48 / 89
風邪
しおりを挟む
離婚したからといって、すぐに誰かの手を取ろうとは思わなかった。
それなのに、日に日にベッドの中でため息を増やす私は、自立していなかったのかもしれない。
寂しくてどうしようもない、の意味がわかる。
ほんと、どうしようもない。
「旅行でも行く?そんな余裕ないか……。」
会社と家の往復。
あれから高原さんに会うこともない。
マスターの所にも行かなくなった。
ひょっとしたら、また諭がいるかもしれないと思ったら、足が向かない。
だらだらと過ごす日々。
このまま何にもないまま、人生が終わって行くのだろうか。
そろそろ今年も終わる。
クリスマスのイルミネーションは、今やハッピーニューイヤーも兼ねており、街はいつまでも煌びやかだ。
部屋の立地がいいせいか、ベランダからも見える。
「ぅわっ!寒っ!」
一歩出て、あまりの寒さにすぐに部屋に入った。しかもお風呂上がりで、髪も乾ききっていない。
自堕落な一人暮らしが丸わかりだ。
バチが当たったのか、アラームがいくら鳴っても起き上がる気になれなかった。酷い頭痛だ。寒くて仕方がない。きっと、絶対熱がある。
今日は今年最後の出勤日。バタバタしてるし、休むのはマズイけれど、風邪は社会の敵だ。
とりあえず電話で状態を伝えた。
結果、やはり会社には来てはいけないと、早急に病院に行くように言われた。
『インフルエンザだったらどうするの!』と言われ、そういえば今流行ってるんだなとぼんやり思った。
ここから1番近い内科は早くも年末休みに入っていたため、仕方なく会社の近くのクリニックにタクシーで行った。
こんなとき、一人暮らしで実家が遠方だと、精神的にまいる。
前までは、諭のお義母さんがいたから車で病院に連れて行ってくれたし、消化のいいものを作って持って来てくれたりもした。
(……やばい。私、初めてだ……。)
病気の時に誰にも頼れない。
これは、全く予想していなかった寂しさだ。
病院内は、やはり年末で空いてるところが限られているせいか、混雑していた。
受付で症状を言い、問診票に記入して体温を測る。
不思議とここまではなんとかできる。
問題は、この後だ。
家では38.5度あった熱が、病院で測ると37.7度に下がっていた。だからか、普通に待合で長椅子に座って順番待ちをさせられた。熱は下がってきていたが、なんせ頭痛が酷い。体を横たえるスペースはないし、隣の人に寄りかかるわけにもいかない。
目を閉じ、重たい頭をフラフラさせていたら、どうやら気を失っていたらしい。
次に私が目を開けた時、そこはベッドの上だった。
硬さのある枕がちょうどいい。
腕には点滴が繋がれていて、それもそろそろ終わる頃だ。
少し体を横にズラすと、その音で看護師さんが気づき、声をかけてくれた。
「起きた?大丈夫?ビックリしたでしょう。」
50歳くらいの看護師さんが優しく心配してくれた。
「はい。あの、私もしかして……。」
「覚えてない?待合室でフラフラしていたから、声をかけたんだけど、返事がなくて。そしたら倒れ込んできたからベッドに運んだの。」
「私、倒れたんだ……。」
「待ってる間にまた熱があがっちゃったのね。インフルエンザではなかったけど、白血球の数が多いし、炎症反応もあるし、とにかくおとなしく寝ていてね。
もうすぐ先生来るから。」
初めてだ。倒れて記憶がないなど。
そんな自分に驚く。
それからすぐに点滴も終わり、処理をしてもらっていると医師が来て、詳しい状態を知らせてもらった。
その丸メガネの医師と看護師はよく見たら同じネームプレートで、夫婦であることがわかる。
メガネをかけていなければ、この2人はよく似ていることが一目瞭然だ。
仲良し夫婦は似てくるというが、それは同じものを食べているからだという。
つまり、夜はまっすぐ家に帰宅して同じ夕飯を食べているということだ。
きっと、この夫婦の場合、職場も同じだし朝昼晩と同じメニューを食べているのだろう。
私と諭は、似てるなどと言われたこともなかった。
同じ苗字のネームプレートをかけていても、たまたま一緒だったというだけだろう。
ぼんやりとそんなことを思っていると、薬も処方され、受付スタッフが持って来てくれた。
ここは院内処方。すごく助かる。
帰りは、熱も下がったし、頭痛もだいぶ楽になったから、歩いて帰ろうかと思った。
私がその病院を出て、30分後、諭も同じ病院にきたらしい。
そして私は帰り道、またもや高原さんに会ったのだ。
それなのに、日に日にベッドの中でため息を増やす私は、自立していなかったのかもしれない。
寂しくてどうしようもない、の意味がわかる。
ほんと、どうしようもない。
「旅行でも行く?そんな余裕ないか……。」
会社と家の往復。
あれから高原さんに会うこともない。
マスターの所にも行かなくなった。
ひょっとしたら、また諭がいるかもしれないと思ったら、足が向かない。
だらだらと過ごす日々。
このまま何にもないまま、人生が終わって行くのだろうか。
そろそろ今年も終わる。
クリスマスのイルミネーションは、今やハッピーニューイヤーも兼ねており、街はいつまでも煌びやかだ。
部屋の立地がいいせいか、ベランダからも見える。
「ぅわっ!寒っ!」
一歩出て、あまりの寒さにすぐに部屋に入った。しかもお風呂上がりで、髪も乾ききっていない。
自堕落な一人暮らしが丸わかりだ。
バチが当たったのか、アラームがいくら鳴っても起き上がる気になれなかった。酷い頭痛だ。寒くて仕方がない。きっと、絶対熱がある。
今日は今年最後の出勤日。バタバタしてるし、休むのはマズイけれど、風邪は社会の敵だ。
とりあえず電話で状態を伝えた。
結果、やはり会社には来てはいけないと、早急に病院に行くように言われた。
『インフルエンザだったらどうするの!』と言われ、そういえば今流行ってるんだなとぼんやり思った。
ここから1番近い内科は早くも年末休みに入っていたため、仕方なく会社の近くのクリニックにタクシーで行った。
こんなとき、一人暮らしで実家が遠方だと、精神的にまいる。
前までは、諭のお義母さんがいたから車で病院に連れて行ってくれたし、消化のいいものを作って持って来てくれたりもした。
(……やばい。私、初めてだ……。)
病気の時に誰にも頼れない。
これは、全く予想していなかった寂しさだ。
病院内は、やはり年末で空いてるところが限られているせいか、混雑していた。
受付で症状を言い、問診票に記入して体温を測る。
不思議とここまではなんとかできる。
問題は、この後だ。
家では38.5度あった熱が、病院で測ると37.7度に下がっていた。だからか、普通に待合で長椅子に座って順番待ちをさせられた。熱は下がってきていたが、なんせ頭痛が酷い。体を横たえるスペースはないし、隣の人に寄りかかるわけにもいかない。
目を閉じ、重たい頭をフラフラさせていたら、どうやら気を失っていたらしい。
次に私が目を開けた時、そこはベッドの上だった。
硬さのある枕がちょうどいい。
腕には点滴が繋がれていて、それもそろそろ終わる頃だ。
少し体を横にズラすと、その音で看護師さんが気づき、声をかけてくれた。
「起きた?大丈夫?ビックリしたでしょう。」
50歳くらいの看護師さんが優しく心配してくれた。
「はい。あの、私もしかして……。」
「覚えてない?待合室でフラフラしていたから、声をかけたんだけど、返事がなくて。そしたら倒れ込んできたからベッドに運んだの。」
「私、倒れたんだ……。」
「待ってる間にまた熱があがっちゃったのね。インフルエンザではなかったけど、白血球の数が多いし、炎症反応もあるし、とにかくおとなしく寝ていてね。
もうすぐ先生来るから。」
初めてだ。倒れて記憶がないなど。
そんな自分に驚く。
それからすぐに点滴も終わり、処理をしてもらっていると医師が来て、詳しい状態を知らせてもらった。
その丸メガネの医師と看護師はよく見たら同じネームプレートで、夫婦であることがわかる。
メガネをかけていなければ、この2人はよく似ていることが一目瞭然だ。
仲良し夫婦は似てくるというが、それは同じものを食べているからだという。
つまり、夜はまっすぐ家に帰宅して同じ夕飯を食べているということだ。
きっと、この夫婦の場合、職場も同じだし朝昼晩と同じメニューを食べているのだろう。
私と諭は、似てるなどと言われたこともなかった。
同じ苗字のネームプレートをかけていても、たまたま一緒だったというだけだろう。
ぼんやりとそんなことを思っていると、薬も処方され、受付スタッフが持って来てくれた。
ここは院内処方。すごく助かる。
帰りは、熱も下がったし、頭痛もだいぶ楽になったから、歩いて帰ろうかと思った。
私がその病院を出て、30分後、諭も同じ病院にきたらしい。
そして私は帰り道、またもや高原さんに会ったのだ。
1
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……
藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」
大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが……
ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。
「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」
エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。
エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話)
全44話で完結になります。
短編 政略結婚して十年、夫と妹に裏切られたので離縁します
朝陽千早
恋愛
政略結婚して十年。夫との愛はなく、妹の訪問が増えるたびに胸がざわついていた。ある日、夫と妹の不倫を示す手紙を見つけたセレナは、静かに離縁を決意する。すべてを手放してでも、自分の人生を取り戻すために――これは、裏切りから始まる“再生”の物語。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる