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第8部
第八章 偽りの《悪竜》④
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「……兄上」
シャールズは淡々と語り出した。
「私はずっと貴方を羨んでいた。気付いていましたか?」
「…………」
ザインは何も答えない。
静かに両腕を組み、弟の言葉に耳を傾ける。
ザインの近くに立つガダルもまた、兄弟の確執に他人が口を挟むべきではないと判断して沈黙を見せていた。
シャールズは語り続ける。
「幼き日より私はずっと貴方と比較され続けてきた。そしてずっと『劣る弟』として評価されてきた。その心労がどれほどのモノか。貴方に分かりますか?」
弟の淡々とした声に、兄はまだ何も答えない。
シャールズは小さく嘆息した。
「先程、どうしてベスニア殿の計画に乗ったのか。そう尋ねられましたね。その答えは簡単です。ただ、私の心が限界だったからです」
そこで痩身の青年はガダルを一瞥した。
「ベスニア殿の計画も、ウォルター=ロッセンとの邂逅も切っ掛けに過ぎない。私の心に積りに積もった激情が限界に至った。それだけです」
「………ふん」
ザインは鼻を鳴らした。
「そんで俺の暗殺かよ。随分と憎まれちまったようだな」
と、わずかに哀愁を宿した声で呟く。
すると、シャールズはかぶりを振った。
「憎んでなどいませんよ。むしろ今でも貴方を尊敬しています」
「……なに?」ザインは眉根を寄せた。
「お前は俺が疎ましいから俺を殺そうとしたんだろ?」
と、尋ねるザインに、シャールズは再びかぶりを振った。
「怒りや不満を抱いたことは数知れずあります。ですが、憎しみを抱いたことだけは一度もない。貴方は私が目指す目標でもありましたから」
そこでシャールズは力なく嘆息した。
「ただ、私にとって貴方の存在は大きすぎた。貴方の影で私という存在がすべて呑み込まれてしまうほどに貴方は巨大すぎた」
乗り越えるべき大きな壁。
しかし限りの見えない状況に、シャールズは絶望した。
もはや乗り越えることなど不可能なぐらい果てしない絶壁。
だからこそ思ったのだ。
今より前に進むには、この壁を壊す以外に方法はない、と。
「私は永遠に貴方には届かない。兄弟だからこそ、それを悟ってしまった。だから私は貴方を殺すことにしたのです」
「……馬鹿なことを」
その時、沈黙していたガダルが哀しげに片眉を上げた。
「ザイン殿はお前のたった一人の家族ではないか。仮にザイン殿を殺してガロンワーズの当主になってもお前の心は決して晴れはしないぞ。むしろ、もはや超えることも立ち向かうことも出来なくなったザイン殿の幻影に苛まれるだけだ」
「……確かにそうかもしれませんね」
ガダルの指摘に、シャールズはわずかに肩を落とした。
「たとえ兄を殺しても、兄が生きた軌跡が消える訳ではない。今度はずっと兄の幻影を追うことになるでしょうね」
ガダルが眉間にしわを刻む。
「それが分かっていて、何故ザイン殿を殺そうとする?」
「それでも……もう限界なんですよ。兄の影の中で生き続けるのは……」
シャールズは絶望さえ混じった息を零す。
一方その傍らで、当事者であるザインはやれやれと嘆息していた。
「いや、あのなシャールズよ」
ザインは弟に話しかける。
「お前は随分と俺を買ってくれるが、俺はそんな凄い人間じゃないぞ。息抜きと評して闘技場で遊び、夜は気の合うダチと酒場で駄弁る。好きな女の子には正面きって告白も出来ねえから政略結婚の体で近付く。どっちかつうとダメ人間の分類だ」
言っていて自分でも情けなくなってきたのか、ザインは深々と溜息をついた。
「お前は昔から色々と気にし過ぎなんだよ。俺がお前より勝っているものなんて、それこそお気楽さぐらいだ」
「…………」
今度はシャールズが無言になった。
静かな眼差しを兄に向けている。
「なあ、シャールズ」
ザインは優しい声で弟に語りかける。
「お前の気持ちはよく分かったよ。生真面目すぎるお前のことだ。きっと本気で悩み続けてきたんだろうな」
そう言って、弟にゆっくりと歩み寄る。
シャールズは何もせずその場に佇んでいた。
「けど、こうやってようやく本音を語ったんだ。本気でぶつかり合ったんだ。俺達はまだやり直せる。そう思わねえか。シャールズ」
ザインは歩み続ける。
そしてシャールズの前で立ち止まるとすっと右手を差し出した。
「シャールズ。今なら間に合う。どうか矛を収めてくんねえか」
ザインの表情は真剣そのものだった。
何も弟と対立したい訳でない。和解できるのならばそれに越した事はなかった。
恐らくは、最後のチャンスであろう和解交渉に、シャールズは兄の右手を見据えたまま沈黙し、ガダルは成り行きを見守った。
そうして数十秒の時間が経過し……。
「……兄上」
シャールズはポツリと呟き、右腕を動かした。青年の穏やかな表情に、ガダルがホッと胸を撫で下ろし、ザインがふっと笑った時、
――パァンッ!
