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2話
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目を開く。視界に映るのは様々な姿形の老若男女の人達。
徐々に視線を上へ向けていくと、眩い陽の光がチリチリと網膜を焼く。
「お、おぉお!!」
痛くない!
いつものように身体中にある倦怠感や、息苦しさが今は嘘のようになりを潜めてザ健康体といった様子。
思わず小躍りをしそうになるけど必死に堪えて、どうにかガッツポーズ程度で我慢をして周りを見渡す。
広間のよう場所には私と同じように目新しいものを見るようにキョロキョロと視線をあちこちへ動かすものや、目的地があるのか直ぐにどこかへ走っていくもの、または待ち人と合流するものと様々だ。
「あ、そういえば色々と設定しないと」
ウィンドウを開き、設定項目を選択して色々と設定していく。
ミニマップを表示、頭上マークも表示。
セクシャルガードは少しレベルを下げて、フレンド以外を対象なのとフレンドでも過度な接触はダメにする。
グロ設定はR-15に設定。
続けてアイテム欄にある曲刀、ワイヤーグラヴズを装備する。
そうしていると、
「その様子だとかなりお気に召してくれたっぽいな妹よ」
「うん。最高の気分だよにいさ────Who are you!?」
「そりゃお前のにい「お前みたいな変質者が兄さんなわけあるか!」──グボァ!?」
ベイ〇ー卿だ。黒光りするヘルメットのでかい変なやつがいた。
思わずあっち方面の言葉が出てしまったけど、それを直さないで思わず目の前にいる変質者の顔面へ右ストレートをかましてしまった。
あたりがざわつくけど私は悪くない。変質者を成敗しただけだ。
グルンと360度回転し、きりもみ回転を行いながらベ〇ダー卿は地面へ墜落してしまった。
「ク……クックック………なかなかにいいパンチをするじゃねぇか妹よ。俺から教えることは何一つねぇぞ」
「ならそんな変な格好しなくてもいいんじゃないの……兄さん」
ヨロヨロと立ち上がり、兄さんはヘルメットを脱ぐとその下の素顔を見せてき──
「また仮面かよ!!」
「いやー、これには語るも涙。聞くも涙な理由があってだな?だからその拳をおろせ。ナ?」
ピエロのようなマスクを装着した兄にまた右ストレートをかましてやろうか思ったけど面倒だしやめることにした。
目の前にいる変なやつが私の兄こと神無月 幹也で、私をこのゲームに誘ったその人でもある。この世界での名前は英名の《Dylan》らしい。
「ふーんじゃあ。いってみなよ」
「よし。アバター作る時に自分の顔かデータ引っ張ってくるのがあるだろ?」
「うん。あるね」
私自身がそれ選んだし。
「面倒だから俺もお前みたいに自分の顔を選んだのはいいんだけどな……その時プラモ製作で3徹してた直後でなぁ。何一ついじらずにそのままスタートしたんだよ」
「アホだね」
「いやぁ、あの時はマジでテンパったぜ。さっさと狩場に行って適当なモブを狩って泥した素材でしばらくの間なんの補正もない視界が狭めるだけのクソマスクで過ごさなきゃいけなかったからな。というかお前みたいにリアル2次元みたいな見た目だったらこんなことせずに済んだんだけどな……」
アホくさ……
あまりのくだらなさに私は言葉を失ってしまう。
「エホン。じゃあとりあえず響よ。ひと狩りいこうぜ」
「別にいいよ。けど私β参加したことないから戦い方わからないよ?」
一応ある程度の体術や剣術をお父さんから教わってはいるけれど、あくまで触り程度だ。
「それなら平気だ。お前のことだからすぐにコツを掴むだろうからな」
「どうかなぁ……もう何年もろくに激しく動いたことないから私の鼻も鈍ってるよ」
「なら少しずつリハビリと行こうぜ響。まぁ着いてきてくれや」
「りょーかーい」
兄さんの後ろをついていきながら、色々と話す。
「それで何を狩りに行くの?スライム?」
「似たようなのはいるが生憎流動系エネミーはもっと先の難易度のエリアにいるな。今やるのは精々兎みたいな小物だぜ」
「強いの?」
「油断したら囲まれて集団フルボッコだな。俺がログイン初日に仲間とやってたらボロっ糞にやられたぜ」
なるほど、いくら最弱でも油断はしちゃいけないらしい。兄さんが何やら遠い目をしているのが気になるけどね。
