私と離婚してください。

koyumi

文字の大きさ
9 / 89

離婚できないのなら

しおりを挟む
結果、私は望んだ誕生日プレゼントを貰えなかった。
25歳のページにもまた諭の姿が印刷されてしまうのか。

朝からお風呂でヤッてしまったから、家を出るのも遅くなり、タイムカードを通せたのは始業時間ギリギリだった。

「珍しいねー、依子ちゃんがこんなにギリギリなんて」
「あ、おはようございます。渋沢部長。」
「引越先決まった?」
「えっ?どうして部長がそれをご存知なんですか?」

慌てて来たから多分まだ髪の毛は乾いていない。なるべく10時くらいまでは誰かの近くに行かないように思案していたのだが。

「…たまたま見つけたんだよ。不動産入るとこ。で、興味あったから覗いてた。何探してんのかなって」
「覗くだなんて?!ぶ、部長!!」
「ハハハハっ。依子ちゃんはすぐに怒るね。まあ、そういう所はうちの会社にピッタリなんだけど。
で、引越すんだ?今のところじゃ狭いの?」
「…はぁ、まぁ、狭いっちゃ狭いですね。…嫌でも顔が見えるんで……あ、気にしないでくださいね。引越準備とかで仕事に手抜きとかしませんから。
それに、まだ決まってないんで、決まったら連絡しますね。総務の加藤さんでいいんですよね?」
「ぉ、おぅ…」
「あ、もし、次の人事異動があったら私、営業でも何でもやりますから、遠慮なく動かしてくださいねっ。とにかく仕事したいんで。」
「ぉ、おぅおぅ…」
「じゃ、私はこれで、失礼します。」

はぁー、どうにか渋沢部長を振り切れた。独身40歳の割とイケメン部長だが、私は苦手。
どこぞの誰かが40歳になったらあんな感じになりそう。
若い20代の女子社員を片っ端から飲みに誘って口説いてるってウワサ聞くし。
ま、私は今のところ、まだ既婚者だからそんなお誘い一度もないけど。

「あー、やだな。髪の毛が傷む。」
濡れたまましばったから、なかなか乾かないだろう。けれども、半乾きのミディアムレングスをながしたままにはできない。

「ふう~」
と、1人コピー室で午後からの資料が刷りあがるのを待った。
入社3年目。お茶汲みは卒業した。コピーも卒業したいが、後輩があまりにも機械音痴で任せられない。

家を出る前に、離婚しない条件として、生活費を頂く旨を示した文書をテーブルに置いてきた。
研修から2日休みの諭は、読んでくれただろうか?






「生活費、10万円を毎月10日、下記の口座へ振り込んでください……」

10、10万?!

生活費っていうからせいぜい5万くらいかと思っていた。
しかも、同じ場所に住んでいるのに、わざわざ振り込むなど面倒極まりない。

ーー口出し無用。

確かにそう言われたし、あのチビッこいボイスレコーダーに記録されている。
用途は聞いたらいけないのだ。

「……依子が1番なんだけどな…」

ボクサーパンツ一枚で、ダイニングチェアに座る諭は、依子が置いていった紙切れ一枚を、もう小一時間眺めていた。

諭の月収は手取りで23万円である。
それも、今回の研修でスキルアップして2万円上がったばかりである。
10万円も依子が持っていくとなれば、残金は13万円。
家賃は8万円。残り5万でどうすればいいのだろう。
光熱費は、依子の口座から引き落とされていて、イマイチ把握できていない。
「家賃は大黒柱の俺が払うべき」
とタカをくくり、この部屋を借りた。
学生時代の1DKに、社会人2人が住むのは手狭だと、卒業と同時にこの2LDKの部屋に引越したのだが、今となっては1DKで十分だったと思う。
子供が出来たら丁度いい間取りだとは思うが、まだ望んでいない。

「振り込み、か………」

よし、これだけはやめようと交渉しよう。
依子の口座がある銀行に諭は口座を持っていない。となれば、手数料は高くなるのではないか?
更に自分の手持ちが減るのはいかがなものか。

「まあいいか、案外マイホーム貯金とかしてくれるのかも。」
と、超がつく楽観的価値観を披露し、さっきから何度もホーム画面に現る、ラインの通知に返事することに思考を切り替えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...