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第5章 魔王の目
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戦意を喪失した男たちの様子に、ヴィルジールはマルティーヌがベレニスの生まれ変わりであるという確信を得たようだ。
雷に打たれたかのように体を震わせた。
「……本当……に?」
あれだけ強い言葉と態度でマルティーヌを追い詰め、狙い通りの結論にたどり着いたはずなのに、自分で暴いた真実が、信じきれない様子だ。
唯一自分に向けられたままの刃に向かって、ふらついた足取りで近づいてくる。
「本当に、そう……なのか」
「来るな!」
異常にも見える彼の様子に、マルティーヌは警戒を強め、剣を握り直す。
「本当に……貴女がベレニス? そう、なんだな?」
喘ぐような掠れ声と、懇願するような眼差しがなぜか胸に痛い。
救いを求めるように自分に向けて伸ばされた指先が、小刻みに震えている。
「お願いだ、答えてくれ」
「……だったら、どうなのよ」
はっきりそうだとは言えず、遠回しに肯定すると、彼はがくりと膝をついた。
「あぁ……まさか本当に会えるなんて、奇跡だ」
マルティーヌを見上げた彼の頬に、一筋の雫が伝っていた。
「な……んで?」
あまりにも予想外な彼の変化に、マルティーヌは思わず後ずさる。
さっきまでの傲慢で冷徹な王族の彼は、どこへ行ってしまったのか。
「ずっと……ずっと会いたかった。魔王に、死を与えてくれた勇者に……」
マルティーヌはその言葉に息を飲んだ。
構えていた長剣が手を離れ、石のタイルに落ちて音を立てた。
「ああ……そうだった……のね」
彼の目的は復讐でも、現世での権力の座でもなかったのだ。
四百年前、消えゆく最期の瞬間に、魔王は勇者に微かな笑みを向けた。
邪悪な存在であったはずの彼の、満たされたような穏やかな表情が、マルティーヌとして生まれ変わった後もずっと脳裏に残っていた。
次々と魔獣を生み出し、人間を苦しめ続けた魔王が、なぜ敵である勇者にあんな顔を見せたのか。
その微笑みの意味を、今、知った。
ヴィルジールは紛れもなく、魔王の生まれ変わりだった。
雷に打たれたかのように体を震わせた。
「……本当……に?」
あれだけ強い言葉と態度でマルティーヌを追い詰め、狙い通りの結論にたどり着いたはずなのに、自分で暴いた真実が、信じきれない様子だ。
唯一自分に向けられたままの刃に向かって、ふらついた足取りで近づいてくる。
「本当に、そう……なのか」
「来るな!」
異常にも見える彼の様子に、マルティーヌは警戒を強め、剣を握り直す。
「本当に……貴女がベレニス? そう、なんだな?」
喘ぐような掠れ声と、懇願するような眼差しがなぜか胸に痛い。
救いを求めるように自分に向けて伸ばされた指先が、小刻みに震えている。
「お願いだ、答えてくれ」
「……だったら、どうなのよ」
はっきりそうだとは言えず、遠回しに肯定すると、彼はがくりと膝をついた。
「あぁ……まさか本当に会えるなんて、奇跡だ」
マルティーヌを見上げた彼の頬に、一筋の雫が伝っていた。
「な……んで?」
あまりにも予想外な彼の変化に、マルティーヌは思わず後ずさる。
さっきまでの傲慢で冷徹な王族の彼は、どこへ行ってしまったのか。
「ずっと……ずっと会いたかった。魔王に、死を与えてくれた勇者に……」
マルティーヌはその言葉に息を飲んだ。
構えていた長剣が手を離れ、石のタイルに落ちて音を立てた。
「ああ……そうだった……のね」
彼の目的は復讐でも、現世での権力の座でもなかったのだ。
四百年前、消えゆく最期の瞬間に、魔王は勇者に微かな笑みを向けた。
邪悪な存在であったはずの彼の、満たされたような穏やかな表情が、マルティーヌとして生まれ変わった後もずっと脳裏に残っていた。
次々と魔獣を生み出し、人間を苦しめ続けた魔王が、なぜ敵である勇者にあんな顔を見せたのか。
その微笑みの意味を、今、知った。
ヴィルジールは紛れもなく、魔王の生まれ変わりだった。
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