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第一章
館内はふたたび静寂を取り戻した
しおりを挟む私のもらった魔法球【翻訳】の機能は、この世界の文字を私たちの世界の言葉に変換してくれるらしい。
それはこの世界は私たちの世界と同じで『国が変われば言葉も変わる』らしい。
そのための魔導具も存在しているそうだ。
《魔導具のペンは日本語で書いても自動でその国の言葉になります》
〈それは手に入れたいね〉
この世界の文字を今から覚えるなんて無理だから。
でもどこで売ってるかな?
魔導具だから値段高いかも。
《たぶん、この城の中にあると思います》
《部屋にもあるんじゃない?》
《各国の……来るんだから……城の何処かに》
《調理場でも食材を…………受け取りのサインに使って》
《【翻訳】……書いた……変換出来ないから》
「ええーい! 三人一緒に喋るなああ!」
《あ、ごめん》
「一度に言われたから色々と聞き取れなかった! それに誰か【翻訳】の説明してたよね? なに?」
《ああ、すみません。【翻訳】では普通のペンで書いた文字をその国の言葉に変換できません。ですから魔導具のペンを手に入れればいいんですが。ここは城なので結構使われていたと思われるので、探せば見つかると思います》
〈そのペンは使い捨て?〉
《いいえ。ペンに限らず魔導具のほとんどは魔力を込めれば半永久的に使えます》
みんなが外に行っている間に城の中を探検してもいいかな。
今日は召喚直後だからやらないけど……
あれ? 城の中でも【帰還】を使える?
それに、使ったらこの部屋に戻れる?
《使えますよ。一度いった場所でしたらどんなに遠くてもいけます》
〈うん、異世界の私の部屋に帰れたもんね。今度試してみよう〉
そんな話をしていたところ、図書館の扉が激しく叩かれた。
「な、なに⁉︎」
《でてはダメです!》
《開けるな!》
何か緊急事態が起きたのかと思ってソファーから立ち上がった。
まるで破壊行為に近い音に慌てて扉へ向かおうとしたが、みんなから強く止められた。
《落ち着いてください。この建物はどんなことが起きても大丈夫です》
「じゃあ、これは……」
《信用できるみんなが駆けつけてきました。もう大丈夫です》
《ソファーに座って。大丈夫だから》
立ち上がったソファーに座りなおす。
それと同時に図書館の扉が開いた。
「きゃあああ!」
「アイリス!」
「大丈夫ですか!」
思わず叫んで耳を塞いでソファーの座面に上半身を臥せた私を心配する声が聞こえた。
顔をあげるとそこには心配顔で飛び込んできたらしいレモンと王子の姿があった。
「レモン……王子……」
「間に合ってよかった」
カタカタと音がする。
震えがそのままソファーに響いているのがわかった。
わかっちゃいるけど止められない。
止められなければどうなるか。
ソファーとローテーブルの間にズルズルと滑り落ちた。
「「アイリス!」」
レモンが駆け寄って抱きしめてくれる。
「大丈夫だ、アイリス。この建物は害意ある奴は入ってこれない」
「そ、なの?」
「うん、ロミンが読んでた本に載っていたんだ。この世界では悪意を持っているものは中に入れないって」
「人も魔物も入ってこないから。だから安心しろ」
二人の言葉に、乱れていた呼吸が少しずつ落ち着いてくる。
「だから……だから、『ここからでるな』って言ったの?」
私の言葉に二人は頷く。
「今のは、なに?」
「それは……」
「例のバカどもだ」
「────── ロミン?」
開いたままの扉からロミンが入ってくる。
そして扉が閉められた。
同時に外の喧騒が遮断されて、館内はふたたび静寂を取り戻した。
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