夜の大通りに火薬の弾ける音が響いた。
同時にザインの大柄な身体が宙に跳び、背中から地面に倒れ込んだ。
ガダルは唖然としながら、シャールズの手元を見た。
そこには、白煙の昇る小さな筒が握られている。
それは見覚えのある道具だった。
少量の火薬を用いて球体状の鉄塊――弾丸を撃ち出す武器。『短銃』とも呼ばれ、単発ではあるが強力な対人用の武器であり、貴族御用達の護身具でもあった。
シャールズはそれを使ってザインを撃ったのだ。
「き、貴様!」
ガダルがザインの傍らに走り寄ると片膝をついた。
そして顔色一つ変えずに兄を見下ろすシャールズを睨みつける。
「――兄を! 実の兄を殺すとは!」
「ベスニア殿。何をそんなに激昂しているのです?」
シャールズの声には感情はなかった。
「私は兄を殺すと宣言していたはずです。それを実行しただけですよ」
「……貴様は……」
ガダルは鬼の形相で歯を軋ませた。
「ザイン殿はお前に立ち止まる機会を与えたのだぞ! その想いを踏みにじるとは!」
激情を露わにするガダル。
「私にとって、それは余計なお世話にすぎませんよ」
しかし、対するシャールズは冷淡そのものだ。
「――そう。何の覚悟もなく、私はこの場にいる訳ではありません」
そして横たわる兄を一瞥して皮肉気に笑う。
「どうやって兄を出し抜こうかと思っていましたが、まさか情に絆され、こうも無防備に近付いてくるとはね」
その言い草に、ガダルは激怒した。
「貴様……家族を何だと思っている!」
続けてシャールズを殴るために立ち上がろうとする――が、
「いや、そこまで無防備だったつもりはねえよ」
唐突に。
むくりと上半身を上げて、ガダルの代わりにザインが立ち上がった。
シャールズは大きく目を見開いた。ガダルも呆気に取られる。
「ば、馬鹿な……」
ごくりと喉を鳴らすシャールズ。
「どうして生きている! 弾丸を受け止めたとでも言うのですか!」
続けてそう叫ぶ弟に、ザインは呆れるような表情でかぶりを振った。
「そんなこと出来るかよ、アホか。まあ、師匠なら平然とやってのけそうだが、少なくとも俺にはそんな真似はできねえよ。ただ、お前の動きが少し怪しかったからな。咄嗟に心臓の上付近に左腕を構えただけだ」
「なん、ですって……」
愕然とした顔でシャールズは呻く。
「お前が何か仕込んでいるのは分かっていたよ」
対し、ザインの方は嘆息しつつ語り始めた。
「仕込みナイフか、その類のもの。それを不意打ちで俺の眉間か心臓にぶち込む。そう睨んでいたが正解だったようだな」
「……く」シャールズは歯を軋ませた。
「二分の一の確率。貴方はそれに勝ったという訳か」
もしも額を狙っていれば、この結果は変わっていたはずだ。
忌々しい。運さえも兄の味方をするということか。
「……くそ!」
あまりの不条理に、シャールズはより強く歯を軋ませる。が、
「二分の一じゃねえよ。お前が狙うとしたら絶対に心臓だと思っていた」
不意にザインが、そんなことを語り出した。
「さっき、俺を殺そうとした時、お前は背を向けたな。あれは勝利を確信したから背中を向けた。けど、俺の最期に興味を失くした訳じゃねえ」
