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第一章
アッチが先に襲ってきたんだもん
しおりを挟む「おい、それ寄越せよ」
「いやよ」
私が断るとムッとした表情になる男。
「何でだよ。不参加なら必要ないじゃないか」
「参加するからってなぜ必要になるの? ここはゲームの世界じゃない。タブレットもスマホも必要ないでしょ」
「だったらお前だっていらないじゃないか!」
「私の物は私の物。けっしてアンタのものにならない。あんた、なに? 泥棒? 乞食? それともさっきのはただの寝言?」
「なんだと…………」
「ロミン、いい加減にしなよ」
ロミンという名に心当たりある。
ゲームで対抗戦があると必ず目の敵にして襲ってきたアバター名だ。
何度改名してもそれが長続きしないのは、元の悪名高き名前から逃げられないからだ。
元々ギルド同士の盟約で、対抗戦以外では対人バトルを禁止されている。
それを破り、ボス戦をしているところへ勝手に割り込んでアバターを殺し、そのアバターが大幅に削ったボスを倒してドロップアイテムを奪っていく。
ただ、毎回可能というわけではない。
相手によっては反撃を食らって自分が殺される。
その後はそのギルドを執拗に狙ってくるのだ。
そして、その中で私を目の敵にしてくる最大の理由が『無課金者』という立場からだ。
合同チャットで《無課金者のくせに!》と書き込まれた。
そして散々『殺す』発言をしてきた。
ただ、それがキッカケでルールを守らないということで所属ギルドから追放。
ついでにパーティからも追放。
ほかのギルドとトラブルを起こして追放される人は誰もが嫌う。
申請しても新たに入れてくれるギルドはなく、自分でギルドを立ち上げパーティを作った。
同じように偏屈王子、レモン、モミンという各々の所属ギルドから追放処分を受けた三人とパーティを組んだ。
そこでさらにやらかした。
ギルド要項にギルドのルールを二つ掲げた。
『ギルド『平和旅団』とそこに所属している者を徹底的に殺せ』
『一日一回必ず誰を殺したか報告しろ』
これにはゲーム運営側が介入した。
ギルド要項は公開されている。
そのため、公開ステータスの一番下にある【通報】から訴えられたのだ。
その結果、二十日間のアカウント停止の処分となった。
もちろん処分内容はシステムで公表された。
知らぬはアカウントを停止されていた本人たちのみ。
─── それがさらに逆恨みに発展した。
アカウント停止が解除になってからも、ルールを無視して次々とアバターを殺して回った。
即日二度目のアカウント停止となり、サーバーから追放となった。
運営サイトで、迷惑行為を繰り返したアバターを隔離するサーバーに四人のアカウントを移したと公式発表された。
スマホ本体でログインしているため、凍結をすれば機種変をしないとゲームは遊べなくなる。
新規キャラを作ってもさらに重課金するかもしれない。
それではまた違うサーバーで迷惑行為を犯すだけだ。
そのためサーバーに封じ込めの処分になった。
しかし、ここにいるのは三人。
間に合わなかったわけではなく、噂通りロミンとモミンは同一人物だったのだろう。
ただバカにされたんだ『ロミンとモミン』は。
ロミンのアバターでモミンのふりをしたり、モミンがほかのギルドを集中して攻撃しているのを「だって、アッチが先に襲ってきたんだもん」とロミンのアバターで泣き言を投稿して正当防衛を主張した。
ちなみにロミンが男キャラで、モミンが女キャラ。
それを間違えたんだから揶揄われても当然じゃないか?
さらに無課金者の私のアバターを殺しにきたら、協力関係で通常より強くなっていた私に瞬殺。
根に持って襲ってきても、毎日コツコツ続けてきた私の方がレベルを越えていた。
モミンは重課金で身を固めても基礎能力を育てなかったため、私に勝てなくなっていた。
ロミンの方はモミンよりさらに重課金をしていた。
それでも合成だけで強化された私の武具に負けた。
それもレベル差は大きく、簡単に勝てると思っていたら大敗したのだ。
もちろんそれもすべてシステムで公表された。
直前でチャットに書き込んでいた。
私に勝ちたくて課金したこと。
レベルアップのために課金したこと。
そして自慢した。
『片手でひねり潰せる強さを持った』と。
そして宣言した。
『アイリスを叩き潰してゲームから追い出してやる』
それで負けたんだから、周りからの笑い者になるのは当然だ。
一日に10万円ずつ注ぎ込んでいたことも自慢していたくらいだ。
それでも毎日行われる対ギルド戦で負けているなんてシステムで公開されていたら。
─── ムキにもなるよね。
私は一切関与しなかった。
誰がバカなんかを相手にするの?
問題があれば【通報】で運営に訴えればいい。
それを一斉にみんなが動いたため、腰の重い運営が珍しく対処した。
それは別の言い方をするなら『運営に目をつけられた』ということだ。
ちなみに『アイリスに負けたらゲームを引退するとは言っていない』と言い張り、さらにバカにされてきた。
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