね、トマス。私はまた、お前の事だから脱走するかと思ったんだけど。それで、求婚?」
「あぁ」
「良かったじゃないか!男の適齢期は長いとは言え、早く決まるに越した事はない。ましてや、ラングリード家は東域防衛の要。王家の一員としても、大歓迎だよ。女性側から求婚なんて大胆だけど、お前が落ち着くなら、私は何だっていいよ」
「…違う」
「うん?」
「…逃げたんだ」
「…逃げた?」
「俺は!生まれて初めて、敵前逃亡したんだよ…!」
そう言って、巨体を丸めて頭を抱えるトマスに、ナイジェルは、はぁ、と溜息を吐いた。
「何?突然求婚されて、吃驚して逃げちゃったの?」
「…あぁ」
「そんで、驚き過ぎて、私の所に来たの?」
「…あぁ」
「お前ねぇぇぇ!」
何て事だ。
千載一遇のチャンスだと言うのに。
ナイジェルは、虚ろな目で、「敵に背を向けるなんざ、末代までの恥だ…」とブツブツ呟くトマスを横目で見ながら、う~ん、と腕を組んだ。
トマス・ラングリードは、サンクリアーニ王国を魔獣から代々守って来たラングリード家の嫡男だ。
ナイジェルと同じ年に生まれたトマスを、父である国王は、息子の頼みになるように、と考え、幼い頃から交流させて来た。
ナイジェルは、言葉も覚束ない頃からイエスタ領を訪れては、しばしば滞在し、時には魔獣討伐に同行して来たのである。
長く深い付き合いだからこそ、『悪魔』とあだ名される程に怖い顔をした幼馴染が、異性との付き合いに疎い事をよく知っている。
「お相手のご令嬢が、可哀想じゃないか。折角、勇気を振り絞ってお前に求婚してくれたんだろう?」
「それは…」
「お前だって判ってる筈だよ。この機会を逃したら、次に結婚出来るのがいつになるか判らないって事を!」
「う…」
ラングリード家は、サンクリアーニの貴族の中でも、有名な家名と言えるだろう。
主に、その勇猛果敢な戦いぶりにおいて。
彼等は、魔獣討伐のエキスパートだ。
騎獣として希少な飛竜を駆り、凶悪な魔獣を屠る。
代々、それを繰り返した結果なのか、ラングリード家の男は皆、見上げるような長身と強靭な肉体、丸太のような筋肉を持つ。
…そして、驚く程の凶相である。
内面は唯の脳筋なのだが、外見は前科百犯の極悪犯だ。
それこそ、弱い魔獣ならば、一睨みで逃げ出すような。
イエスタ領の人々は、ラングリード家の人々の事をよく知っているから、彼等の外見に竦み上がる事は早々ない。
けれど――…。
「見知らぬご令嬢って事は、イエスタ領周辺のご令嬢ではないのだろう?」
「それは、間違いない」
「確かに、ラングリードの名は有名だよ?でも、実際のお前を見て求婚出来るなんて、相当肝の据わったご令嬢である事は間違いない。逃がす事はないと思うけどなぁ?」
私よりも早く結婚するのは、ちょっと悔しい気もするけれど、とナイジェルが言うと、トマスは溜息を吐いた。
「…本気なわけがねぇだろ?性質の悪ぃ罰ゲームだ。俺が逆上せ上るのを見てぇって根暗なヤツがいるんだろ」
「罰ゲーム、ねぇ?」
「だから…そう、だから、誰がそんな事をあの子にさせたのか、調べてくれ」
「ふぅん…まぁ、いいけど。で、ご令嬢の名前は?」
「えぇと…確か…あぁ、そうだ。タチアナ・シリングって聞いたな」
「了解。じゃあ、ちょっと、調べさせてみようか」
ナイジェルが、侍従に命じてタチアナ・シリングの事を調べさせている間、トマスはウロウロと部屋の中をうろつき回っていた。
「…ちょっと落ち着きなよ。何だい、熊みたいに」
「…誰が熊だ」
そう応える声にも、何だか覇気がない。
「あのね、トマス。お前は、『罰ゲームだ』って言うけどさ。もしも、相手のご令嬢が本気だったら、どうするつもり?」
「どうするも何も…本気なわけがねぇよ」
「本気だったら、困るわけ?」
「困る、って言うか…うん…」
「お前は女性の好みに煩い方じゃないと思ってたけど…よっぽどのご面相だったとか?」
「お前、どんだけ目が肥えてんだよ!あんな美人は、イエスタにいねぇよ!」
あぁ、そっちか、と、ナイジェルは得心した。
それは、罰ゲームだと思ってしまうのも仕方あるまい。
好みど真ん中の初対面の女性に、いきなり求婚されるだなんて、今時、演劇でも流行らない。
「殿下、ご依頼の件ですが、情報を集めて参りました」
「うん、有難う」
侍従に恭しく手渡された紙に、ナイジェルは素早く目を走らせる。
訪問の連絡もないのに、室内にいるトマスに気づいても、眉毛一筋動かさないのは流石だ。
「…なるほど」
そわそわした様子でこちらを伺っているトマスの目が、雨に濡れた子犬みたいだ。
「まず、シリング嬢は、北域のローダンヌ領を治めるシリング家のご令嬢だ」
「北域…?」
「年は二十歳。二つ上だね」
サンクリアーニ王国の貴族令嬢は、社交界デビューの十八から二十までの間に婚約する者が多い。
二十歳を過ぎてしまうと、行き遅れとして見られる。
「…何で…あんだけ美人なら、俺なんかに求婚しねぇでも、幾らでも縁談はあるだろ?よっぽど性格が悪ぃのか…?」
「領民の評価は上々。奉仕活動にも熱心で、特に魔獣による被害者の救済活動に注力している。…どうやら、彼女自身が魔獣に襲撃された事があるようだ」
「!」
サンクリアーニ王国は、『深淵の森』と呼ばれる深い森に囲まれた国だ。
深淵の森からは、魔獣が生まれる。
一見、動物のような姿をした魔獣は、攻撃力が高く、積極的に人を襲う。
それら魔獣から民を守る為に、深淵の森に面した領地には、王立騎士団が設置されている。
トマスは、そのうちの東域騎士団の重鎮を代々務めているラングリード家の一員だから、魔獣に襲われた、と聞くと、胸が痛い。
騎士団の監視網を潜り抜けた魔獣が、彼女を襲ったに違いないのだから。
「そう、か…」
沈んだ顔を見せるトマスに、ナイジェルは付け加える。
「シリング家は伯爵位だ。求婚は数多あるらしいけど、そのいずれも成立していない。でも、お前にはご令嬢自ら求婚したって言う事は、騎士との結婚を望んでるって事じゃないか?北域にも優秀な騎士は多いし、確か、ディンゲン侯爵の所にも年回りの近い息子がいた筈だから…何でまた、縁も所縁もなさそうな東域に来てるのかは、判らないけど」
