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「着替えようか」
涙やらその他、顔中から流れ出した体液で黒々とした染みの出来たグレーのスウェットを見て、ディーンがそう切り出したのは、三十分程、経ってからだった。
その間、ニーナの涙が枯れる事はなく。
ニーナは、人前で泣いた事がない。
部屋に一人でいる時ですら、涙は己の弱みを見せるようで、ぐっと飲み込んで来た。
もしかすると、それがハヤトにフラれた理由の一つなのかな、と、チラと、頭をよぎったけれど、今は、目の前の問題に対処しなくては。
具体的には、泣き過ぎて腫れ上がった瞼で、前がよく見えない、と言う所から。
随分と、みっともない顔をしている、と思う。
漫画の中では、涙は美しいものとして描かれがちだけれど、本当は鼻水も出るし、余りに号泣すると唾液も飲み下しにくくなるし、瞼は腫れ、白目は充血して、頬はカサカサに乾燥して、どう贔屓目に見ても美しいものではない。
少なくとも、目の前にいる顔面偏差値の高い男性陣に晒せる顔ではない。
「ごめんね、僕は治癒魔法の適性がないから、瞼を治してあげられない。ちょっと辛そうだけど、我慢してくれるかな」
何やら声を掛けて来たディーンは、躊躇なく手を差し出した。
思わず、彼の顔と差し出された手を、二往復位、確認してしまう。
首を傾げるとディーンは、
「あぁ」
と言った。
「靴を履いていないんだね。じゃあ、僕が抱えていこう」
「殿下?!」
「大丈夫、こう見えても鍛えてるから、女の子一人位、わけないよ」
「違います!子供の落ち人とは言え、殿下の大切な御身にそのような事をさせるわけには!」
「でも、ライオネルもウルヴスも、ニーナを怖がらせてるじゃないか。だったら、僕しかいないだろう?」
「失礼するよ」と、ディーンは一声掛けると、さっとニーナを抱きかかえた。
左腕でニーナの臀部を支え、抱きかかえる、と言う、所謂お子様抱きで。
『え、何?!』
「大丈夫、落とさないから安心して」
過去の恋人に、ふざけてお姫様抱っこをして貰った事はあるけれど、まさか、この抱き方は予想外だ。
いや、お姫様抱っこが良かった、と言うわけでは、断じてない。ないったら、ない。
思った以上に安定はしているけれど、よく見えない視界が怖くてディーンの肩に縋るように捉まると、くすくすと笑う声がする。
「可愛いね、ニーナ」
その言葉の意味は、翻訳機能を遮断したニーナには、判らないままだった。
「まぁ、ジェラルディン殿下。御自らおいでになるとは、どうなさったのですか。お呼び立て頂ければ、こちらから参りましたものを」
ディーンがまず向かったのは、王宮の奥向きを取り仕切る女官長の所だった。
父である先王は亡くなっているが、ヒースの母は健在だ。
ヒースは未婚の上、王位を巡る争いの関係で婚約者もいないので、即位後も王太后として尽力している。
現在、王族の女性は王太后だけだが、女官は本来、王宮の奥向き――王族に関わる女性の住まう宮、後宮に仕える立場だ。
ニーナは、国の枠組みとは異なる身分を持つ落ち人であり、かつ、女性である。
ディーンとヒースは事前に、ニーナの滞在場所として、後宮に部屋を用意する事を決めていた。
現在、婚約者がいない国王と王弟が後宮に女性を住まわせるとなれば、様々な勘繰りがある事は容易に想像できるが、ただの落ち人ではないニーナを守る為には、国内で最も厳重な警備の敷かれた場所が相応しい。
「顔を上げて、アンリエッタ」
ディーンの訪いを知らされてから深く頭を下げたままの女官長に、ディーンが穏やかに声を掛ける。
王族に生まれた男子は、一度目の成人まで後宮で育ち、その後、王宮内に部屋を賜る。
古株の女官であるアンリエッタは、ディーンにとって、顔馴染みの一人だ。
「…ジェラルディン殿下、これは、何事でございますか」
ディーンに促されて顔を上げた女官長――アンリエッタは、抱き上げられたまま、困惑した顔をしているニーナを見て、僅かに声を震わせた。
動揺がそれだけに留まっている辺り、冷静だな、とニーナは思わず、遠い目になる。
見ようによっては、ニーナはこの国で二番目に高貴な男性を、従えている。
お子様抱きのお陰で?迷子の保護に見えているようなのが幸いだが、迷子だろうが何だろうが、王族の手を煩わせているのは事実だ。
おまけに、ガルダ王国では馴染みのない珍妙な服を着て、足元は素足。
