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某国生物兵器研究所第四研究室(2024.3.11)/SF
しおりを挟む七月七日、某国生物兵器研究所第四研究室。
政府が秘密裏に進めている、新たな生物兵器の研究をしているこの研究室は、軍の管理下にあり、その存在は一部の政府関係者と軍関係者しか知らない地下室に存在していた。
研究室は第九まであり、この第四研究室だけがろくな成果も上げられず、他から遅れをとっていて、研究費の無駄だと研究を中止するかしないかで、現在お偉いさん方の間で会議中だ。
第四研究室の責任者であるパク博士がその会議に出席中のため、助手の私・ウエダと研究員のリー君は会議が終わるのをおとなしく待ってるはずだった。
ところが————
「ど、どうするんですか、ウエダさん!!」
「ど、どうするも何も、一体どうなってるのよ!?」
「わからないから、聞いているんじゃないですか!!」
私たちが研究していたのは、とある動物を兵器とするための研究だ。
動物の脳に、チップを埋め込み、そこへ電流を流し、動きを制御するというもの。
これまで色々と実験して来たが、うまくいかずにその動物の餌代だけが嵩んで行く。
そのせいで会議にかけられているというのに、その会議中に、急激な変化があった。
いつもただおとなしく座っているだけだったその動物が、急に言葉を話し出したのだ。
私たちは驚きと恐怖のあまり、研究室を飛び出してドアのロックをかけてしまった。
ドアの窓の外から恐る恐る中を覗くと、その動物は勝手に研究室を歩き回っている。
こんなこと、今まで一度だってなかった。
何をしても、なんの成果もなかったのに、なんで今日になって突然、こんなことになたのか……
「どうするんですか!? あんなのに襲われたら、俺たち死んじゃいますよ!?」
「わかってるわよ! だから逃げたんじゃない!!」
ただの研究員である私たちに、あれを制御できる方法はない。
鍛え上げられた軍人————あるいは、凄腕のスナイパーでも呼んで来なければ……
「とりあえず、助けを呼びましょう。このドアは頑丈にできてはいるけど、あいつは普通じゃないから、どうなるかわからないわ。このドアも壊されるかもしれない」
「助けを呼ぶって、スマホは中ですよ!?」
「なんで手に持ってないのよ!? あなた、スマホ依存症の現代人でしょう!?」
「ウエダさんこそ、現代人でしょう!? ウエダさんのスマホから連絡したらいいじゃないですか!!」
「私だって、スマホ依存症なのよ!! 受電が60%以下になったから、充電器に差してそのままなの!!」
「60%!? 充電するの早すぎでしょう!? 何やってるんですか!!」
「常に70%以上ないと、不安で仕方がないのよ」
「ウエダさんの方が、重症じゃないですか!!」
「うるさい! とにかく、誰か呼んで来ないと……」
このまま、もしドアを壊されでもしたら、大変なことになる。
生物兵器を野放しにしたら、こういうのって、映画やアニメだと研究者が一番最初に殺されるパターンじゃない。
そんなの、ごめんよ!!
『……れ…………れ』
「と、ところで、ウエダさん。さっきから気になっていたんですが、あいつは一体、なんて言っているんですか?」
「え……?」
そういえば、急に話し出したことに驚いて、反射的に逃げたけど……
なんて言っていたのかは、聞き取れていなかった。
怖くはあったけれど、私はドアに耳を当てて、あれがなんと言っているのか、聞いてみることに……
『ささ……く……れ』
ん?
「……ささくれ?」
そう聞こえて、改めて中を見る。
白と黒の大きな体で、あれはそう言った。
『ささくれ』
私はすぐに研究室の廊下に飾ってあった、笹に手を伸ばした。
今日が、七夕で良かったわ。
『世界が平和でありますように』『今年こそ結婚できますように』『この研究が成功しますように』と、この施設で働く人たちの願いが書かれた短冊を全て外し、少しだけ開けたドアの隙間から、ゆっくり笹を中に差し込むと、あれは嬉しそうに笹を手にとって、かじりついた。
その姿はとても愛くるしく、さっきまでの死の恐怖なんてどこかへふっとんだ。
「やっぱり、パンダって可愛い」
世界初の喋るパンダが誕生し、第四研究室はこのまま研究が続行されることになった。
『ささくれ』
今の所、それしか喋らないけれど————
《終》
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