それこそがきっと、この求婚の大きな理由だろう。
「少なくとも、わざわざ罰ゲームの為だけに、遠路遥々来やしないよ。ローダンヌからじゃ、馬車で十日は掛かるんじゃないか?話をしっかり聞いて、その上で判断すればいい。…私は、悪い縁談じゃないと思うけどね」
「…判った」
***
求婚された衝撃で、相手の挨拶も碌に聞かずに夜会を脱走し、帰宅するなりゴンザレスで王都に飛んだトマスが家に戻ると、ラングリード家は上を下への大騒ぎとなっていた。
「若様、若様にご求婚なさりたいと言うご令嬢が…っ」
真っ青な顔で、退役騎士である執事のセバスチャンが、そっと耳打ちする。
使用人の誰もが浮足立った様子で、そわそわざわざわと地に足がついていない。
「…まさか、家まで来てるとは…」
ラングリード家は、徹底した男系家系だ。
少子化に悩むサンクリアーニの貴族の中では珍しく、各代に必ず三人は子供を授かるのだが、そのいずれもが、男児。
女児が産まれたと言う記録は、過去を遡っても見つからない。
当然、生まれる男児は皆、極悪人面だ。
そのラングリード家の縁談と言えば、領地内の付き合いのある家から幼馴染を娶るやら、騎士団で付き合いのある家から姉妹や娘を娶るやら。
家を継ぐ者以外は、婿入りする事も多い。
不思議な事に、婿入りして『ラングリード』の家名から離れると嫁寄りの顔立ちの子が生まれるから、東域が極悪人面で埋まっているわけではない。
とは言え、嫁を取ろうが婿に入ろうが、強面な顔と立派過ぎる体格のせいで、縁談がまとまるまでに、それなりの苦労をしているのだ。
トマスが社交界デビューする事で、縁談を探さねば、と気合を入れていた所で降って湧いた話。
あちらから飛び込んで来るとは、正に青天の霹靂だった。
「…判った、会う」
「はい、応接間にお通ししておりますので」
トマスが応接間に着くと、昨晩の夜会でトマスに求婚したご令嬢――タチアナ・シリングが、一人でソファに腰を下ろしていた。
伯爵家のご令嬢と聞いていたのに、侍女の一人も連れていない。
昨夜とは違い、昼用の外出着を着ており、夜会用のはっきりした化粧ではなく、薄化粧に過ぎないのだが、思わず、トマスが目を奪われる程に綺麗な顔立ちをしている。
「トマス様」
入室したトマスを見て、タチアナは嬉しそうに顔を綻ばせた。
罰ゲームの可能性を捨て切れないトマスの目にも、その顔は心からのものに見える。
「…昨夜は、失礼しました。その…突然の事で、驚いてしまって」
しどろもどろになりながら、トマスが言うと、タチアナは緩く首を振る。
「いいえ、こちらこそ、失礼致しました。漸く、トマス様にお会い出来たものですから、気が逸ってしまって…」
タチアナは、流れるような所作で立ち上がると、美しい礼を執った。
「改めて、自己紹介させて頂きます。ローダンヌ領をお預かりしておりますタイラー・シリングの娘、タチアナと申します。トマス様の妻に立候補するべく参りました」
うん、最後がおかしい。
トマスは、自分の耳がおかしいのでは、と、背後に控えるセバスチャンの顔にちらりと目を遣ったが、セバスチャンもあんぐりと口を開けている。
「えぇと…タチアナ嬢?」
「どうぞ、タチアナとお呼び下さい」
「あの、ですね…何処かでお会いした事がありましたか?」
「まぁ!えぇ、そうですわね、ご存知ないのも無理はありません。…わたくし、三年前に、トマス様に命を救われたのですわ」
タチアナの話は、こうだった。
三年前のある日。
タチアナは妹と共に、東域に近い領地に住まう母方の伯母を見舞う為に、馬車で旅に出た。
護衛と侍女と共に移動していたのだが、突然、馬の悲鳴と護衛の怒号が聞こえ、馬車は停車。
様子を見る、と出て行った侍女も、帰って来ない。
当時十七歳だったタチアナは、まだ十三歳の妹を守る為に、ガクガクと震える体を叱咤して、必死に妹を抱き締めていた。
その時、突然、馬車の屋根が剥がれ、暖かく生臭い風が流れ込んで来たのだ。
実際に、何に襲われたのかは、怖くて目を閉じていたから、判らない。
けれど、何かが直ぐ傍に居る事は判った。
ぶわん、と言う強風と共に、胸に火傷するような熱さと痛みが走り、気づいたら、体が弾き飛ばされていた。
此処で、死ぬんだ。
そう、覚悟を決めた時。
「お前の相手は、こっちにいるぞ」
男性の落ち着いた声が、何かの気を惹いてくれた。
痛みの余り、霞む視界で見えたのは、大きな黒い影の前で、一人、力んだ様子もなく立っている黒髪の男性の後ろ姿。
次の瞬間には、魔獣は真っ二つになっていて。
「おい、あんた、大丈夫か?」
振り返り、そう、心配そうに尋ねる彼の緋色の瞳が、気を失う直前の記憶。
「目が覚めたら、領地に戻っておりました。わたくしは、傷による高熱で、一週間、意識を失っていたのだそうです」
妹は、傷一つなく無事だったが、護衛と侍女、そして馬は、亡くなった。
両親は、タチアナが意識を取り戻した事に喜んだものの、彼女は、失った命に心を痛めた。
「わたくし達を助けて下さった方は、近くの街まで運び、事後の手配をして下さったそうなのですが、名乗らずに立ち去ってしまわれたとの事でした。妹は襲撃された事でパニックを起こしていて、そこまで気が回らなかったのです。体が動くようになってから、助けて下さった方は何方だったのか、調べました。父と交流のあるディンゲン侯爵閣下にお尋ねした所、黒髪赤瞳で、魔獣を一閃出来るような腕の持ち主ならば、ラングリード家所縁の方に違いない、と」
視界は、霞んでいた。
意識も、朦朧としていた。
けれど、黒髪赤瞳で体格の良い若い男性だったのは、確かだ。
「わたくしは、心配した両親に領地から出る事を禁じられてしまいましたので、父からお礼状を出させて頂いた筈です」
トマスがセバスチャンに目を遣ると、
「…確かに三年程前に、お礼状を頂いておりますな」
との返事が返って来た。
「あの当時の若様は、腕試しと称して、ゴンザレスと共に国中を巡ってらっしゃったので…お礼状も、多う御座いましたが、えぇ、確かに、シリング伯爵家から頂いております」
「そうか」
なるほど。
タチアナとの接点は、判った。
トマスの記憶がないのは、セバスチャンの言う通り、武者修行と称して全国を気ままに飛び回っていたからだろう。
三年前と言えば、十五歳になり、飛竜捕獲の許可が下りた頃だ。
ゴンザレスを騎獣にした事で、調子に乗って、あちこちに足を延ばした。
正直に言ってしまえば、魔獣から誰かを助ける、なんて日常で、いちいち覚えていないが、騎士団の管轄を離れて自由に動いていたのなんて、トマス以外にいないだろう。
「その節は、本当に有難う御座いました。お陰様で、永らえる事が出来ました」
タチアナが、深々と頭を下げる。
「えぇと…ご無事で何よりです。わざわざ、礼を言う為に来て下さったのですか」
「いいえ?冒頭に申し上げました通り、トマス様の花嫁候補に立候補したくて参りました」
だから、何故、そうなる。
「その、ですね…タチアナ嬢」
「どうぞ、タチアナと」
「タチアナ…さん。お気持ちは、有難いのですが…」
「トマス様、既にご婚約者様がいらっしゃるのですか?」
「え、いえ、まさか」
「でしたら、是非、わたくしの事をご検討下さいませ」
「あの、礼でしたら、先程、伺いました。確かに貴方を襲った魔獣を斃したのは、俺なんでしょう。ですが、恩着せがましく貴方を娶りたいなどと、言うつもりはありません」
「…わたくしは、お好みとは違いますか?それとも、年上はお嫌ですか?」
泣きそうに目を潤ませられて、トマスは慌てた。
「いやいやいや、そんな、恐れ多い」
「でしたら、是非、わたくしを」
「あの、何でまた俺を」
冷や汗を掻きながらトマスがそう言うと、タチアナは、きょとんと目を見開いた。
「勿論、トマス様をお慕いしているからですわ」
後にトマスはナイジェルに、「人生で、あれ程驚いた試しは、他にねぇ」と話した。
「あれ程の大きな魔獣の前で、恐れを見せずに立ち塞がり、民を守らんとするお姿に、一目惚れしたのです」
一目惚れ。
一目惚れ、って何だっけ。
トマスの思考が、停止する。
「いやいやいや…それは、ほら、吊り橋効果ってヤツですよ、ほら、ね」
「父も、そう申しました。ですから、今回も、両親には黙ってこちらに伺ったのです。…わたくしの想いは、三年が経っても褪せてはおりません。さすれば、それは本物と言う事でしょう。夜会でも、お背中を見て直ぐに、トマス様だと判りました」
「いや、でも、俺はこんな悪人面ですし、タチアナさんは、そんなに綺麗なのに、」
「まぁ、何を仰るのですか!トマス様は、サンクリアーニの守護神ですわ。わたくしには、とても凛々しく頼もしい方にしか、見えません!」
――…トマスは、その言葉に陥落した。
***
こうして、押し掛け姉さん女房のタチアナは、ラングリード家に嫁いで来た。
タチアナの両親は、魔獣に襲われ、命も危うかった娘が、深淵の森の直ぐ傍であるイエスタ領で暮らす事を良しとせず、最後まで反対していた。
けれど、タチアナの意志が固かった為に、結局は二人の結婚を認めた。
タチアナは当初、魔獣に襲われて負った胸の怪我の痕を、トマスに見られるのを躊躇っていた。
しかし、トマスは、生き延びた証なのだから、と、傷跡も含めてタチアナを愛した。
歴代ラングリード家の中でも多くの子を授かったのは、二人の仲の良さの他に、魔力の相性の良さもあったらしい。
長男アーサー、次男イネス、三男ウォルトの後に、長女エディスが生まれた時には、ラングリード一族の中で、ちょっとした祭りになった。
何しろ、記録に残っていない女児。
オスの三毛猫並みに、レアな存在だ。
だが、女児だから、と言って、魔獣討伐を教えないわけにはいかない。
この地の領主一家の子である以上、まずは、自分で自分の身を守る事が出来なければ、望む道に進ませてやる事すら出来ないのだ。
その後、四男オリバー、五男カーティスが生まれて数年後、タチアナが体調に異変を感じるようになった。
子供達に体調不良を悟らせないよう、常に笑顔のタチアナの身を案じるトマスに、タチアナは。
「ねぇ、トマス。私、もう一人、子供が欲しいの」
「何言ってんだ。もう、六人も子供がいる。十分、授けて貰った。赤ん坊一人産むって事は、自分の体を削るって事だろう。ただでさえ、調子が悪いのに…!」
「だからこそ、よ」
「何?」
「トマス…私ね、もうそんなに長くないわ。…お医者様に、そう言われたの」
穏やかにそう言うタチアナに、トマスの顔が絶望に染まる。
「っタチアナ、」
「胸の傷がね、どんどん疼くようになってるの。この傷から、何かが…生命力、って言うのかしら、そう言うものが、漏れ出てる感じがするのよ」
「だったら!」
「…ねぇ、トマス。子供達はいずれ、成長して家を出て行くわ。アーサーは後継ぎだから、この家に残るでしょうけれど、あの子にはあの子の新しい家族が出来るの。いつまでも、可愛い子供のままでは、いられない。でも、一人でも多くの子供がいれば、入れ代わり立ち代わり、貴方に会いに来てくれるでしょう?七人いれば、一週間、日替わりで来てくれるわね。孫だってきっと、たくさん出来るわ。可愛いでしょうね、貴方にそっくりの孫が、ずらっと並んでいる姿」
「タチアナ…」
呆然と名を呼ぶトマスに、タチアナは微笑んだ。
「貴方は、寂しがり屋だから。貴方が寂しくないように、愛する者をたくさん、残していきたいの。…私がいなくても、貴方が笑っていられるように」
「…っ」
その顔が、余りに綺麗だったから。
トマスは、タチアナの願いを、叶える事にした。
***
六男キムが生まれてから、四年後。
医師の示した余命を大幅に越えたタチアナは、死の床にあった。
「…トマス」
子供達との別れを済ませ、最期の時間は二人で過ごす。
「アーサーは、一番、貴方に似ているわ…語らずとも判ってくれるでしょうけれど、それに甘えちゃダメよ…」
