393 / 499
第13部
第三章 神は願う②
しおりを挟む
シーラ=ノワール。
彼女は、怪物の娘だった。
元々は戦争孤児。荒れ果てた街で野垂れ死ぬ直前だった。それを、その日たまたま出かけていた《冥妖星》の気まぐれで拾われた少女だった。
拾われた当時は十歳だったのだが、《冥妖星》のコネと意向で《黒陽社》に入社。教育と訓練を重ねて現在は二十一歳になっていた。
コツコツ、と彼女は通路を歩く。
紫に近い瞳に、腰まで伸ばしている、さらりとした同色の髪が風になびく。やや小柄でスレンダーな肢体には《黒陽社》では珍しく、黒いスーツではなく、金糸で縁取りした黒い制服とスカートだ。両足には黒のストッキングを履いている。
すれ違った《本社》に努める男性社員達は揃って彼女に目を奪われた。
それも仕方がないことだった。
何故なら彼女は《星神》だからだ。その美貌もまた群を抜いている。社内においてはかのリディア=ヒル、カテリーナ=ハリスとも並ぶ美女として知られていた。しかも、出世面においては、第5支部の支部長補佐であるカテリーナさえも凌いでいる。
彼女は若くして本部長代理であり、『特殊情報管理室』の副室長でもあるのだ。
カルロス=ランドヒルが《土妖星》として台頭するまで、彼女こそが若手最高の出世頭だったのである。
しかし、その重責のためか、表情は常に冷酷な女性だった。
無垢な赤ん坊であっても、顔色を一切変えずに殺す女。
そんな噂が彼女にはあった。
それゆえか、彼女の美貌に魅入っても声をかける者は少ない。
ただし、例外もあるが。
「――シーラさま!」
不意に背後から声が響く。
シーラは、髪を揺らして振り返った。
そこにはシーラと同じ制服を着た二人の女性社員がいた。
シーラと同年代らしき、髪を頭頂部辺りで団子状に丸めた娘と、十八歳ぐらいのまだ少女と呼んでもいい年齢の娘だ。ちなみにシーラと違って中々の胸を持っている。
「……何用です」
表情を変えずに、シーラは尋ねる。
彼女達はシーラの部下。『特殊情報管理室』に所属する社員達だった。
シーラの冷たい声と圧力に、彼女達は一瞬怯むが、
「あ、あの、室長はどこに行かれたのでしょうか?」
と、お団子頭の女性社員が、勇気を振り絞って尋ねる。
「こ、今夜の『情報探査』は私達の番なんです。けど、オルドスさま……室長が本部長室のどこにもおられなくて……」
と、年上の社員の背中に隠れるようにもう一人の社員が言う。
シーラは、彼女の方を見つめた。
肩まである栗色の髪を左右で纏めた少女。
彼女は一か月前に配属された新入社員だ。元は親に売られたと聞いている。
そのまま《商品》として売買されるところをオルドスが拾い上げたのだ。シーラ達の室長は時々そういった不幸な娘を自分の配下――金糸雀にしていた。
そして新たなる金糸雀は、配属されたその日の夜にオルドスの寵愛を受ける。
当然だが、オルドスの容姿に本気で恐怖して泣き叫ぶ者達もいるのだが、そこはオルドスの人徳(?)か、神の魅力なのか。一夜もあれば、ほとんどの娘が彼に心酔し、虜になっていた。目の前の少女もそうだった。
(……しかし)
一か月前に配属されて、もう二巡目が回ってくるとは。
ちなみに、ローテーションのスケジュールに関しては、シーラは関与していない。
室長自らが組んでいるのである。
シーラは一切表情を変えずに、おどおどとした娘を見据えた。
少し身じろぐだけで、ゆさりっと揺れる。
……やはり、あの大きな胸が要因だろうか。
彼があの長い腕で後ろから捕らえるように包んで相手の胸に触れることを好むことはよく知っているが、どうも自分の時は、そこに少し不満があるように思える節がある。
入ったばかりの金糸雀に早く慣れてもらうために、優先的なローテーションを組んでいると信じたいところだが。
「…………」
シーラは無言だった。心なしか圧力が増したように感じる。
「シ、シーラさま」
すると、お団子頭の女性社員が再びシーラの名を呼んだ。
シーラは彼女に視線を移した。
