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第4話
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翌日、遅出の私はのんびりと朝支度をして、実家に寄って軽く朝食を食べた。
「本当になんで一人暮らし許したのかしら?食費くらいほしいわね。」
母のお小言は毎度のこと。さらっと聞き流し、出勤した。
更衣室で着替え、化粧室で口紅をひく。
(あ、そういえば、このメモ……。まっ、いいか、ここで捨てちゃお。)
ポケットから昨日吉澤さんが渡して来たメモを取り出し、ビリビリ破いて捨てた。
早出と遅出のシフト制の職場。
遅出は11時15分から19時15分まで。パートさんや家庭持ちのワーキングママさんさ、17時45分に帰宅できる早出を希望するが、独身で自宅が近い私は大体遅出の勤務体系である。
サロンが忙しくなるのはお昼を過ぎた14時頃。
今日もせわしなくお客様がご来店され、サロンに展示された、厳選された商品を背景に談笑している。
そして夕方17時半頃、昨日と同じように、吉澤さんとそのお客様、時計売り場の販売員が商談の為にご来店した。
「いらっしゃいませ。お席をご案内いたします。」
原岡さんは早出なので、私が担当についた。
飲み物のオーダーを受け、コーヒーメーカーのセットをする。
「大丈夫?吉澤さんおかしなことしてきたら代わるわよ。」
小声で言われたが、お客様もいるから大丈夫だと伝えると、ミーティングで席を外していた主任が戻ってきた。
「主任、今吉澤さんの商談が入ってます。」
と、伝えると、
「間に合ったわね。私が担当するわ。コーヒーでミルク2個必要な方よね。あのね、細川さんが、雛実ちゃんと打ち合わせしたいそうなの。休憩室なんだけど、今すぐ行ってくれる?」
と、指示された。
「細川さん?なんでしょうね?」
「サロンの展示品の事みたいよ。来週爬虫類バッグの展示でしょ?私、研修でいないから雛実ちゃんメインでお願いしたくて。」
「わかりました。では、いってきます。」
(うわー、主任の代わりかぁ。原岡さんはこの前やったからなぁ。)
忽ち、吉澤さんと関わらずにすんでほっとしたけれど、この先に訪れる危険な情事の香りに気づけなかった。
「細川さん、お待たせしてすみません。」
細川さんは、既に休憩室にいて、何やら書類をめくっていた。
外商部の事務方に当たり、売場と営業のパイプラインに当たる立場の細川さんは、仕事が早い上、手も早いと有名だった。だが、私は、その仕事ぶりに憧れていたので、警戒心など抱いていなかった。
「雛実ちゃんは服飾系の売場を希望していたんだよね?だから今回お願いしようと決めたんだけど、どうかな?できそう?いや、できる。雛実ちゃんなら大丈夫。」
一通り説明を受けた後、こんな風に激励され、私はやる気に溢れた。
「はい。頑張ってみます。よろしくお願いします。」
私のその返事にプッと吹き出した細川さん。
「楽しいな、雛実ちゃんは。言われない?天然?」
「天然?そうですか?言われた事ないですけど。」
「そうなんだ。面白いね。今日時間ある?打ち合わせも兼ねて夜一緒にどう?」
「打ち合わせですか?今のままじゃ足りないですか?」
「うん。そうだね。もう少し煮詰めたいかな。そろそろ売場に返してあげたいし、時間大丈夫ならそこの食堂ででもどうかな?僕は残業あるから食事したらまた事務所に戻るし、まあ30分くらいかな。」
「そうなんですか!?細川さん、やっぱり忙しいですね。わかりました。また連絡ください。待ってますから。」
「よかった。じゃ、メルアド交換しとこうか。」
「あ、はい。そうですね。じゃ、メモ書きますね。」
こうして私は細川さんに連絡先を教えてしまったのである。
もちろん、引っかかってしまったのだ。
「本当になんで一人暮らし許したのかしら?食費くらいほしいわね。」
母のお小言は毎度のこと。さらっと聞き流し、出勤した。
更衣室で着替え、化粧室で口紅をひく。
(あ、そういえば、このメモ……。まっ、いいか、ここで捨てちゃお。)
ポケットから昨日吉澤さんが渡して来たメモを取り出し、ビリビリ破いて捨てた。
早出と遅出のシフト制の職場。
遅出は11時15分から19時15分まで。パートさんや家庭持ちのワーキングママさんさ、17時45分に帰宅できる早出を希望するが、独身で自宅が近い私は大体遅出の勤務体系である。
サロンが忙しくなるのはお昼を過ぎた14時頃。
今日もせわしなくお客様がご来店され、サロンに展示された、厳選された商品を背景に談笑している。
そして夕方17時半頃、昨日と同じように、吉澤さんとそのお客様、時計売り場の販売員が商談の為にご来店した。
「いらっしゃいませ。お席をご案内いたします。」
原岡さんは早出なので、私が担当についた。
飲み物のオーダーを受け、コーヒーメーカーのセットをする。
「大丈夫?吉澤さんおかしなことしてきたら代わるわよ。」
小声で言われたが、お客様もいるから大丈夫だと伝えると、ミーティングで席を外していた主任が戻ってきた。
「主任、今吉澤さんの商談が入ってます。」
と、伝えると、
「間に合ったわね。私が担当するわ。コーヒーでミルク2個必要な方よね。あのね、細川さんが、雛実ちゃんと打ち合わせしたいそうなの。休憩室なんだけど、今すぐ行ってくれる?」
と、指示された。
「細川さん?なんでしょうね?」
「サロンの展示品の事みたいよ。来週爬虫類バッグの展示でしょ?私、研修でいないから雛実ちゃんメインでお願いしたくて。」
「わかりました。では、いってきます。」
(うわー、主任の代わりかぁ。原岡さんはこの前やったからなぁ。)
忽ち、吉澤さんと関わらずにすんでほっとしたけれど、この先に訪れる危険な情事の香りに気づけなかった。
「細川さん、お待たせしてすみません。」
細川さんは、既に休憩室にいて、何やら書類をめくっていた。
外商部の事務方に当たり、売場と営業のパイプラインに当たる立場の細川さんは、仕事が早い上、手も早いと有名だった。だが、私は、その仕事ぶりに憧れていたので、警戒心など抱いていなかった。
「雛実ちゃんは服飾系の売場を希望していたんだよね?だから今回お願いしようと決めたんだけど、どうかな?できそう?いや、できる。雛実ちゃんなら大丈夫。」
一通り説明を受けた後、こんな風に激励され、私はやる気に溢れた。
「はい。頑張ってみます。よろしくお願いします。」
私のその返事にプッと吹き出した細川さん。
「楽しいな、雛実ちゃんは。言われない?天然?」
「天然?そうですか?言われた事ないですけど。」
「そうなんだ。面白いね。今日時間ある?打ち合わせも兼ねて夜一緒にどう?」
「打ち合わせですか?今のままじゃ足りないですか?」
「うん。そうだね。もう少し煮詰めたいかな。そろそろ売場に返してあげたいし、時間大丈夫ならそこの食堂ででもどうかな?僕は残業あるから食事したらまた事務所に戻るし、まあ30分くらいかな。」
「そうなんですか!?細川さん、やっぱり忙しいですね。わかりました。また連絡ください。待ってますから。」
「よかった。じゃ、メルアド交換しとこうか。」
「あ、はい。そうですね。じゃ、メモ書きますね。」
こうして私は細川さんに連絡先を教えてしまったのである。
もちろん、引っかかってしまったのだ。
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