84 / 89
第2章
俺がしてきたこと
しおりを挟む
三条さんが車を止めた場所は、ラブホテルの駐車場だった。
「いや、それはないよ」
ついさっき見た依子のことを考えていたから、辿り着くまで周りの景色が見えていなかった。俺は濁したが、全く聞く耳持たずで怪しげな照明が光る建物内に入っていった。
「同じホテル業界として、気になることもあるのよ……なんてね。言い訳しても仕方ないわね。だって私はただあなたに抱かれたいだけだもの。」
なんだろう……。このデジャブ感。
コンビニ袋を片手に、馴れ馴れしく俺の腕に片乳を擦り付ける女。
ゴクリと喉を鳴らす俺。
そして、ドアを開く時に思い出すんだ……依子の顔を。
「ねえ、シャワーも一緒に浴びましょう。」
三条さんはすぐに衣服を脱ぎ始め、あっという間に全裸になった。
やっぱり、というか、見事なプロポーションは、数々の男との経験が見て取れる。
生理的な男の現象は、早くも俺の下半身で始まってはいるが、顔がどうしても笑えない。
「そんか怖い顔しないでよ。イヤなの?」
「ん!?」
ガシッと肩を掴まれて、唇を食われるようにキスをされた。その勢いに、俺は後ろのベッドに倒れこんでしまった。
このまま流れに乗って、三条さんを抱いてしまおうか?一回くらいヤッたっていいんじゃないか?襲われたのは俺の方だ。誘ったのはこの女だ。
ほら、この肉感、やみつきになるだろ?人間の素肌のぬくもり、落ち着くだろ?大丈夫、誰にも咎められやしない。誰にも遠慮しなくたっていい。
だからーーー!
俺は三条さんを下にして、ガッついてやろうかと勢いをつけた。
が、その顔を見て、俺は止まった。意外にも、彼女は目を見開いていた。そしてその瞳の奥に怯えを感じたからだ。
「……抱けない。」
一言そういい、俺は彼女から離れた。
なぜだ?違うだろ?そんな目で俺を見たらダメだろ?
案の定、鼻を鳴らし、涙を流し始めた三条さん。
「あ……あ、……っ、ど、して?……」
どうして?って、それはこっちが聞きたい。
そんなに怖いなら、なぜ服を脱いだんだ?こんな場所に来たんだ?俺を誘ったんだ?
「……好き、なの……冨樫さんのこと、好きなの……」
彼女の口から聞こえた声に、俺は狼狽えた。
少なからず、彼女は俺に好意を抱いていることは感じ取っていた。だが、それは決して純情ではなく、体の繋がりを求めるだけの関係を希望したものだと思っていた。
そういった女を、何人も知っているから。
だから、女と行為に及ぶ時、俺が脳裏に浮かべている顔は、いつだって依子だけだった。卑劣極まりない野郎だが、嬌声を上げている声の主が誰でも、それは依子だった。
だが、三条さんは違った。
彼女の目を見た時、依子の顔を浮かべられなかった。
彼女は違う……。
「……だったら……簡単には抱けない……。俺は、酷い男だから、残酷な男だから。」
「……じゃあ……依子って……」
「簡単にその名前を言わないで下さい。」
知られたくない。
俺がやってきた過去を、愛した女のことを。
「いや、それはないよ」
ついさっき見た依子のことを考えていたから、辿り着くまで周りの景色が見えていなかった。俺は濁したが、全く聞く耳持たずで怪しげな照明が光る建物内に入っていった。
「同じホテル業界として、気になることもあるのよ……なんてね。言い訳しても仕方ないわね。だって私はただあなたに抱かれたいだけだもの。」
なんだろう……。このデジャブ感。
コンビニ袋を片手に、馴れ馴れしく俺の腕に片乳を擦り付ける女。
ゴクリと喉を鳴らす俺。
そして、ドアを開く時に思い出すんだ……依子の顔を。
「ねえ、シャワーも一緒に浴びましょう。」
三条さんはすぐに衣服を脱ぎ始め、あっという間に全裸になった。
やっぱり、というか、見事なプロポーションは、数々の男との経験が見て取れる。
生理的な男の現象は、早くも俺の下半身で始まってはいるが、顔がどうしても笑えない。
「そんか怖い顔しないでよ。イヤなの?」
「ん!?」
ガシッと肩を掴まれて、唇を食われるようにキスをされた。その勢いに、俺は後ろのベッドに倒れこんでしまった。
このまま流れに乗って、三条さんを抱いてしまおうか?一回くらいヤッたっていいんじゃないか?襲われたのは俺の方だ。誘ったのはこの女だ。
ほら、この肉感、やみつきになるだろ?人間の素肌のぬくもり、落ち着くだろ?大丈夫、誰にも咎められやしない。誰にも遠慮しなくたっていい。
だからーーー!
俺は三条さんを下にして、ガッついてやろうかと勢いをつけた。
が、その顔を見て、俺は止まった。意外にも、彼女は目を見開いていた。そしてその瞳の奥に怯えを感じたからだ。
「……抱けない。」
一言そういい、俺は彼女から離れた。
なぜだ?違うだろ?そんな目で俺を見たらダメだろ?
案の定、鼻を鳴らし、涙を流し始めた三条さん。
「あ……あ、……っ、ど、して?……」
どうして?って、それはこっちが聞きたい。
そんなに怖いなら、なぜ服を脱いだんだ?こんな場所に来たんだ?俺を誘ったんだ?
「……好き、なの……冨樫さんのこと、好きなの……」
彼女の口から聞こえた声に、俺は狼狽えた。
少なからず、彼女は俺に好意を抱いていることは感じ取っていた。だが、それは決して純情ではなく、体の繋がりを求めるだけの関係を希望したものだと思っていた。
そういった女を、何人も知っているから。
だから、女と行為に及ぶ時、俺が脳裏に浮かべている顔は、いつだって依子だけだった。卑劣極まりない野郎だが、嬌声を上げている声の主が誰でも、それは依子だった。
だが、三条さんは違った。
彼女の目を見た時、依子の顔を浮かべられなかった。
彼女は違う……。
「……だったら……簡単には抱けない……。俺は、酷い男だから、残酷な男だから。」
「……じゃあ……依子って……」
「簡単にその名前を言わないで下さい。」
知られたくない。
俺がやってきた過去を、愛した女のことを。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……
藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」
大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが……
ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。
「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」
エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。
エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話)
全44話で完結になります。
短編 政略結婚して十年、夫と妹に裏切られたので離縁します
朝陽千早
恋愛
政略結婚して十年。夫との愛はなく、妹の訪問が増えるたびに胸がざわついていた。ある日、夫と妹の不倫を示す手紙を見つけたセレナは、静かに離縁を決意する。すべてを手放してでも、自分の人生を取り戻すために――これは、裏切りから始まる“再生”の物語。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる