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第四章 通りすがりのダーティーエルフ編
第77話 ─ 昔の馴染みが出ています ─…ある男の独白
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「……まぁそういう訳なんで、くれぐれも気をつけてくれるように皆に注意し続けてくれ。金の為に子供を売るな作るな、とね」
「はあ、まあ言うには言いますが……」
「こういうのは一朝一夕には進まん。例え聞く耳を持ってくれなくとも、馬鹿にされようとも、皮膚から染み込ませるように語り続けなければならない」
俺達は南米の貧民街近くに建っている教会に来ていた。
エヴァンから聞いた話だが、子供を商品としか見ていない親もここには多いという。
需要側も無くしたいが、供給源も少しでも減らしておきたい。売る側の根本も変えていかねば。
ドラマのように、奴隷商人が無理矢理かっ攫っていく訳ではないのだ。貧困と教育不足も大きい。
これもまた教育の一環……となってくれると良いが。
「神父様よお。『親父と息子と聖霊が一緒のもん』だっていうあの救世主様だって、説法がみんなに聞いてもらえなくて、磔にされたんだぜ? 凡人の俺ッチ達の話を普通の人達が聞かないのは当たり前じゃねーか。地道に行こうぜ」
エヴァンが神父にそう言う。
コイツは最近時々、いっぱしの口を叩くようになってきた。出来の悪い兄弟が成長した姿を見るようで、嬉しいやら少し恥ずかしいやら、複雑な気分になる。
そんなエヴァンが俺の様子に気がつくと、バツの悪そうな顔を俺に向ける。
「何だよリーダー」
「だからリーダーはやめろって。いや、なんだかお前も頼もしくなったなあ、とな」
「たりめーだぜ。アイラちゃんと再会した時に、胸張れる男になっとかないとな」
「ああ、そうだな。……そうだその通りだ」
俺の初めての彼女であるパンチェッタが、弟の暴力に耐えかね最後に自殺した事は、もうコイツに話した事がある。俺もエヴァンも、アイラの境遇が想像出来ない訳じゃない。
だけど、まだ彼女には届かない。
彼女を組み伏せているミトラにも。
「じゃあそう言う事だ、神父さん。お互い粘り強くやっていこう。それじゃあな」
俺はエヴァンと共に教会を出た。
外に出た俺は、教会を眺めるために振り返る。
“騎士団”に所属している時は、怪しげな新興宗教扱いされて話すら出来なかった。そもそも宗派が違っていた。
ウチは悪魔退治が中心で、俺を含めて信仰心の怪しい連中も多かった。向こうにしてみれば、当たり前だ。
それが、“騎士団”を追われた事で、こうしてとりあえず話は出来るようになった。
皮肉といえば皮肉な話だ。
「悪い、行こうエヴァン」
唇の端を一瞬だけ歪めて笑うと、相棒に向き直りそう告げる。
くたびれたスーツを居心地悪そうに着ている俺達二人は、教会を離れた。
南米午後の熱気の中を。
*****
「あら、人違いならごめんなさい。そこのアナタはエヴァンじゃないかしら?」
そう声をかけてきたのは、痩せぎすで褐色の肌、口の大きい黒髪天然パーマのアフロヘアー女。
どうやらエヴァンの昔馴染みらしい。
エヴァンは一瞬、目を丸くすると満面の笑みを浮かべて女に向き直った。
「モルガン、久し振りだな! クエルボは元気にしてるのか? アプルトンはどうした?」
嬉しそうにエヴァンが女にそう話す。
だがそれを聞いた途端に、声をかけてきた女の顔が曇る。
エヴァンは目敏くそれに気付くとモルガンと呼んだ女に尋ねる。
「どうしたモルガン、何かあったのか? 良かったら俺ッチに話してみろよ」
モルガンと呼ばれた女は迷ったように目を逸らす。
やがて腹を決めたようにもう一度エヴァンを見ると、とある方向を指差しながら話す。
「いいわ、立ち話も何だからこっちでゆっくり話しましょ。どのみち二人のその小綺麗な格好じゃ物乞いに集られるしね」
──気のせいだろうか? 雑踏の音に紛れて聞き取りにくかったが、彼女の心音がたった今、隠し事をしたかのように高鳴ったように感じたのは。
「お酒は飲めるのエヴァン?」
モルガンは尋ねる。
ここは貧民街の中にあるボロい酒場の中。この女の持ち店だろうか?
エヴァンは苦笑しながら答えた。
「飲まねーよ、仕事中は。いくらお前に案内された店とはいえ、な」
貧民街の中とはいえ、いや、中だからこそか? 店に誰も居ない不自然さは隠しようがない。
奥行きはあれども幅狭い店の入り口近くのテーブル。そこに俺達は腰掛け、モルガンはカウンターの中に入って飲み物を準備しようとしている。
天井には扇風機が取り付けられているが、自身の役目を忘れて何年になるのか、全く動く様子がない。
「ふふっ、安心したわ。ここで生きてく感覚は忘れてなかったのね」
「酒に酔って不覚を取った大人を、俺達四人は何度も見たろ。酒を飲んで騒ぐのは、明日への不安を忘れて逃げたいクズだけだ。少なくともココじゃあな」
「クエルボの後ろを付いて回るだけだったエヴァン坊やが、立派になったこと」
俺は、二人の話には興味が無くぼんやりと外を眺めている……ように装い、周囲の気配に集中している。
スーツの前のボタンは外し、手を懐の銃に手をかけられるようにしながら。
彼女が隠し事をしている可能性は、エヴァンにもう耳打ちしている。エヴァンも、「そうか、やっぱり」と返したきりだ。
「立派なんかじゃねーよ。それより話ってのは何だよ」
モルガンは酒の代わりにコーヒーをいれて持ってきた。この、外が炎天下の暑い日の中で……だ。こちらが何も言わないうちに砂糖とミルクも入れる。
それを俺達二人の前に並べ、自分の前にはブラックのコーヒーを置く。それをひと口啜ると「遠慮せずに飲んで」と俺達に勧める。
俺達は「ありがとう」と口にはしたが、コーヒーには手をつけない。この暑い中で、熱いコーヒーなど飲む気になれないのが一つの理由だ。そしてもう一つの理由が……。
モルガンは、コーヒーを飲まない俺達を見ても何も言わずに、昔話を始めた。
肝心の話には触れないまま。
「覚えてる? 貴方が空き家の壁の隙間に挟まって、動けなくなった時のこと」
「ああ、覚えてるよ。アプルトンが気がついてクエルボに知らせに行ってくれて、助けられるまで、お前が俺を励まし続けてくれたよな」
興味が無いフリをしながら、俺は苛立たしげに指でトントンと机を叩く。ただし、一定のリズムを持って。モールス信号というやつだったか。
エヴァンにメッセージを送る。
──囲まれてる。予想通り。
エヴァンからも帰ってくる。
──やっぱり。
俺は頬杖をつき、退屈そうな態度を取る。
しかし耳は二人の会話にも向けている。どうやらエヴァンは幼い時に一緒にいた四人グループの中では一番下だったようだ。年齢的にも立場的にも。
クエルボという男がリーダー格だったようで、当時からエヴァンは弟のように可愛がられていたらしい。
その幼なじみの昔話の合間にも、机を叩きながら相談をする俺達二人。
──とりあえず懐に潜って様子を見よう。
──分かった。
──……来たぞ。痺れを切らしやがった。
突然──のつもりだったんだろうな、コイツ等にとっては──酒場に武装した男共が十人ばかり雪崩れ込んできた。表から五人、裏口から二人、残り三人が外で人払いをしている。
武装といっても、コイツ等は拳銃を一つだけ手に持ってるだけだが。
「チッ、薄気味悪い連中だ。こんな状況でも眉一つ動かしやがらねえ。クスリにも手を付けやがらねえし」
雪崩れ込んできた連中のリーダー格らしき男が、そう毒づく。そう、これがコーヒーに手を付けなかったもう一つの理由。
俺達は両手を上げてゆっくりと立ち上がる。男共が俺達の懐を弄って、銃を押収する。
エヴァンが物問いたげにモルガンを見るが、彼女は悲しげに首を振って答えた
「ごめんなさいね。上から、そちらの耳の長いお兄さんの話が来てたの。隣に貴方がいたから、良い機会だと思って声を掛けさせて貰ったわ。どうやら最初から勘付かれていたみたいだけどね」
