47 / 89
限界
しおりを挟む
諭の忙しい日々は続き、ますます顔色は悪くなっていた。
最近は修也も夜泣きすることはなくなり、昼寝も安定してきていた。
それなのに、予想以上に自分の置かれた状況を受け入れるため、体は蝕まれていたようだ。
「肝臓の数値が悪いですね。再検査、行ってくださいね。」
会社の健康診断で判定結果が思わしくなく、勤務中にも関わらず、上司から病院に行くことを勧められた。すでに、社の方から手近な病院に予約済みだという。
タバコは吸わない。依子が嫌がったのもあるが、元々好きではなかった。
お酒だってここ1年くらいはそんなに飲んでいない。酔っ払う暇などなかった。
酒でもタバコでもないなら、肝臓の数値が何故悪いのか。
「相当なストレス溜めてますね。」
丸メガネの、自分より20歳くらい年上の医者から言われる。
「顔色も良くない。しっかりご飯も食べていないでしょう。たまには自分を労ってあげなさいよ。あぁ、だけど、油物や甘いものは控えてよ。」
知らなかった。病は気からと言うけれど、立証された場面を見たことがなかったから。
「ストレス、か……」
帰宅して修也の顔を見ると疲れも忘れた。仕事は、迷惑かけている部分はたくさんあるが、いろいろと助けられている。相変わらずいずみとは連絡がつかないが、少し前から諦めようと思ってきていた。
いずみとは入籍していない。
依子と離婚したばかりだったし、子供ができたことも、産まれて顔を見るまでは半信半疑だった。
いずみのことはそんなに深く知らなかった。ただ、自分以外に会っている男がいたことは知っている。
体の関係は俺だけだとは言っていたが、週に1回顔を見るか見ないかの間柄で、週6日に何をしているかなど追求したことはない。別に他に男がいてもなんら不思議はないし、俺だって依子がいた。
再会した時は、お腹が大きい姿で、俺が離婚するのをずっと待っていた、と涙ながらに言っていたけれど、関係を持っていた時は「好き」だとかの類の言葉を交わしたことはない。
だから逆に、本気で俺を好きだから言えなかったのかと理解した。
依子もそうだと思っていたから。
依子から「好き」や「愛してる」の言葉を言われたことはない。ベッドでの最中や、酔っ払った時に無条件で言われたことはあるかもしれないが、面と向かって恥ずかしげに告白を受けたことはなかった。
だが、それは、俺に対して本気だからあえて言えないのだと思い込んでいた。
だから、いずみから告白をされた時、やっぱり依子は俺を好きだったんだなと、勝手に自惚れた。
とはいえ、そんなことを確信しても、依子に復縁を迫ることなどできなくなったのだが。
修也が俺の子かどうか、今は検査ですぐにわかった。一応調べたのだ。
そういったことをされたのも、いずみとしては気に入らなかったのだろう。
修也には実の母親の愛情を、たくさん注いでやれたらと思う。
子供に繋がれた縁でも、家族になったからには大事にしてやりたいとも思っていた。
修也の夜泣きがなくなって、ホッとしたのも束の間。俺は長い夜に否応にも思い出す依子の姿に悩まされていた。
元気にやってるか?
寂しくはないか?
誰かのそばにいるのか……?
こんなことを考えている俺は、修也に悪いことをしていると思う。
とりあえず依子の顔を見ていないことが、救いだ。
もし、偶然が訪れ、街でバッタリ出会いでもしたら俺はきっと無視することを許さない。
他人であることに耐えられない。
再びその体を抱きたくなるだろう。
最近は修也も夜泣きすることはなくなり、昼寝も安定してきていた。
それなのに、予想以上に自分の置かれた状況を受け入れるため、体は蝕まれていたようだ。
「肝臓の数値が悪いですね。再検査、行ってくださいね。」
会社の健康診断で判定結果が思わしくなく、勤務中にも関わらず、上司から病院に行くことを勧められた。すでに、社の方から手近な病院に予約済みだという。
タバコは吸わない。依子が嫌がったのもあるが、元々好きではなかった。
お酒だってここ1年くらいはそんなに飲んでいない。酔っ払う暇などなかった。
酒でもタバコでもないなら、肝臓の数値が何故悪いのか。
「相当なストレス溜めてますね。」
丸メガネの、自分より20歳くらい年上の医者から言われる。
「顔色も良くない。しっかりご飯も食べていないでしょう。たまには自分を労ってあげなさいよ。あぁ、だけど、油物や甘いものは控えてよ。」
知らなかった。病は気からと言うけれど、立証された場面を見たことがなかったから。
「ストレス、か……」
帰宅して修也の顔を見ると疲れも忘れた。仕事は、迷惑かけている部分はたくさんあるが、いろいろと助けられている。相変わらずいずみとは連絡がつかないが、少し前から諦めようと思ってきていた。
いずみとは入籍していない。
依子と離婚したばかりだったし、子供ができたことも、産まれて顔を見るまでは半信半疑だった。
いずみのことはそんなに深く知らなかった。ただ、自分以外に会っている男がいたことは知っている。
体の関係は俺だけだとは言っていたが、週に1回顔を見るか見ないかの間柄で、週6日に何をしているかなど追求したことはない。別に他に男がいてもなんら不思議はないし、俺だって依子がいた。
再会した時は、お腹が大きい姿で、俺が離婚するのをずっと待っていた、と涙ながらに言っていたけれど、関係を持っていた時は「好き」だとかの類の言葉を交わしたことはない。
だから逆に、本気で俺を好きだから言えなかったのかと理解した。
依子もそうだと思っていたから。
依子から「好き」や「愛してる」の言葉を言われたことはない。ベッドでの最中や、酔っ払った時に無条件で言われたことはあるかもしれないが、面と向かって恥ずかしげに告白を受けたことはなかった。
だが、それは、俺に対して本気だからあえて言えないのだと思い込んでいた。
だから、いずみから告白をされた時、やっぱり依子は俺を好きだったんだなと、勝手に自惚れた。
とはいえ、そんなことを確信しても、依子に復縁を迫ることなどできなくなったのだが。
修也が俺の子かどうか、今は検査ですぐにわかった。一応調べたのだ。
そういったことをされたのも、いずみとしては気に入らなかったのだろう。
修也には実の母親の愛情を、たくさん注いでやれたらと思う。
子供に繋がれた縁でも、家族になったからには大事にしてやりたいとも思っていた。
修也の夜泣きがなくなって、ホッとしたのも束の間。俺は長い夜に否応にも思い出す依子の姿に悩まされていた。
元気にやってるか?
寂しくはないか?
誰かのそばにいるのか……?
こんなことを考えている俺は、修也に悪いことをしていると思う。
とりあえず依子の顔を見ていないことが、救いだ。
もし、偶然が訪れ、街でバッタリ出会いでもしたら俺はきっと無視することを許さない。
他人であることに耐えられない。
再びその体を抱きたくなるだろう。
1
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
離した手の温もり
橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる