私と離婚してください。

koyumi

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第2章

倒れた理由

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 あの時、気分が悪いと退席した依子は、会場を出てすぐ配置されたソファベンチに座っていた。だが、少ししてから立ち上がると同時にフラッと倒れてしまったらしい。
 ちょうど別会場の清掃をしていた従業員が、一部始終目の端に入れていて、すぐさま駆け寄ったという。
 最初は声をかけても反応しなかったが、付き添いの男性が来て名前を呼ばれると、ようやく意識が戻ったのだという。

(立ちくらみか……。)

 依子が高校生の時、浴室で倒れたことがあった。
 たまたま母の使いで依子の家に届け物をしていたら、《ドッターン》と大きな音がして、おばさんは慌てて浴室に向かった。
 その時、『依子ぉ!?』と大きな声が聞こえたので、俺はすぐに荷物を放り、ズカズカと依子の元へと行った。
 浴室は開け放たれていて、真っ裸の依子が目を開いたまま倒れていた。倒れる瞬間、いろいろと無意識に掴んだのだろう。依子の周りに石鹸やらシャンプーやらが散乱していた。
 おばさんが依子の上半身を抱き上げ、必死に名前を呼ぶと、だんだんと依子の焦点が合ってきて、俺と目があった。
「はぁ?なんで、諭……?」
と言った後、状況を把握したのか
「ぎぁあ~~~~!!」
と悲鳴をあげて、その辺にあった石鹸を俺に投げつけてきた。
 おばさんも、依子の悲鳴を聞いて「諭君っ!い、いたのっ?!だ、大丈夫だからっ!あっち、あっち行ってなさいっ!」と背中を押してきた。

 確かに最初は依子の裸体を見て、その綺麗さに(うっ)と息を止めた。だが、すぐにその倒れた姿に恐ろしいものを感じていた。だから意識を取り戻した時、心底ホッとした。できればその体を抱きしめたかった。

 あれから依子は何度か立ちくらみをおこしていた。
 倒れた時は今自分が何者で、何をしているのかがわからなくなるらしい。だから目を開いていても違う世界に意識がとんでいるらしい。

 特別貧血とかはないが、依子の血圧は低めだった。

 今回もその類だったのだろう。
 高原は知っているのだろうか?
 そんな依子の体のことを。


ーー依子の全てを知っているのは、俺だけであってほしい。

 バカな考えが体中に充満している中、会議を終えた三条さんがこちらに向かってきた。
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