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転生は七回まで
しおりを挟む「あーあ、また死刑。運が良ければ終身刑かあ。毎回、どこかで間違えるのよねえ。でも、また転生するわよね。今度はどの恋愛ゲームかしら。楽しみだわ」
「転生……? あなた何を言ってるの?」
そう言った私を嘲笑うように語る。
檻の中の彼女は今までも恋愛ゲームの世界に転生してきたそうだ。
「転生……つまり生まれ変わったってこと?」
「ええ、そうよ。なあーんだ、あなた転生者じゃなくて賢いだけか」
「あなた、今まで何回転生したの?」
「え? そうねえ、日本で死んでから……これで六回目かしら?」
「あなた、その日本が初めての転生だと思ってるの?」
私の言葉に「え?」と驚いた表情を見せる。
「知ってるの? 転生は七回までって」
「…………え? じゃあ、私は」
「転生はこれで最後よ」
「いや、ウソでしょ。だってあなた恋愛ゲームの転生者じゃないじゃない!」
「ええ、でも図書館にそんな本があるわ。『記憶を持って生まれ変わった人を転生者というなら、記憶を持たずに生まれた人たちはモブもしくはNPCと呼ばれる者だろう。そして転生者は七回しか転生できない』。神と聖者との会話を記した本よ。それが事実なら、あなたの転生は七回目、ここが最後だったのよ」
「あ……あ、ああああああああああああああああああああ!!!!」
頭を抱えてもすでに収監されて判決待ち。
人生をやり直すことは叶わない。
「さようなら。最後の転生ヒロイン役を無駄にした転生者さん」
そう言い残して檻から離れる。
慌てて檻にしがみついて必死に私へ手を伸ばす。
「お願い! 助けて!」
「無理よ。だってあなた今までも死刑になってきたのでしょう? そんな改心もしていない人を出すわけないわ」
「心を入れ替える! だから……‼︎」
必死に叫ぶ彼女の手が届かない場所まで近寄り、笑いを含んだ声で囁いた。
「七回転生しても反省していないのに出すわけないじゃない」
呆然と見上げる彼女にもう一度教える。
「七回も自分の行為を反省しない害悪を外に出すより、片付けた方がいいのよ。それにこの世界は大陸ごとに恋愛ゲームの舞台が揃っているの。今まであなたはヒロイン役だったわ。次から悪役令嬢役だけど、ヒロイン役だった記憶はないわ。次に持ち越せるのはゲームの内容だけよ。でもそれはヒロイン一回目も同じだったでしょう? その上で悪役令嬢らしく生きるか、断罪回避するか。今まであなたが追い詰めてきた悪役令嬢たちの末路を思い返しなさい。ああ、ヒロインがゲーム開始を拒否して自分で道を開けばそのゲームは始まらないわ。その場合でも、あなた自身が生き方を間違えれば処刑か国外追放。ヒロイン役の時点でこの世界から卒業できなければあなたはこの世界から抜け出せない。最初にそう教えなかった?」
目を見開いて私を見上げる。
ああ、覚えているのね。
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