白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織

文字の大きさ
19 / 25

19 涙の初夜

しおりを挟む
 ジョシュアにすべての主導権を渡したレイナールは、少しだけ後悔した。

「くっ、んんッ、あ、ジョシュア様……ァ」

 年上で頼りになるジョシュアが紳士的にリードしてくれることを期待していたが、裏切られた。荒々しい手つきは、それほど彼が餓えていたという証拠だ。

 名前を呼べば、一瞬こちらを見やるが、すぐに肌にむしゃぶりついて離さない。

 無言で触れられ、嬲られることに、恐怖がないと言えば嘘だ。ただ、どれほど乱暴に見える仕草であっても、レイナールを傷つけないように、細心の注意が払われていることを知っているから、抵抗はしない。

 上半身を撫でさすられ、くすぐったさに焦れて、膝を立てる。するとジョシュアが、その間に身体を割り込ませ、閉じられなくなってしまった。そして中心で、すっかり勃ち上がって濡れる雄を、じっと見つめてくる。

「あ……」

 神殿で清らかな生活を送っていたとはいえ、レイナールも健康な若い男だ。勃起した己自身を見たことがないとは言わないし、あまりよくないことだと思いつつも、自涜行為に耽ったことはある。

 夜で薄暗い中とはいえ、他人の目に晒されるのは初めてのことで、恥じらってぴくぴくと震えている。ジョシュアの指が伸びてきたときには、思わず払いのけそうになってしまった。

「レイ」

 意識を下半身から引き離すべく、ジョシュアは乳首をついばんだ。指で散々いたぶられた後だった。ねっとりと唾液に塗れ、改めて熱を持っていることを思い知らされ、レイナールは小さく喘ぐ。

 その隙に、ジョシュアは目的を果たす。薄く生えた白金の陰毛を掻き分け、根元の双玉を捕らえると、ふにふにと揉む。自慰の経験はあっても、ただ機械的に根元から先端へと扱き上げ、排出を促すだけだったので、まさかそんなところを愛撫されるとは思っていなかった。

 驚きはやがて、これまで感じたことのない快楽に変わる。大きな手でもみくちゃにされ、絶妙な力加減に、甲高い声がどうしても漏れてしまって、レイナールは口を両手で押さえた。

「ふっ、く……っ」

 根元を指の輪で締めつけられ、先端を指先で押される。未知の悦楽に流され、腰がびくりと跳ね回る。

 我慢。我慢しなければ。こんな間近で見られながら射精するなんて、格好悪い。

 ぐっと奥歯を噛みしめて、達しそうになるのを耐える。本当は、薄々気づいていた。我慢すればするほど、この快楽地獄に終わりはない。火山の地中深くで滾る炎の渦のように、いつまでもぐるぐると、体内でわだかまったまま。

 指の動きに合わせて、濡れた音がする。先走りの蜜を全体にまぶしていく手はいやらしく、レイナールを追い詰める。

「ううっ」

 それでもどうにか達するのを我慢していると、しびれを切らしたのか、ジョシュアは一度、手を止めた。ホッとして彼の方を見る。目が合うと、彼はにやりと笑った。雄の顔で笑ってみせた。

「ッ! あ、なに、何を……ッ!?」

 ゆっくりと見せつけるように、顔を股間に埋めていく。意図を察したときにはすでに遅く、レイナールの性器は、ぱくりと食べられてしまっていた。

「うそ、や、いや……ッ」

 閨についての知識は、市井の人々よりもはるかに乏しい。レイナールが知るのは結果だけで、過程は誰も教えてくれなかった。口唇で性器を嬲られることなんて、想像したことすらない。

 熱い。喉奥まで銜え込まれ、水音が激しくなる。口は、話したり食べ物を摂取したりするだけではなく、レイナールを愛するために存在するのだと知った。言葉だけでなく、身体に直接訴える愛し方は、刺激が強すぎる。

「ん、あ、あ、離して、離して、ぇ……ダメっ、で、出ちゃ……うぅッ!」

 半分泣きそうになりながら、レイナールは反射的に腰を浮かせてしまう。ジョシュアの指が性器と尻の間の、普段意識していない箇所をなぞると、ゾクゾクと訳のわからない快感が走り、悲鳴とともに、レイナールは射精した。

 離してくれという懇願は聞き入れられず、発射した精液はそのままジョシュアの口の中に留まる。肩で息をするレイナールの身体と心が落ち着くのを待つことはなく、彼は次の過程へと突き進んでいく。

「ひっ」

 精液を飲み下したジョシュアの、次なる目的地はさらなる奥地であった。排泄時にしか使わない肉が、異物の接触を感じて、きゅっと締まる。

 狭い孔を無理矢理掘り進め、こじ開けようとする。意外とつるんと入ってきたのは、唾液によるものだろう。

「あっ、あーッ、あああっ、だめ、だめ、です……いやぁッ」

 不浄の場所に深く口づけられることは、自分が汚されるというよりもむしろ、ジョシュアを冒涜している気分になった。両足を掲げられて抵抗を封じられ、一方的にされるがままになっているのはレイナールの方だ。なのに、ジョシュアになんてことをさせているのだろうと、罪悪感すら抱く。

 信じられない場所を犯されているというのに、襲ってくるのは、先ほど男根を銜えられたときと同じ、いや、それ以上の悦びであることが、レイナールを追い詰めていく。

 涙と涎でぐちゃぐちゃになったレイナールは、うわごとのように「やめて、やめて」を繰り返す。本当の妻にしてほしいと願ったのは自分の方で、しかも、これが最初で最後の夜になるかもしれないのに。それでも口から飛び出すのは、拒絶の言葉ばかりだった。

 いつの間にか、舌ではなく、指で突かれていた。硬い爪の刺激を肉襞は嫌がらずに受け入れて、ビクビクと身体が震える。

「ん、あ、あ」

 舌では届かない奥、自分でも知らない小さなしこりのような箇所を一点集中で刺激されると、今まで以上に快楽が襲ってくる。ちょうど性器の裏側だ。先ほど放ったばかりなのに、勃起して濡れている。

 自慰行為のときは、一度射精すれば十分だったのに、ふたりでする行為は、まだ足りない、もっと気持ちよくなりたいと、時間の経過とともに貪欲になっていくものなのか。

 一本、二本、三本目を挿入しようかジョシュアは迷った結果、すべての指を抜いた。

 浅ましいことで、自分の内側を満たしていたものが一気になくなると、あれだけ嫌がっていたのに、寂しくてパクパクと無意識のうちに開け閉めを繰り返してしまう。

 ぐったりしたレイナールの脚を抱え直すと、ジョシュアは「すまない」と、一言謝った。

 何に対しての謝罪なのかよくわからないままに頷きかけたレイナールは、しかし、指の代わりに押し当てられた熱の塊に驚き、声を上げた。

「あっ!」

 ずしりと重みを伴って挿入されたジョシュアの男根は、レイナールと同じ男の証だとは、とても思えなかった。自分のものがひ弱な草の茎だとすれば、ジョシュアのものは大木の幹だ。先端がめり込み、少し括れたかと思うと、また太くなる。

 涙に暮れるレイナールは、ジョシュアに縋りつき、彼の名前を呼ぶ。

「レイナール……愛してる。愛してるんだ」

 意識が飛ぶ直前に見えた彼は、今度こそ本当に、泣いていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

待て、妊活より婚活が先だ!

檸なっつ
BL
俺の自慢のバディのシオンは実は伯爵家嫡男だったらしい。 両親を亡くしている孤独なシオンに日頃から婚活を勧めていた俺だが、いよいよシオンは伯爵家を継ぐために結婚しないといけなくなった。よし、お前のためなら俺はなんだって協力するよ! ……って、え?? どこでどうなったのかシオンは婚活をすっ飛ばして妊活をし始める。……なんで相手が俺なんだよ! **ムーンライトノベルにも掲載しております**

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

【完】姉の仇討ちのハズだったのに(改)全7話

325号室の住人
BL
姉が婚約破棄された。 僕は、姉の仇討ちのつもりで姉の元婚約者に会いに行ったのに…… 初出 2021/10/27 2023/12/31 お直し投稿 以前投稿したことのあるBLのお話です。 完結→非公開→公開 のため、以前お気に入り登録していただいた方々がそのままお気に入り登録状態になってしまっております。 紛らわしく、申し訳ありません。 2025/04/22追記↓ ☆本文に記載ありませんが、主人公の姉は婚約破棄された時、主人公の学園卒業時に実家の爵位が国に返上されるよう、手続きをしていた…という設定アリ。

【完結】可愛い女の子との甘い結婚生活を夢見ていたのに嫁に来たのはクールな男だった

cyan
BL
戦争から帰って華々しく凱旋を果たしたアルマ。これからは妻を迎え穏やかに過ごしたいと思っていたが、外見が厳ついアルマの嫁に来てくれる女性はなかなか現れない。 一生独身かと絶望しているところに、隣国から嫁になりたいと手紙が届き、即決で嫁に迎えることを決意したが、嫁いできたのは綺麗といえば綺麗だが男だった。 戸惑いながら嫁(男)との生活が始まる。

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
 【完結】伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷う未来しか見えない!  僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げる。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなのどうして? ※R対象話には『*』マーク付けます。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

婚約破棄と国外追放をされた僕、護衛騎士を思い出しました

カシナシ
BL
「お前はなんてことをしてくれたんだ!もう我慢ならない!アリス・シュヴァルツ公爵令息!お前との婚約を破棄する!」 「は……?」 婚約者だった王太子に追い立てられるように捨てられたアリス。 急いで逃げようとした時に現れたのは、逞しい美丈夫だった。 見覚えはないのだが、どこか知っているような気がしてーー。 単品ざまぁは番外編で。 護衛騎士筋肉攻め × 魔道具好き美人受け

【完結】奇跡の子とその愛の行方

紙志木
BL
キリトには2つの異能があった。傷を癒す力と、夢見の力。養親を亡くしたキリトは夢に導かれて旅に出る。旅の途中で魔狼に襲われこれまでかと覚悟した時、現れたのは美丈夫な傭兵だった。 スパダリ攻め・黒目黒髪華奢受け。 きわどいシーンはタイトルに※を付けています。 2024.3.30 完結しました。 ---------- 本編+書き下ろし後日談2話をKindleにて配信開始しました。 https://amzn.asia/d/8o6UoYH 書き下ろし ・マッサージ(約4984文字) ・張り型(約3298文字) ----------

処理中です...