私と離婚してください。

koyumi

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第2章

俺がしてきたこと

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 三条さんが車を止めた場所は、ラブホテルの駐車場だった。

「いや、それはないよ」

 ついさっき見た依子のことを考えていたから、辿り着くまで周りの景色が見えていなかった。俺は濁したが、全く聞く耳持たずで怪しげな照明が光る建物内に入っていった。
 
「同じホテル業界として、気になることもあるのよ……なんてね。言い訳しても仕方ないわね。だって私はただあなたに抱かれたいだけだもの。」

 なんだろう……。このデジャブ感。
 コンビニ袋を片手に、馴れ馴れしく俺の腕に片乳を擦り付ける女。
 ゴクリと喉を鳴らす俺。
 そして、ドアを開く時に思い出すんだ……依子の顔を。

「ねえ、シャワーも一緒に浴びましょう。」

 三条さんはすぐに衣服を脱ぎ始め、あっという間に全裸になった。
 やっぱり、というか、見事なプロポーションは、数々の男との経験が見て取れる。
 生理的な男の現象は、早くも俺の下半身で始まってはいるが、顔がどうしても笑えない。

「そんか怖い顔しないでよ。イヤなの?」
「ん!?」

 ガシッと肩を掴まれて、唇を食われるようにキスをされた。その勢いに、俺は後ろのベッドに倒れこんでしまった。
 このまま流れに乗って、三条さんを抱いてしまおうか?一回くらいヤッたっていいんじゃないか?襲われたのは俺の方だ。誘ったのはこの女だ。
 ほら、この肉感、やみつきになるだろ?人間の素肌のぬくもり、落ち着くだろ?大丈夫、誰にも咎められやしない。誰にも遠慮しなくたっていい。
 だからーーー!

 俺は三条さんを下にして、ガッついてやろうかと勢いをつけた。
 が、その顔を見て、俺は止まった。意外にも、彼女は目を見開いていた。そしてその瞳の奥に怯えを感じたからだ。

「……抱けない。」

 一言そういい、俺は彼女から離れた。
 なぜだ?違うだろ?そんな目で俺を見たらダメだろ?

 案の定、鼻を鳴らし、涙を流し始めた三条さん。

「あ……あ、……っ、ど、して?……」

 どうして?って、それはこっちが聞きたい。
 そんなに怖いなら、なぜ服を脱いだんだ?こんな場所に来たんだ?俺を誘ったんだ?

「……好き、なの……冨樫さんのこと、好きなの……」

 彼女の口から聞こえた声に、俺は狼狽えた。
 少なからず、彼女は俺に好意を抱いていることは感じ取っていた。だが、それは決して純情ではなく、体の繋がりを求めるだけの関係を希望したものだと思っていた。
 そういった女を、何人も知っているから。
 だから、女と行為に及ぶ時、俺が脳裏に浮かべている顔は、いつだって依子だけだった。卑劣極まりない野郎だが、嬌声を上げている声の主が誰でも、それは依子だった。
 だが、三条さんは違った。
 彼女の目を見た時、依子の顔を浮かべられなかった。
 彼女は違う……。

「……だったら……簡単には抱けない……。俺は、酷い男だから、残酷な男だから。」
「……じゃあ……依子って……」
「簡単にその名前を言わないで下さい。」

 知られたくない。
 俺がやってきた過去を、愛した女のことを。
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