私と離婚してください。

koyumi

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限界

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 諭の忙しい日々は続き、ますます顔色は悪くなっていた。
 最近は修也も夜泣きすることはなくなり、昼寝も安定してきていた。

 それなのに、予想以上に自分の置かれた状況を受け入れるため、体は蝕まれていたようだ。
 
「肝臓の数値が悪いですね。再検査、行ってくださいね。」

 会社の健康診断で判定結果が思わしくなく、勤務中にも関わらず、上司から病院に行くことを勧められた。すでに、社の方から手近な病院に予約済みだという。

 タバコは吸わない。依子が嫌がったのもあるが、元々好きではなかった。
 お酒だってここ1年くらいはそんなに飲んでいない。酔っ払う暇などなかった。
 酒でもタバコでもないなら、肝臓の数値が何故悪いのか。

「相当なストレス溜めてますね。」

 丸メガネの、自分より20歳くらい年上の医者から言われる。

「顔色も良くない。しっかりご飯も食べていないでしょう。たまには自分を労ってあげなさいよ。あぁ、だけど、油物や甘いものは控えてよ。」

 知らなかった。病は気からと言うけれど、立証された場面を見たことがなかったから。
「ストレス、か……」

 帰宅して修也の顔を見ると疲れも忘れた。仕事は、迷惑かけている部分はたくさんあるが、いろいろと助けられている。相変わらずいずみとは連絡がつかないが、少し前から諦めようと思ってきていた。

 いずみとは入籍していない。

 依子と離婚したばかりだったし、子供ができたことも、産まれて顔を見るまでは半信半疑だった。
 いずみのことはそんなに深く知らなかった。ただ、自分以外に会っている男がいたことは知っている。
 体の関係は俺だけだとは言っていたが、週に1回顔を見るか見ないかの間柄で、週6日に何をしているかなど追求したことはない。別に他に男がいてもなんら不思議はないし、俺だって依子がいた。

 再会した時は、お腹が大きい姿で、俺が離婚するのをずっと待っていた、と涙ながらに言っていたけれど、関係を持っていた時は「好き」だとかの類の言葉を交わしたことはない。

 だから逆に、本気で俺を好きだから言えなかったのかと理解した。
 依子もそうだと思っていたから。

 依子から「好き」や「愛してる」の言葉を言われたことはない。ベッドでの最中や、酔っ払った時に無条件で言われたことはあるかもしれないが、面と向かって恥ずかしげに告白を受けたことはなかった。
 
 だが、それは、俺に対して本気だからあえて言えないのだと思い込んでいた。
 
 だから、いずみから告白をされた時、やっぱり依子は俺を好きだったんだなと、勝手に自惚れた。
 とはいえ、そんなことを確信しても、依子に復縁を迫ることなどできなくなったのだが。

 修也が俺の子かどうか、今は検査ですぐにわかった。一応調べたのだ。

 そういったことをされたのも、いずみとしては気に入らなかったのだろう。
 
 修也には実の母親の愛情を、たくさん注いでやれたらと思う。
 子供に繋がれた縁でも、家族になったからには大事にしてやりたいとも思っていた。

 修也の夜泣きがなくなって、ホッとしたのも束の間。俺は長い夜に否応にも思い出す依子の姿に悩まされていた。

 元気にやってるか?
 寂しくはないか?
 誰かのそばにいるのか……?

 こんなことを考えている俺は、修也に悪いことをしていると思う。

 とりあえず依子の顔を見ていないことが、救いだ。
 もし、偶然が訪れ、街でバッタリ出会いでもしたら俺はきっと無視することを許さない。
 他人であることに耐えられない。
 再びその体を抱きたくなるだろう。
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