「はあ、まあ言うには言いますが……」
「こういうのは一朝一夕には進まん。例え聞く耳を持ってくれなくとも、馬鹿にされようとも、皮膚から染み込ませるように語り続けなければならない」
俺達は南米の貧民街近くに建っている教会に来ていた。
エヴァンから聞いた話だが、子供を商品としか見ていない親もここには多いという。
需要側も無くしたいが、供給源も少しでも減らしておきたい。売る側の根本も変えていかねば。
ドラマのように、奴隷商人が無理矢理かっ攫っていく訳ではないのだ。貧困と教育不足も大きい。
これもまた教育の一環……となってくれると良いが。
「神父様よお。『親父と息子と聖霊が一緒のもん』だっていうあの救世主様だって、説法がみんなに聞いてもらえなくて、磔にされたんだぜ? 凡人の俺ッチ達の話を普通の人達が聞かないのは当たり前じゃねーか。地道に行こうぜ」
エヴァンが神父にそう言う。
コイツは最近時々、いっぱしの口を叩くようになってきた。出来の悪い兄弟が成長した姿を見るようで、嬉しいやら少し恥ずかしいやら、複雑な気分になる。
そんなエヴァンが俺の様子に気がつくと、バツの悪そうな顔を俺に向ける。
「何だよリーダー」
「だからリーダーはやめろって。いや、なんだかお前も頼もしくなったなあ、とな」
「たりめーだぜ。アイラちゃんと再会した時に、胸張れる男になっとかないとな」
「ああ、そうだな。……そうだその通りだ」
俺の初めての彼女であるパンチェッタが、弟の暴力に耐えかね最後に自殺した事は、もうコイツに話した事がある。俺もエヴァンも、アイラの境遇が想像出来ない訳じゃない。
だけど、まだ彼女には届かない。
彼女を組み伏せているミトラにも。
「じゃあそう言う事だ、神父さん。お互い粘り強くやっていこう。それじゃあな」
俺はエヴァンと共に教会を出た。
外に出た俺は、教会を眺めるために振り返る。
“騎士団”に所属している時は、怪しげな新興宗教扱いされて話すら出来なかった。そもそも宗派が違っていた。
ウチは悪魔退治が中心で、俺を含めて信仰心の怪しい連中も多かった。向こうにしてみれば、当たり前だ。
それが、“騎士団”を追われた事で、こうしてとりあえず話は出来るようになった。
皮肉といえば皮肉な話だ。
「悪い、行こうエヴァン」
唇の端を一瞬だけ歪めて笑うと、相棒に向き直りそう告げる。
くたびれたスーツを居心地悪そうに着ている俺達二人は、教会を離れた。
南米午後の熱気の中を。
*****
「あら、人違いならごめんなさい。そこのアナタはエヴァンじゃないかしら?」
そう声をかけてきたのは、痩せぎすで褐色の肌、口の大きい黒髪天然パーマのアフロヘアー女。
どうやらエヴァンの昔馴染みらしい。
エヴァンは一瞬、目を丸くすると満面の笑みを浮かべて女に向き直った。
「モルガン、久し振りだな! クエルボは元気にしてるのか? アプルトンはどうした?」
嬉しそうにエヴァンが女にそう話す。
だがそれを聞いた途端に、声をかけてきた女の顔が曇る。
エヴァンは目敏くそれに気付くとモルガンと呼んだ女に尋ねる。
「どうしたモルガン、何かあったのか? 良かったら俺ッチに話してみろよ」
モルガンと呼ばれた女は迷ったように目を逸らす。
やがて腹を決めたようにもう一度エヴァンを見ると、とある方向を指差しながら話す。
「いいわ、立ち話も何だからこっちでゆっくり話しましょ。どのみち二人のその小綺麗な格好じゃ物乞いに集られるしね」
──気のせいだろうか? 雑踏の音に紛れて聞き取りにくかったが、彼女の心音がたった今、隠し事をしたかのように高鳴ったように感じたのは。
「お酒は飲めるのエヴァン?」
モルガンは尋ねる。
ここは貧民街の中にあるボロい酒場の中。この女の持ち店だろうか?
エヴァンは苦笑しながら答えた。
「飲まねーよ、仕事中は。いくらお前に案内された店とはいえ、な」
貧民街の中とはいえ、いや、中だからこそか? 店に誰も居ない不自然さは隠しようがない。
奥行きはあれども幅狭い店の入り口近くのテーブル。そこに俺達は腰掛け、モルガンはカウンターの中に入って飲み物を準備しようとしている。
天井には扇風機が取り付けられているが、自身の役目を忘れて何年になるのか、全く動く様子がない。
「ふふっ、安心したわ。ここで生きてく感覚は忘れてなかったのね」
「酒に酔って不覚を取った大人を、俺達四人は何度も見たろ。酒を飲んで騒ぐのは、明日への不安を忘れて逃げたいクズだけだ。少なくともココじゃあな」
「クエルボの後ろを付いて回るだけだったエヴァン坊やが、立派になったこと」
俺は、二人の話には興味が無くぼんやりと外を眺めている……ように装い、周囲の気配に集中している。
スーツの前のボタンは外し、手を懐の銃に手をかけられるようにしながら。
彼女が隠し事をしている可能性は、エヴァンにもう耳打ちしている。エヴァンも、「そうか、やっぱり」と返したきりだ。
「立派なんかじゃねーよ。それより話ってのは何だよ」
モルガンは酒の代わりにコーヒーをいれて持ってきた。この、外が炎天下の暑い日の中で……だ。こちらが何も言わないうちに砂糖とミルクも入れる。
それを俺達二人の前に並べ、自分の前にはブラックのコーヒーを置く。それをひと口啜ると「遠慮せずに飲んで」と俺達に勧める。
俺達は「ありがとう」と口にはしたが、コーヒーには手をつけない。この暑い中で、熱いコーヒーなど飲む気になれないのが一つの理由だ。そしてもう一つの理由が……。
モルガンは、コーヒーを飲まない俺達を見ても何も言わずに、昔話を始めた。
肝心の話には触れないまま。
「覚えてる? 貴方が空き家の壁の隙間に挟まって、動けなくなった時のこと」
「ああ、覚えてるよ。アプルトンが気がついてクエルボに知らせに行ってくれて、助けられるまで、お前が俺を励まし続けてくれたよな」
興味が無いフリをしながら、俺は苛立たしげに指でトントンと机を叩く。ただし、一定のリズムを持って。モールス信号というやつだったか。
エヴァンにメッセージを送る。
──囲まれてる。予想通り。
エヴァンからも帰ってくる。
──やっぱり。
俺は頬杖をつき、退屈そうな態度を取る。
しかし耳は二人の会話にも向けている。どうやらエヴァンは幼い時に一緒にいた四人グループの中では一番下だったようだ。年齢的にも立場的にも。
クエルボという男がリーダー格だったようで、当時からエヴァンは弟のように可愛がられていたらしい。
その幼なじみの昔話の合間にも、机を叩きながら相談をする俺達二人。
──とりあえず懐に潜って様子を見よう。
──分かった。
──……来たぞ。痺れを切らしやがった。
突然──のつもりだったんだろうな、コイツ等にとっては──酒場に武装した男共が十人ばかり雪崩れ込んできた。表から五人、裏口から二人、残り三人が外で人払いをしている。
武装といっても、コイツ等は拳銃を一つだけ手に持ってるだけだが。
「チッ、薄気味悪い連中だ。こんな状況でも眉一つ動かしやがらねえ。クスリにも手を付けやがらねえし」
雪崩れ込んできた連中のリーダー格らしき男が、そう毒づく。そう、これがコーヒーに手を付けなかったもう一つの理由。
俺達は両手を上げてゆっくりと立ち上がる。男共が俺達の懐を弄って、銃を押収する。
エヴァンが物問いたげにモルガンを見るが、彼女は悲しげに首を振って答えた
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これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
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