はじめまして、妖精です。穴がなくなって迷子なので同居してもよろしいでしょうか?

タマモ

文字の大きさ
40 / 40

偶然か、必然か、 40話

しおりを挟む


 只今仕事帰り。俺はレイナのバイト先に向かっていた。
 今日はカフェ・シャロンのマスター、フジさんと会う約束をしているのだ。

「こんばんはー」

 店に着いてドアを開ければ、ガラッとした誰もいない空間が広がっていた。
 営業後のそんな店内は、前回来た時のあの雰囲気とは全く別の店に見えるような、落ち着いた昔ながらの素敵な雰囲気だ。

「あ、憲司さんこっちこっち!」

 すると、奥からはみつこさんが出てきて従業員スペースへと案内してくれた。

「憲司さん、お帰りなさい」
「ただいま。って、外で言うのなんか変だな」

 そこにはレイナもいて、意外と広かったその部屋のソファーにおじいさんと一緒に座っている。

「はじめまして、上島憲司です。レイナの一応保護者みたいな者です。今日はお時間いただいてありがとうございます」
「ご丁寧にどうも。藤山です。フジさんって呼んでね」

 物腰の柔らかそうなおじいさん、フジさんは優しい表情でそう言った。

 そして反対側の椅子に座らせてもらえば、みつこさんが飲み物を持ってきてくれて、彼女もそのまま腰を下ろしていく。

「あの、レイナは訳あって身分証を持ってないんですけど、なんで働かせてくれてるんですか?」

 いきなり本題を話始めれば、フジさんはふふっと笑った。そしてことの経緯を話し始めるのだった。



 「………え、知り合いだったんですか?」

 すると、驚きの事実が発覚した。

 なんでも昔、レイナはこの店に何回か来たことがあってそれをフジさんは覚えていたらしい。

「いやぁ、レイナちゃんは相変わらずべっぴんさんで昔から全く変わらないねぇ」
「…ふふっ、ありがとうございます」
「たしか会ったの20年前くらいだったと思うんだけど」
「お父さん、そんなわけないでしょ!なにボケてんの」
「……」

 レイナが20年前人間界で住んでいた時に、一緒に暮らしていたおじいさんとこの店に来ていたようだった。
 当時と街並みも違っていたこともあり、レイナは昔行った店だとは最近まで気がついていなかったようだ。
 それに店ではフジさんと会話するのはおじいさんだけで、話したことはなかったらしい。
 多分、レイナの見た目もあって印象が強く残っていたのだろう。

 フジさんは面接できたレイナをすぐに思い出して、身分証がないことは何か話せない事情でもあるのかもしれない、と昔馴染みに免じて目をつぶってくれたようだ。
 それに、「絶対にあの子採用してよ!」とみつこさんに強く言われたこともあり、即採用することになったらしい。
 
「…えっと、みつこさんいなかったので多分10年くらい前だったと思います」
「え?そうだったかなぁ。おかしいなぁ」

 苦笑いをしながら、誤魔化すようにそんなことをレイナは言った。
 フジさんは多分俺のじいちゃんの少し下くらいの年齢だろうか。少しボケているのか、高齢だからか、なんとか誤魔化せてはいるがさすがに10年の誤差は厳しい気がする。

 しかし20年前だとレイナの歳の設定上、3歳になってしまうのだ。
 その年齢の子供と見た目が変わらないのはかなり無理がある話なわけで。申し訳ないがフジさんをボケ老人扱いさせてもらうことにする。

太郎たろうさんは元気かなぁ」
「…元気だといいですね」

 「太郎たろうさん」とは一緒に来ていたおじいさんのことのようだ。
 ここに通っていたということは、近くに住んでいる人なのだろうか。

「5年前に施設に入ったことは噂で聞いたけど…」

 そう言って、フジさんは遠い目をした。

 そんな会話を聞いていれば、なんだかその「太郎さん」に心当たりがある気がしてくる。…まさか、な?と思いながらも、俺は一応確認してみることにした。

「……あの、もしかしてそのおじいさんの名前、上島太郎うえしまたろうですか?」

 すると、フジさんは目を見開いてこちらを見た。
 レイナは苗字を知らなかったのか、きょとんとした顔でその様子を見ている。

 そして「あれ、憲司くんも知り合い?」とフジさんは不思議そうに言うのだった。


「……えっと、俺の、祖父です」
「あらまぁ、なんて偶然だろう」


 そして、どうやら本当に当たっていたらしい。

 「太郎さん」とは、俺のじいちゃんのことだったようで。

 そんな衝撃の事実を知ることになり、俺は驚きを隠せないのであった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい

沢尻夏芽
恋愛
 自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。  それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。 『様子がおかしい』 ※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。  現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。  他サイトでも掲載中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...