嘘つきは私かもしれない

koyumi

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第12話

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 どうにか頭をスッキリさせ、メイクも落として素の自分に戻った。が、いかんせん、パジャマとして脱衣所にあったものは受け入れるのに一苦労した。

「ったく何でこんな色気のある格好しなきゃなんないのよ」

 ピンクのシースルーのネグリジェは、お尻が隠れる長さで、とても人様に見せられるもんじゃない。
 私とて人並みにセクシーな下着を身につけたこともあったが、これは雑誌のモデルでしか着たらいけないものだろう。

「ったく、誰が好きこのんでこんなもの……」

 ブツブツ文句を言いながら浴室から出ると、

「全くだ。色気もクソもない。」

と、一番今聞きたくない声が降りかかってきた。しかもその声は一言で終わらない。

「胸はあっても脚が太いな。俺はどちらかというとスレンダーな女が好みなんだが、つくづく残念だ。」


「な、なんで、なんであんたがっ!?」

「なんでって言われてもなぁ、お前の夫だから?」

 したり顔でまた私の身体をじっと見ている。

「毛利が言ってただろ?”夫婦となるもの、既にお顔もお身体もご存知のもの”ってな。だから、よーく知っておかなきゃ、あとで彼奴らに何を言われるかわからないからな。」

「あんたって、あんたって、本気で最低な野郎だわっ!」

 私は両手で身体を隠し、睨みつけた。

「ふっ、だがこの手じゃ何もできない。残念だな。」

 そう言われて気がついた。そうだった。この人は今負傷中だ。見た目特に。

 仰々しく巻かれた白いテープを見せびらかし、夫はニヤリと口角を上げた。

「まあ、大したことないと言えばそうなんだが。どうしてもというならヤッたっていい。お望みなら。」

《バッチーンッ!》

「ふざけないでっ!だ、誰があんたなんかに身を捧げるものですか!?なめんじゃないわよっ!この、この、アンポンタン野郎!!」

 口が出る前に手が動いた。
 体中で拒否反応が出た結果だ。

「__っい、いってーなっ!お前、何しやがる!それに、アンポンタンだと!?」

「そうよっ!アンポンタンのポカポカポンのヘナチン野郎よっ!」

 もうどうにでもなれっ!!

 と思いながらも、もしかしたら打たれ返されるのではと思い、両手で顔を覆って夫の反撃を待った。

「…………」
「…………」

 あれ?

 ん?

 何も返ってこない。
 音すらしない。


 いつまで経ってもうんともすんとも言わないので、私は恐る恐る目を開いた。

 すると、あろうことか夫は、両手で顔を塞いだことであからさまになった私の胸元を凝視して顔を赤らめていた。

 私が指の隙間から覗いていることに気づいた夫は、バツの悪そうな顔をしていたが、やはりそこはすぐに開き直ったようだ。

「……ちっ、こんなことなら医務官など呼ばなきゃよかったな。そしたら今すぐにでもお前を押し倒してやりたい放題だったのに……」

 それは先程までの罵声とは比較にならないほど小声だったが、しっかりと私の耳に届いていた。

「相変わらず酷い言い様だけど、どういうことよ?なんで医務官が今出てくるわけ?」

「ん?あ、ああ……お前は今夜本当なら嫌でも俺に抱かれていた。だが、この手のおかげでそれを避けられたってことだ。俺の体は尊いからな。無理は禁物、医務官がそう判断して会長に話を通したのだろう。さっき食事の前に会長から予定は延期だと言われたからな。
 俺としてはお前を抱こうなど微塵も思ってなかったし、そんな気になる予定もなかったが……」

 まさかの展開だ。
 私が噛み付いたから難を逃れられたってことよね?この話って。
 それは解せた、解せたんだけど、どうにも腑に落ちないことが……。

「あのさぁ、ひょっとして今夜って初夜みたいな扱いだったわけ?」

「あ?そうだろ?遅いくらいだ。入籍はとっくにしたし、嫌でも夫婦なわけだし。」

「でも、その初夜ってわざわざ父親に許可がいるものなわけ?」

「いや。許可なんてもんじゃない。今日はわざと俺はことを知らせたくて医務官を使ったんだ。医務官がやめとけということを、わざわざ会長は無理強いしない。そういう人だ。だが、この手の怪我が治ったことが知れたらすぐにでも俺は夜の予定を全てキャンセルさせられて、お前と共に別館に閉じ込められるだろうな。
 孫の顔が待ちきれないそうだから。」

 もう、目が点だった。
 つまり、さっきの食事時の『2人の子供は可愛だろうなぁ』発言は社交辞令的な軽いノリではなく、本気発言だったのだ。

「でも、でも、何であんたが今ここにいるわけ?今日は避けられたんでしょ?」

 そうだそうだ。今日はキャンセルと会長自らお達しがあったとその口が言ったではないか。

「あ、ああ、お前の初夜用のネグリジェを回収し忘れたと母親が焦っている声を聞いたんだよ。だから、どんなものかと俺が自ら回収しにきただけだ。」

「回収?これを?しかも奥様が?」

「当たり前だろ?女物を会長が選ぶわけない。まして初夜のものは、従者が見極めるもんじゃないし、それは奥様である俺の母親の仕事だ。」

「これを!?こんなスケスケを奥様が!?」

 私は瞬時に思い出した。さっき本館で危うく着替えさせられる所だったが、どうにか阻止できて本当によかった。もしあのまま話が進んでいたら、私はどんな際どいものを着せられていたことだろう。

「……だが、まあまあだな。もう少し丈が長くないと、お前のムッチリした太腿は隠せないし……ああ、そうか、胸がデカイから丈が上がってしまったのか。」

 バコッ!

「いってーな!お前、お尻を叩くなんて俺の扱い酷すぎるぞっ!」

「うるさい!あんたの扱いが酷いんでしょうが!!ダメ!絶対無理!あんたなんかと絶対に寝ないわ。私の体に触れることは、断じて許さないから。わかったら出て行って!旦那っ!」

 私は夫のしまったお尻を思い切り叩いて追い出した。

 とんでもない1日目だった。
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