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偶然か、必然か、 40話
しおりを挟む只今仕事帰り。俺はレイナのバイト先に向かっていた。
今日はカフェ・シャロンのマスター、フジさんと会う約束をしているのだ。
「こんばんはー」
店に着いてドアを開ければ、ガラッとした誰もいない空間が広がっていた。
営業後のそんな店内は、前回来た時のあの雰囲気とは全く別の店に見えるような、落ち着いた昔ながらの素敵な雰囲気だ。
「あ、憲司さんこっちこっち!」
すると、奥からはみつこさんが出てきて従業員スペースへと案内してくれた。
「憲司さん、お帰りなさい」
「ただいま。って、外で言うのなんか変だな」
そこにはレイナもいて、意外と広かったその部屋のソファーにおじいさんと一緒に座っている。
「はじめまして、上島憲司です。レイナの一応保護者みたいな者です。今日はお時間いただいてありがとうございます」
「ご丁寧にどうも。藤山です。フジさんって呼んでね」
物腰の柔らかそうなおじいさん、フジさんは優しい表情でそう言った。
そして反対側の椅子に座らせてもらえば、みつこさんが飲み物を持ってきてくれて、彼女もそのまま腰を下ろしていく。
「あの、レイナは訳あって身分証を持ってないんですけど、なんで働かせてくれてるんですか?」
いきなり本題を話始めれば、フジさんはふふっと笑った。そしてことの経緯を話し始めるのだった。
◇
「………え、知り合いだったんですか?」
すると、驚きの事実が発覚した。
なんでも昔、レイナはこの店に何回か来たことがあってそれをフジさんは覚えていたらしい。
「いやぁ、レイナちゃんは相変わらずべっぴんさんで昔から全く変わらないねぇ」
「…ふふっ、ありがとうございます」
「たしか会ったの20年前くらいだったと思うんだけど」
「お父さん、そんなわけないでしょ!なにボケてんの」
「……」
レイナが20年前人間界で住んでいた時に、一緒に暮らしていたおじいさんとこの店に来ていたようだった。
当時と街並みも違っていたこともあり、レイナは昔行った店だとは最近まで気がついていなかったようだ。
それに店ではフジさんと会話するのはおじいさんだけで、話したことはなかったらしい。
多分、レイナの見た目もあって印象が強く残っていたのだろう。
フジさんは面接できたレイナをすぐに思い出して、身分証がないことは何か話せない事情でもあるのかもしれない、と昔馴染みに免じて目をつぶってくれたようだ。
それに、「絶対にあの子採用してよ!」とみつこさんに強く言われたこともあり、即採用することになったらしい。
「…えっと、みつこさんいなかったので多分10年くらい前だったと思います」
「え?そうだったかなぁ。おかしいなぁ」
苦笑いをしながら、誤魔化すようにそんなことをレイナは言った。
フジさんは多分俺のじいちゃんの少し下くらいの年齢だろうか。少しボケているのか、高齢だからか、なんとか誤魔化せてはいるがさすがに10年の誤差は厳しい気がする。
しかし20年前だとレイナの歳の設定上、3歳になってしまうのだ。
その年齢の子供と見た目が変わらないのはかなり無理がある話なわけで。申し訳ないがフジさんをボケ老人扱いさせてもらうことにする。
「太郎さんは元気かなぁ」
「…元気だといいですね」
「太郎さん」とは一緒に来ていたおじいさんのことのようだ。
ここに通っていたということは、近くに住んでいる人なのだろうか。
「5年前に施設に入ったことは噂で聞いたけど…」
そう言って、フジさんは遠い目をした。
そんな会話を聞いていれば、なんだかその「太郎さん」に心当たりがある気がしてくる。…まさか、な?と思いながらも、俺は一応確認してみることにした。
「……あの、もしかしてそのおじいさんの名前、上島太郎ですか?」
すると、フジさんは目を見開いてこちらを見た。
レイナは苗字を知らなかったのか、きょとんとした顔でその様子を見ている。
そして「あれ、憲司くんも知り合い?」とフジさんは不思議そうに言うのだった。
「……えっと、俺の、祖父です」
「あらまぁ、なんて偶然だろう」
そして、どうやら本当に当たっていたらしい。
「太郎さん」とは、俺のじいちゃんのことだったようで。
そんな衝撃の事実を知ることになり、俺は驚きを隠せないのであった。
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