「室長はおられません」
「……え?」
「戻ってこられる時期も未定です。従ってしばらく『情報探査』は中断となります。各室員にも連絡しておきなさい」
「そ、そんな!?」
「―――ッ!?」
お団子頭は愕然とし、新入社員の娘は口元を押さえて目を見開いた。
「ローテーションは今のままで維持です。室長がお戻り次第、再開となります。以上」
淡々とした声でそう告げて、シーラは背中を向けて歩き出した。
部下達はまだショックを受けているようで、ただ黙ってシーラを見送った。
シーラは、コツコツと歩き続ける。
そして、とある部屋で止まった。彼女の私室である部屋だ。
シーラは鍵を開けて部屋に入った。
そこは殺風景な部屋だった。簡素な机にパイプベッド。壁の内部に設置されたクローゼット。特徴としてそれぐらいしか挙げるような物がない部屋だ。
――いや、もう一つだけ目立つ物がある。
ベッドの上に抱き枕があるのだ。
シーラは、ツカツカとベッドまで進むと、その抱き枕を片手で掴み上げた。
ちらりと抱き枕を見やる。
それは、無地の枕ではなかった。
一人の少女の全身まで表す姿絵が描かれている枕だ。
年の頃は十二歳ほどか。
空色の髪に、翡翠色の瞳。驚くほど美麗な顔立ち。四肢は華奢で、肌は透き通るほどに白い。服装は足にスリットの入った白いドレスを纏っている。
姿絵は仰向けに横たわるデザインだった。なお少女の顔は無表情である。
「………」
シーラは、無言のまま抱き枕を裏返した。
そこには、表とは違うデザインが描かれていた。
少女は誰かを招くように両手を広げていた。胸元は大きくはだけており、ドレスの隙間から鎖骨のラインが見えている煽情的なデザインだ。
ちなみに無表情なのは変わらないが、微かに頬に朱が入っていた。
(……聖女たん抱き枕)
これは、確かそんな名前の商品だった。
犯罪組織・《黒陽社》。そのさらに裏のルートで取引されているアイテムだ。
彼女の手腕を以てしても、入手するのに困難を極めた一品である。
ちなみに別シリーズで『水のお姫さま抱き枕』や『皇女たん抱き枕』などもある。
「………」
シーラは無言のまま、抱き枕を、ポイっとベッドに放り投げた。
ボスン、とベッドの上に落ちる抱き枕。
直後、シーラは跳んだ。全体重を乗せた肘鉄を抱き枕に喰らわせる!
パイプベッドが大きく軋み、抱き枕がくの字に曲がった。
シーラは続けて、抱き枕の上に馬乗りになった。
そして、心底不快そうに眉をしかめた。
「……どうしてなの」
どうして、この女なのか。
何故、私ではないのか。
何度もそう思った。
「……オルドス」
シーラは、彼を愛していた。
野垂れ死ぬ寸前に出会った怪物。最初は死神かと思った。
事実、死神だった頃もあったそうだ。
彼に拾われ、シーラは食事や寝床に加え、教育の機会まで与えられた。
それは、今でも心から感謝している。
だからこそ、恩人である彼の役に立てるように努力を続けた。
彼が実は人間の女性に興味があると知った時は、彼に純潔を捧げる覚悟をした。十四の時である。それほどの恩義と愛情を彼に抱いていたからだ。まあ、あの時は知識もロクになかったのに早まりすぎて、彼を喜ばせるどころか困らせてしまったが。
十六の頃には、持ち前の優れた才能とオルドスの後押しもあり、本部長代理兼、『特殊情報管理室』の副室長の役職に就き、名実ともに彼の右腕となった。
正直、この頃はかなり辛かった。
本部長代理としての激務の方はまだいい。
辛かったのは『特殊情報管理室』の副室長としての仕事だ。大前提として、彼が他の女を抱くのを容認しなければならなかったからだ。
女として本当に辛かった。
けれど、十八歳になった時、今度こそ彼に純潔を捧げることが出来た。
ようやく自分も彼の金糸雀になれたのだ。
あの夜の喜びは、今でも大切な思い出だった。
あれから金糸雀の数は増えたが、週に一度、必ず呼ばれるのは自分だけである。複数で呼ばれることが多い中、自分だけは一人で呼ばれることが多いのも密かな自慢だ。
