悪竜の騎士とゴーレム姫【第12部まで公開】

雨宮ソウスケ

文字の大きさ
329 / 399
第11部

第一章 交流会、来たる①

しおりを挟む
 ――冬の寒さが微かに残る『2の月』の上旬。
 森の国・エリーズ国。
 その王都パドロにある騎士学校は今、一つの話題で持ちきりだった。

「さて。いよいよ交流会が近づいてきたんだが……」

 騎士学校の教室の一つ。
 このクラスの担任教師であるアイザック=ハリーが、教壇に手をついて告げる。

「交流先の学校も決まった。来るのは『アノースログ学園』の二回生だ」

「「「おお~」」

 生徒たちから、感嘆の声が上がる。

「やっぱ本命が来たな」「皇国一番の有名校か」「あれだろ? アノースログって、爵位持ちの貴族しか通ってねえっていう学校だろ?」

 ざわざわ、と生徒たちが騒ぎ出す。

「ああ~、静かにしろ、お前たち」

 アイザックが苦笑を浮かべた。

「まあ、お前たちが興奮する気持ちも分かるがな」

 今回の交流会は、過去に例のない初めての催しだった。
 隣国であるグレイシア皇国と、エリーズ国は長い間、不仲な間柄だった。
 時には戦争にまで発展した歴史もある。
 だが、近年になって徐々に交流関係も改善し、友好国に近い発展を遂げていた。
 そしてその友好の証の一つとして行われるのが、今回の交流会なのだ。
 未来を担う騎士学校同士の交流。
 二大国が、これからも友好を続けたいと願う象徴でもあった。

「お前達たちも知っての通り、皇国には三つの騎士学校がある」

 アイザックは言葉を続けた。

「『アノースログ』、『フルスコウ』、『ドレアレス』」

 三本の指を掲げる。

「元々は競い合わせるために分校にしたそうだ。その中でも今回、交流会に参加するアノースログは名門で知られる学校だ」

「「「おお~」」」

 と、再び声を上げる生徒たち。
 そんな中、一人の生徒が手を上げる。シルバという名前の少年だ。

「あれっすよね。アノースログって、レイハートみたいなガチの令嬢とか、お坊ちゃんが通っているっていう貴族御用達の学校なんすよね」

「まあ、他の二校や、うちとは違い、通うのは貴族とその従者だけとは聞いているな」

 アイザックが腕を組んで告げる。
 元々、王立の騎士学校とは貴族のためにあるものだ。
 多くの市民は日曜学校か、個人や市民団体で運営する学校に通う。例外としては、貴族の子弟の従者である者たちぐらいだった。
 しかし、昨今では、優秀な人材を幅広く募るため、貴族でない者にも騎士への門戸を開こうという動きが各国で盛んになっていた。エリーズ国の騎士学校もその一つだ。
 そういう意味では、アノースログ学園は、昔ながらの運営体制であり、今となっては珍しい学校とも言える。

「だが、本来貴族とは、騎士のサラブレッドとも呼べる者たちだ。その実力はやはり群を抜いている。そして、アノースログ学園は名門と呼ばれるだけあって厳しい学風でもあるそうだぞ。一方、お前たちは……」

 そう呟いて、アイザックは生徒たちの顔を見渡した。
 何だかんだで、このクラスは貴族出身者が多い。
 彼らは、市井の出の者にも差別しない度量が大きい生徒たちである。
 それは教師としては、とても誇らしいことだった。
 しかし、同時に、彼らは自由奔放すぎるメンバーでもあった。
 貴族も平民も関係なく、馬鹿騒ぎが大好きなのである。
 アイザックは、少し頭が痛くなってきた。

「なあ、お前ら」

 少しだけ、本気で提案する。

「交流会、レイハート以外、全員自宅待機する訳にはいかないか?」

「「「いやいやいや」」」

 全員が、パタパタと手を振った。

「なんでこんな面白そうなイベント、ぶっちしなきゃいけないんすか!」

「そうそう! しかも、深窓のご令嬢が集団でやってくるんだぜ!」

「きっと、王子さまみたいな人もいるよね~」

「うんうん」

 男女問わず、そんな声が挙がる中、

「流石に、わたくし一人で対応は無理かと」

 と、一人の女生徒が言う。
 美しい蜂蜜色の長い髪を、紅いリボンで結いだ美少女。
 スレンダーな肢体と、楚々たる仕草が印象的な、リーゼ=レイハートだった。
 礼節、実力を兼ね揃えた、アイザック自慢の生徒である。
 さらに言えば、彼女は公爵令嬢でもある。
 すでに、社交界での経験さえもあるそうだ。
 彼女ならば、どこに出しても恥ずかしくなかった。

「う~ん、じゃあ、ヒラサカも付けるぞ」

「それならば」

「いやいや、リーゼ」

 アイザックの提案に頷きかけたリーゼを、自席からコウタが止めた。

「学校同士の交流会なんだよ。二人だけで出迎えてどうするのさ」

「まあ、そうだよな」

 コウタのツッコミに、アイザックが苦笑を零した。

「自宅待機は冗談だ。しかし、本当にあまり羽目を外してくれるなよ。相手は他国の騎士候補生なんだ。お前らの態度がそのままこの国の印象になるんだからな」

 真剣な顔つきの教師に、生徒たちも少し面持ちを改めた。
 アイザックは、さらに言葉を続ける。

「なにせ、初めて行うイベントだ。何があるのか分からない。お前たちも、それだけは心掛けておいてくれ」

 生徒たちは、それぞれ頷いた。

「交流会で行う主なイベントは、いま学校で揉んでいるところだ。近日中には公開するから各自目を通してくれ。さて」

 アイザックは、一度言葉を切った。

「ともあれ、皇国の交流先の学校が決まった。今日の連絡は以上だ。今は通常授業だ。気持ちを切り替えろ」

 アイザックはそう言って、生徒たちに目をやった。
 そして――。

「それじゃあ、授業を始めるぞ」

 今日も一日が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

暁天一縷 To keep calling your name.

真道 乃ベイ
ファンタジー
   命日の夏に、私たちは出会った。  妖魔・怨霊の大災害「災禍」を引き起す日本国。  政府は霊力を生業とする者を集め陰陽寮を設立するが、事態は混沌を極め大戦の時代を迎える。  災禍に傷付き、息絶える者は止まない絶望の最中。  ひとりの陰陽師が、永きに渡る大戦を終結させた。  名を、斉天大聖。  非業の死を成し遂げた聖人として扱われ、日本国は復興の兆しを歩んでいく。  それから、12年の歳月が過ぎ。  人々の平和と妖魔たちの非日常。  互いの世界が干渉しないよう、境界に線を入れる青年がいた。  職業、結界整備師。  名は、桜下。    過去の聖人に関心を持てず、今日も仕事をこなす多忙な日々を送る。  そんな、とある猛暑の日。  斉天大聖の命日である斉天祭で、彼らは巡り会う。  青い目の検非違使と、緋色の髪の舞師。  そして黒瑪瑙の陰陽師。  彼らの運命が交差し、明けない夜空に一縷の光を灯す。 ※毎月16日更新中

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...