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第一章
うん、人生狂っちゃうけどさ。きっと……大丈夫でしょ
しおりを挟む「じゃあ、話がわかるあなたに根本的な質問」
私の言葉に少女は黙って頷く。
「私たちが異世界に飛ばされるっていうか、もう飛ばされてるんだけど。これ以上ほかの人が巻き込まれないようにできる?」
《はい。異世界との道を塞ぎます》
「じゃあ、次。さっきもらった魔法球の【帰還】で私だけ元の世界に帰れると聞いた。それは『行ったり来たり』はできるの?」
《レベルを上げてもらえれば》
「さっきのバカは無責任なこと言ってたけど、レベルアップはあるのね?」
《はい、あります。上限11回まで合成が可能です》
「じゃあ……範囲魔法まで上げたら、みんなで帰ることもできる?」
《見捨てないのですか?》
〈一応ゲームの仲間だから。みんな、あのままログインしてたと思うし〉
《残念ながら、すでに転移先で参加表明して魔法球を受け取っています。─── 同時に洗脳されています》
〈私の仲間は強い。いつも助けてもらってきたから、その強さを知ってる。大丈夫、きっと大丈夫。────── そう、信じさせて〉
みんなの洗脳がいつ解けるかわからない。
『特別イベント』が終わるまで続くのか?
終わっても続くのか?
この世界を素にしてゲームは作られた。
ゲーム内だったから、私たちは何度死んでも復活できた。
─── しかし、ここは現実世界。
死んだらそのまま、復活などありはしない。
でも信じたい。
今までどおりにイベントをクリアできるって。
みんなにかけられた洗脳は解けるって。
だから、みんなと一緒に帰る方法を探しだす。
《最大限までレベルを上げてください。そうしたら人数制限が外れて全員を連れて帰れるようになります》
私は二度目のログインのときにタブレットに表示された。
『あなたは何故危険を冒してまでログインをするのですか?』
私はキーボードを起動させて打ち込んだ。
『私は病気を理由に不参加を選択できる。でも、仲間を見捨てたくはない。不参加でも何か手助けする方法がある。みんなから離れた場所からみれば、きっと解決できる方法がある。わたしたちはいつもそうやって助けあってきた』
そして届いたのが『あなたは病気を理由に参加を拒否することができます』という画面だった。
魔法球は手に入れただけでは使えない。
アイテム欄からアイテムを選択して『使用』をタップする。
そして、もらった魔法球のひとつ【帰還】を試しに使った。
それは私の部屋と繋がっていた。
玄関から外に出てみた。
───────── 元の世界に帰っていた。
神獣の世界に戻るには私の部屋でステータスを使えばよかった。
《いかがでしたか?》
「ちゃんと家に帰れていた。時間は流れていたけど」
《すみません。召喚された時間に戻すことはできなくて》
「大丈夫。行方不明者になるだろうけど、肉体だけ残されて昏睡状態になっているわけではないから。生きていれば……何とかなる、と思う。うん、人生狂っちゃうけどさ。きっと……大丈夫でしょ」
最悪、私は毎日自分の部屋に帰っていれば生存確認されるんだから。
そしてこの話は誰にもしないことにした。
レベルを上げるには時間がかかる。
もし帰られなかったら、面倒だけど一人ずつ運ぶ気でいる。
しかし、連れて帰れるようになったとき「私を一番に帰してね」なんて言われるのは嫌だ。
それを目当てに擦り寄られるのも。
トラブルに巻き込まれるのは一番嫌だ。
だから黙っておこう。
《私と話せることも黙っていたほうがいいでしょうね》
〈ここでの話はしない方が無難でしょう? それより聞いてもいい?〉
《なんですか?》
「何で私が問いかけてないのに会話が成り立つんだ?」
────── しっかり読んでるじゃん。
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