勿論、『情報探査』の時だけではない。
プライベートでだって、彼には求められている。
今回の外出の件も聞いたのはプライベートの時。彼の腕の中でだ。
金糸雀達の中でも最も愛されている者。それが自分なのだ。
だというのに――。
「……私ではオルドスの子を産めない」
シーラは、両手でググっと抱き枕を握りしめた。
神であるオルドスの子は、神の因子を強く持つ者しか宿せない。
本当に無念だった。
オルドスの子を宿せるのは、まだまだ子供のこの女だけなのである。
肌の綺麗さは認めるが、胸など自分よりも小さいくせに。
そして、遂にオルドスはこの女を迎えに行った。
情報では、この女はまだ十八にはなっていないはずだが、恐らく、早めに連れてきて情操教育でもするつもりなのだろう。
金糸雀達のみに伝えてあるオルドスの悲願を、遂に実行するのだ。
準備は万全にして当然だった。
「………」
シーラは、引きちぎりそうな力で抱き枕を左右に引っ張った。
不満だ。不満だ。不満だ。
しかし、オルドスの願いはすべてに優先される。
それを叶えることこそが、シーラの――金糸雀達全員の『欲望』なのだ。
「不満はあるけど……」
シーラは、大きく嘆息する。
「オルドスのことを第一にしなくちゃ」
そう呟いて、彼女は抱き枕から手を離した。
次いで、抱き枕の少女の顔を見やる。着崩れた胸元辺りも。
「流石というべきか、確かに美貌は申し分ない。けど、その貧相の体ではオルドスを満足させるには全然足りないわ。ただ子供を産むだけなど論外よ。彼を悦ばせてこそ金糸雀なのだから。彼のために、せめて知識とテクニックぐらいは必要ね」
シーラは双眸を細めた。
そして――。
「あなたはオルドスの花嫁なのよ。それに相応しい教養を私が授けてあげるわ」
そう言って、シーラは微笑んだ。
彼女は、怪物の娘だった。
元々は戦争孤児。荒れ果てた街で野垂れ死ぬ直前だった。それを、その日たまたま出かけていた《冥妖星》の気まぐれで拾われた少女だった。
拾われた当時は十歳だったのだが、《冥妖星》のコネと意向で《黒陽社》に入社。教育と訓練を重ねて現在は二十一歳になっていた。
コツコツ、と彼女は通路を歩く。
紫に近い瞳に、腰まで伸ばしている、さらりとした同色の髪が風になびく。やや小柄でスレンダーな肢体には《黒陽社》では珍しく、黒いスーツではなく、金糸で縁取りした黒い制服とスカートだ。両足には黒のストッキングを履いている。
すれ違った《本社》に努める男性社員達は揃って彼女に目を奪われた。
それも仕方がないことだった。
何故なら彼女は《星神》だからだ。その美貌もまた群を抜いている。社内においてはかのリディア=ヒル、カテリーナ=ハリスとも並ぶ美女として知られていた。しかも、出世面においては、第5支部の支部長補佐であるカテリーナさえも凌いでいる。
彼女は若くして本部長代理であり、『特殊情報管理室』の副室長でもあるのだ。
カルロス=ランドヒルが《土妖星》として台頭するまで、彼女こそが若手最高の出世頭だったのである。
しかし、その重責のためか、表情は常に冷酷な女性だった。
無垢な赤ん坊であっても、顔色を一切変えずに殺す女。
そんな噂が彼女にはあった。
それゆえか、彼女の美貌に魅入っても声をかける者は少ない。
ただし、例外もあるが。
「――シーラさま!」
不意に背後から声が響く。
シーラは、髪を揺らして振り返った。
そこにはシーラと同じ制服を着た二人の女性社員がいた。
シーラと同年代らしき、髪を頭頂部辺りで団子状に丸めた娘と、十八歳ぐらいのまだ少女と呼んでもいい年齢の娘だ。ちなみにシーラと違って中々の胸を持っている。
「……何用です」
表情を変えずに、シーラは尋ねる。
彼女達はシーラの部下。『特殊情報管理室』に所属する社員達だった。
シーラの冷たい声と圧力に、彼女達は一瞬怯むが、
「あ、あの、室長はどこに行かれたのでしょうか?」
と、お団子頭の女性社員が、勇気を振り絞って尋ねる。
