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 気がつくとさっきまで神様と話していた白い空間では無く、豪奢な細工や調度品がふんだんに散りばめられた空間だった。

 僕のいた床には微かに光を放つ魔法陣があり、僕の近くには5人、僕と同じ召喚されたであろう日本人らしき人達がいた。周辺を見渡す人、混乱している人、冷静に考え込んでいる人、「な、なんだ?!ここはどこだ?!」と叫んでいる人などリアクションは様々だ。俺は神様から聞いていたので大丈夫だが何も知らなかったら俺も叫んだりしていた自信がある。

「静かにしろ! 国王の御前であるぞ!」

 首から上以外は全身を鎧で覆い、腰に西洋剣をぶら下げた見るからに強そうな男。その男の檄に召喚された者たちは大人しくなる。

「よい。楽にせよ」

 その強そうな男の奥に、これでもかと宝石を散りばめた椅子に座るこれまたとんでもなく金がかかってるのが分かる服に身を包んだ初老の男。おそらく誰が見てもこの場で一番偉いのは誰かと聞かれたらこの男と答えるだろう。

「儂がこの神王国ネビュラスの王である」

 やっぱり見るからに儂は偉いぞオーラを出していたのはこの国の王様だった。そこからは頭の良さそうな文官タイプの側近が説明してくれた。

 曰く、人間以外の種族、特に魔族は邪悪で人間を滅ぼそうとしている。
 曰く、魔族側に統率者はいなかったのだが最近になって魔王と名乗る者が現れ、魔族達が団結している。
 曰く、このままでは人間族が滅んでしまうので伝承に残る勇者召喚の儀を行い見事成功させた。

 他にも色々いってたが要点をまとめると召喚者達を魔族と戦わせるということだ。何という人権無視。断ったら周りを取り囲んでる槍やら剣を携えた騎士達が何をするか想像に難くない。

「分かりました。俺達が魔族の脅威から人々を救って見せましょう!」

 おお?! 何やら召喚者の一人が勝手に俺達の代表になったぞ? そいつは俺と同じ高校生くらいでいかにもな爽やかイケメンだった。名前は一ノ瀬輝いちのせあきららしい。名前まで勇者っぽいなー。

 それはともかくヤバいな。輝の発言で何となく俺以外の召喚者は人々を助ける勇者という立場を受け入れる方向に傾いている。神様もこの国はヤバいって言ってたしここから早く脱出しないと。

 一体どうすればいいんだ?!
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