弾丸の盾にしたため、血のにじむ左腕を一瞥してザインは言う。
「お前はただ俺の死に顔を見たくなかっただけだ。だから目をそむけたんだろ。なら嫌でも死に顔を見る事になる眉間はないと思ったよ」
兄の指摘にシャールズは、呆然と双眸を見開いた。
「……はは」
思わず笑いがこみ上げる。
「結局、私の浅い考えなど、貴方は全部お見通しだった訳か」
「……シャールズ」
ザインは静かな声で弟の名を呼んだ。同時に、ゴキンと右の拳を鳴らす。
「お前は踏み越えちゃあなんねえラインを踏み越えちまった。ガロンワーズ家の当主としてもう見過ごせねえ」
そう告げて、ザインは拳を固めて大きく踏み込んだ。
シャールズは何も答えない。
もう何をしても無駄だと悟っていた。
「シャールズ。馬鹿な弟よ。今、目を覚まさせてやるよ」
そうして鍛え抜かれた拳が風を切る!
その直後、ズドンッと重い音を上げてシャールズは仰け反った。
続けて両足が宙に浮き、何度も石畳の上でバウンドしてようやく止まる。
シャールズは、ピクリとも動かず倒れ伏した。
「す、凄まじい鉄拳だな」
人間離れした破壊力にガダルは頬を引きつらせる。
一方、ザインは弟の顔面を射抜いた拳を見据えて嘆息した。
そして大の字になって横たわる弟の元に歩み寄り――。
「アホが。呑気な顔でのびてんじゃねえよ」
苦虫を噛み潰したような口調で呟き、口角を崩した。
それから右腕を腰に置き、偽りの夜空を見上げて呟く。
「ともあれ、俺の方はこれで終わりだ。後は頼んだぜ。師匠」
シャールズは淡々と語り出した。
「私はずっと貴方を羨んでいた。気付いていましたか?」
「…………」
ザインは何も答えない。
静かに両腕を組み、弟の言葉に耳を傾ける。
ザインの近くに立つガダルもまた、兄弟の確執に他人が口を挟むべきではないと判断して沈黙を見せていた。
シャールズは語り続ける。
「幼き日より私はずっと貴方と比較され続けてきた。そしてずっと『劣る弟』として評価されてきた。その心労がどれほどのモノか。貴方に分かりますか?」
弟の淡々とした声に、兄はまだ何も答えない。
シャールズは小さく嘆息した。
「先程、どうしてベスニア殿の計画に乗ったのか。そう尋ねられましたね。その答えは簡単です。ただ、私の心が限界だったからです」
そこで痩身の青年はガダルを一瞥した。
「ベスニア殿の計画も、ウォルター=ロッセンとの邂逅も切っ掛けに過ぎない。私の心に積りに積もった激情が限界に至った。それだけです」
「………ふん」
ザインは鼻を鳴らした。
「そんで俺の暗殺かよ。随分と憎まれちまったようだな」
と、わずかに哀愁を宿した声で呟く。
すると、シャールズはかぶりを振った。
「憎んでなどいませんよ。むしろ今でも貴方を尊敬しています」
「……なに?」ザインは眉根を寄せた。
「お前は俺が疎ましいから俺を殺そうとしたんだろ?」
と、尋ねるザインに、シャールズは再びかぶりを振った。
「怒りや不満を抱いたことは数知れずあります。ですが、憎しみを抱いたことだけは一度もない。貴方は私が目指す目標でもありましたから」
そこでシャールズは力なく嘆息した。
「ただ、私にとって貴方の存在は大きすぎた。貴方の影で私という存在がすべて呑み込まれてしまうほどに貴方は巨大すぎた」
乗り越えるべき大きな壁。
しかし限りの見えない状況に、シャールズは絶望した。
もはや乗り越えることなど不可能なぐらい果てしない絶壁。
だからこそ思ったのだ。
今より前に進むには、この壁を壊す以外に方法はない、と。
「私は永遠に貴方には届かない。兄弟だからこそ、それを悟ってしまった。だから私は貴方を殺すことにしたのです」
「……馬鹿なことを」
その時、沈黙していたガダルが哀しげに片眉を上げた。
「ザイン殿はお前のたった一人の家族ではないか。仮にザイン殿を殺してガロンワーズの当主になってもお前の心は決して晴れはしないぞ。むしろ、もはや超えることも立ち向かうことも出来なくなったザイン殿の幻影に苛まれるだけだ」
「……確かにそうかもしれませんね」
ガダルの指摘に、シャールズはわずかに肩を落とした。
「たとえ兄を殺しても、兄が生きた軌跡が消える訳ではない。今度はずっと兄の幻影を追うことになるでしょうね」
ガダルが眉間にしわを刻む。
「それが分かっていて、何故ザイン殿を殺そうとする?」
「それでも……もう限界なんですよ。兄の影の中で生き続けるのは……」
シャールズは絶望さえ混じった息を零す。
一方その傍らで、当事者であるザインはやれやれと嘆息していた。
「いや、あのなシャールズよ」
ザインは弟に話しかける。
「お前は随分と俺を買ってくれるが、俺はそんな凄い人間じゃないぞ。息抜きと評して闘技場で遊び、夜は気の合うダチと酒場で駄弁る。好きな女の子には正面きって告白も出来ねえから政略結婚の体で近付く。どっちかつうとダメ人間の分類だ」
言っていて自分でも情けなくなってきたのか、ザインは深々と溜息をついた。
「お前は昔から色々と気にし過ぎなんだよ。俺がお前より勝っているものなんて、それこそお気楽さぐらいだ」
「…………」
今度はシャールズが無言になった。
静かな眼差しを兄に向けている。
「なあ、シャールズ」
ザインは優しい声で弟に語りかける。
「お前の気持ちはよく分かったよ。生真面目すぎるお前のことだ。きっと本気で悩み続けてきたんだろうな」
そう言って、弟にゆっくりと歩み寄る。
シャールズは何もせずその場に佇んでいた。
「けど、こうやってようやく本音を語ったんだ。本気でぶつかり合ったんだ。俺達はまだやり直せる。そう思わねえか。シャールズ」
ザインは歩み続ける。
そしてシャールズの前で立ち止まるとすっと右手を差し出した。
「シャールズ。今なら間に合う。どうか矛を収めてくんねえか」
ザインの表情は真剣そのものだった。
何も弟と対立したい訳でない。和解できるのならばそれに越した事はなかった。
恐らくは、最後のチャンスであろう和解交渉に、シャールズは兄の右手を見据えたまま沈黙し、ガダルは成り行きを見守った。
そうして数十秒の時間が経過し……。
「……兄上」
シャールズはポツリと呟き、右腕を動かした。青年の穏やかな表情に、ガダルがホッと胸を撫で下ろし、ザインがふっと笑った時、
――パァンッ!
夜の大通りに火薬の弾ける音が響いた。
同時にザインの大柄な身体が宙に跳び、背中から地面に倒れ込んだ。
ガダルは唖然としながら、シャールズの手元を見た。
そこには、白煙の昇る小さな筒が握られている。
それは見覚えのある道具だった。
少量の火薬を用いて球体状の鉄塊――弾丸を撃ち出す武器。『短銃』とも呼ばれ、単発ではあるが強力な対人用の武器であり、貴族御用達の護身具でもあった。
シャールズはそれを使ってザインを撃ったのだ。
「き、貴様!」
ガダルがザインの傍らに走り寄ると片膝をついた。
そして顔色一つ変えずに兄を見下ろすシャールズを睨みつける。
「――兄を! 実の兄を殺すとは!」
「ベスニア殿。何をそんなに激昂しているのです?」
シャールズの声には感情はなかった。
「私は兄を殺すと宣言していたはずです。それを実行しただけですよ」
「……貴様は……」
ガダルは鬼の形相で歯を軋ませた。
「ザイン殿はお前に立ち止まる機会を与えたのだぞ! その想いを踏みにじるとは!」
激情を露わにするガダル。
「私にとって、それは余計なお世話にすぎませんよ」
しかし、対するシャールズは冷淡そのものだ。
「――そう。何の覚悟もなく、私はこの場にいる訳ではありません」
そして横たわる兄を一瞥して皮肉気に笑う。
「どうやって兄を出し抜こうかと思っていましたが、まさか情に絆され、こうも無防備に近付いてくるとはね」
その言い草に、ガダルは激怒した。
「貴様……家族を何だと思っている!」
続けてシャールズを殴るために立ち上がろうとする――が、
「いや、そこまで無防備だったつもりはねえよ」
唐突に。
むくりと上半身を上げて、ガダルの代わりにザインが立ち上がった。
シャールズは大きく目を見開いた。ガダルも呆気に取られる。
「ば、馬鹿な……」
ごくりと喉を鳴らすシャールズ。
「どうして生きている! 弾丸を受け止めたとでも言うのですか!」
続けてそう叫ぶ弟に、ザインは呆れるような表情でかぶりを振った。
「そんなこと出来るかよ、アホか。まあ、師匠なら平然とやってのけそうだが、少なくとも俺にはそんな真似はできねえよ。ただ、お前の動きが少し怪しかったからな。咄嗟に心臓の上付近に左腕を構えただけだ」
「なん、ですって……」
愕然とした顔でシャールズは呻く。
「お前が何か仕込んでいるのは分かっていたよ」
対し、ザインの方は嘆息しつつ語り始めた。
「仕込みナイフか、その類のもの。それを不意打ちで俺の眉間か心臓にぶち込む。そう睨んでいたが正解だったようだな」
「……く」シャールズは歯を軋ませた。
「二分の一の確率。貴方はそれに勝ったという訳か」
もしも額を狙っていれば、この結果は変わっていたはずだ。
忌々しい。運さえも兄の味方をするということか。
「……くそ!」
あまりの不条理に、シャールズはより強く歯を軋ませる。が、
「二分の一じゃねえよ。お前が狙うとしたら絶対に心臓だと思っていた」
不意にザインが、そんなことを語り出した。
「さっき、俺を殺そうとした時、お前は背を向けたな。あれは勝利を確信したから背中を向けた。けど、俺の最期に興味を失くした訳じゃねえ」
弾丸の盾にしたため、血のにじむ左腕を一瞥してザインは言う。
「お前はただ俺の死に顔を見たくなかっただけだ。だから目をそむけたんだろ。なら嫌でも死に顔を見る事になる眉間はないと思ったよ」
兄の指摘にシャールズは、呆然と双眸を見開いた。
「……はは」
思わず笑いがこみ上げる。
「結局、私の浅い考えなど、貴方は全部お見通しだった訳か」
「……シャールズ」
ザインは静かな声で弟の名を呼んだ。同時に、ゴキンと右の拳を鳴らす。
「お前は踏み越えちゃあなんねえラインを踏み越えちまった。ガロンワーズ家の当主としてもう見過ごせねえ」
そう告げて、ザインは拳を固めて大きく踏み込んだ。
シャールズは何も答えない。
もう何をしても無駄だと悟っていた。
「シャールズ。馬鹿な弟よ。今、目を覚まさせてやるよ」
そうして鍛え抜かれた拳が風を切る!
その直後、ズドンッと重い音を上げてシャールズは仰け反った。
続けて両足が宙に浮き、何度も石畳の上でバウンドしてようやく止まる。
シャールズは、ピクリとも動かず倒れ伏した。
「す、凄まじい鉄拳だな」
人間離れした破壊力にガダルは頬を引きつらせる。
一方、ザインは弟の顔面を射抜いた拳を見据えて嘆息した。
そして大の字になって横たわる弟の元に歩み寄り――。
「アホが。呑気な顔でのびてんじゃねえよ」
苦虫を噛み潰したような口調で呟き、口角を崩した。
それから右腕を腰に置き、偽りの夜空を見上げて呟く。
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