「こ、今夜の『情報探査』は私達の番なんです。けど、オルドスさま……室長が本部長室のどこにもおられなくて……」
と、年上の社員の背中に隠れるようにもう一人の社員が言う。
シーラは、彼女の方を見つめた。
肩まである栗色の髪を左右で纏めた少女。
彼女は一か月前に配属された新入社員だ。元は親に売られたと聞いている。
そのまま《商品》として売買されるところをオルドスが拾い上げたのだ。シーラ達の室長は時々そういった不幸な娘を自分の配下――金糸雀にしていた。
そして新たなる金糸雀は、配属されたその日の夜にオルドスの寵愛を受ける。
当然だが、オルドスの容姿に本気で恐怖して泣き叫ぶ者達もいるのだが、そこはオルドスの人徳(?)か、神の魅力なのか。一夜もあれば、ほとんどの娘が彼に心酔し、虜になっていた。目の前の少女もそうだった。
(……しかし)
一か月前に配属されて、もう二巡目が回ってくるとは。
ちなみに、ローテーションのスケジュールに関しては、シーラは関与していない。
室長自らが組んでいるのである。
シーラは一切表情を変えずに、おどおどとした娘を見据えた。
少し身じろぐだけで、ゆさりっと揺れる。
……やはり、あの大きな胸が要因だろうか。
彼があの長い腕で後ろから捕らえるように包んで相手の胸に触れることを好むことはよく知っているが、どうも自分の時は、そこに少し不満があるように思える節がある。
入ったばかりの金糸雀に早く慣れてもらうために、優先的なローテーションを組んでいると信じたいところだが。
「…………」
シーラは無言だった。心なしか圧力が増したように感じる。
「シ、シーラさま」
すると、お団子頭の女性社員が再びシーラの名を呼んだ。
シーラは彼女に視線を移した。
「室長はおられません」
「……え?」
「戻ってこられる時期も未定です。従ってしばらく『情報探査』は中断となります。各室員にも連絡しておきなさい」
「そ、そんな!?」
「―――ッ!?」
お団子頭は愕然とし、新入社員の娘は口元を押さえて目を見開いた。
「ローテーションは今のままで維持です。室長がお戻り次第、再開となります。以上」
淡々とした声でそう告げて、シーラは背中を向けて歩き出した。
部下達はまだショックを受けているようで、ただ黙ってシーラを見送った。
シーラは、コツコツと歩き続ける。
そして、とある部屋で止まった。彼女の私室である部屋だ。
シーラは鍵を開けて部屋に入った。
そこは殺風景な部屋だった。簡素な机にパイプベッド。壁の内部に設置されたクローゼット。特徴としてそれぐらいしか挙げるような物がない部屋だ。
――いや、もう一つだけ目立つ物がある。
ベッドの上に抱き枕があるのだ。
シーラは、ツカツカとベッドまで進むと、その抱き枕を片手で掴み上げた。
ちらりと抱き枕を見やる。
それは、無地の枕ではなかった。
一人の少女の全身まで表す姿絵が描かれている枕だ。
年の頃は十二歳ほどか。
空色の髪に、翡翠色の瞳。驚くほど美麗な顔立ち。四肢は華奢で、肌は透き通るほどに白い。服装は足にスリットの入った白いドレスを纏っている。
姿絵は仰向けに横たわるデザインだった。なお少女の顔は無表情である。
「………」
シーラは、無言のまま抱き枕を裏返した。
そこには、表とは違うデザインが描かれていた。
少女は誰かを招くように両手を広げていた。胸元は大きくはだけており、ドレスの隙間から鎖骨のラインが見えている煽情的なデザインだ。
ちなみに無表情なのは変わらないが、微かに頬に朱が入っていた。
(……聖女たん抱き枕)
これは、確かそんな名前の商品だった。
犯罪組織・《黒陽社》。そのさらに裏のルートで取引されているアイテムだ。
彼女の手腕を以てしても、入手するのに困難を極めた一品である。
ちなみに別シリーズで『水のお姫さま抱き枕』や『皇女たん抱き枕』などもある。
「………」
シーラは無言のまま、抱き枕を、ポイっとベッドに放り投げた。
ボスン、とベッドの上に落ちる抱き枕。
直後、シーラは跳んだ。全体重を乗せた肘鉄を抱き枕に喰らわせる!