掠れるような細い声に、トマスは必死に耳を澄ます。
「あぁ」
「イネスは、真面目過ぎるけど…そこが、あの子の良さなの…活かせる場所を、勧めてあげて…」
「判った」
「ウォルトは、お調子者だけど…素直ないい子よ…頭ごなしに、叱らないでやって…」
「そうだな」
「オリバーは、少し不器用ね…言葉が足りない事があるから…本当はどう思っているのか、辛抱強く聞いてあげて…」
「そうする」
「カーティスが、怒りっぽいのは…今だけよ…私が、こんなだから…心配してるの…優しい子よ…」
「あぁ」
「キムは…泣き虫だから…きっと、貴方を困らせるわ…でも、皆がいてくれるから…大丈夫ね…」
「ちゃんと、守る」
「エディスは…」
そう言うと、タチアナは一瞬、目を強く閉じた。
「あの子は、繊細だから…ちゃんと、あの子の事を見てくれる人じゃなきゃ、結婚させちゃダメよ…相手に合わせようとして、無理をするから…大切にしてくれる人を、見つけてね…」
「約束する」
ふぅ、と、タチアナは大きく息を吐くと、しっかりとトマスの顔を見る。
その目に、焼き付けるかのように。
「あぁ…愛してるわ、トマス…貴方と、出会えて…しあわせ…」
最期の言葉は、泡のように、口の中で弾けた。
そのまま、細い息が吐き出され、タチアナは苦しみのない世界へと、旅立って行った。
***
「タチアナ」
ラングリード邸の背後の小高い丘の上に、代々のラングリード家の人々が、永き眠りにつく墓所がある。
トマスは、ナイジェルから祝いとして貰ったワインを手に、足を運んでいた。
丁寧に草が刈り取られた墓所の中でも、鮮やかな花束の手向けられたそこが、目的地だ。
毎日、誰かしらが訪れている為、日差しを遮りそうな木の枝は取り除かれ、燦々と明るい。
「エディスが、結婚する。いい相手を見つけるのに、ちと時間は掛かっちまったけどな。まさか、あいつにやる事になるとは思わなかったが…エディスが幸せそうだから、いいんだ」
コルクを開けると、『タチアナ・ラングリード』と名を記された墓標に、とぷとぷと掛けた。
トマスは下戸だから飲めないが、タチアナはワインが好きだった。
「…なぁ、お前も賛成してくれるだろ?」
いつかまた、出会った時に。
よくやったわ、と、褒めて欲しい。
胸を張って再会する為に、今を生きているのだから。
「…ほんと、お前は世界一の女だよ」
タチアナを喪った後、覚悟はしていた筈なのに、トマスは自分が抜け殻になった気がした。
半身を失くしたような喪失感。
しっかりと足を踏みしめているのに、ふわふわとした浮遊感。
そのトマスを地面に引き留めていたのが、子供達の存在だった。
タチアナが亡くなった当時、長男のアーサーが二十歳。
そして、末っ子のキムが四歳。
騎士団での仕事をアーサーに補佐して貰い、まだ幼児のキムの養育をエディスに補佐して貰い、日々を懸命に生きて来て、漸く十四年。
子供達がいなければ、どうなっていたのか、判らない。
キムが成人し、エディスの結婚が決まった今、両肩に乗った責任は、一気に軽くなった。
だが、子供達への責任が、自分をこの地に結び付けているのだと思っていたけれど、それだけではないらしい。
最近、とみに熱心に鍛錬をしている初孫クリスの成長を、もっと見ていたいからだ。
クリスはどうやら、エディスの結婚をきっかけに、強くなりたい、と言う気持ちが増したようだ。
クリスに引っ張られるように、他の孫達――婿入りしたイネスやウォルトの子供達も含め――が、励んでいる姿を見ると、誇らしくもあり、微笑ましくもあり。
そして、ふと思うのだ。
タチアナはこの光景を、予想していたのだろうな、と。
「まだ暫く、そっちに行くのは先になるな」
その分、土産話はたくさん仕込んでいくからな。
トマスはそう呟くと、タチアナの髪に触れる時のように、墓標をそっと、撫でたのだった。
END
社交界デビューの夜会で、背後からそう声を掛けられて、トマスは振り返った。
十八とは思えない見上げる程の巨躯の彼の視線の先には、何もない。
「こちらです」
思っていたよりも下から声が聞こえて、慌てて視線を下げると、艶やかな栗色の髪に、とろりとした蜜のような瞳を持つ美しいご令嬢が、微笑んでいた。
社交界デビューのご令嬢は、皆、一様に白いドレスを纏っている筈だが、彼女が身に着けているのは、深い緋色――トマスの、瞳の色のような。
…見覚えは、ない。
少なくとも、自己紹介した記憶はない。
「トマス・ラングリード様」
改めて名を呼ばれて、トマスの背が自然と伸びる。
優し気な風貌であるにも関わらず、彼女の声には、人を従わせるような響きがあった。
「わたくしと、結婚して下さい」
***
「ナイジェル、大変な事が起きた」
「ぅおっ?!トマス、お前ねぇ。何回、正面玄関から入って来い、って言ったら覚えるんだ?」
「やだね、面倒臭い」
「そう言うから、顔パスにしてやっただろ?」
「お前こそ、どうかしてる。正面玄関なんて、騎士の溜まり場だろが。あそこでメンフィスに見つかると、手合わせしろ、ってしつけぇんだよ」
「…うん、あのね、トマス。王宮の正面玄関なんだから、騎士がいないと困るだろう…?」
顔パスだろうが何だろうが、何重もの厳重なチェックがある正面玄関を、正式な手順で通過するのは面倒だ。
トマスが、幼馴染である王太子ナイジェルに会いに来る時、専ら使う手段が、王宮の屋根に愛騎である飛竜ゴンザレスで乗り付け、ナイジェルの部屋のバルコニーから中に侵入する、と言うものだった。
勿論、相手がナイジェルでなければ、手が後ろに回る所業である。
なお、トマスがナイジェルの部屋にいる間、ゴンザレスは好きなように王都の空を飛び回っている。
飛竜が出た~!と王都騎士団に通報が入るのは、いつもの事。
「そんな事よりも、大変なんだ」
「…うん…判ってるよ、お前はそう言うヤツだって。王宮にノーチェックで忍び込む事こそ、大変なんだけどね…?」
「求婚された」
「はぁ、そう、求婚。求婚ねぇ…求婚?!」
求婚、と言う言葉が脳に到達するまで、たっぷりと時間が掛かったのは、聡明なナイジェルとしては珍しい事だった。
「だ、誰が?!」
「俺が」
「誰に?!」
「知らん」
「…あぁ、何だ、夢の話か」
「違ぇよ!昨夜の!夜会で!見知らぬ女に!」
「こらこら、ご令嬢、と言いなさい」
昨夜の夜会と言えば。
「…東域では、昨夜が社交界デビューの夜会だったよね?」
「そうだよ!親父がうるせぇから、俺だって、着たくもねぇ礼装着て、ちゃんと参加したんだよ!」
トマスは、血走った目でそう叫んだ。
「うん、偉いね、トマス。私はまた、お前の事だから脱走するかと思ったんだけど。それで、求婚?」
「あぁ」
「良かったじゃないか!男の適齢期は長いとは言え、早く決まるに越した事はない。ましてや、ラングリード家は東域防衛の要。王家の一員としても、大歓迎だよ。女性側から求婚なんて大胆だけど、お前が落ち着くなら、私は何だっていいよ」
「…違う」
「うん?」
「…逃げたんだ」
「…逃げた?」
「俺は!生まれて初めて、敵前逃亡したんだよ…!」
そう言って、巨体を丸めて頭を抱えるトマスに、ナイジェルは、はぁ、と溜息を吐いた。
「何?突然求婚されて、吃驚して逃げちゃったの?」
「…あぁ」
「そんで、驚き過ぎて、私の所に来たの?」
「…あぁ」
「お前ねぇぇぇ!」
何て事だ。
千載一遇のチャンスだと言うのに。
ナイジェルは、虚ろな目で、「敵に背を向けるなんざ、末代までの恥だ…」とブツブツ呟くトマスを横目で見ながら、う~ん、と腕を組んだ。
トマス・ラングリードは、サンクリアーニ王国を魔獣から代々守って来たラングリード家の嫡男だ。
ナイジェルと同じ年に生まれたトマスを、父である国王は、息子の頼みになるように、と考え、幼い頃から交流させて来た。
ナイジェルは、言葉も覚束ない頃からイエスタ領を訪れては、しばしば滞在し、時には魔獣討伐に同行して来たのである。
長く深い付き合いだからこそ、『悪魔』とあだ名される程に怖い顔をした幼馴染が、異性との付き合いに疎い事をよく知っている。
「お相手のご令嬢が、可哀想じゃないか。折角、勇気を振り絞ってお前に求婚してくれたんだろう?」
「それは…」
「お前だって判ってる筈だよ。この機会を逃したら、次に結婚出来るのがいつになるか判らないって事を!」
「う…」
ラングリード家は、サンクリアーニの貴族の中でも、有名な家名と言えるだろう。
主に、その勇猛果敢な戦いぶりにおいて。
彼等は、魔獣討伐のエキスパートだ。
騎獣として希少な飛竜を駆り、凶悪な魔獣を屠る。
代々、それを繰り返した結果なのか、ラングリード家の男は皆、見上げるような長身と強靭な肉体、丸太のような筋肉を持つ。
…そして、驚く程の凶相である。
内面は唯の脳筋なのだが、外見は前科百犯の極悪犯だ。
それこそ、弱い魔獣ならば、一睨みで逃げ出すような。
イエスタ領の人々は、ラングリード家の人々の事をよく知っているから、彼等の外見に竦み上がる事は早々ない。
けれど――…。
「見知らぬご令嬢って事は、イエスタ領周辺のご令嬢ではないのだろう?」
「それは、間違いない」
「確かに、ラングリードの名は有名だよ?でも、実際のお前を見て求婚出来るなんて、相当肝の据わったご令嬢である事は間違いない。逃がす事はないと思うけどなぁ?」
私よりも早く結婚するのは、ちょっと悔しい気もするけれど、とナイジェルが言うと、トマスは溜息を吐いた。
「…本気なわけがねぇだろ?性質の悪ぃ罰ゲームだ。俺が逆上せ上るのを見てぇって根暗なヤツがいるんだろ」
「罰ゲーム、ねぇ?」
「だから…そう、だから、誰がそんな事をあの子にさせたのか、調べてくれ」
「ふぅん…まぁ、いいけど。で、ご令嬢の名前は?」
「えぇと…確か…あぁ、そうだ。タチアナ・シリングって聞いたな」
「了解。じゃあ、ちょっと、調べさせてみようか」
ナイジェルが、侍従に命じてタチアナ・シリングの事を調べさせている間、トマスはウロウロと部屋の中をうろつき回っていた。
「…ちょっと落ち着きなよ。何だい、熊みたいに」
「…誰が熊だ」
そう応える声にも、何だか覇気がない。
「あのね、トマス。お前は、『罰ゲームだ』って言うけどさ。もしも、相手のご令嬢が本気だったら、どうするつもり?」
「どうするも何も…本気なわけがねぇよ」
「本気だったら、困るわけ?」
「困る、って言うか…うん…」
「お前は女性の好みに煩い方じゃないと思ってたけど…よっぽどのご面相だったとか?」
「お前、どんだけ目が肥えてんだよ!あんな美人は、イエスタにいねぇよ!」
あぁ、そっちか、と、ナイジェルは得心した。
それは、罰ゲームだと思ってしまうのも仕方あるまい。
好みど真ん中の初対面の女性に、いきなり求婚されるだなんて、今時、演劇でも流行らない。
「殿下、ご依頼の件ですが、情報を集めて参りました」
「うん、有難う」
侍従に恭しく手渡された紙に、ナイジェルは素早く目を走らせる。
訪問の連絡もないのに、室内にいるトマスに気づいても、眉毛一筋動かさないのは流石だ。
「…なるほど」
そわそわした様子でこちらを伺っているトマスの目が、雨に濡れた子犬みたいだ。
「まず、シリング嬢は、北域のローダンヌ領を治めるシリング家のご令嬢だ」
「北域…?」
「年は二十歳。二つ上だね」
サンクリアーニ王国の貴族令嬢は、社交界デビューの十八から二十までの間に婚約する者が多い。
二十歳を過ぎてしまうと、行き遅れとして見られる。
「…何で…あんだけ美人なら、俺なんかに求婚しねぇでも、幾らでも縁談はあるだろ?よっぽど性格が悪ぃのか…?」
「領民の評価は上々。奉仕活動にも熱心で、特に魔獣による被害者の救済活動に注力している。…どうやら、彼女自身が魔獣に襲撃された事があるようだ」
「!」
サンクリアーニ王国は、『深淵の森』と呼ばれる深い森に囲まれた国だ。
深淵の森からは、魔獣が生まれる。
一見、動物のような姿をした魔獣は、攻撃力が高く、積極的に人を襲う。
それら魔獣から民を守る為に、深淵の森に面した領地には、王立騎士団が設置されている。
トマスは、そのうちの東域騎士団の重鎮を代々務めているラングリード家の一員だから、魔獣に襲われた、と聞くと、胸が痛い。
騎士団の監視網を潜り抜けた魔獣が、彼女を襲ったに違いないのだから。
「そう、か…」
沈んだ顔を見せるトマスに、ナイジェルは付け加える。
「シリング家は伯爵位だ。求婚は数多あるらしいけど、そのいずれも成立していない。でも、お前にはご令嬢自ら求婚したって言う事は、騎士との結婚を望んでるって事じゃないか?北域にも優秀な騎士は多いし、確か、ディンゲン侯爵の所にも年回りの近い息子がいた筈だから…何でまた、縁も所縁もなさそうな東域に来てるのかは、判らないけど」
それこそがきっと、この求婚の大きな理由だろう。
「少なくとも、わざわざ罰ゲームの為だけに、遠路遥々来やしないよ。ローダンヌからじゃ、馬車で十日は掛かるんじゃないか?話をしっかり聞いて、その上で判断すればいい。…私は、悪い縁談じゃないと思うけどね」
「…判った」
***
求婚された衝撃で、相手の挨拶も碌に聞かずに夜会を脱走し、帰宅するなりゴンザレスで王都に飛んだトマスが家に戻ると、ラングリード家は上を下への大騒ぎとなっていた。
「若様、若様にご求婚なさりたいと言うご令嬢が…っ」
真っ青な顔で、退役騎士である執事のセバスチャンが、そっと耳打ちする。
使用人の誰もが浮足立った様子で、そわそわざわざわと地に足がついていない。
「…まさか、家まで来てるとは…」
ラングリード家は、徹底した男系家系だ。
少子化に悩むサンクリアーニの貴族の中では珍しく、各代に必ず三人は子供を授かるのだが、そのいずれもが、男児。
女児が産まれたと言う記録は、過去を遡っても見つからない。
当然、生まれる男児は皆、極悪人面だ。
そのラングリード家の縁談と言えば、領地内の付き合いのある家から幼馴染を娶るやら、騎士団で付き合いのある家から姉妹や娘を娶るやら。
家を継ぐ者以外は、婿入りする事も多い。
不思議な事に、婿入りして『ラングリード』の家名から離れると嫁寄りの顔立ちの子が生まれるから、東域が極悪人面で埋まっているわけではない。
とは言え、嫁を取ろうが婿に入ろうが、強面な顔と立派過ぎる体格のせいで、縁談がまとまるまでに、それなりの苦労をしているのだ。
トマスが社交界デビューする事で、縁談を探さねば、と気合を入れていた所で降って湧いた話。
あちらから飛び込んで来るとは、正に青天の霹靂だった。
「…判った、会う」
「はい、応接間にお通ししておりますので」
トマスが応接間に着くと、昨晩の夜会でトマスに求婚したご令嬢――タチアナ・シリングが、一人でソファに腰を下ろしていた。
伯爵家のご令嬢と聞いていたのに、侍女の一人も連れていない。
昨夜とは違い、昼用の外出着を着ており、夜会用のはっきりした化粧ではなく、薄化粧に過ぎないのだが、思わず、トマスが目を奪われる程に綺麗な顔立ちをしている。
「トマス様」
入室したトマスを見て、タチアナは嬉しそうに顔を綻ばせた。
罰ゲームの可能性を捨て切れないトマスの目にも、その顔は心からのものに見える。
「…昨夜は、失礼しました。その…突然の事で、驚いてしまって」
しどろもどろになりながら、トマスが言うと、タチアナは緩く首を振る。
「いいえ、こちらこそ、失礼致しました。漸く、トマス様にお会い出来たものですから、気が逸ってしまって…」
タチアナは、流れるような所作で立ち上がると、美しい礼を執った。
「改めて、自己紹介させて頂きます。ローダンヌ領をお預かりしておりますタイラー・シリングの娘、タチアナと申します。トマス様の妻に立候補するべく参りました」
うん、最後がおかしい。
トマスは、自分の耳がおかしいのでは、と、背後に控えるセバスチャンの顔にちらりと目を遣ったが、セバスチャンもあんぐりと口を開けている。
「えぇと…タチアナ嬢?」
「どうぞ、タチアナとお呼び下さい」
「あの、ですね…何処かでお会いした事がありましたか?」
「まぁ!えぇ、そうですわね、ご存知ないのも無理はありません。…わたくし、三年前に、トマス様に命を救われたのですわ」
タチアナの話は、こうだった。
三年前のある日。
タチアナは妹と共に、東域に近い領地に住まう母方の伯母を見舞う為に、馬車で旅に出た。
護衛と侍女と共に移動していたのだが、突然、馬の悲鳴と護衛の怒号が聞こえ、馬車は停車。
様子を見る、と出て行った侍女も、帰って来ない。
当時十七歳だったタチアナは、まだ十三歳の妹を守る為に、ガクガクと震える体を叱咤して、必死に妹を抱き締めていた。
その時、突然、馬車の屋根が剥がれ、暖かく生臭い風が流れ込んで来たのだ。
実際に、何に襲われたのかは、怖くて目を閉じていたから、判らない。
けれど、何かが直ぐ傍に居る事は判った。
ぶわん、と言う強風と共に、胸に火傷するような熱さと痛みが走り、気づいたら、体が弾き飛ばされていた。
此処で、死ぬんだ。
そう、覚悟を決めた時。
「お前の相手は、こっちにいるぞ」
男性の落ち着いた声が、何かの気を惹いてくれた。
痛みの余り、霞む視界で見えたのは、大きな黒い影の前で、一人、力んだ様子もなく立っている黒髪の男性の後ろ姿。
次の瞬間には、魔獣は真っ二つになっていて。
「おい、あんた、大丈夫か?」
振り返り、そう、心配そうに尋ねる彼の緋色の瞳が、気を失う直前の記憶。
「目が覚めたら、領地に戻っておりました。わたくしは、傷による高熱で、一週間、意識を失っていたのだそうです」
妹は、傷一つなく無事だったが、護衛と侍女、そして馬は、亡くなった。
両親は、タチアナが意識を取り戻した事に喜んだものの、彼女は、失った命に心を痛めた。
「わたくし達を助けて下さった方は、近くの街まで運び、事後の手配をして下さったそうなのですが、名乗らずに立ち去ってしまわれたとの事でした。妹は襲撃された事でパニックを起こしていて、そこまで気が回らなかったのです。体が動くようになってから、助けて下さった方は何方だったのか、調べました。父と交流のあるディンゲン侯爵閣下にお尋ねした所、黒髪赤瞳で、魔獣を一閃出来るような腕の持ち主ならば、ラングリード家所縁の方に違いない、と」
視界は、霞んでいた。
意識も、朦朧としていた。
けれど、黒髪赤瞳で体格の良い若い男性だったのは、確かだ。
「わたくしは、心配した両親に領地から出る事を禁じられてしまいましたので、父からお礼状を出させて頂いた筈です」
トマスがセバスチャンに目を遣ると、
「…確かに三年程前に、お礼状を頂いておりますな」
との返事が返って来た。
「あの当時の若様は、腕試しと称して、ゴンザレスと共に国中を巡ってらっしゃったので…お礼状も、多う御座いましたが、えぇ、確かに、シリング伯爵家から頂いております」
「そうか」
なるほど。
タチアナとの接点は、判った。
トマスの記憶がないのは、セバスチャンの言う通り、武者修行と称して全国を気ままに飛び回っていたからだろう。
三年前と言えば、十五歳になり、飛竜捕獲の許可が下りた頃だ。
ゴンザレスを騎獣にした事で、調子に乗って、あちこちに足を延ばした。
正直に言ってしまえば、魔獣から誰かを助ける、なんて日常で、いちいち覚えていないが、騎士団の管轄を離れて自由に動いていたのなんて、トマス以外にいないだろう。
「その節は、本当に有難う御座いました。お陰様で、永らえる事が出来ました」
タチアナが、深々と頭を下げる。
「えぇと…ご無事で何よりです。わざわざ、礼を言う為に来て下さったのですか」
「いいえ?冒頭に申し上げました通り、トマス様の花嫁候補に立候補したくて参りました」
だから、何故、そうなる。
「その、ですね…タチアナ嬢」
「どうぞ、タチアナと」
「タチアナ…さん。お気持ちは、有難いのですが…」
「トマス様、既にご婚約者様がいらっしゃるのですか?」
「え、いえ、まさか」
「でしたら、是非、わたくしの事をご検討下さいませ」
「あの、礼でしたら、先程、伺いました。確かに貴方を襲った魔獣を斃したのは、俺なんでしょう。ですが、恩着せがましく貴方を娶りたいなどと、言うつもりはありません」
「…わたくしは、お好みとは違いますか?それとも、年上はお嫌ですか?」
泣きそうに目を潤ませられて、トマスは慌てた。
「いやいやいや、そんな、恐れ多い」
「でしたら、是非、わたくしを」
「あの、何でまた俺を」
冷や汗を掻きながらトマスがそう言うと、タチアナは、きょとんと目を見開いた。
「勿論、トマス様をお慕いしているからですわ」
後にトマスはナイジェルに、「人生で、あれ程驚いた試しは、他にねぇ」と話した。
「あれ程の大きな魔獣の前で、恐れを見せずに立ち塞がり、民を守らんとするお姿に、一目惚れしたのです」
一目惚れ。
一目惚れ、って何だっけ。
トマスの思考が、停止する。
「いやいやいや…それは、ほら、吊り橋効果ってヤツですよ、ほら、ね」
「父も、そう申しました。ですから、今回も、両親には黙ってこちらに伺ったのです。…わたくしの想いは、三年が経っても褪せてはおりません。さすれば、それは本物と言う事でしょう。夜会でも、お背中を見て直ぐに、トマス様だと判りました」
「いや、でも、俺はこんな悪人面ですし、タチアナさんは、そんなに綺麗なのに、」
「まぁ、何を仰るのですか!トマス様は、サンクリアーニの守護神ですわ。わたくしには、とても凛々しく頼もしい方にしか、見えません!」
――…トマスは、その言葉に陥落した。
***
こうして、押し掛け姉さん女房のタチアナは、ラングリード家に嫁いで来た。
タチアナの両親は、魔獣に襲われ、命も危うかった娘が、深淵の森の直ぐ傍であるイエスタ領で暮らす事を良しとせず、最後まで反対していた。
けれど、タチアナの意志が固かった為に、結局は二人の結婚を認めた。
タチアナは当初、魔獣に襲われて負った胸の怪我の痕を、トマスに見られるのを躊躇っていた。
しかし、トマスは、生き延びた証なのだから、と、傷跡も含めてタチアナを愛した。
歴代ラングリード家の中でも多くの子を授かったのは、二人の仲の良さの他に、魔力の相性の良さもあったらしい。
長男アーサー、次男イネス、三男ウォルトの後に、長女エディスが生まれた時には、ラングリード一族の中で、ちょっとした祭りになった。
何しろ、記録に残っていない女児。
オスの三毛猫並みに、レアな存在だ。
だが、女児だから、と言って、魔獣討伐を教えないわけにはいかない。
この地の領主一家の子である以上、まずは、自分で自分の身を守る事が出来なければ、望む道に進ませてやる事すら出来ないのだ。
その後、四男オリバー、五男カーティスが生まれて数年後、タチアナが体調に異変を感じるようになった。
子供達に体調不良を悟らせないよう、常に笑顔のタチアナの身を案じるトマスに、タチアナは。
「ねぇ、トマス。私、もう一人、子供が欲しいの」
「何言ってんだ。もう、六人も子供がいる。十分、授けて貰った。赤ん坊一人産むって事は、自分の体を削るって事だろう。ただでさえ、調子が悪いのに…!」
「だからこそ、よ」
「何?」
「トマス…私ね、もうそんなに長くないわ。…お医者様に、そう言われたの」
穏やかにそう言うタチアナに、トマスの顔が絶望に染まる。
「っタチアナ、」
「胸の傷がね、どんどん疼くようになってるの。この傷から、何かが…生命力、って言うのかしら、そう言うものが、漏れ出てる感じがするのよ」
「だったら!」
「…ねぇ、トマス。子供達はいずれ、成長して家を出て行くわ。アーサーは後継ぎだから、この家に残るでしょうけれど、あの子にはあの子の新しい家族が出来るの。いつまでも、可愛い子供のままでは、いられない。でも、一人でも多くの子供がいれば、入れ代わり立ち代わり、貴方に会いに来てくれるでしょう?七人いれば、一週間、日替わりで来てくれるわね。孫だってきっと、たくさん出来るわ。可愛いでしょうね、貴方にそっくりの孫が、ずらっと並んでいる姿」
「タチアナ…」
呆然と名を呼ぶトマスに、タチアナは微笑んだ。
「貴方は、寂しがり屋だから。貴方が寂しくないように、愛する者をたくさん、残していきたいの。…私がいなくても、貴方が笑っていられるように」
「…っ」
その顔が、余りに綺麗だったから。
トマスは、タチアナの願いを、叶える事にした。
***
六男キムが生まれてから、四年後。
医師の示した余命を大幅に越えたタチアナは、死の床にあった。
「…トマス」
子供達との別れを済ませ、最期の時間は二人で過ごす。
「アーサーは、一番、貴方に似ているわ…語らずとも判ってくれるでしょうけれど、それに甘えちゃダメよ…」
掠れるような細い声に、トマスは必死に耳を澄ます。
「あぁ」
「イネスは、真面目過ぎるけど…そこが、あの子の良さなの…活かせる場所を、勧めてあげて…」
「判った」
「ウォルトは、お調子者だけど…素直ないい子よ…頭ごなしに、叱らないでやって…」
「そうだな」
「オリバーは、少し不器用ね…言葉が足りない事があるから…本当はどう思っているのか、辛抱強く聞いてあげて…」
「そうする」
「カーティスが、怒りっぽいのは…今だけよ…私が、こんなだから…心配してるの…優しい子よ…」
「あぁ」
「キムは…泣き虫だから…きっと、貴方を困らせるわ…でも、皆がいてくれるから…大丈夫ね…」
「ちゃんと、守る」
「エディスは…」
そう言うと、タチアナは一瞬、目を強く閉じた。
「あの子は、繊細だから…ちゃんと、あの子の事を見てくれる人じゃなきゃ、結婚させちゃダメよ…相手に合わせようとして、無理をするから…大切にしてくれる人を、見つけてね…」
「約束する」
ふぅ、と、タチアナは大きく息を吐くと、しっかりとトマスの顔を見る。
その目に、焼き付けるかのように。
「あぁ…愛してるわ、トマス…貴方と、出会えて…しあわせ…」
最期の言葉は、泡のように、口の中で弾けた。
そのまま、細い息が吐き出され、タチアナは苦しみのない世界へと、旅立って行った。
***
「タチアナ」
ラングリード邸の背後の小高い丘の上に、代々のラングリード家の人々が、永き眠りにつく墓所がある。
トマスは、ナイジェルから祝いとして貰ったワインを手に、足を運んでいた。
丁寧に草が刈り取られた墓所の中でも、鮮やかな花束の手向けられたそこが、目的地だ。
毎日、誰かしらが訪れている為、日差しを遮りそうな木の枝は取り除かれ、燦々と明るい。
「エディスが、結婚する。いい相手を見つけるのに、ちと時間は掛かっちまったけどな。まさか、あいつにやる事になるとは思わなかったが…エディスが幸せそうだから、いいんだ」
コルクを開けると、『タチアナ・ラングリード』と名を記された墓標に、とぷとぷと掛けた。
トマスは下戸だから飲めないが、タチアナはワインが好きだった。
「…なぁ、お前も賛成してくれるだろ?」
いつかまた、出会った時に。
よくやったわ、と、褒めて欲しい。
胸を張って再会する為に、今を生きているのだから。
「…ほんと、お前は世界一の女だよ」
タチアナを喪った後、覚悟はしていた筈なのに、トマスは自分が抜け殻になった気がした。
半身を失くしたような喪失感。
しっかりと足を踏みしめているのに、ふわふわとした浮遊感。
そのトマスを地面に引き留めていたのが、子供達の存在だった。
タチアナが亡くなった当時、長男のアーサーが二十歳。
そして、末っ子のキムが四歳。
騎士団での仕事をアーサーに補佐して貰い、まだ幼児のキムの養育をエディスに補佐して貰い、日々を懸命に生きて来て、漸く十四年。
子供達がいなければ、どうなっていたのか、判らない。
キムが成人し、エディスの結婚が決まった今、両肩に乗った責任は、一気に軽くなった。
だが、子供達への責任が、自分をこの地に結び付けているのだと思っていたけれど、それだけではないらしい。
最近、とみに熱心に鍛錬をしている初孫クリスの成長を、もっと見ていたいからだ。
クリスはどうやら、エディスの結婚をきっかけに、強くなりたい、と言う気持ちが増したようだ。
クリスに引っ張られるように、他の孫達――婿入りしたイネスやウォルトの子供達も含め――が、励んでいる姿を見ると、誇らしくもあり、微笑ましくもあり。
そして、ふと思うのだ。
タチアナはこの光景を、予想していたのだろうな、と。
「まだ暫く、そっちに行くのは先になるな」
その分、土産話はたくさん仕込んでいくからな。
トマスはそう呟くと、タチアナの髪に触れる時のように、墓標をそっと、撫でたのだった。
END
123
あなたにおすすめの小説
『完璧すぎる令嬢は婚約破棄を歓迎します ~白い結婚のはずが、冷徹公爵に溺愛されるなんて聞いてません~』
鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎる」
その一言で、王太子アルトゥーラから婚約を破棄された令嬢エミーラ。
有能であるがゆえに疎まれ、努力も忠誠も正当に評価されなかった彼女は、
王都を離れ、辺境アンクレイブ公爵領へと向かう。
冷静沈着で冷徹と噂される公爵ゼファーとの関係は、
利害一致による“白い契約結婚”から始まったはずだった。
しかし――
役割を果たし、淡々と成果を積み重ねるエミーラは、
いつしか領政の中枢を支え、領民からも絶大な信頼を得ていく。
一方、
「可愛げ」を求めて彼女を切り捨てた元婚約者と、
癒しだけを与えられた王太子妃候補は、
王宮という現実の中で静かに行き詰まっていき……。
ざまぁは声高に叫ばれない。
復讐も、断罪もない。
あるのは、選ばなかった者が取り残され、
選び続けた者が自然と選ばれていく現実。
これは、
誰かに選ばれることで価値を証明する物語ではない。
自分の居場所を自分で選び、
その先で静かに幸福を掴んだ令嬢の物語。
「完璧すぎる」と捨てられた彼女は、
やがて――
“選ばれ続ける存在”になる。
大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる