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第一章
神獣たちに同情されちゃったよ
しおりを挟む三人はこの世界の本に興味を持ったようだ。
私からステータスの使い方を教わるとすぐに本を手にした。
図書館の管理者というかここに住むのが私だからか。
この図書館内の本は、妖精王が私の世界の言葉に変えてくれた。
そうすれば、誰がきても読書が楽しめるからだ。
おかげでロミンたちも最初は大人しく読んでいた。
ただ、この図書館からの持ち出しは禁止になっている。
妖精王の説明では王城の蔵書のため禁書もあるらしい。
「なんで持って出られないんだ?」
「ステータスにもしまえない」
「そりゃあ、図書館のだからでしょ」
「─── それもそうか」
そう納得(不満タラタラだったが)した三人は思い思いに本を選んで読んでいた。
そして時々集まって討論しあっていた。
その内容はこの世界のことと黒い霧のこと。
自分たちなりに調べていて、時々私にも自分たちの考えを話して意見を聞く。
決して自分たちだけで解決しようとはしていない。
「もしかして……懐かれた?」
《可能性はありますね》
《もしくは居心地がいいのかもしれません。自分たちを偏見でみず、間違っていれば指摘する。そんな人が彼らの周りにはいなかったのでしょう》
《さっきの様子を見ていたけど、ケンカ腰だよね》
《あれじゃあ、仲良くなれないだろ》
《仲良くなりたいとは思わんな》
「おーい、なんか人数増えてる~!」
《先程決まりました。フォローに私と裁定者、あとは入れ替わり立ち替わりで担当します》
〈最大何人?〉
《こちらの神獣や妖精たち、全員参加です》
〈お願い……一斉に違うこと言い出さないで順番に喋って。私、聖徳太子みたいに一斉に喋られても聞き分けられないから〉
《しょーとくたいし?》
〈厩戸皇子という名前で、八人とか十人とか三十六人とか一斉に話されても、ちゃんと答えられたとかいう伝説がある過去の人。まあ、昔の人は躾がなってないって証明でもあるね。順番に話さないとかってさ、『俺が先!』『いや俺が』『こっちが先だ!』とか言い合ってたんでしょ。そして本人が出てきたら一斉に喋るって。周囲のお頭の悪さを露呈させて、なぜか自慢話にしてるんだよねぇ〉
《─── 何というか、不思議な世界だね》
〈じゃあ笑い話をひとつ。長い間『聖徳太子はこの人だー』っていわれてきた絵があるんだけど、今では『聖徳太子はこの人だといわれている』ってなってる〉
《伝わっていないってこと?》
〈あれだよ、歴史の改竄。途中で藤原不比等って権力者が歴史書の編纂に関わったから。それで手を加えた、とか疑われたんだけどね。真実は歴史の川の中。過去は過去。いた・いないってことより、そんな過去があって現在があるんだから未来を見ろよって言いたいんだけどね〉
私が持論を展開したら、思念の向こうで苦笑された。
議論だけで済めばいいけど、それが教科書に反映されて叩き込むハメになる現役学生は気の毒でしかない。
覚えたことがコロコロ変わり、それが通常の試験だけでなく受験にまで響く。
〈冥王星って星は一番酷かったね。軌道のせいだけど、星の配列が変わったり、元に戻ったり。そうかと思えば、惑星から準惑星になって『太陽系惑星』から外されたり〉
《それが毎回?》
〈新説が出るたびにくるくる変わったよ。今の学生たちなんて、今年覚えたことが来年には変わってるし。さらに試験直前になったら勉強しつつテレビや新聞で情報を集めないといけないし。そんなことしていても、試験当日の朝に新説が飛び込んできたり。発表を考えろよって思うよ〉
試験当日に「今朝のニュースはなかったものとする」と言われるのはまだいい。
覚えたことがそのまま使えるからだ。
「現時点で発表された新しい解答のみ正解とする」と言われることもあるし、もっと酷いのが「10時発表の新説を正解とする」と言われることもあった。
正直なところ『試験当日の、それも試験と試験の間にスマホでニュースアプリをみる奴がいるか~!』と心の中で叫んだよ。
────── いたんだよ。
複数のニュースアプリの速報を設定している学生が、それも複数人も。
それで新説情報を手に入れていたんだ。
「正解者がいたため新説を正解とする」
学校はそう発表して、学生たちに叩かれることとなった。
試験期間中はスマホの電源を切るように言ってたのに、スマホを使った不正者がいたのだから。
そしてそれを指摘されて、不正者は一人以外全員当日の試験はすべて落第点となった。
一人は家族が危篤状態ということで学校側に許可をもらっていた。
しかし使用は緊急時のみ、という約束を破ったため、その試験だけ落第点になった。
〈もうね、『学生戦争』なんていわれた頃もあったよ〉
《情報が溢れて便利なようで……大変な世界なんですね》
神獣たちに同情されちゃったよ。
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