「そういえば兄さん。その仮面ってなんか効果あるの?顔を隠す以外にさ」
「おう、勿論あるぜ。《暗視》に《遠視》とか《看破》……《解析》《分析》エトセトラだ。因みにこれ特殊なネームドか1回限りしか泥しないし。俺以外装備できねぇから価値があるけど価値がない装備品だな」
私の質問に答えつつ、兄さんは何かを操作すると私の視界にマスクのフレーバーテキストが表示された。
【狡知偽面 ロキ】
カテゴリー:UNMW
ランク:EX(III)
狡知神の持っていた宝物の1つのマスク。それを付けたものは狡知神の力の一端を手に入れることが出来る。
装備時発動スキル
《視覚拡張》
《暗視》《遠視》《鑑定》《サーモグラフィー》《動体視力》《距離測定》《オートロック》といった視覚系スキルを装備時のみ発動可能。
《ステータス隠蔽》
自身のステータス全てを自身よりレベルが同じか、低い相手からステータスを完全に隠蔽する。
《狡知神の加護》
魔術の威力と詠唱速度をアップさせ消費魔力を激減。ランクがA以下の魔術を無効化し、それ以上の魔術を威力をランク分減衰させる。
武器に魔法属性を与える。
よく分からないけど結構高性能だというのがわかる。
私がフレーバーテキストをずっと見ていたため、注意力が散漫していたので誰かとぶつかってしまった。
「キャ……!」
「あ、ごめんなさい。大丈夫?」
「い、いえ……私もごめんなさい。前をよく見ていなくって」
女の人だ。それも結構綺麗な人。
だけど顔色が悪いため、その綺麗な顔に陰りがあってちょっと半減してしまっている。
「アンタ平気か?見た感じ体調悪そうだが……」
「ええ、ちょっと風邪をこじらせてしまって。ですが今は妹を探しているんです。私の風邪を治すための薬を見つけるんだって言って飛び出してしまって……今の時期だと近くの安全なところには群生していないので………」
「そいつは何ともまぁ……姉ちゃん思いのいい子だな」
兄さんがそう言うと、女の人は自慢げに微笑んで頷いた。
「はい。自慢の妹です」
「そうかい。俺達で良ければ探すの手伝うぜ?」
「そんな……悪いですよ」
「性分でな。困ってる人がいると見過ごせねぇんだ」
おいおーい。私はやるなんて一言も言ってないぞー。
そんな私の想いを知ってか知らずか、兄さんは女の人こと『セリア』さんから妹さんを探すクエストを引き受けてしまった。
「その妹ちゃんは薬の材料をおそらく取りに行ったっぽいからな。風邪薬と言ったら燐光苔か……ちょうど俺が案内しようとしてた所によく群生してたはずだな」
「じゃあレベリングついでに探そうか」
~移動中~
「さーてようやく着いたが、俺たちはもうちっと先に進むぞ」
いつの間にか私たちは青々とした草が絨毯のように広がっている、おおきな草原に出ていた。ステージ名は『アメリア草原』か。
そしてなにより、あちこちでいろんなプレイヤーが剣や斧、槍といった武器を握り可愛らしい角の生えた兎を必死な顔で戦闘をくりひろげているというのはなかなかにシュールな光景が広がっていた。
「人が沢山いるね」
曲刀の柄にワイヤーを繋げるための金具を取り付け、調子を軽く確かめる。
「まぁなー。そういやお前に回復アイテム渡してなかったな」
兄さんがそう答えつつ、私からは見えない画面を操作していると思ったらいつの間にか私のストレージに大量の回復アイテムが入ってきて、兄さんの手には柄に茨が絡みついたような血のように真っ赤な禍々しい槍が握られていた。
「随分とかっこいい槍だねソレ」
「ココ最近のお気に入りだ」
そう言うと槍を軽く振り回し、その軌道に沿うように赤い光が舞う。
「俺らが行くところはちょっとした穴場でな。このステージにいるモブより少し手強いが、パターンは簡単にわかるしそれなりに稼げるから序盤のレベリングにゃオススメだ。取り敢えずここいらで戦い方を身につけつつ行くぞー」
「わースパルタ」
「言って覚えさせるより、実戦でやった方がお前の場合簡単だろ?」
「そこについては同意する」
「ならよし。んじゃちょうどあそこにいるモブに俺がちょっかい出して引っ張ってくるから。それをお前が倒せ」
兄さんが指をさし、その方向を辿っていくと、そこには成人男性の腰ほどまでの高さの立派な牙のある猪がこちら側に尻を向けていた。
んんん?兎みたいなやつ?猪やんけ!!リアルだったらわりとヤベーやつ!
【レッドブル】
危険度:E 推奨レベル:1
その巨体からくる突進が脅威だが、直線でしか来ないのと溜めが長い為に比較的簡単に倒すことが出来る。
肉は獣臭いが、適切な処理をすれば結構美味い。
「ほんじゃまあ……よっと!」
「ブゴォ!」
兄さんが慣れた様子で懐から投げナイフをとりだすと、指と指の間にはさみ勢いよく投擲した。
ヒュンと空気を裂き、ザクっと痛そうな音を伴いながらレッドボアの尻にナイフの刃が半ばまで突き刺さる。
すると、エネミーのHPバーが3割ほど削れ、レッドボアの頭上アイコンが緑から赤に変化して私たち側に振り返ると、その前足で地面を蹴り始め前傾姿勢に移るのが見えた。
「よし、あとはお前の分だ。頑張れよ」
「の割にはすごい怒ってない?」
「そりゃあ……いきなり尻をぶっ刺されたらキレるだろうよ」
何を当たり前のこと聞いてんだ?という視線を受け流し、曲刀を構える。
「さぁこい!」
「プギィィィ!!」
突進をしてきたボアの攻撃をかわし、そのすれ違いざまにボアの突進の速さを利用して曲刀の刃を突き刺し、勝手にダメージを負ってもらう。
これにより、ボアのHPが5割程度にまで減った。
だけど、勢いに引っ張られすぎて片割れの曲刀が突き刺さったままボアが走り去ってしまう。
「フゴオ!」
無手になり、攻撃手段を失ってしまうけれど特に問題はない。
怒り心頭といった様子で荒く鼻息を吐き、血走った目で睨みつけてくるけれど問題は無い。
ワイヤーグラヴズと曲刀についている金具のギミックを発動。極細のワイヤーが出現させて、それを引っ張り突き刺さった曲刀を取り戻す。
「よっと」
「プギィィィ!!?」
そしてそれを投擲し、回転して進む刃が右目部分に突き刺されボアの口から甲高い悲鳴が迸り、さらにHPが減少して残り1割弱に減っていく。
私はボアへと突進し、その少し前で跳ぶと思い切り片方の曲刀で頭部を切り裂き、残り少ないHPを全て削り取る。
レッドボアの体から力が抜け、草原へとその身を沈めて体が光となって砕け散ると、素材と経験値、手に入れた金が表示されたリザルト画面が現れた。
「初めてにしちゃ上出来だな」
「それはどーも」
リザルト画面を消し、落ちている武器を回収して後ろ腰部分にある鞘へ曲刀を収納して、近づいてきた兄さんとハイタッチする。
「この武器使いにくいね。軽いし結構固い相手に辛い」
「だが人型の相手に対しては結構有効だぜ。刃が曲がっているから攻撃を受け流すことができるし。出血を狙えてダイダメージもすることが出来る。使いこなせりゃかなり強いぞ」
「頑張りますかなー」
この後に数度戦闘をくりひろげつつ、兄さんの言う妹ちゃんのいる可能性の高い穴場へと向かった。
徐々に視線を上へ向けていくと、眩い陽の光がチリチリと網膜を焼く。
「お、おぉお!!」
痛くない!
いつものように身体中にある倦怠感や、息苦しさが今は嘘のようになりを潜めてザ健康体といった様子。
思わず小躍りをしそうになるけど必死に堪えて、どうにかガッツポーズ程度で我慢をして周りを見渡す。
広間のよう場所には私と同じように目新しいものを見るようにキョロキョロと視線をあちこちへ動かすものや、目的地があるのか直ぐにどこかへ走っていくもの、または待ち人と合流するものと様々だ。
「あ、そういえば色々と設定しないと」
ウィンドウを開き、設定項目を選択して色々と設定していく。
ミニマップを表示、頭上マークも表示。
セクシャルガードは少しレベルを下げて、フレンド以外を対象なのとフレンドでも過度な接触はダメにする。
グロ設定はR-15に設定。
続けてアイテム欄にある曲刀、ワイヤーグラヴズを装備する。
そうしていると、
「その様子だとかなりお気に召してくれたっぽいな妹よ」
「うん。最高の気分だよにいさ────Who are you!?」
「そりゃお前のにい「お前みたいな変質者が兄さんなわけあるか!」──グボァ!?」
ベイ〇ー卿だ。黒光りするヘルメットのでかい変なやつがいた。
思わずあっち方面の言葉が出てしまったけど、それを直さないで思わず目の前にいる変質者の顔面へ右ストレートをかましてしまった。
あたりがざわつくけど私は悪くない。変質者を成敗しただけだ。
グルンと360度回転し、きりもみ回転を行いながらベ〇ダー卿は地面へ墜落してしまった。
「ク……クックック………なかなかにいいパンチをするじゃねぇか妹よ。俺から教えることは何一つねぇぞ」
「ならそんな変な格好しなくてもいいんじゃないの……兄さん」
ヨロヨロと立ち上がり、兄さんはヘルメットを脱ぐとその下の素顔を見せてき──
「また仮面かよ!!」
「いやー、これには語るも涙。聞くも涙な理由があってだな?だからその拳をおろせ。ナ?」
ピエロのようなマスクを装着した兄にまた右ストレートをかましてやろうか思ったけど面倒だしやめることにした。
目の前にいる変なやつが私の兄こと神無月 幹也で、私をこのゲームに誘ったその人でもある。この世界での名前は英名の《Dylan》らしい。
「ふーんじゃあ。いってみなよ」
「よし。アバター作る時に自分の顔かデータ引っ張ってくるのがあるだろ?」
「うん。あるね」
私自身がそれ選んだし。
「面倒だから俺もお前みたいに自分の顔を選んだのはいいんだけどな……その時プラモ製作で3徹してた直後でなぁ。何一ついじらずにそのままスタートしたんだよ」
「アホだね」
「いやぁ、あの時はマジでテンパったぜ。さっさと狩場に行って適当なモブを狩って泥した素材でしばらくの間なんの補正もない視界が狭めるだけのクソマスクで過ごさなきゃいけなかったからな。というかお前みたいにリアル2次元みたいな見た目だったらこんなことせずに済んだんだけどな……」
アホくさ……
あまりのくだらなさに私は言葉を失ってしまう。
「エホン。じゃあとりあえず響よ。ひと狩りいこうぜ」
「別にいいよ。けど私β参加したことないから戦い方わからないよ?」
一応ある程度の体術や剣術をお父さんから教わってはいるけれど、あくまで触り程度だ。
「それなら平気だ。お前のことだからすぐにコツを掴むだろうからな」
「どうかなぁ……もう何年もろくに激しく動いたことないから私の鼻も鈍ってるよ」
「なら少しずつリハビリと行こうぜ響。まぁ着いてきてくれや」
「りょーかーい」
兄さんの後ろをついていきながら、色々と話す。
「それで何を狩りに行くの?スライム?」
「似たようなのはいるが生憎流動系エネミーはもっと先の難易度のエリアにいるな。今やるのは精々兎みたいな小物だぜ」
「強いの?」
「油断したら囲まれて集団フルボッコだな。俺がログイン初日に仲間とやってたらボロっ糞にやられたぜ」
なるほど、いくら最弱でも油断はしちゃいけないらしい。兄さんが何やら遠い目をしているのが気になるけどね。
「そういえば兄さん。その仮面ってなんか効果あるの?顔を隠す以外にさ」
「おう、勿論あるぜ。《暗視》に《遠視》とか《看破》……《解析》《分析》エトセトラだ。因みにこれ特殊なネームドか1回限りしか泥しないし。俺以外装備できねぇから価値があるけど価値がない装備品だな」
私の質問に答えつつ、兄さんは何かを操作すると私の視界にマスクのフレーバーテキストが表示された。
【狡知偽面 ロキ】
カテゴリー:UNMW
ランク:EX(III)
狡知神の持っていた宝物の1つのマスク。それを付けたものは狡知神の力の一端を手に入れることが出来る。
装備時発動スキル
《視覚拡張》
《暗視》《遠視》《鑑定》《サーモグラフィー》《動体視力》《距離測定》《オートロック》といった視覚系スキルを装備時のみ発動可能。
《ステータス隠蔽》
自身のステータス全てを自身よりレベルが同じか、低い相手からステータスを完全に隠蔽する。
《狡知神の加護》
魔術の威力と詠唱速度をアップさせ消費魔力を激減。ランクがA以下の魔術を無効化し、それ以上の魔術を威力をランク分減衰させる。
武器に魔法属性を与える。
よく分からないけど結構高性能だというのがわかる。
私がフレーバーテキストをずっと見ていたため、注意力が散漫していたので誰かとぶつかってしまった。
「キャ……!」
「あ、ごめんなさい。大丈夫?」
「い、いえ……私もごめんなさい。前をよく見ていなくって」
女の人だ。それも結構綺麗な人。
だけど顔色が悪いため、その綺麗な顔に陰りがあってちょっと半減してしまっている。
「アンタ平気か?見た感じ体調悪そうだが……」
「ええ、ちょっと風邪をこじらせてしまって。ですが今は妹を探しているんです。私の風邪を治すための薬を見つけるんだって言って飛び出してしまって……今の時期だと近くの安全なところには群生していないので………」
「そいつは何ともまぁ……姉ちゃん思いのいい子だな」
兄さんがそう言うと、女の人は自慢げに微笑んで頷いた。
「はい。自慢の妹です」
「そうかい。俺達で良ければ探すの手伝うぜ?」
「そんな……悪いですよ」
「性分でな。困ってる人がいると見過ごせねぇんだ」
おいおーい。私はやるなんて一言も言ってないぞー。
そんな私の想いを知ってか知らずか、兄さんは女の人こと『セリア』さんから妹さんを探すクエストを引き受けてしまった。
「その妹ちゃんは薬の材料をおそらく取りに行ったっぽいからな。風邪薬と言ったら燐光苔か……ちょうど俺が案内しようとしてた所によく群生してたはずだな」
「じゃあレベリングついでに探そうか」
~移動中~
「さーてようやく着いたが、俺たちはもうちっと先に進むぞ」
いつの間にか私たちは青々とした草が絨毯のように広がっている、おおきな草原に出ていた。ステージ名は『アメリア草原』か。
そしてなにより、あちこちでいろんなプレイヤーが剣や斧、槍といった武器を握り可愛らしい角の生えた兎を必死な顔で戦闘をくりひろげているというのはなかなかにシュールな光景が広がっていた。
「人が沢山いるね」
曲刀の柄にワイヤーを繋げるための金具を取り付け、調子を軽く確かめる。
「まぁなー。そういやお前に回復アイテム渡してなかったな」
兄さんがそう答えつつ、私からは見えない画面を操作していると思ったらいつの間にか私のストレージに大量の回復アイテムが入ってきて、兄さんの手には柄に茨が絡みついたような血のように真っ赤な禍々しい槍が握られていた。
「随分とかっこいい槍だねソレ」
「ココ最近のお気に入りだ」
そう言うと槍を軽く振り回し、その軌道に沿うように赤い光が舞う。
「俺らが行くところはちょっとした穴場でな。このステージにいるモブより少し手強いが、パターンは簡単にわかるしそれなりに稼げるから序盤のレベリングにゃオススメだ。取り敢えずここいらで戦い方を身につけつつ行くぞー」
「わースパルタ」
「言って覚えさせるより、実戦でやった方がお前の場合簡単だろ?」
「そこについては同意する」
「ならよし。んじゃちょうどあそこにいるモブに俺がちょっかい出して引っ張ってくるから。それをお前が倒せ」
兄さんが指をさし、その方向を辿っていくと、そこには成人男性の腰ほどまでの高さの立派な牙のある猪がこちら側に尻を向けていた。
んんん?兎みたいなやつ?猪やんけ!!リアルだったらわりとヤベーやつ!
