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和樹の思惑
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時刻は昼の一時半。午前中に簡単な診断テストと部活動紹介が行われ、もうすぐ昼休みが終わろうとしている。教室内では今日一日、どこか殺伐とした空気が流れていた。
理由は簡単、昨日のあれが原因だ。昨日砕け散ったあのイケメンは時々、隣の席の彼女をものすごい顔で見ていた。しかし、当の本人はそちらに見向きもせず、まったく気にしてないようだったので、相変わらずだなと笑ってしまったのは俺だけの秘密だ。
ただ、教室内に殺伐な空気が流れているとは言っても、彼女に対して何か直接的な行動をとる者はいない。その点は、やっぱり中学の頃とは違うなと思った。おそらくだが、彼女も俺と同じことを思っているだろう。
俺と彼女は似たような境遇を過ごしてきたのだから。
チャイムが鳴り、ホームルームが始まった。さすがに二回目ともなると、先生の美貌に見とれている者はいない……と思っていたのだが、まだ何人かいるようだ。
前のほうに座っている奴らは、自分の席を最大限前に動かして、今にも席から飛び出しそうなほどの前傾姿勢になっている。それには、さすがの先生も少し引いたのか一歩後退り、一瞬ひきつったような笑みを浮かべて話し始めた。
ちなみに、話している間先生は一回も目の前を見ず、ずっと後ろのほうの席の生徒に目線を合わしていた。
話の内容は昨日とあまり変わらず、主にこれからの高校生活についての説明がほとんどだった。
部活動についても何か言っていたが、俺はこの学校にある部活には興味なかったので、話の内容は右から左に抜けていくだけだった。
そしてホームルームが終わり、先生が教室を出る際、去り際にこのクラスを地獄の底へと突き落とす、衝撃的な一言を放った。
「あ、言い忘れてたが。この一年間席替えというものは一切しないからな。いろいろ思うところもあると思うが、席替えなんて必要ない。これが私の教育方針だ。諦めてくれ」
その言葉を聞いたクラスの奴らは(前のほうの席の奴ら以外)すぐに先生へ猛抗議した。それもそのはず、学校生活において席替えはトップ5には入る一大イベントだ。好きな子の隣になれるかでドキドキしたり、席替えによって新しい恋が芽生えたり、恋愛において席替えは重要な要素の一つなのだ。
それは俺も、数多くの恋愛映画から熟知している。その席替えをしないと言われたらそりゃあ相手がいくら美人の先生であっても抗議しないわけにはいかないのだろう。
しかし、いくら抗議しようとも先生は自分の意思を曲げるつもりはないらしく、抗議する生徒を一蹴し教室を出た。
一蹴された生徒たちは席替えが一年間行われないことと、先生に怒られたことに対して酷く落ち込んでいるようだった。
ちなみに、俺がこの席替え騒動に対して他人行儀なのは理由がある。それは、俺が別に席替えをしたいとは思ってないからだ。
俺の今の席は位置的にも最高だし、席替えでドキドキするのは俺の中で映画の中だけの話なので、現実世界の俺にそんなことがあるわけないと思っている。つまり、俺には席替えをする必要がないのだ……そう思っていたのだが、俺はハッとして隣を見た。
(ってことは一年間こいつの隣ってことか。俺の心臓もつかな…)
俺は基本、隣の席が誰であっても何も思うことはないのだが、こいつだけは違う。こいつとはそのー、なんていうか…中学の時に少しあって多少意識してしまうのだ。
決して恋愛感情があるとかそういうことではない。そもそも俺は過去にそういう感情を持った記憶がない。だからこの感情がそうではないとも言い切れないのだが……。
そんなことを考えていたら、突然隣から声をかけられた。
「私の顔に何かついているのかしら、金城君」
どうやら俺は無意識に彼女の顔を見つめてしまっていたようだ。
そんな失態を犯すなんて一生の不覚だ。俺は自分が思っている以上にてんぱっているらしく、自分でも意味が分からない発言をしてしまった。
「いやー、今日も木下はきれいだなーと思って…ははは」
俺の言葉に一瞬木下が赤くなった気がしたが、すぐに気のせいだと分かった。
「あら、ありがとう。でも、思ってもいないことを簡単に口にしてはダメよ……ね?金城君?」
こんなに冷たくて恐ろしい声が、あの言葉で赤くなるような女の子に出せるはずがない。おまけに、あのイケメンに対してもまったく表情を崩さなかった木下が、にこりと笑ってそう言うのだ。怖いにもほどがある。
ちなみに目は全く笑ってなかった。
恐怖に耐えきれなかった俺は逃げるように教室を後にし、加藤先生と話をするために職員室へ向かった。
何の話をしに行くのか、そんな疑問を持つ者もいるだろう。もちろん、俺と先生が秘密の関係だとかそういうことではない。それは映画の中だけの話だ。
(そうそう、あのスリルがいいんだよなあ~。禁断の関係っていう感じの)
その話はいったん置いておいて……
そう、俺は加藤先生に交渉しに行くのだ。ホームルームで先生が部活動の話をし、クラスメイトが「部活何にする~?」と相談しあっているのを聞いて、俺は心の底で呆れていた。
なぜ他人と相談する必要がある?部活動とは、自分が心の底からやりたいことをやるものなのだから、他人と相談する必要などないだろう。
自分のやりたい部活動がないから他人に合わせるのか?いや、もしやりたい部活動がないのなら、やることは一つだろう!!
(そう!自分で部活を作ってしまえばいいのだ!!)
ほんと、これを思いついた俺は天才じゃないのかと疑ってしまう。中学生の俺に教えてやりたいくらいだぜ。
ん?おれのやりたいことは何なんだって?そんなの決まっている。
(俺は、映画監督をしてみたいんだあ!!)
俺が今まで見てきた映画はおそらく千本を超えている。いくつもの映画を見ているうちに、俺は思ったのだ。
見るだけじゃなく、撮る側をやってみたいと……そこで行き着いたのが、自ら映画部を作るという選択だ。
(それにもし映画部を作ることができたら、少人数でひっそりと部活を行うことができる。すると三年間目立たずに過ごすという目標の達成に、一歩近づくことができるのだ。我ながらなんという完ぺきな思考。今年の俺は一味違うぜ!)
そんな感じで浮かれ気分の俺はまだ、大事なことに気が付いていなかった。そう、部活動を作るためには、避けては通れない道がある。
しかし、それはこれまで孤独を望んできた和樹が一番苦手なことだということをまだ誰も知らない。
理由は簡単、昨日のあれが原因だ。昨日砕け散ったあのイケメンは時々、隣の席の彼女をものすごい顔で見ていた。しかし、当の本人はそちらに見向きもせず、まったく気にしてないようだったので、相変わらずだなと笑ってしまったのは俺だけの秘密だ。
ただ、教室内に殺伐な空気が流れているとは言っても、彼女に対して何か直接的な行動をとる者はいない。その点は、やっぱり中学の頃とは違うなと思った。おそらくだが、彼女も俺と同じことを思っているだろう。
俺と彼女は似たような境遇を過ごしてきたのだから。
チャイムが鳴り、ホームルームが始まった。さすがに二回目ともなると、先生の美貌に見とれている者はいない……と思っていたのだが、まだ何人かいるようだ。
前のほうに座っている奴らは、自分の席を最大限前に動かして、今にも席から飛び出しそうなほどの前傾姿勢になっている。それには、さすがの先生も少し引いたのか一歩後退り、一瞬ひきつったような笑みを浮かべて話し始めた。
ちなみに、話している間先生は一回も目の前を見ず、ずっと後ろのほうの席の生徒に目線を合わしていた。
話の内容は昨日とあまり変わらず、主にこれからの高校生活についての説明がほとんどだった。
部活動についても何か言っていたが、俺はこの学校にある部活には興味なかったので、話の内容は右から左に抜けていくだけだった。
そしてホームルームが終わり、先生が教室を出る際、去り際にこのクラスを地獄の底へと突き落とす、衝撃的な一言を放った。
「あ、言い忘れてたが。この一年間席替えというものは一切しないからな。いろいろ思うところもあると思うが、席替えなんて必要ない。これが私の教育方針だ。諦めてくれ」
その言葉を聞いたクラスの奴らは(前のほうの席の奴ら以外)すぐに先生へ猛抗議した。それもそのはず、学校生活において席替えはトップ5には入る一大イベントだ。好きな子の隣になれるかでドキドキしたり、席替えによって新しい恋が芽生えたり、恋愛において席替えは重要な要素の一つなのだ。
それは俺も、数多くの恋愛映画から熟知している。その席替えをしないと言われたらそりゃあ相手がいくら美人の先生であっても抗議しないわけにはいかないのだろう。
しかし、いくら抗議しようとも先生は自分の意思を曲げるつもりはないらしく、抗議する生徒を一蹴し教室を出た。
一蹴された生徒たちは席替えが一年間行われないことと、先生に怒られたことに対して酷く落ち込んでいるようだった。
ちなみに、俺がこの席替え騒動に対して他人行儀なのは理由がある。それは、俺が別に席替えをしたいとは思ってないからだ。
