嘘つきは私かもしれない

koyumi

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第32話

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 マッサージをしながら、私は恐る恐る聞いてみた。

「ねぇ、食べたの?」

「はぁ?何を?」

「だーかーらー、ご飯よ!!」

「……腹が減ってたからな……」

「ど、どうだった、のかしら?」

「だーかーらー、さっきも言っただろ?同じ味だったって。お前、料理できない奴だろ?」

 バレたか……

「人にはね、得意なこともあれば苦手なこともあるわけで」

「言い訳がましい奴だなっ。苦手だろうが何だろうがあれじゃ困るからもう飯は作らなくていい。」

「はい?」

 幾ら何でも酷すぎますね……

「飯は俺の方がうまいから今度食わせてやるよ。それよりお前、マッサージ上手いな。だからこれは毎晩やれよ。」

「なっ、毎晩!?褒められて嬉しいけど……手抜きすればよかった……」

 実のところ、私は昔から指圧は得意らしく、両親の肩揉みはお手の物だった。
 ただ、肉親以外の相手の体を揉んだことなどなく、これから毎晩となれば羞恥心というものも生じてしまう。
 だって、さっきから感じてしまう。
 夫の体にいかに筋肉がついているか、理想的なスタイルがこのTシャツの下に隠れているか。

「……はぁ……ほんと、気持ちいいな……詩豆……」

「ん?」

 2人しかいない時に名前を呼ぶなど珍しいこともあるもんだ。
 不覚にも、緊張してきた。

「…………お前は……わかって、ないな……」

「何を?何の話よっ、急に。」

 わかってないだなんて意味不明。

 それなのに、夫はそのまま眠ってしまった。

「ちょっと?寝ちゃったの?なんで?」

 めちゃくちゃ消化不良なんですが……。

「ふぅ~」

 とりあえず、後の片付けをしようとキッチンに向かった。

 が、そこには何もなかった。

 既に食洗機が回っていた。
 静音仕様すぎてわからないくらいだ。
 テーブルもピカピカに拭かれており、シンクに水滴もない。

「か、完璧じゃん……」

 所謂強敵である。
 世話係が世話をする対象は、世話など必要ないくらいにデキる人なのだ。

「これより出来なきゃヤバいよね?減給とか言われちゃったりして……」

 そもそも何故が必要なのかとも思うが……。

 たちまち、私は明日の朝ごはんのメニューを完璧にするべく、冷蔵庫とにらめっこをしながら夜を明かしたのである。

☆☆





「だーかーらー、しなくていいって言ったよな?」

「……はい。」

「それともなんだ?俺に対する嫌がらせか?」

「いえ……滅相もございません……」


 朝から夫の機嫌を損ね、世話係として失態を晒してしまった。

「どうして食べ物を大事にしないんだ?フライパン使ったことあるのか?ないだろ?」

 朝食の定番であるスクランブルエッグを作るべく、はりきって卵にマヨネーズいれてフワフワ感を出す工夫をしてみたというのに……

「卵が、あんなに早く煮えるとは思いませんでした……」

 ちょっとウインナーを切っている間に、あれよあれよと卵がフライパンに焦げ付いてしまったのだ。

「第一、このフライパンは焦げ付かないように出来ているはずなのに。開発者にクレームを入れるべきか、お前でも使えるフライパンを新たに作ってもらうか……どちらかだな。」

「そんなっ……私なんぞの為に開発者さんの手を煩わすなんて……すみません、目を離した私が悪うございました。」

「基本だ。わかったら頼むからもうやめてくれ。いつか毛利がいる時にしっかり教えてもらってから作れ。いや、触われ。いつか火事になる。」

 ものすごく腹が立つ言われ方だけど、痛いほど胸に響く。

 お母さん、今日ほどあなたのお手伝いを避けていたことを悔やんだことはありません。

 結局朝は食パンにバターを塗り、フルーツを盛ったもの、コーヒーというメニューで終了した。

「あの~」

「なんだ?」

「もし、もしもね?あなたが作るとしたら、どんなメニューを?」

 うん。聞いておかなきゃ。いいチャンスかもしれない。

「俺が?……そうだな、白飯に豆腐とワカメの味噌汁に塩サバ焼いて漬物でもあれば十分じゃないか?あっただろ?塩サバ。」

「塩サバ……なるほど。」 


 切り身よね?それって……。
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