37 / 38
ep.37
しおりを挟む
桂木嘉人は立ち上がれなくなっていた。
状況を察した本部長は、ようやくその口を開いた。
「……申し遅れました。本部長の丸川です。こちらは部下の桂木です。貴方との契約は、誠に残念ですが白紙に戻します。不服がおありのようですが、文書にして送付致しますので、今日はお引き取りください。」
「なっ、あんたが上司だったのか?女が上司か……ふん、なかなかやるじゃないか。こういう社風は嫌いじゃない。だけど、カチコチ頭と仕事をするのはうちだって御免だ。ったく、急いで来たのに何だっていうんだ。ほんと、冷めざめするわっ。」
竹中健太はそう言い投げ、会議室を出て行った。
床にはまだ座り込んだままの桂木がいる。
「……まぁ、こちらの落ち度でもあるわ。あんな性分だとは思わなかったし。まさか、ね……公私は別けるべきだけど、あんな態度だと無理そうね……桂木、あと10分したら別のクリエイター探すから本部長室に来なさいよ。」
桂木の返事を待たず、本部長は出て行った。
(貴和子、ちゃん……)
桂木の脳内は悲しみに暮れていた。
悔しさよりも、貴和子が黙っていたことが悲しくて仕方なかった。
その頃、貴和子も出勤し、郵便局に切手購入に出ていた。
学校から徒歩5分先にある郵便局で、月に一度切手を購入する。その時間を、貴和子は結構好きだった。
ずっと事務室に籠っているよりは、たまには外を歩くのも清々しい。この時期の灼熱のアスファルトは、クラクラしそうになるが、それでも街行くOLさんやサラリーマンの姿を見ると、自分も社会の一員なのだと、背筋がシャキッとしてくる。
用事を済ませ、学校に戻る道中、信号待ちをしていると横断歩道の向こう側に健太を見つけた。
(な、なんであいつが……!)
貴和子にとって、今一番会いたくない相手だ。
健太も貴和子に気づいたのか、こちらを見てニヤリと笑った。
瞬間、背筋がゾッとした貴和子は、信号が青に変わっても動けずにいた。
「やあ、また会ったね。貴和子ちゃん。しかもこんなに早い段階で会えるなんて、ね。」
「ど、どうも……」
百戦錬磨の恋愛を繰り広げて来た健太と、恋愛初心者の貴和子の対面は、どう考えても健太に分があった。
「……怖がってんの?もしかして。キスした仲なのにさっ。」
「なっ、何言っちゃってんですか!?信じられない!」
「真っ赤な顔しちゃってさ、ほんと可愛いよね。貴和子ちゃんは。婚約者さんが羨ましいよ。」
「やめて下さいっ。が、関わらないで下さいっ!」
「いやいや、俺より貴和子ちゃんの視線がやばいっしょ?めちゃくちゃ俺のこと意識してるし。」
確かに貴和子は意識している。
だが、それは健太を否定したいがためのアンテナを張ってる為だ。
「ねえ、今から戻るの?まだ時間あるんじゃない?ちょっとジュースでも飲もうよ。」
状況を察した本部長は、ようやくその口を開いた。
「……申し遅れました。本部長の丸川です。こちらは部下の桂木です。貴方との契約は、誠に残念ですが白紙に戻します。不服がおありのようですが、文書にして送付致しますので、今日はお引き取りください。」
「なっ、あんたが上司だったのか?女が上司か……ふん、なかなかやるじゃないか。こういう社風は嫌いじゃない。だけど、カチコチ頭と仕事をするのはうちだって御免だ。ったく、急いで来たのに何だっていうんだ。ほんと、冷めざめするわっ。」
竹中健太はそう言い投げ、会議室を出て行った。
床にはまだ座り込んだままの桂木がいる。
「……まぁ、こちらの落ち度でもあるわ。あんな性分だとは思わなかったし。まさか、ね……公私は別けるべきだけど、あんな態度だと無理そうね……桂木、あと10分したら別のクリエイター探すから本部長室に来なさいよ。」
桂木の返事を待たず、本部長は出て行った。
(貴和子、ちゃん……)
桂木の脳内は悲しみに暮れていた。
悔しさよりも、貴和子が黙っていたことが悲しくて仕方なかった。
その頃、貴和子も出勤し、郵便局に切手購入に出ていた。
学校から徒歩5分先にある郵便局で、月に一度切手を購入する。その時間を、貴和子は結構好きだった。
ずっと事務室に籠っているよりは、たまには外を歩くのも清々しい。この時期の灼熱のアスファルトは、クラクラしそうになるが、それでも街行くOLさんやサラリーマンの姿を見ると、自分も社会の一員なのだと、背筋がシャキッとしてくる。
用事を済ませ、学校に戻る道中、信号待ちをしていると横断歩道の向こう側に健太を見つけた。
(な、なんであいつが……!)
貴和子にとって、今一番会いたくない相手だ。
健太も貴和子に気づいたのか、こちらを見てニヤリと笑った。
瞬間、背筋がゾッとした貴和子は、信号が青に変わっても動けずにいた。
「やあ、また会ったね。貴和子ちゃん。しかもこんなに早い段階で会えるなんて、ね。」
「ど、どうも……」
百戦錬磨の恋愛を繰り広げて来た健太と、恋愛初心者の貴和子の対面は、どう考えても健太に分があった。
「……怖がってんの?もしかして。キスした仲なのにさっ。」
「なっ、何言っちゃってんですか!?信じられない!」
「真っ赤な顔しちゃってさ、ほんと可愛いよね。貴和子ちゃんは。婚約者さんが羨ましいよ。」
「やめて下さいっ。が、関わらないで下さいっ!」
「いやいや、俺より貴和子ちゃんの視線がやばいっしょ?めちゃくちゃ俺のこと意識してるし。」
確かに貴和子は意識している。
だが、それは健太を否定したいがためのアンテナを張ってる為だ。
「ねえ、今から戻るの?まだ時間あるんじゃない?ちょっとジュースでも飲もうよ。」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる