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第38話
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はっきり言って、不釣り合いだと思った。
この車に、夫。
この私に、夫。
先程の告白からの密室に2人きり。寿命を縮める行為は、やはり私を愛しているとは言えないのではないかと思う。
ランチに選定されたお店は、創作イタリアンのこじんまりしたレストランだった。
街中ではあるが、かろうじて1台分の駐車場があり、このコンパクトカーがピッタリ入るサイズだった。
「ここに来るにはこの車しかないからな。」
「確かに。」
遠藤家の車はほとんどがセダンタイプで縦に長い。その為、この駐車場だと頭が飛び出てしまうだろう。
「とにかく上手いから勉強しろ。」
「勉強?」
「お前の手料理を食うのは俺だからな。意味がわからないフリはするなよ。」
「……つまり、この店の味になれと?」
「珍しく正解だ。」
知ってる?ここ、創作イタリアンだよ?和食とか、カレーとか、馴染みのメニューじゃないんだよ?
唖然としている私の腕を引っ張り、夫は店内に入った。
「いらっしゃいませ。坊っちゃま、お待ちしておりました。」
「ぬかりないな?」
「はい。勿論でございます。」
何がぬかりないといけないのか気になったが、何よりここのオーナーらしき人が『坊っちゃま』と言ったことに引っかかる。
「どうぞ、こちらでございます。」
そう言われて案内されたのは所謂奥座席。
いやいや、別にいいんじゃない?
だって、さっきドアに”貸切”プレート出してたわけだし、ひっそりと2人きりにならなくても……
「ボケッとせずにさっさと座れ。見つかる。」
「見つかる?誰に?なんで?」
「質問が多いやつだな。とにかくお前と2人だと乗り込む奴がいるらしいからな。」
「えぇ!?何なのそれ!」
と、驚きつつも、さすがに想像ついた。
つまり、藪坂さん対策なわけね。
でも、ここまで来るの?
「やたらとしつこい奴だからな。藪坂に似て。」
「は?藪坂さんじゃないの?」
夫は私の反応を見て、眉をしかめた。
ああ、こんな怖い顔しても、イケメンはイケメン……。世の中不公平ね。
それにしても、藪坂さんじゃないってことは、他にも後をつけてまで夫の気を引きたい女性がいるってことよね……。
一体何人いるんだろう。
私、相当憎まれてるんだろうな。
だからずっと屋敷から出られなかったんだ。まあ、SNSで話題になるくらいの人だし、仕方はないにしても……。
こんな状態のままで一生を終えたくない。
「私、本気でお世話するんで、どうやったらお給料アップできるのか教えて!でないといつか通り魔とかに合いそうだし、いち早く離婚するべきだわ。」
「……は?り、離婚だと?」
「そうよ。藪坂さんだけでもウンザリなのに、まだまだ他にも似たような女がいるなんて……」
「……女?お前、何か大きな勘違いしてないか?っていうより、俺じゃなくてお前の方だろ?」
「はい?私?全く意味がわからない。何なのこの会話。」
「いやいや、本気でその反応か?冗談だろ?」
夫は私をじっと凝視していたが、私は嘘はついてないし、意味がわかんないしで。
きっとその事に気付いたのか、大きなため息をついてから、口を開いた。
「……お前、段田章弘って名前に心当たりないか?あるだろ?」
「……だん、だ?だんだ?だんだ?だんだだんだだんだ……」
「いや、連呼されると話が変わる。」
「だって、だんだでしょ?だんだって言ったら……あ、段田?」
そうだった。いる、いたいた、私の中学の時の同級生だ。
「呼び捨てか……その段田がお前にストーキングまがいのことをしているのはわかってるのか?」
ストーキング?
ストーキング??
私を???
この車に、夫。
この私に、夫。
先程の告白からの密室に2人きり。寿命を縮める行為は、やはり私を愛しているとは言えないのではないかと思う。
ランチに選定されたお店は、創作イタリアンのこじんまりしたレストランだった。
街中ではあるが、かろうじて1台分の駐車場があり、このコンパクトカーがピッタリ入るサイズだった。
「ここに来るにはこの車しかないからな。」
「確かに。」
遠藤家の車はほとんどがセダンタイプで縦に長い。その為、この駐車場だと頭が飛び出てしまうだろう。
「とにかく上手いから勉強しろ。」
「勉強?」
「お前の手料理を食うのは俺だからな。意味がわからないフリはするなよ。」
「……つまり、この店の味になれと?」
「珍しく正解だ。」
知ってる?ここ、創作イタリアンだよ?和食とか、カレーとか、馴染みのメニューじゃないんだよ?
唖然としている私の腕を引っ張り、夫は店内に入った。
「いらっしゃいませ。坊っちゃま、お待ちしておりました。」
「ぬかりないな?」
「はい。勿論でございます。」
何がぬかりないといけないのか気になったが、何よりここのオーナーらしき人が『坊っちゃま』と言ったことに引っかかる。
「どうぞ、こちらでございます。」
そう言われて案内されたのは所謂奥座席。
いやいや、別にいいんじゃない?
だって、さっきドアに”貸切”プレート出してたわけだし、ひっそりと2人きりにならなくても……
「ボケッとせずにさっさと座れ。見つかる。」
「見つかる?誰に?なんで?」
「質問が多いやつだな。とにかくお前と2人だと乗り込む奴がいるらしいからな。」
「えぇ!?何なのそれ!」
と、驚きつつも、さすがに想像ついた。
つまり、藪坂さん対策なわけね。
でも、ここまで来るの?
「やたらとしつこい奴だからな。藪坂に似て。」
「は?藪坂さんじゃないの?」
夫は私の反応を見て、眉をしかめた。
ああ、こんな怖い顔しても、イケメンはイケメン……。世の中不公平ね。
それにしても、藪坂さんじゃないってことは、他にも後をつけてまで夫の気を引きたい女性がいるってことよね……。
一体何人いるんだろう。
私、相当憎まれてるんだろうな。
だからずっと屋敷から出られなかったんだ。まあ、SNSで話題になるくらいの人だし、仕方はないにしても……。
こんな状態のままで一生を終えたくない。
「私、本気でお世話するんで、どうやったらお給料アップできるのか教えて!でないといつか通り魔とかに合いそうだし、いち早く離婚するべきだわ。」
「……は?り、離婚だと?」
「そうよ。藪坂さんだけでもウンザリなのに、まだまだ他にも似たような女がいるなんて……」
「……女?お前、何か大きな勘違いしてないか?っていうより、俺じゃなくてお前の方だろ?」
「はい?私?全く意味がわからない。何なのこの会話。」
「いやいや、本気でその反応か?冗談だろ?」
夫は私をじっと凝視していたが、私は嘘はついてないし、意味がわかんないしで。
きっとその事に気付いたのか、大きなため息をついてから、口を開いた。
「……お前、段田章弘って名前に心当たりないか?あるだろ?」
「……だん、だ?だんだ?だんだ?だんだだんだだんだ……」
「いや、連呼されると話が変わる。」
「だって、だんだでしょ?だんだって言ったら……あ、段田?」
そうだった。いる、いたいた、私の中学の時の同級生だ。
「呼び捨てか……その段田がお前にストーキングまがいのことをしているのはわかってるのか?」
ストーキング?
ストーキング??
私を???
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