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黒い瞳の晶
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📘 三題噺のお題(第16弾)
燃え残ったメモ
海辺の廃工場
笑わない写真
―――――――――――――――――――――――――
【本文】
「やっぱり止めようぜ」
僕、塩原海斗は、前を歩く加瀬大輝に言った。
大輝は小6で身長が175cmもある。150cmちょっとの僕からしたら、見上げるようだ。
「なんだよ、海斗? ビビってるのか?」
大輝が僕を挑発するように言う。
大輝に聞こえるように、大きなため息をついた。
「それでいいよ。先生たちの言うとおり、ここには入らないほうがいい。変な大人が出入りしてるっていうだろ?」
「オレがいるんだ。大丈夫だって」
僕と大輝が通う空手道場で、大人たちが大輝を褒めるから、大輝は天狗になっている。大人にも勝てると思い込んでいる。
僕も大輝のセンスは認めている。だけど、大輝と大人を比べると、明らかに大輝は「細い」と思う。大人が本気を出したら、大輝が勝てるとは思えなかった。
大輝の馬鹿をどう説得するかで悩む。
もう1年半くらい前だろうか? 僕たちの住む海辺の町にある工場が、火事で焼けた。詳しくは知らないが、何かの化学薬品を作っていたそうだ。火事で犠牲者も出たと聞いた。火事の後、放置されている。
大輝が中に入ってみようと言ったが、乗り気じゃなかった。
工場の中に入った。
昼間だからか、人の気配はしない。ほっと胸をなでおろす。
大輝はあちこちの物を、ガチャガチャいじっている。
「もういいだろ、帰ろうぜ」
「何言ってんだよ、海斗。冒険はこれからだ」
勘弁して欲しかった。
「お! なんだこりゃ?」
そう言って、大輝は何かを拾い出した。
「海斗、写真見つけた」
振り返って僕に見せる。
僕も好奇心を覚え、写真を見た。
「集合写真だな。なんか……無表情で怖いな」
感想を述べると、大輝も頷く。
大輝は集合写真を戦利品だと言って、ポケットに入れた。
「もっと奥に行ってみようぜ」
大輝の提案には反対したが、結局押し切られた。
「おっ! 何か落ちてる。メモだな。焦げてるってことは、火事で燃え残ったのか」
大輝の言葉を聞いて、深く考えずに、メモを覗き込んだ。
『三橋に殺された』
メモにはそう書かれていた。
大輝と顔を見合わせた。
「なんだコレ? 気味悪りぃ」
大輝が薄気味悪そうな表情でそう言った。
次の瞬間、地面に波紋が生じた。波紋は音も無く大輝に集まる。大輝の身体が黒い砂のようになり、ザーッと崩れ始めた。大輝は悲鳴を上げようとしたが、それよりも速く大輝の身体は崩れ落ちた。後には、何事も無かったような静寂と、元の地面があるだけだった。
驚いているだけで何もできなかった。目を見開いて、必死に呼吸だけしていた。我に返って、荒い呼吸のまま、工場の外へと走った。
警察へ行こうかと思ったが、「大輝が砂になって崩れた」というのを信じてもらえるとは思えなかった。
悩んだ末に、僕はスマホを取り出すと、晶に電話した。
晶は、「すぐ行く」と言った。
晶は僕と大輝のクラスメートだ。
男だけど、女の子のかっこうをしている。
最初は僕もからかいに参加していたけど、晶の堂々とした態度や、雰囲気を見ていて止めた。大輝は今でも晶に絡んでいる。
晶には、不思議な力がある。僕はそれを知っていた。
思いのほか早く晶は来た。
黒髪ロングのストレート。黒いワンピースに赤いリボン、茶色のローファーという姿だった。見た目だけなら、学校で一番可愛い女の子だ。
僕を見るなり、晶はため息をついた。
「加瀬くんはともかく、塩原くんまでここに入るなんてね。あきれたわ」
「僕だって、止めようとしたんだって」
言い訳をしようとしたが、晶は聞いていなかった。
「何でもいいから行きましょ。案内して」
そう言って晶は、「黒い」と感じさせる目で僕を見る。
晶を大輝が砂になって消えた場所に案内した。
晶は地面を少し調べた後、少し離れた場所に落ちていた『三橋に殺された』というメモを拾った。
晶は地面と周囲をキョロキョロ見ている。
「塩原くん、あそこのスコップ取ってきて」
わけがわからないけど、晶の指示に従った。
「ここ、掘るわよ」
そう言うと、晶は服が汚れるのも気にせずに地面を掘り出した。
ぼけーっと見ていたら、晶ににらまれ、作業に加わった。
掘っている場所は、大輝が消えた場所のすぐ近くだ。
しばらく掘ったら、何か出てきた。
「慎重に」
晶に言われ、頷いた。
出てきたものを見て、顔をしかめる。人骨だった。どうやら、大人一人分まるまるあるようだ。
晶は、その骨を丁寧に取り出して並べた。
そしてひざまずくと、頭蓋骨に向かって何かを話し出した。だけど、なぜか僕には晶の声が聞こえない。
晶はジェスチャーも交え、一生懸命頭蓋骨に話しかけている。晶の表情を見て、晶は頭蓋骨と交渉していると思った。
しばらくして、晶がほっとしたようにため息をつくと、微笑んだ。それから人骨の手を握った。握手をしたのだと思った。
次の瞬間、地面に波紋が生じた。波紋が音も無く集まると、地面から光る砂が盛り上がってきた。砂が流れる音とともに、光る砂は大輝の形になり、完全に大輝になった。大輝は、消える直前に上げようとしていた悲鳴を上げた。
大輝は滝のような汗をかき、ゼーゼー言っている。
晶は立ち上がると、
「とりあえず、ここから出るわよ」
と言って笑った。
僕たちは工場の外へ出た。
「おい、海斗。この写真、見てみろよ」
そう言って、大輝は拾った集合写真を見せた。
気持ち悪いくらい無表情だった写真は、ごく普通の集合写真に変わっていた。ただ一人、異様に笑っている人がいる。僕はこの人が「三橋」じゃないかと思った。
「ねえ、晶。ここで何があったのかな?」
なんとなく晶に尋ねた。
「あら、塩原くん。私にそんなこと、わかるわけないじゃない」
振り向いてそう言った晶の目は、黒過ぎて不気味だった。
「私、帰るから、警察にはあんたたちが連絡して。私の名前、出しちゃダメよ」
そう言って、晶は帰って行った。
大輝と何とか作り話を考え、警察に通報した。
警官にも、先生にも、親にも、工場に入ったことをこっぴどく怒られた。
次の日学校に行くと、晶は女子とおしゃべりしていた。
僕と大輝のことをチラリと見た晶の目は、やはり「黒い」と感じた。
―――――――――――――――――――――――――
【感想】
お題を見て、怪談の方向しか浮かびませんでした。
あとはそれをどうまとめるかで、少年たちを主人公にしました。
晶は怪異を収束させるための存在。特徴を持たせたくて、男の娘にしました。
謎が残ったまま終わるのは良いけど、謎ばかりが残ってしまった気もします。
燃え残ったメモ
海辺の廃工場
笑わない写真
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【本文】
「やっぱり止めようぜ」
僕、塩原海斗は、前を歩く加瀬大輝に言った。
大輝は小6で身長が175cmもある。150cmちょっとの僕からしたら、見上げるようだ。
「なんだよ、海斗? ビビってるのか?」
大輝が僕を挑発するように言う。
大輝に聞こえるように、大きなため息をついた。
「それでいいよ。先生たちの言うとおり、ここには入らないほうがいい。変な大人が出入りしてるっていうだろ?」
「オレがいるんだ。大丈夫だって」
僕と大輝が通う空手道場で、大人たちが大輝を褒めるから、大輝は天狗になっている。大人にも勝てると思い込んでいる。
僕も大輝のセンスは認めている。だけど、大輝と大人を比べると、明らかに大輝は「細い」と思う。大人が本気を出したら、大輝が勝てるとは思えなかった。
大輝の馬鹿をどう説得するかで悩む。
もう1年半くらい前だろうか? 僕たちの住む海辺の町にある工場が、火事で焼けた。詳しくは知らないが、何かの化学薬品を作っていたそうだ。火事で犠牲者も出たと聞いた。火事の後、放置されている。
大輝が中に入ってみようと言ったが、乗り気じゃなかった。
工場の中に入った。
昼間だからか、人の気配はしない。ほっと胸をなでおろす。
大輝はあちこちの物を、ガチャガチャいじっている。
「もういいだろ、帰ろうぜ」
「何言ってんだよ、海斗。冒険はこれからだ」
勘弁して欲しかった。
「お! なんだこりゃ?」
そう言って、大輝は何かを拾い出した。
「海斗、写真見つけた」
振り返って僕に見せる。
僕も好奇心を覚え、写真を見た。
「集合写真だな。なんか……無表情で怖いな」
感想を述べると、大輝も頷く。
大輝は集合写真を戦利品だと言って、ポケットに入れた。
「もっと奥に行ってみようぜ」
大輝の提案には反対したが、結局押し切られた。
「おっ! 何か落ちてる。メモだな。焦げてるってことは、火事で燃え残ったのか」
大輝の言葉を聞いて、深く考えずに、メモを覗き込んだ。
『三橋に殺された』
メモにはそう書かれていた。
大輝と顔を見合わせた。
「なんだコレ? 気味悪りぃ」
大輝が薄気味悪そうな表情でそう言った。
次の瞬間、地面に波紋が生じた。波紋は音も無く大輝に集まる。大輝の身体が黒い砂のようになり、ザーッと崩れ始めた。大輝は悲鳴を上げようとしたが、それよりも速く大輝の身体は崩れ落ちた。後には、何事も無かったような静寂と、元の地面があるだけだった。
驚いているだけで何もできなかった。目を見開いて、必死に呼吸だけしていた。我に返って、荒い呼吸のまま、工場の外へと走った。
警察へ行こうかと思ったが、「大輝が砂になって崩れた」というのを信じてもらえるとは思えなかった。
悩んだ末に、僕はスマホを取り出すと、晶に電話した。
晶は、「すぐ行く」と言った。
晶は僕と大輝のクラスメートだ。
男だけど、女の子のかっこうをしている。
最初は僕もからかいに参加していたけど、晶の堂々とした態度や、雰囲気を見ていて止めた。大輝は今でも晶に絡んでいる。
晶には、不思議な力がある。僕はそれを知っていた。
思いのほか早く晶は来た。
黒髪ロングのストレート。黒いワンピースに赤いリボン、茶色のローファーという姿だった。見た目だけなら、学校で一番可愛い女の子だ。
僕を見るなり、晶はため息をついた。
「加瀬くんはともかく、塩原くんまでここに入るなんてね。あきれたわ」
「僕だって、止めようとしたんだって」
言い訳をしようとしたが、晶は聞いていなかった。
「何でもいいから行きましょ。案内して」
そう言って晶は、「黒い」と感じさせる目で僕を見る。
晶を大輝が砂になって消えた場所に案内した。
晶は地面を少し調べた後、少し離れた場所に落ちていた『三橋に殺された』というメモを拾った。
晶は地面と周囲をキョロキョロ見ている。
「塩原くん、あそこのスコップ取ってきて」
わけがわからないけど、晶の指示に従った。
「ここ、掘るわよ」
そう言うと、晶は服が汚れるのも気にせずに地面を掘り出した。
ぼけーっと見ていたら、晶ににらまれ、作業に加わった。
掘っている場所は、大輝が消えた場所のすぐ近くだ。
しばらく掘ったら、何か出てきた。
「慎重に」
晶に言われ、頷いた。
出てきたものを見て、顔をしかめる。人骨だった。どうやら、大人一人分まるまるあるようだ。
晶は、その骨を丁寧に取り出して並べた。
そしてひざまずくと、頭蓋骨に向かって何かを話し出した。だけど、なぜか僕には晶の声が聞こえない。
晶はジェスチャーも交え、一生懸命頭蓋骨に話しかけている。晶の表情を見て、晶は頭蓋骨と交渉していると思った。
しばらくして、晶がほっとしたようにため息をつくと、微笑んだ。それから人骨の手を握った。握手をしたのだと思った。
次の瞬間、地面に波紋が生じた。波紋が音も無く集まると、地面から光る砂が盛り上がってきた。砂が流れる音とともに、光る砂は大輝の形になり、完全に大輝になった。大輝は、消える直前に上げようとしていた悲鳴を上げた。
大輝は滝のような汗をかき、ゼーゼー言っている。
晶は立ち上がると、
「とりあえず、ここから出るわよ」
と言って笑った。
僕たちは工場の外へ出た。
「おい、海斗。この写真、見てみろよ」
そう言って、大輝は拾った集合写真を見せた。
気持ち悪いくらい無表情だった写真は、ごく普通の集合写真に変わっていた。ただ一人、異様に笑っている人がいる。僕はこの人が「三橋」じゃないかと思った。
「ねえ、晶。ここで何があったのかな?」
なんとなく晶に尋ねた。
「あら、塩原くん。私にそんなこと、わかるわけないじゃない」
振り向いてそう言った晶の目は、黒過ぎて不気味だった。
「私、帰るから、警察にはあんたたちが連絡して。私の名前、出しちゃダメよ」
そう言って、晶は帰って行った。
大輝と何とか作り話を考え、警察に通報した。
警官にも、先生にも、親にも、工場に入ったことをこっぴどく怒られた。
次の日学校に行くと、晶は女子とおしゃべりしていた。
僕と大輝のことをチラリと見た晶の目は、やはり「黒い」と感じた。
―――――――――――――――――――――――――
【感想】
お題を見て、怪談の方向しか浮かびませんでした。
あとはそれをどうまとめるかで、少年たちを主人公にしました。
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