どうやら、素足、と言うのが恥ずかしい事らしくて、いつの間にやら、後から追い掛けて来た侍女につっかけるだけのスリッパのようなものを履かされていた。
であるにも関わらず、ディーンがニーナを下ろさないのは、ニーナの保護者は自分だ、と、王城内に宣伝する為なのだろう、と言う所までは、ニーナにも推測できる。
宣伝効果はばっちりで、ディーン達が通り過ぎた後は、ざわざわと騒がしい。
漸く城に戻って来た第二王子、いや、今では王弟が、何やらアヤシイ人物を抱き上げて連れ歩いているのだから、動揺しないわけがない。
だが、後日、落ち人保護の報を聞けば、「あぁ、あの時の」と理解して貰える筈だ。
そして、ここまでの移動の間に、ニーナがこの国の人々に子供扱いされる理由も、推測できた。
何しろ、この国の人々は、背が高い。
ざっと見た感じ、男性の平均身長が百八十五センチ位、女性の平均身長も百七十五センチはあるだろう。
彼等の中でもライオネルは特に大きく見えるから、二メートルはあるのではないだろうか。
日本人女性としては平均よりも少し大きい百六十センチのニーナが、子供に見えるわけだ。
平均身長が高いと言う事は、すべての設えが大きいと言う事でもある。
扉の高さも高ければ、天井の高さも高い。
目測ではあるものの、階段の段差一つとっても、ニーナには高く感じられる。
ディーンのいた塔はワンフロアで階段がなかったから、気づかなかった。
「うん、彼女はニーナ。さっき、拾ったんだ」
「拾った…?迷子、と言う事でございますか」
「ううん、違うよ。王城の庭で、空から落ちて来たんだよ」
「お庭で…?」
アンリエッタは、ディーンの言葉を口の中で繰り返して、サッと顔色を変えた。
「まさか」
「ニーナは、落ち人だろう。僕が保護して、庇護を与える。この後、兄上にご報告の為に面会を申し出るから、ニーナの身なりを整えてあげてくれるかな。…ちょっと、驚いて泣き過ぎちゃったみたいで」
「そのようでございますね…」
しげしげとアンリエッタに顔を覗き込まれて、ニーナは気まずさに目を逸らす。
自分の顔が酷い事になっている事は、自覚がある。
「ニーナ様は、どこかお怪我をなさっているのですか?」
「いや?あぁ、ちょっと、肩に痣が出来ちゃったけど」
「痣?」
「ライオネルが、不審者だと思って、僕を守ろうとしてくれたんだ。でも、それ以外は特に問題ないと思う」
「では、殿下は何故、抱えてらっしゃるのですか」
「ニーナは、靴を履いてなかったんだよ。だから、」
「今は、履物を身に付けておいでです」
ディーンは、アンリエッタから顔を逸らして、
「…あー…可愛かったから…?」
「…殿下。幾ら子供であろうとも、女性を抱えたお姿を城内の者にお見せになるのは、示しがつきません。お控えくださいませ」
「あぁ…うん、判った判った。ともかく、ニーナを頼んだよ」
ディーンは、ニーナをそっと下ろすと、アンリエッタの下に行くよう、彼女の背を押した。
思わず、ニーナがディーンを振り返ると、安心させるように笑ってくれる。
「綺麗にして貰っておいで」
「さぁ、ニーナ様、こちらへ」
アンリエッタに促されて、ニーナは後宮の中へと入っていく。
大きな扉は、これから先のニーナの人生を変える一つの転換点に見えた。
「ニーナ様。ここから、わたくし共がお世話をさせて頂きます」
ディーンに直接預けられた娘と言う事で、女官長のアンリエッタ自ら、ニーナの世話を買って出た。
ガルダ女性の中では小柄なアンリエッタと比べても小さいから、まだまだ成長途上なのだろう。
何よりも、明らかに泣き腫らしたせいで、顔立ちがよく判らない。
ガルダでは、身分に関わらず女性は皆、スカートを身に付ける。
子供であれば膝下。一度目の成人で脹脛、二度目の成人を迎えたら踝丈だ。
他国ではここまで厳密ではないらしいが、服装を見れば年齢の推測が立つので、便利な慣習だとアンリエッタは思っている。
髪も長く伸ばすのが一般的で、手入れする侍女のいない庶民であっても背の中程までは伸ばしているものだし、貴族令嬢であれば、尻に届く長さがある事も普通だ。
一方のニーナは、男性が穿くようなズボンを身に着けている上に、髪も肩先にすら届かない。
抱き上げていたディーンに女性として紹介されたからそのように扱っているが、外見だけなら、少年にしか見えない。