俺の今の席は位置的にも最高だし、席替えでドキドキするのは俺の中で映画の中だけの話なので、現実世界の俺にそんなことがあるわけないと思っている。つまり、俺には席替えをする必要がないのだ……そう思っていたのだが、俺はハッとして隣を見た。
(ってことは一年間こいつの隣ってことか。俺の心臓もつかな…)
俺は基本、隣の席が誰であっても何も思うことはないのだが、こいつだけは違う。こいつとはそのー、なんていうか…中学の時に少しあって多少意識してしまうのだ。
決して恋愛感情があるとかそういうことではない。そもそも俺は過去にそういう感情を持った記憶がない。だからこの感情がそうではないとも言い切れないのだが……。
そんなことを考えていたら、突然隣から声をかけられた。
「私の顔に何かついているのかしら、金城君」
どうやら俺は無意識に彼女の顔を見つめてしまっていたようだ。
そんな失態を犯すなんて一生の不覚だ。俺は自分が思っている以上にてんぱっているらしく、自分でも意味が分からない発言をしてしまった。
「いやー、今日も木下はきれいだなーと思って…ははは」
俺の言葉に一瞬木下が赤くなった気がしたが、すぐに気のせいだと分かった。
「あら、ありがとう。でも、思ってもいないことを簡単に口にしてはダメよ……ね?金城君?」
こんなに冷たくて恐ろしい声が、あの言葉で赤くなるような女の子に出せるはずがない。おまけに、あのイケメンに対してもまったく表情を崩さなかった木下が、にこりと笑ってそう言うのだ。怖いにもほどがある。
ちなみに目は全く笑ってなかった。
恐怖に耐えきれなかった俺は逃げるように教室を後にし、加藤先生と話をするために職員室へ向かった。
何の話をしに行くのか、そんな疑問を持つ者もいるだろう。もちろん、俺と先生が秘密の関係だとかそういうことではない。それは映画の中だけの話だ。
(そうそう、あのスリルがいいんだよなあ~。禁断の関係っていう感じの)
その話はいったん置いておいて……
そう、俺は加藤先生に交渉しに行くのだ。ホームルームで先生が部活動の話をし、クラスメイトが「部活何にする~?」と相談しあっているのを聞いて、俺は心の底で呆れていた。
なぜ他人と相談する必要がある?部活動とは、自分が心の底からやりたいことをやるものなのだから、他人と相談する必要などないだろう。
自分のやりたい部活動がないから他人に合わせるのか?いや、もしやりたい部活動がないのなら、やることは一つだろう!!
(そう!自分で部活を作ってしまえばいいのだ!!)
ほんと、これを思いついた俺は天才じゃないのかと疑ってしまう。中学生の俺に教えてやりたいくらいだぜ。
ん?おれのやりたいことは何なんだって?そんなの決まっている。
(俺は、映画監督をしてみたいんだあ!!)
俺が今まで見てきた映画はおそらく千本を超えている。いくつもの映画を見ているうちに、俺は思ったのだ。
見るだけじゃなく、撮る側をやってみたいと……そこで行き着いたのが、自ら映画部を作るという選択だ。
(それにもし映画部を作ることができたら、少人数でひっそりと部活を行うことができる。すると三年間目立たずに過ごすという目標の達成に、一歩近づくことができるのだ。我ながらなんという完ぺきな思考。今年の俺は一味違うぜ!)
そんな感じで浮かれ気分の俺はまだ、大事なことに気が付いていなかった。そう、部活動を作るためには、避けては通れない道がある。
しかし、それはこれまで孤独を望んできた和樹が一番苦手なことだということをまだ誰も知らない。
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