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 …………そんな時だった――

「おい、お前たち!」

「急いで逃げろぉぉぉぉぉっ!」

 ――迷宮の奥の方から、そんな声が響き渡る。

 声のした方向を見ると、青年が二人、それに少女がこちらに向かって駆けてくるではないか。

「む? あの肌の色……〝ハイオーク〟か?」

 青年二人と少女の後方を見て、クロノが声を漏らす。

 モンスターの中には〝オーク〟と呼ばれる二メートルほどの身長を持つ、豚人型のDランクモンスターが存在する。

 そして〝ハイオーク〟とは、オーよりも一回り体が大きく、黒い肌を持った上位種のことであり、ランクはCランクとなっている。

 今まさに、三人組の冒険者を追い回しているモンスターは、それと全く同じ特徴を持っているわけである。

 受付嬢アーナルドに、ある程度のモンスターの棲息階層を聞いた限りでは、通常Cランク以上のモンスターが現れるのは六層目以降という話だった。

 だが、迷宮がモンスターを生み出す箇所は決して一定ではない。
 ごく稀に、普段とは違う場所に高ランクのモンスターを生み出すという事例も過去に報告されている。

 だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
 ハイオークの足は意外に速く、ドンドン三人の冒険者との距離を縮めてくる。

「きゃっ!?」

 そんな中、三人のうちの一人……青年二人より少しだけ遅れて走っていた少女が、悲鳴とともに転んでしまう。

「ぐ……ッ」

「すまない……〝シェリル〟っ!」

 青年二人は一瞬だけ少女に気を取られる……も、そのままクロノたちさえも置き去りに、走り去ってしまう。

『ブヒャァァァァァァァァ――ッ!』

 雄叫びを上げるハイオーク。
 転んでしまった少女に向かって拳を振り上げた。

「やらせはせんッ!」

 少女を置き去りにした青年二人に唖然とするも、クロノはすぐさま思考を切り替えて、その場を勢いよく飛び出した。

 一回の踏み込みでトップスピードへと至り、ハイオークへと接近する。

 そして途中で大きく跳躍すると、今まさに少女に拳を振り下ろそうとしているハイオークの横っ腹に、飛び蹴りをお見舞いする。

『ブギャァァァァァァ――ッッッッ!?』

 何が起きたのか理解できなかったのだろう。
 困惑、そして恐怖の入り混じった悲鳴を上げながら、ハイオークは奥へと大きく弾き飛ばされた。

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