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第一章
アイツは……弟なんです
しおりを挟む「みんなはロミンとモミンのどっちで呼んでるの?」
「ロミンよ、呼びやすいし。それとさっき止めたのが偏屈王子。その隣にいるのが『人殺しのレモン』」
レモン本人曰く「学校で暴行事件を起こして退学になった。仕返ししてやったけど。このゲームは人殺しし放題」なんて書き込んでいるんだよね。
それが真実かは分からない。
ゲーム世界に現実を持ち込むのは愚者だからだ。
人生の負け組が『こうだったらもっといい人生を送れた』という願望や妄想を胸にイキがっている者がほとんどだ。
レモンもその一人として周りから見られている。
実際に偏屈王子の隣で座っているレモン本人は小柄で、今も小さくなって俯いている。
あれはイジメで登校拒否している理由を虐める側に身を置き換えた妄想だ。
彼にはそれがカッコよくみえていたんだろう。
偏屈王子はアバター的には完全に両者に負けている。
しかし、ルール無用でボス戦に割り込んではアバターを殺してドロップアイテムを奪っていた。
激レアアイテムを求めての行為だったらしい。
注意されても聞かなかったが、ルール違反でギルドから追放されるとなって慌ててみんなに言い訳と謝罪をした。
誰からも「そんな理由ならもう一度チャンスをあげよう」という声はあがらなかったそうだ。
宣言から一時間後に追放されて、直後にロミンのギルドに加わった。
────── いくら人材不足でも人選だけはしようよ。
訴えるように三人に目を向けると、顔を見合わせて何か相談をしていた。
彼らのアバター名に気付いていなかったようだ。
「あの、すみません。うちの元ギルメンが多大な迷惑を……」
「『発光金属』の?」
「はい、サブマスのプラチナです」
その自己紹介に一瞬で隣に座るマイちんの表情が険しくなる。
ロミンの行動で一番迷惑していたのはサブマスのマイちんだ。
「マイちん、災厄は本人の存在。それとそんなのをここに連れ込んだあの連中。この人は巻き込まれただけ」
「─── はあ。大丈夫、私はまだ冷静、まだ冷静」
マイちんは息を大きく吐き出すと呪文のように繰り返し呟いた。
そして最後にもう一度ゆっくり息を吐く。
「アイリス、フォローありがとう。冷静でいられたわ」
「どういたしまして。で、プラチナさん、ごめんね。あの騒動で一番大変だったのは私じゃない。マイちんなんだ」
「うん、マイちんが私たちの被害を個人チャットで聞いてくれて。聞かされるのも嫌な話なのに」
「私なら大丈夫。ほかのギルドでも被害を集めて運営に訴えようってなったのよ。でも、その前にアカウント停止になって……」
「本当にすみません。アイツは……ロミンは弟なんです」
「あー……。そりゃあ謝るわ」
プラチナの告白に私が思わずというカンジで呟く。
それに周りも呆れたように、同意するように、同情するように頷く。
「だな」
「うん」
「まあ……ガンバレ?」
「そこ、疑問符いる?」
ケロリンの言葉にビスケットがツッコミをいれた。
プラチナとロミンの兄弟に視線が集中する。
近くの数人が続けて何をいうのか興味を含んだ視線をケロリンに向ける。
ケロリンとビスケットはギルド『浮世離れ』のメンバーだ。
そして夫婦でもある。
「もう成人してるんだろ? 未成年の間は親の責任で成人後は本人の責任……じゃねえか?」
「たしかに。そこに祖父母とか大人が責任を取らされることはあっても、兄弟姉妹は一応被害者だよね」
「ってことで、プラチナは無罪ってことで、おけ?」
「りょ」
誰かの『了解』に次々と軽く手をあげて「りょ」と続く。
手を上げないのは『俺がルールだ』の三人だけだ。
それが彼らロミンたちのギルド名だ。
「もうひとつ追加していい?」
「なに?」
「なになに?」
「なになになに~?」
私の言葉にいつものゲーム内の和気藹々な流れが戻る。
「あのね、『発光金属』のギルメンも無罪ってことで……おけ?」
私の言葉に全員が声を揃えて「「「りょ!」」」と答えた。
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