【レッドブル】
危険度:E 推奨レベル:1
その巨体からくる突進が脅威だが、直線でしか来ないのと溜めが長い為に比較的簡単に倒すことが出来る。
肉は獣臭いが、適切な処理をすれば結構美味い。
「ほんじゃまあ……よっと!」
「ブゴォ!」
兄さんが慣れた様子で懐から投げナイフをとりだすと、指と指の間にはさみ勢いよく投擲した。
ヒュンと空気を裂き、ザクっと痛そうな音を伴いながらレッドボアの尻にナイフの刃が半ばまで突き刺さる。
すると、エネミーのHPバーが3割ほど削れ、レッドボアの頭上アイコンが緑から赤に変化して私たち側に振り返ると、その前足で地面を蹴り始め前傾姿勢に移るのが見えた。
「よし、あとはお前の分だ。頑張れよ」
「の割にはすごい怒ってない?」
「そりゃあ……いきなり尻をぶっ刺されたらキレるだろうよ」
何を当たり前のこと聞いてんだ?という視線を受け流し、曲刀を構える。
「さぁこい!」
「プギィィィ!!」
突進をしてきたボアの攻撃をかわし、そのすれ違いざまにボアの突進の速さを利用して曲刀の刃を突き刺し、勝手にダメージを負ってもらう。
これにより、ボアのHPが5割程度にまで減った。
だけど、勢いに引っ張られすぎて片割れの曲刀が突き刺さったままボアが走り去ってしまう。
「フゴオ!」
無手になり、攻撃手段を失ってしまうけれど特に問題はない。
怒り心頭といった様子で荒く鼻息を吐き、血走った目で睨みつけてくるけれど問題は無い。
ワイヤーグラヴズと曲刀についている金具のギミックを発動。極細のワイヤーが出現させて、それを引っ張り突き刺さった曲刀を取り戻す。
「よっと」
「プギィィィ!!?」
そしてそれを投擲し、回転して進む刃が右目部分に突き刺されボアの口から甲高い悲鳴が迸り、さらにHPが減少して残り1割弱に減っていく。
私はボアへと突進し、その少し前で跳ぶと思い切り片方の曲刀で頭部を切り裂き、残り少ないHPを全て削り取る。
レッドボアの体から力が抜け、草原へとその身を沈めて体が光となって砕け散ると、素材と経験値、手に入れた金が表示されたリザルト画面が現れた。
「初めてにしちゃ上出来だな」
「それはどーも」
リザルト画面を消し、落ちている武器を回収して後ろ腰部分にある鞘へ曲刀を収納して、近づいてきた兄さんとハイタッチする。
「この武器使いにくいね。軽いし結構固い相手に辛い」
「だが人型の相手に対しては結構有効だぜ。刃が曲がっているから攻撃を受け流すことができるし。出血を狙えてダイダメージもすることが出来る。使いこなせりゃかなり強いぞ」
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