32 / 38
第32話
しおりを挟む
マッサージをしながら、私は恐る恐る聞いてみた。
「ねぇ、食べたの?」
「はぁ?何を?」
「だーかーらー、ご飯よ!!」
「……腹が減ってたからな……」
「ど、どうだった、のかしら?」
「だーかーらー、さっきも言っただろ?同じ味だったって。お前、料理できない奴だろ?」
バレたか……
「人にはね、得意なこともあれば苦手なこともあるわけで」
「言い訳がましい奴だなっ。苦手だろうが何だろうがあれじゃ困るからもう飯は作らなくていい。」
「はい?」
幾ら何でも酷すぎますね……
「飯は俺の方がうまいから今度食わせてやるよ。それよりお前、マッサージ上手いな。だからこれは毎晩やれよ。」
「なっ、毎晩!?褒められて嬉しいけど……手抜きすればよかった……」
実のところ、私は昔から指圧は得意らしく、両親の肩揉みはお手の物だった。
ただ、肉親以外の相手の体を揉んだことなどなく、これから毎晩となれば羞恥心というものも生じてしまう。
だって、さっきから感じてしまう。
夫の体にいかに筋肉がついているか、理想的なスタイルがこのTシャツの下に隠れているか。
「……はぁ……ほんと、気持ちいいな……詩豆……」
「ん?」
2人しかいない時に名前を呼ぶなど珍しいこともあるもんだ。
不覚にも、緊張してきた。
「…………お前は……わかって、ないな……」
「何を?何の話よっ、急に。」
わかってないだなんて意味不明。
それなのに、夫はそのまま眠ってしまった。
「ちょっと?寝ちゃったの?なんで?」
めちゃくちゃ消化不良なんですが……。
「ふぅ~」
とりあえず、食べた後の片付けをしようとキッチンに向かった。
が、そこには何もなかった。
既に食洗機が回っていた。
静音仕様すぎてわからないくらいだ。
テーブルもピカピカに拭かれており、シンクに水滴もない。
「か、完璧じゃん……」
所謂強敵である。
世話係が世話をする対象は、世話など必要ないくらいにデキる人なのだ。
「これより出来なきゃヤバいよね?減給とか言われちゃったりして……」
そもそも何故世話係が必要なのかとも思うが……。
たちまち、私は明日の朝ごはんのメニューを完璧にするべく、冷蔵庫とにらめっこをしながら夜を明かしたのである。
☆☆
「だーかーらー、しなくていいって言ったよな?」
「……はい。」
「それともなんだ?俺に対する嫌がらせか?」
「いえ……滅相もございません……」
朝から夫の機嫌を損ね、世話係として失態を晒してしまった。
「どうして食べ物を大事にしないんだ?フライパン使ったことあるのか?ないだろ?」
朝食の定番であるスクランブルエッグを作るべく、はりきって卵にマヨネーズいれてフワフワ感を出す工夫をしてみたというのに……
「卵が、あんなに早く煮えるとは思いませんでした……」
ちょっとウインナーを切っている間に、あれよあれよと卵がフライパンに焦げ付いてしまったのだ。
「第一、このフライパンは焦げ付かないように出来ているはずなのに。開発者にクレームを入れるべきか、お前でも使えるフライパンを新たに作ってもらうか……どちらかだな。」
「そんなっ……私なんぞの為に開発者さんの手を煩わすなんて……すみません、目を離した私が悪うございました。」
「基本だ。わかったら頼むからもうやめてくれ。いつか毛利がいる時にしっかり教えてもらってから作れ。いや、触われ。いつか火事になる。」
ものすごく腹が立つ言われ方だけど、痛いほど胸に響く。
お母さん、今日ほどあなたのお手伝いを避けていたことを悔やんだことはありません。
結局朝は食パンにバターを塗り、フルーツを盛ったもの、コーヒーというメニューで終了した。
「あの~」
「なんだ?」
「もし、もしもね?あなたが作るとしたら、どんなメニューを?」
うん。聞いておかなきゃ。いいチャンスかもしれない。
「俺が?……そうだな、白飯に豆腐とワカメの味噌汁に塩サバ焼いて漬物でもあれば十分じゃないか?あっただろ?塩サバ。」
「塩サバ……なるほど。」
切り身よね?それって……。
「ねぇ、食べたの?」
「はぁ?何を?」
「だーかーらー、ご飯よ!!」
「……腹が減ってたからな……」
「ど、どうだった、のかしら?」
「だーかーらー、さっきも言っただろ?同じ味だったって。お前、料理できない奴だろ?」
バレたか……
「人にはね、得意なこともあれば苦手なこともあるわけで」
「言い訳がましい奴だなっ。苦手だろうが何だろうがあれじゃ困るからもう飯は作らなくていい。」
「はい?」
幾ら何でも酷すぎますね……
「飯は俺の方がうまいから今度食わせてやるよ。それよりお前、マッサージ上手いな。だからこれは毎晩やれよ。」
「なっ、毎晩!?褒められて嬉しいけど……手抜きすればよかった……」
実のところ、私は昔から指圧は得意らしく、両親の肩揉みはお手の物だった。
ただ、肉親以外の相手の体を揉んだことなどなく、これから毎晩となれば羞恥心というものも生じてしまう。
だって、さっきから感じてしまう。
夫の体にいかに筋肉がついているか、理想的なスタイルがこのTシャツの下に隠れているか。
「……はぁ……ほんと、気持ちいいな……詩豆……」
「ん?」
2人しかいない時に名前を呼ぶなど珍しいこともあるもんだ。
不覚にも、緊張してきた。
「…………お前は……わかって、ないな……」
「何を?何の話よっ、急に。」
わかってないだなんて意味不明。
それなのに、夫はそのまま眠ってしまった。
「ちょっと?寝ちゃったの?なんで?」
めちゃくちゃ消化不良なんですが……。
「ふぅ~」
とりあえず、食べた後の片付けをしようとキッチンに向かった。
が、そこには何もなかった。
既に食洗機が回っていた。
静音仕様すぎてわからないくらいだ。
テーブルもピカピカに拭かれており、シンクに水滴もない。
「か、完璧じゃん……」
所謂強敵である。
世話係が世話をする対象は、世話など必要ないくらいにデキる人なのだ。
「これより出来なきゃヤバいよね?減給とか言われちゃったりして……」
そもそも何故世話係が必要なのかとも思うが……。
たちまち、私は明日の朝ごはんのメニューを完璧にするべく、冷蔵庫とにらめっこをしながら夜を明かしたのである。
☆☆
「だーかーらー、しなくていいって言ったよな?」
「……はい。」
「それともなんだ?俺に対する嫌がらせか?」
「いえ……滅相もございません……」
朝から夫の機嫌を損ね、世話係として失態を晒してしまった。
「どうして食べ物を大事にしないんだ?フライパン使ったことあるのか?ないだろ?」
朝食の定番であるスクランブルエッグを作るべく、はりきって卵にマヨネーズいれてフワフワ感を出す工夫をしてみたというのに……
「卵が、あんなに早く煮えるとは思いませんでした……」
ちょっとウインナーを切っている間に、あれよあれよと卵がフライパンに焦げ付いてしまったのだ。
「第一、このフライパンは焦げ付かないように出来ているはずなのに。開発者にクレームを入れるべきか、お前でも使えるフライパンを新たに作ってもらうか……どちらかだな。」
「そんなっ……私なんぞの為に開発者さんの手を煩わすなんて……すみません、目を離した私が悪うございました。」
「基本だ。わかったら頼むからもうやめてくれ。いつか毛利がいる時にしっかり教えてもらってから作れ。いや、触われ。いつか火事になる。」
ものすごく腹が立つ言われ方だけど、痛いほど胸に響く。
お母さん、今日ほどあなたのお手伝いを避けていたことを悔やんだことはありません。
結局朝は食パンにバターを塗り、フルーツを盛ったもの、コーヒーというメニューで終了した。
「あの~」
「なんだ?」
「もし、もしもね?あなたが作るとしたら、どんなメニューを?」
うん。聞いておかなきゃ。いいチャンスかもしれない。
「俺が?……そうだな、白飯に豆腐とワカメの味噌汁に塩サバ焼いて漬物でもあれば十分じゃないか?あっただろ?塩サバ。」
「塩サバ……なるほど。」
切り身よね?それって……。
0
あなたにおすすめの小説
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
今日でお別れします
なかな悠桃
恋愛
高校二年の碧は黒髪のショートボブ、眼鏡の地味な女の子。特別目立つこともなく学校生活を送っていたが、阿部貴斗との出会いによって環境がガラリと変わっていく。そして碧はある事を貴斗に隠していて...
※誤字、脱字等など見落とし部分、読み難い点申し訳ございません。気づき次第修正させていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる