好きって言えないっ!~呼び出したのは悪魔みたいな妖精でした~

葉咲透織

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15 冗談でしょ?

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「ふあ~」

 遠足の日はまだまだ暑くて、半袖のTシャツでちょうどよかったのに、一気に涼しくなって、秋まっさかり。過ごしやすくて目覚めもいいはずなのに、私は大きなあくびをしてしまい、慌てて口を閉じた。

 俊くんへの誕生日プレゼントを早く完成させたい一心で、毎日頑張っている。布を裁断する、最初のところからやり直しなので、大変だ。

 ここまで来たら、クリスマスでいいやってなるところ。でも、私には時間がない。

 カレンダーに大きく印をつけた、次の満月がタイムリミット。早めに完成させて、ぼーるくんに私の気持ちを託す。そして、彼から好きだと言ってもらえるのを待つしか方法はない。

 秋の夜は長いというけれど、実際のところ、やることが多いのも秋だ。

 十月は二学期の中間テストもあるし、何よりも文化祭もある。体育祭を飛ばしたのは、うん、私が運動音痴だから。いいところを見せられるはずもないし、周りに迷惑をかけないように一生懸命やっているんだ! というポーズはしなければならないので、俊くんのことばかり見ているわけにもいかない。

 期限が決まっているとは知らない紗菜たちは、「無理しないように」と釘をさしてくるが、多少の無理は覚悟のうえである。

「小坂さんがやりたいって言ってましたぁ~」

 頭の中で、今後のスケジュールを確認していたけど、ぼーっとしていたらしい。自分の名前が呼ばれたところで、「へ?」と、間抜けな声を上げる。

 ロングホームルームの今日の議題は、文化祭について。とはいえ、二年生は屋台以外の模擬店をすることになっていて、うちのクラスは市内で人気の和菓子屋さんのお団子や大福を売る。

 模擬店の方は、もうポスターを作ったり教室の装飾を作ったり食券を作ったりする係が決まっていて、作業も進んでいる。じゃあいったい、何を決めるんだって話なんだけど。

山中生さんちゅうせいの主張……?」

 山和さんわ中学校、略して山中。いや、それはどうでもいい。

 黒板に書かれた文字を見て、ぽかんとする。私は会議の最初から、意識を飛ばしていたらしい。それがなんだかわからずに、おろおろしていると、近くの席に座った紗菜からの説明が入る。

 山中生の主張とは、人気番組の企画のパクリだ。実際のテレビ番組では屋上に主張したいことがある人が立ち、グラウンドの全校生徒に向けて叫ぶ……というものだけど、屋上は当然、立ち入り禁止。

 なので、文化祭のステージ企画として生徒会が出場者を募集しているのだが、人数が全然集まらなくて困っているという。

 そこで、各クラスひとりを選んで登壇するよう、文化祭実行委員にお達しがあった。

 自分からいけにえになりたいと手を挙げる勇者はいない。目立ちたがり屋は、最初から生徒会に参加希望を名乗り出ている。

 だから自然と、立候補ではなく推薦を募る形になり、なぜか私に白羽の矢が立った。

 なんで?

 私を推薦した相手を見れば、児玉さんだった。私をちらっと見て笑ったあと、黒板の前に立つ実行委員に視線をすぐ移す。

「小坂さんはぁ~、告白したい人がいるそうなんでぇ。なんか、こういうときでもないと、勇気が出ないんだって。だから、みんなで応援しましょ!」
「えっ、ちょ……!」

 無理無理無理! そんなの無理だって!

 立ち上がって嫌だと無理だと言おうとしたけれど、起立したその瞬間、手拍子をされる。

 いや違うんです! やる気の表れなんかじゃない!

 慌てる私と、実行委員の子と目が合う。

 彼はこの会議に疲れているのが丸わかりで、たぶんここで決まらなきゃ、自分が犠牲にならなければならないという悲壮な顔つきだ。力なく微笑まれて、私は「うっ」と、言葉に詰まる。それがよくなかった。

「それじゃあ、山中生の主張については、小坂さんで決まりということで!」

 朗々と宣言されて、私は何も言えないまま、すとんと着席した。

 どうしよう。

 人前で告白できる度胸があれば、妖精につけこまれることはなかった。 それに、私から告白なんかしたら……!

 私は俊くんの方を、一切見ることができなかった。

 彼がどんな顔をしているのか、怖くて知りたくなかった。

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