Second Fantasy Online

伯爵

文字の大きさ
3 / 5

第三話 チュートリアルの終了

しおりを挟む
  草原から続く踏みしめられ、草も生えなくなった道を逸れ、足を覆うか否かの高さの草中を進めば、間も無くそれは姿を現した。

「鶏みたいだな」

  思わず呟いてしまったが、まさに姿形は鶏にしか見えない。
  大きさこそ通常の鶏より一回りは大きく、何やら足も太いがその程度の差異だ。
  その頭上をフォーカスすれば名前もまさにワイルドチキン。
  どうやらアクティブ属性らしく、クケェエェ! などと威嚇しながらこちらに向かってくる。

「AI故か、意志を感じぬ。威を感じぬ。恐るるに足らず」

  苦笑と共に初期装備の片手剣を素早く剣帯から抜き放ち斬りつける。
  狙い違わず首筋をなで斬れば、急所判定故かあっさり光の粒子となり消え去ってしまった。
  視界端のログには経験値と素材らしきドロップの名前だけが簡素に流れている。

「流石に最序盤では苦戦させる要素もないか」

  これでは剣の理を披露する暇もないか、是非も無しとならばと色々試すまで。





  それからSFO内で一時間ばかり。
  現実で三十分が経過した頃、剣鬼は頃合いかと鶏相手の試し斬りを中断する。
  幾つか情報サイトと差異が見受けられた為だ。
  先ず、ベータテストではこのある種チュートリアルマップでも装備のドロップが確認されていた。
  都合50体近く鶏を倒したが落としたのは素材と思しき幾つかのドロップのみ。
  後はレアドロップと見られる、情報サイトにもあった換金アイテム銀の卵三個のみだ。

  他にも旅人の初期物理スキル、横薙ぎに剣を振るうスラッシュのダメージ倍率が変化している可能性が高い。
  硬直時間もベータテストより若干短いと思われた。
  また、いわゆる通常攻撃にもなんらかの倍率判定が組まれてるとしか思えない場面が見受けられた。
  急所判定やクリティカル判定とは明らかに別の枠だろう。
  ベータテスト通りなら、通常攻撃でのダメージはSTR×1+(物理攻撃力×1-相手物理防御力)×主属性耐性%×1となる。

「明らかになんらかの補正が入ってる時がある……」

  どこにどんな補正が加わってるのかは不明だが、スキル主体のスキル習得は避けたい剣鬼にとっては朗報である。
  アクティブスキルの類は強力だが、剣鬼が現実で振るう剣術とはあまりに相性が悪かった。
  強制的な肉体アシストもそうだし、技後硬直に至っては論外だ。
  練ったエネルギーを絶えず内で回し、より洗練させ次へと繋ぐのが基礎理論なのだから。

「……まぁ、SFOじゃ内力の類は認識されないみたいだけど」

  如何な現実をもした第五世代仮想現実とは言え、そこまでの演算は組まれていないらしい。
  同時に殺人刀の十八番たる殺気、気合の類もダメとなれば、剣鬼にとっては片手をもがれたに等しいだろう。

「プレイするのはやまったかも……」

  誰が思うだろうか、現実より下手すれば仮想の方が動きが悪くなるなど。
  しかもSFOにおいてAGIの上昇は単純に動きの高速化を示さない。
  身体能力の向上は主に物理系ステータスの総合及び、スキルやバフの効果が主になる。
  そうなると暫くは現実より鈍い身体を使っての戦闘がメインとなるのだから、ある意味縛りプレイか、もしくはドM思考か。
  どっちにしても、とある事情でSFOをプレイしている剣鬼のモチベーションは低くなる一方だ。

「ステ振りは王都行って、剣士クラスに就いてからでいいな」

  初期クラスの旅人に旨味はないし、極める事で就けるストレンジャーのクラスも興味はない。
  ならある程度の勝手が分かった段階でさっさと進むべきだろう。
  そう思考をまとめ外れた道筋を修正がてら、時折現れるワイルドチキンを蹴散らしていく。

「あっ、激レアドロップ」

  通算70体に迫ろうかという段階で、如何にもなファンファーレが鳴り響き、ログに黄金の卵のドロップが流れる。
  鶏500体で期待値一個と考えれば上等すぎる確率だ。
  単なる換金アイテムだが、レアドロップはレアドロップ。
  多少浮ついた気持ちに鼻歌を交えながら、初夏手前の暑さを照り付ける太陽の下を歩き出す。

「……日向ぼっこしたい」

  もう間も無くインスタンスフィールドを抜ける外だが、こうも見事な物理演算、麗らかな陽気では抗いがたい欲求だ。
  とは言えそれではSFOにログインしてる意味がないと、欲望に抗いある事数分……

  ––––王都周辺、ハリナ草原125chにログインしました。

  というテロップがログに流れる。
  同時、今までの静寂が嘘のように耳に届く数々の音の乱舞。
  見渡せば数名自分と同じく呆気にとられている思われる、初心者ニュービーが数名。
  視界に見えるだけでも10組近いパーティがワイルドチキンや情報サイト曰く、ブルースライム、ハリナ草原最強種のゴブリンを相手に戦闘を繰り広げている。

  既に一時職に就いてるのだろう、初期魔法のファイアボルトが眩い火花をあちらこちらで炸裂させている。
  その様はまさしく、正式リリースを迎えたばかりのMMOにおけるスタートダッシュを競う光景だった。

「なんかいいな、こういうの。垣根は違うけど、正しく上を目指さんとする姿ってさ」

  思わず零れた言葉に、耳にしたらしい獣人のプレイヤーが何言ってんだ? と言わんばかりにこちらを見やるが、剣鬼は素知らぬばかりに歩き出す。
  とにもかくにも転職だと、視界の奥に見える石造りの立派な外壁、その中に聳える立派な城を目指して歩き出した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処理中です...