「バーサ、こちらのお嬢様に合うサイズのドレスを見繕って来てちょうだい。後程、ヒースクリフ陛下とご面会の予定よ。キャシー、湯の準備を。お顔の腫れを何とかして差し上げましょう。あぁ、それと、念の為に治癒魔術師様に来て頂きましょう」
ディーンが肩に痣ができたと言っていたから、謁見用にドレスを着せるなら、治しておいた方がいいだろう。
てきぱきと指示を出すと、信頼できる女官達が、即座に行動を開始した。
ニーナは、恐らく、落ち人。
他国の落ち人の話は聞いた事があるが、確か、ガルダに現れたのは二百年以上昔の事だ。
落ち人は、異世界の知識を持つ存在。
見た目はこちらの世界の人間と全く変わらず、結婚もできるし、子供もできる。
その知識を目的に、婚姻を望む者が後を絶たなかったとの記録がある。
ニーナは、過去の記録の落ち人よりも随分と若い。
王族の庇護がなければ、よからぬ考えを持つ人物に拐かされないとも限らない。
その為、アンリエッタは侍女ではなく、極少数の女官のみでニーナを世話する事にしたのだ。
「アンリエッタ様、湯殿の準備が出来ました」
「有難う、キャシー」
女官達がパタパタと忙しく、けれど、優雅に立ち働いている間、ニーナは所在なさ気にソファに腰を下ろしていた。
座面が高く、爪先が床についていない。
だが、泣き腫らす程に大泣きしたにしては、意外な程、落ち着いているように見えた。
用意した茶菓子を摘まむ姿も、お茶を飲む姿も、ガルダの作法とは異なるものの粗野な所はなく、洗練されている。
異世界では、それなりの階級にいたのかもしれない。
「ニーナ様。どうぞ、お湯をお使いください」
名を呼ばれた事に気づいたのだろう。
ニーナが、顔を上げる。
身振り手振りを交えながら湯殿に誘導して、一体、何で作られているのか全く判らない衣服を脱ぐ手伝いをしようとすると、ニーナは慌てた様子で両手を振った。
その口から出る言葉は、ガルダ周辺国の日常会話を会得しているアンリエッタにも全く理解ができないもので、少なくともガルダ周辺出身ではない事だけは確かだ。
「いえ、お手伝いさせて頂けなければ、ジェラルディン殿下のお叱りを受けますので」
懇願すると、困惑したような顔で、だが、抵抗を止めてくれた。
その隙に、四苦八苦しながら、衣服を脱がせる。
このままで着脱できるのだろうか、と不安になった襟ぐりは、伸縮性があって、すぽん、と脱ぐ事ができた。
「…あら?」
ガルダの女性が身に着けるコルセットと似たような、しかし、もっと柔らかな素材でできた下着がニーナの胸元を覆っていて、ニーナの僅かな抵抗の後にそれを脱がせたアンリエッタは、思わず、小さく声を上げる。
無毛の脇の下や膝下を見る限り、第二次性徴すら迎えていないのでは、と思えたけれど、思っていたよりも、ニーナの発育がいい。
背丈こそ小柄だが、それ以外は、成熟した女性と言っていいだろう。
痩せぎすなわけではなく、薄い脂肪に覆われたくびれには引き締まった筋肉を感じる。
ガルダ女性の平均と比べても見劣りしない豊かな胸、ガルダ女性より控えめながらもしっかりとした臀部。
成長途中の少女の胸は青い果実のような固さがあるものだが、ニーナのそれは、ふにゃりと柔らかい。
少女の薄い臀部と比べて、丸みを帯びた尻。
先程まで着ていた珍妙な服の上からでは全く体のラインが見えなかったが、これは…。
「…もしかして…」
自分達は、大きな勘違いをしているのかもしれない。
一先ず、香油を垂らした湯殿に、ニーナを案内する。
バーサとキャシーに入浴の手伝いをさせ、顔に蒸しタオルを乗せてリラックスを促しながら、アンリエッタは、どうすればニーナの年齢を確認できるか考えていた。
「あら、お可愛らしい」
思わず、と言った様子で漏れたバーサの声にアンリエッタが顔を上げると、蒸しタオルのお陰か、随分と瞼の腫れの引いたニーナの顔が見えた。
やはり、ガルダ女性とは随分、面立ちが違う。
ミルクのような白さではなく、黄味を帯びた象牙色の肌。
黒目がちな濃茶の瞳に、たっぷりとした黒い睫毛は真っ直ぐだ。
幼く見えるのは、全体的に顔の彫りが浅く、小振りな鼻と小さな唇の為だ。
手入れする掌に肌が吸い付いてくるのは、肌理が細かい上に、十分潤っている為。
滑らかな指先は、労働階級ではなく、上流階級にいた事を示すのだろう。
「ニーナ様」
魂が抜けたようにされるがままになっていたニーナは、アンリエッタの声掛けで漸く、顔をこちらに向けた。
「不躾ながら、お年を伺ってもよろしいでしょうか?」
言葉が判らない事は、理解している。
アンリエッタは、手元に砂糖菓子を用意していた。
そして、ニーナの前に、並べてみせる。
「櫛が、三本、ございます」
言いながら、三本の櫛と砂糖菓子を三つ、横並びに並べる。
「本が、五冊、ございます」
同じように、五冊の本と砂糖菓子を五つ。
「バーサは、二十三歳です」
「あ、アンリエッタ様!」
バーサの抗議を無視して、彼女を指で指し示し、砂糖菓子をニーナに見えるように二十三個。
判りやすいように、十個のまとまりを二つと、三個とに分けた。
「キャシーは、二十八歳です」
「アンリエッタ様…」
額に手を当てて項垂れるキャシーを指し示し、同様に十個のまとまりを二つと、八個。
「わたくしは…砂糖菓子が足りなくなってしまいますので、置いておいて」
「アンリエッタ様、酷い!」
部下達の文句を聞き流し、続いて、ニーナに砂糖菓子を渡す。
「ニーナ様は、お幾つでしょうか?」
アンリエッタの意図に気づいたバーサ達が、ハッと息を飲んで口を噤む。
バーサが用意したドレスは、脹脛丈のもの。
ニーナの身長から考えれば踝丈になってしまうだろうし、あちこち、手直しが必要だろう。
ニーナは、固唾を飲んで見守る三人の女官達の前で、ゆっくりと砂糖菓子を並べ始めた。
一つ、二つ、三つ…十個のまとまりが、まず、一つ出来た。
ここまでは、予想通り。
続いて、一つ、二つ、三つ、とまた、十個のまとまりが一つ。
だが、ニーナの手は止まらない。
「…あら…?」
最終的に、十個のまとまりが、三つ。
「三十…?」
「アンリエッタ様、ニーナ様に、こちらの意図が伝わらなかったのでは…」
「もしくは、ニーナ様のお国では、お年の数え方がガルダと異なるのでは…」
戸惑うようなバーサ達の言葉に、アンリエッタも思わず、考え込む。
困ったような顔をこちらに向けていたニーナが、ちょいちょい、と、アンリエッタを手招きした。
「ニーナ様?」
手振りで、何かを書くような仕草を見せるので紙とペンを用意させると、ニーナは簡略化した絵を描いていく。
まずは、赤ん坊。
続いて、子供。
子供が成長して少女になり、大人、老人へとなっていく。
五人の女性の絵の中で、ニーナの指が指したのは、大人の女性。
続けて、自分の顔。
「あぁ…」
ディーンに抱き上げられて、困惑していた理由が判った。
ニーナの国とガルダ王国とで、一年の長さが異なるのかもしれないが、少なくともニーナ本人の意識として、彼女は成人した女性なのだ。
「承知致しました。キャシー、バーサ。ニーナ様がガルダの年齢に直しておいくつなのかはともあれ、ご本人は、成人として扱う事をお望みのようです。そのようにお召し物をご用意して、身支度を整えましょう」
「畏まりました」
一通りの身支度を整えてから、王宮勤めの治癒魔術師を部屋に招き入れる。
二度目の成人前ならばともかく、成人女性と主張しているニーナを男性魔術師に診せるのは忍びなく、普段は王太后の治癒を担当している女性魔術師を特別に呼んだのだ。
「こちらのお嬢様の治癒をお願いできますか?」
「主訴は?」
「実は、ガルダ語を解さないお方なのです。わたくしの確認した限りでは、左肩に痣、両足に擦過傷がございます」
治癒魔法は、症状によって消費する魔力が異なる。
その為、魔力の残存量を踏まえながら、患者の訴えに応じて、対症療法をするのが基本だ。
女性魔術師は頷くと、寝椅子に横になったニーナに手を翳した。
「肩の痣と、足の擦過傷は治しました。折角ですから、瞼の腫れも治しておきましょう」
傷を負っているわけではないけれど、見るからに痛々しくて、同じ女性として放置するのは忍びない。
そう言いながら、掌に魔力を集めてニーナの目に翳すと、暖かな光がぽわんと広がった。
瞼の腫れを治すだけにしては、多量の魔力が引き出されて訝しんだ魔術師は、光の収束と同時に驚いたように瞬きして周囲を見回すニーナを見て、気が付いた。
「あぁ…目がお悪かったのですか」
目を眇めるようにしていたのは、視力が悪いせいだったのか。
視力の低下が起きるのは、常に書類と首っ引きの文官に多い。
彼等は不便を感じたら直ぐに治癒魔法を依頼できる高給取りだから、見えない状態で放置している者がいるとは思っていなかった。
「まぁ、そうだったのですね。ニーナ様、ご回復何よりでございます」
治癒魔術師の言葉に、ニーナの国には治癒魔法がないのだろうか?と疑問を持ちながらも、アンリエッタは、謁見の為の準備を優先させたのだった。
涙やらその他、顔中から流れ出した体液で黒々とした染みの出来たグレーのスウェットを見て、ディーンがそう切り出したのは、三十分程、経ってからだった。
その間、ニーナの涙が枯れる事はなく。
ニーナは、人前で泣いた事がない。
部屋に一人でいる時ですら、涙は己の弱みを見せるようで、ぐっと飲み込んで来た。
もしかすると、それがハヤトにフラれた理由の一つなのかな、と、チラと、頭をよぎったけれど、今は、目の前の問題に対処しなくては。
具体的には、泣き過ぎて腫れ上がった瞼で、前がよく見えない、と言う所から。
随分と、みっともない顔をしている、と思う。
漫画の中では、涙は美しいものとして描かれがちだけれど、本当は鼻水も出るし、余りに号泣すると唾液も飲み下しにくくなるし、瞼は腫れ、白目は充血して、頬はカサカサに乾燥して、どう贔屓目に見ても美しいものではない。
少なくとも、目の前にいる顔面偏差値の高い男性陣に晒せる顔ではない。
「ごめんね、僕は治癒魔法の適性がないから、瞼を治してあげられない。ちょっと辛そうだけど、我慢してくれるかな」
何やら声を掛けて来たディーンは、躊躇なく手を差し出した。
思わず、彼の顔と差し出された手を、二往復位、確認してしまう。
首を傾げるとディーンは、
「あぁ」
と言った。
「靴を履いていないんだね。じゃあ、僕が抱えていこう」
「殿下?!」
「大丈夫、こう見えても鍛えてるから、女の子一人位、わけないよ」
「違います!子供の落ち人とは言え、殿下の大切な御身にそのような事をさせるわけには!」
「でも、ライオネルもウルヴスも、ニーナを怖がらせてるじゃないか。だったら、僕しかいないだろう?」
「失礼するよ」と、ディーンは一声掛けると、さっとニーナを抱きかかえた。
左腕でニーナの臀部を支え、抱きかかえる、と言う、所謂お子様抱きで。
『え、何?!』
「大丈夫、落とさないから安心して」
過去の恋人に、ふざけてお姫様抱っこをして貰った事はあるけれど、まさか、この抱き方は予想外だ。
いや、お姫様抱っこが良かった、と言うわけでは、断じてない。ないったら、ない。
思った以上に安定はしているけれど、よく見えない視界が怖くてディーンの肩に縋るように捉まると、くすくすと笑う声がする。
「可愛いね、ニーナ」
その言葉の意味は、翻訳機能を遮断したニーナには、判らないままだった。
「まぁ、ジェラルディン殿下。御自らおいでになるとは、どうなさったのですか。お呼び立て頂ければ、こちらから参りましたものを」
ディーンがまず向かったのは、王宮の奥向きを取り仕切る女官長の所だった。
父である先王は亡くなっているが、ヒースの母は健在だ。
ヒースは未婚の上、王位を巡る争いの関係で婚約者もいないので、即位後も王太后として尽力している。
現在、王族の女性は王太后だけだが、女官は本来、王宮の奥向き――王族に関わる女性の住まう宮、後宮に仕える立場だ。
ニーナは、国の枠組みとは異なる身分を持つ落ち人であり、かつ、女性である。
ディーンとヒースは事前に、ニーナの滞在場所として、後宮に部屋を用意する事を決めていた。
現在、婚約者がいない国王と王弟が後宮に女性を住まわせるとなれば、様々な勘繰りがある事は容易に想像できるが、ただの落ち人ではないニーナを守る為には、国内で最も厳重な警備の敷かれた場所が相応しい。
「顔を上げて、アンリエッタ」
ディーンの訪いを知らされてから深く頭を下げたままの女官長に、ディーンが穏やかに声を掛ける。
王族に生まれた男子は、一度目の成人まで後宮で育ち、その後、王宮内に部屋を賜る。
古株の女官であるアンリエッタは、ディーンにとって、顔馴染みの一人だ。
「…ジェラルディン殿下、これは、何事でございますか」
ディーンに促されて顔を上げた女官長――アンリエッタは、抱き上げられたまま、困惑した顔をしているニーナを見て、僅かに声を震わせた。
動揺がそれだけに留まっている辺り、冷静だな、とニーナは思わず、遠い目になる。
見ようによっては、ニーナはこの国で二番目に高貴な男性を、従えている。
お子様抱きのお陰で?迷子の保護に見えているようなのが幸いだが、迷子だろうが何だろうが、王族の手を煩わせているのは事実だ。
おまけに、ガルダ王国では馴染みのない珍妙な服を着て、足元は素足。
どうやら、素足、と言うのが恥ずかしい事らしくて、いつの間にやら、後から追い掛けて来た侍女につっかけるだけのスリッパのようなものを履かされていた。
であるにも関わらず、ディーンがニーナを下ろさないのは、ニーナの保護者は自分だ、と、王城内に宣伝する為なのだろう、と言う所までは、ニーナにも推測できる。
宣伝効果はばっちりで、ディーン達が通り過ぎた後は、ざわざわと騒がしい。
漸く城に戻って来た第二王子、いや、今では王弟が、何やらアヤシイ人物を抱き上げて連れ歩いているのだから、動揺しないわけがない。
だが、後日、落ち人保護の報を聞けば、「あぁ、あの時の」と理解して貰える筈だ。
そして、ここまでの移動の間に、ニーナがこの国の人々に子供扱いされる理由も、推測できた。
何しろ、この国の人々は、背が高い。
ざっと見た感じ、男性の平均身長が百八十五センチ位、女性の平均身長も百七十五センチはあるだろう。
彼等の中でもライオネルは特に大きく見えるから、二メートルはあるのではないだろうか。
日本人女性としては平均よりも少し大きい百六十センチのニーナが、子供に見えるわけだ。
平均身長が高いと言う事は、すべての設えが大きいと言う事でもある。
扉の高さも高ければ、天井の高さも高い。
目測ではあるものの、階段の段差一つとっても、ニーナには高く感じられる。
ディーンのいた塔はワンフロアで階段がなかったから、気づかなかった。
「うん、彼女はニーナ。さっき、拾ったんだ」
「拾った…?迷子、と言う事でございますか」
「ううん、違うよ。王城の庭で、空から落ちて来たんだよ」
「お庭で…?」
アンリエッタは、ディーンの言葉を口の中で繰り返して、サッと顔色を変えた。
「まさか」
「ニーナは、落ち人だろう。僕が保護して、庇護を与える。この後、兄上にご報告の為に面会を申し出るから、ニーナの身なりを整えてあげてくれるかな。…ちょっと、驚いて泣き過ぎちゃったみたいで」
「そのようでございますね…」
しげしげとアンリエッタに顔を覗き込まれて、ニーナは気まずさに目を逸らす。
自分の顔が酷い事になっている事は、自覚がある。
「ニーナ様は、どこかお怪我をなさっているのですか?」
「いや?あぁ、ちょっと、肩に痣が出来ちゃったけど」
「痣?」
「ライオネルが、不審者だと思って、僕を守ろうとしてくれたんだ。でも、それ以外は特に問題ないと思う」
「では、殿下は何故、抱えてらっしゃるのですか」
「ニーナは、靴を履いてなかったんだよ。だから、」
「今は、履物を身に付けておいでです」
ディーンは、アンリエッタから顔を逸らして、
「…あー…可愛かったから…?」
「…殿下。幾ら子供であろうとも、女性を抱えたお姿を城内の者にお見せになるのは、示しがつきません。お控えくださいませ」
「あぁ…うん、判った判った。ともかく、ニーナを頼んだよ」
ディーンは、ニーナをそっと下ろすと、アンリエッタの下に行くよう、彼女の背を押した。
思わず、ニーナがディーンを振り返ると、安心させるように笑ってくれる。
「綺麗にして貰っておいで」
「さぁ、ニーナ様、こちらへ」
アンリエッタに促されて、ニーナは後宮の中へと入っていく。
大きな扉は、これから先のニーナの人生を変える一つの転換点に見えた。
「ニーナ様。ここから、わたくし共がお世話をさせて頂きます」
ディーンに直接預けられた娘と言う事で、女官長のアンリエッタ自ら、ニーナの世話を買って出た。
ガルダ女性の中では小柄なアンリエッタと比べても小さいから、まだまだ成長途上なのだろう。
何よりも、明らかに泣き腫らしたせいで、顔立ちがよく判らない。
ガルダでは、身分に関わらず女性は皆、スカートを身に付ける。
子供であれば膝下。一度目の成人で脹脛、二度目の成人を迎えたら踝丈だ。
他国ではここまで厳密ではないらしいが、服装を見れば年齢の推測が立つので、便利な慣習だとアンリエッタは思っている。
髪も長く伸ばすのが一般的で、手入れする侍女のいない庶民であっても背の中程までは伸ばしているものだし、貴族令嬢であれば、尻に届く長さがある事も普通だ。
一方のニーナは、男性が穿くようなズボンを身に着けている上に、髪も肩先にすら届かない。
抱き上げていたディーンに女性として紹介されたからそのように扱っているが、外見だけなら、少年にしか見えない。
「バーサ、こちらのお嬢様に合うサイズのドレスを見繕って来てちょうだい。後程、ヒースクリフ陛下とご面会の予定よ。キャシー、湯の準備を。お顔の腫れを何とかして差し上げましょう。あぁ、それと、念の為に治癒魔術師様に来て頂きましょう」