パイプベッドが大きく軋み、抱き枕がくの字に曲がった。
シーラは続けて、抱き枕の上に馬乗りになった。
そして、心底不快そうに眉をしかめた。
「……どうしてなの」
どうして、この女なのか。
何故、私ではないのか。
何度もそう思った。
「……オルドス」
シーラは、彼を愛していた。
野垂れ死ぬ寸前に出会った怪物。最初は死神かと思った。
事実、死神だった頃もあったそうだ。
彼に拾われ、シーラは食事や寝床に加え、教育の機会まで与えられた。
それは、今でも心から感謝している。
だからこそ、恩人である彼の役に立てるように努力を続けた。
彼が実は人間の女性に興味があると知った時は、彼に純潔を捧げる覚悟をした。十四の時である。それほどの恩義と愛情を彼に抱いていたからだ。まあ、あの時は知識もロクになかったのに早まりすぎて、彼を喜ばせるどころか困らせてしまったが。
十六の頃には、持ち前の優れた才能とオルドスの後押しもあり、本部長代理兼、『特殊情報管理室』の副室長の役職に就き、名実ともに彼の右腕となった。
正直、この頃はかなり辛かった。
本部長代理としての激務の方はまだいい。
辛かったのは『特殊情報管理室』の副室長としての仕事だ。大前提として、彼が他の女を抱くのを容認しなければならなかったからだ。
女として本当に辛かった。
けれど、十八歳になった時、今度こそ彼に純潔を捧げることが出来た。
ようやく自分も彼の金糸雀になれたのだ。
あの夜の喜びは、今でも大切な思い出だった。
あれから金糸雀の数は増えたが、週に一度、必ず呼ばれるのは自分だけである。複数で呼ばれることが多い中、自分だけは一人で呼ばれることが多いのも密かな自慢だ。
勿論、『情報探査』の時だけではない。
プライベートでだって、彼には求められている。
今回の外出の件も聞いたのはプライベートの時。彼の腕の中でだ。
金糸雀達の中でも最も愛されている者。それが自分なのだ。
だというのに――。
「……私ではオルドスの子を産めない」
シーラは、両手でググっと抱き枕を握りしめた。
神であるオルドスの子は、神の因子を強く持つ者しか宿せない。
本当に無念だった。
オルドスの子を宿せるのは、まだまだ子供のこの女だけなのである。
肌の綺麗さは認めるが、胸など自分よりも小さいくせに。
そして、遂にオルドスはこの女を迎えに行った。
情報では、この女はまだ十八にはなっていないはずだが、恐らく、早めに連れてきて情操教育でもするつもりなのだろう。
金糸雀達のみに伝えてあるオルドスの悲願を、遂に実行するのだ。
準備は万全にして当然だった。
「………」
シーラは、引きちぎりそうな力で抱き枕を左右に引っ張った。
不満だ。不満だ。不満だ。
しかし、オルドスの願いはすべてに優先される。
それを叶えることこそが、シーラの――金糸雀達全員の『欲望』なのだ。
「不満はあるけど……」
シーラは、大きく嘆息する。
「オルドスのことを第一にしなくちゃ」
そう呟いて、彼女は抱き枕から手を離した。
次いで、抱き枕の少女の顔を見やる。着崩れた胸元辺りも。
「流石というべきか、確かに美貌は申し分ない。けど、その貧相の体ではオルドスを満足させるには全然足りないわ。ただ子供を産むだけなど論外よ。彼を悦ばせてこそ金糸雀なのだから。彼のために、せめて知識とテクニックぐらいは必要ね」
シーラは双眸を細めた。
そして――。
「あなたはオルドスの花嫁なのよ。それに相応しい教養を私が授けてあげるわ」
そう言って、シーラは微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる