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片手片足を捥いでやりましたわ!
しおりを挟む「シュレイ・ルヴァル様」
姉の言葉に私たちはその場で跪いた。
シュレイ・ルヴァル様はこの世界の主神の一柱だ。
慈悲深い女神様が怒りを露わにされるなど今までありません。
創世記にまで遡っても、夫婦神であるレデリ・ルヴァル様を癒やし、ときに諌めることはございましたが。
────── これほどお怒りになられているのに、シュレイ・ルヴァル様をこよなく御愛されているレデリ・ルヴァル様がおそばにいらっしゃらない。
『レデリ・ルヴァル様は傷つかれてお倒れに』
「そ、そんな!」
「一体誰が何を……」
シュレイ・ルヴァル様が、震える足を必死に抑えて立っている姿が痛々しい。
『リルンが皇城に忍び込み、禁断の空間に入った』
「禁断の……?」
「皇城の禁断の空間って……」
『そう、『逆転の間』』
大変なことをしでかしたわね。
逆転の間に忍び込むなんて……!
「でも……なぜ」
「あそこは大罪者の魂を消滅させるための神域なのに」
『リルンは計画の失敗を知り、神具の破壊前まで時間を戻そうとした』
「……そうか! リルンは別件で皇城の庁舎の地下牢に連行中……!」
『そう、異変に気付かれたレデリ・ルヴァル様が駆けつけたときに……』
リルンは手順を誤り、その結果、世界を崩壊させようとした。
それをレデリ・ルヴァル様が身をかけて守られたそうだ。
『レデリ・ルヴァル様は手足を失ってもリルンを救った』
『あのような者など救うことはなかったのだ!』
『レデリ・ルヴァル様は、世界を救われたのです。中途半端に起動させたままでは、世界が消滅します。その消滅は神々にまで広がったでしょう。いえ、世界の消滅を止めるために、我ら神は自らの存在を放棄してでも世界を救ったでしょう』
レデリ・ルヴァル様は、そんな我らを救ったのですよ、と言われて、シュレイ・ルヴァル様はその場で泣き崩れた。
リルンという異物を取り込んだまま扉を閉めれば、リルンの魂は千々に砕けて消滅しただろう。
消滅した魂は渾沌の闇の中で無となる。
しかし、それは正規の手順に則った場合だ。
『あのままでは、意識をたもったまま渾沌に落ちる。渾沌に意識のかけらが落ちれば、世界は闇に堕ちる。私はそれを未然に防いだだけだ』
レデリ・ルヴァル様は信仰により一時間もかからず回復した。
さすが、全能なる主神である。
「それでリルンはどうなりましたか?」
『フンッ! アレには片手片足を捥いでやりましたわ!』
シュレイ・ルヴァル様は半神様が傷ついたことが許せなかったようだ。
リルンは、レデリ・ルヴァル様が失った手足(無事に回復されました)と同じ右手右足と、自慢だった顔の半分を取り上げられた。
その上で賎民に落とされた。
賎民は奴隷よりも下、『奴隷として役に立てない犯罪者』で、神に見放された者たちでもある。
自死も他殺も許されない賎民に、神は死の安らぎを与えない。
リルンは神によって欠損した神罰の姿で国を彷徨う。
ちょうど、国境の底深くで嘆く妹たちを訪ねるように。
リルンは妹たちの気配に誘われるように封印に近付く。
そして気配を見失う。
封印された妹たちは仲間の気配に気付いて声を上げるが、肝心要であるリルンには届かず。
そして遠去かる気配に絶望を味わう。
長いときをこえて、いつのまにかリルンは姿を変えた。
手足のない蛇の姿に。
それでもなお、這いながら仲間たちを求めて国境線を回り続ける。
彼の名は神の罰を受けて不老不死になった者『ウロボロス』と呼ばれている。
そして彼のとおった地の奥深くに彼の仲間たちがいて、今もウロボロスが来るのをまっている。
(了)
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