ディーンが肩に痣ができたと言っていたから、謁見用にドレスを着せるなら、治しておいた方がいいだろう。
てきぱきと指示を出すと、信頼できる女官達が、即座に行動を開始した。
ニーナは、恐らく、落ち人。
他国の落ち人の話は聞いた事があるが、確か、ガルダに現れたのは二百年以上昔の事だ。
落ち人は、異世界の知識を持つ存在。
見た目はこちらの世界の人間と全く変わらず、結婚もできるし、子供もできる。
その知識を目的に、婚姻を望む者が後を絶たなかったとの記録がある。
ニーナは、過去の記録の落ち人よりも随分と若い。
王族の庇護がなければ、よからぬ考えを持つ人物に拐かされないとも限らない。
その為、アンリエッタは侍女ではなく、極少数の女官のみでニーナを世話する事にしたのだ。
「アンリエッタ様、湯殿の準備が出来ました」
「有難う、キャシー」
女官達がパタパタと忙しく、けれど、優雅に立ち働いている間、ニーナは所在なさ気にソファに腰を下ろしていた。
座面が高く、爪先が床についていない。
だが、泣き腫らす程に大泣きしたにしては、意外な程、落ち着いているように見えた。
用意した茶菓子を摘まむ姿も、お茶を飲む姿も、ガルダの作法とは異なるものの粗野な所はなく、洗練されている。
異世界では、それなりの階級にいたのかもしれない。
「ニーナ様。どうぞ、お湯をお使いください」
名を呼ばれた事に気づいたのだろう。
ニーナが、顔を上げる。
身振り手振りを交えながら湯殿に誘導して、一体、何で作られているのか全く判らない衣服を脱ぐ手伝いをしようとすると、ニーナは慌てた様子で両手を振った。
その口から出る言葉は、ガルダ周辺国の日常会話を会得しているアンリエッタにも全く理解ができないもので、少なくともガルダ周辺出身ではない事だけは確かだ。
「いえ、お手伝いさせて頂けなければ、ジェラルディン殿下のお叱りを受けますので」
懇願すると、困惑したような顔で、だが、抵抗を止めてくれた。
その隙に、四苦八苦しながら、衣服を脱がせる。
このままで着脱できるのだろうか、と不安になった襟ぐりは、伸縮性があって、すぽん、と脱ぐ事ができた。
「…あら?」
ガルダの女性が身に着けるコルセットと似たような、しかし、もっと柔らかな素材でできた下着がニーナの胸元を覆っていて、ニーナの僅かな抵抗の後にそれを脱がせたアンリエッタは、思わず、小さく声を上げる。
無毛の脇の下や膝下を見る限り、第二次性徴すら迎えていないのでは、と思えたけれど、思っていたよりも、ニーナの発育がいい。
背丈こそ小柄だが、それ以外は、成熟した女性と言っていいだろう。
痩せぎすなわけではなく、薄い脂肪に覆われたくびれには引き締まった筋肉を感じる。
ガルダ女性の平均と比べても見劣りしない豊かな胸、ガルダ女性より控えめながらもしっかりとした臀部。
成長途中の少女の胸は青い果実のような固さがあるものだが、ニーナのそれは、ふにゃりと柔らかい。
少女の薄い臀部と比べて、丸みを帯びた尻。
先程まで着ていた珍妙な服の上からでは全く体のラインが見えなかったが、これは…。
「…もしかして…」
自分達は、大きな勘違いをしているのかもしれない。
一先ず、香油を垂らした湯殿に、ニーナを案内する。
バーサとキャシーに入浴の手伝いをさせ、顔に蒸しタオルを乗せてリラックスを促しながら、アンリエッタは、どうすればニーナの年齢を確認できるか考えていた。
「あら、お可愛らしい」
思わず、と言った様子で漏れたバーサの声にアンリエッタが顔を上げると、蒸しタオルのお陰か、随分と瞼の腫れの引いたニーナの顔が見えた。
やはり、ガルダ女性とは随分、面立ちが違う。
ミルクのような白さではなく、黄味を帯びた象牙色の肌。
黒目がちな濃茶の瞳に、たっぷりとした黒い睫毛は真っ直ぐだ。
幼く見えるのは、全体的に顔の彫りが浅く、小振りな鼻と小さな唇の為だ。
手入れする掌に肌が吸い付いてくるのは、肌理が細かい上に、十分潤っている為。
滑らかな指先は、労働階級ではなく、上流階級にいた事を示すのだろう。
「ニーナ様」
魂が抜けたようにされるがままになっていたニーナは、アンリエッタの声掛けで漸く、顔をこちらに向けた。
「不躾ながら、お年を伺ってもよろしいでしょうか?」
言葉が判らない事は、理解している。
アンリエッタは、手元に砂糖菓子を用意していた。
そして、ニーナの前に、並べてみせる。
「櫛が、三本、ございます」
言いながら、三本の櫛と砂糖菓子を三つ、横並びに並べる。
「本が、五冊、ございます」
同じように、五冊の本と砂糖菓子を五つ。
「バーサは、二十三歳です」
「あ、アンリエッタ様!」
バーサの抗議を無視して、彼女を指で指し示し、砂糖菓子をニーナに見えるように二十三個。
判りやすいように、十個のまとまりを二つと、三個とに分けた。
「キャシーは、二十八歳です」
「アンリエッタ様…」
額に手を当てて項垂れるキャシーを指し示し、同様に十個のまとまりを二つと、八個。
「わたくしは…砂糖菓子が足りなくなってしまいますので、置いておいて」
「アンリエッタ様、酷い!」
部下達の文句を聞き流し、続いて、ニーナに砂糖菓子を渡す。
「ニーナ様は、お幾つでしょうか?」
アンリエッタの意図に気づいたバーサ達が、ハッと息を飲んで口を噤む。
バーサが用意したドレスは、脹脛丈のもの。
ニーナの身長から考えれば踝丈になってしまうだろうし、あちこち、手直しが必要だろう。
ニーナは、固唾を飲んで見守る三人の女官達の前で、ゆっくりと砂糖菓子を並べ始めた。
一つ、二つ、三つ…十個のまとまりが、まず、一つ出来た。
ここまでは、予想通り。
続いて、一つ、二つ、三つ、とまた、十個のまとまりが一つ。
だが、ニーナの手は止まらない。
「…あら…?」
最終的に、十個のまとまりが、三つ。
「三十…?」
「アンリエッタ様、ニーナ様に、こちらの意図が伝わらなかったのでは…」
「もしくは、ニーナ様のお国では、お年の数え方がガルダと異なるのでは…」
戸惑うようなバーサ達の言葉に、アンリエッタも思わず、考え込む。
困ったような顔をこちらに向けていたニーナが、ちょいちょい、と、アンリエッタを手招きした。
「ニーナ様?」
手振りで、何かを書くような仕草を見せるので紙とペンを用意させると、ニーナは簡略化した絵を描いていく。
まずは、赤ん坊。
続いて、子供。
子供が成長して少女になり、大人、老人へとなっていく。
五人の女性の絵の中で、ニーナの指が指したのは、大人の女性。
続けて、自分の顔。
「あぁ…」
ディーンに抱き上げられて、困惑していた理由が判った。
ニーナの国とガルダ王国とで、一年の長さが異なるのかもしれないが、少なくともニーナ本人の意識として、彼女は成人した女性なのだ。
「承知致しました。キャシー、バーサ。ニーナ様がガルダの年齢に直しておいくつなのかはともあれ、ご本人は、成人として扱う事をお望みのようです。そのようにお召し物をご用意して、身支度を整えましょう」
「畏まりました」
一通りの身支度を整えてから、王宮勤めの治癒魔術師を部屋に招き入れる。
二度目の成人前ならばともかく、成人女性と主張しているニーナを男性魔術師に診せるのは忍びなく、普段は王太后の治癒を担当している女性魔術師を特別に呼んだのだ。
「こちらのお嬢様の治癒をお願いできますか?」
「主訴は?」
「実は、ガルダ語を解さないお方なのです。わたくしの確認した限りでは、左肩に痣、両足に擦過傷がございます」
治癒魔法は、症状によって消費する魔力が異なる。
その為、魔力の残存量を踏まえながら、患者の訴えに応じて、対症療法をするのが基本だ。
女性魔術師は頷くと、寝椅子に横になったニーナに手を翳した。
「肩の痣と、足の擦過傷は治しました。折角ですから、瞼の腫れも治しておきましょう」
傷を負っているわけではないけれど、見るからに痛々しくて、同じ女性として放置するのは忍びない。
そう言いながら、掌に魔力を集めてニーナの目に翳すと、暖かな光がぽわんと広がった。
瞼の腫れを治すだけにしては、多量の魔力が引き出されて訝しんだ魔術師は、光の収束と同時に驚いたように瞬きして周囲を見回すニーナを見て、気が付いた。
「あぁ…目がお悪かったのですか」
目を眇めるようにしていたのは、視力が悪いせいだったのか。
視力の低下が起きるのは、常に書類と首っ引きの文官に多い。
彼等は不便を感じたら直ぐに治癒魔法を依頼できる高給取りだから、見えない状態で放置している者がいるとは思っていなかった。
「まぁ、そうだったのですね。ニーナ様、ご回復何よりでございます」
治癒魔術師の言葉に、ニーナの国には治癒魔法がないのだろうか?と疑問を持ちながらも、アンリエッタは、謁見の為の準備を優先させたのだった。
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