ダーティーホワイトエルブズ ~魔物退治してた現代転移の苦労人エルフ、“主人公”への復讐を決意する~

きさまる

文字の大きさ
97 / 128
第四章 通りすがりのダーティーエルフ編

第96話 ─ 君が思うよりずっと僕は君が嫌い ─…ある男の独白

しおりを挟む
「そこに居るのは、兄貴……か!?」

 その声は砂埃の向こうから聞こえてきた。
 相棒と俺様は慌てて入れ替わる。
 砂埃が落ち着いてないので、まだお互いに姿を確認できる状態じゃあない。
 魔物も砂埃が無くなる前に、煙をあげながらすぐに蒸発した。

 相棒と入れ替わった俺様は、顔の前を手であおぎ、砂埃を払っている。
 砂埃が晴れると、ミトラが怪訝な顔で立っていた。

「マロニー? 何でオメーが……。いやそれよりも、今ここに誰か居なかったか?」

「砂埃でよく分からんかったが、多分俺様だけだったと思うがな」

 そんな俺様の言葉を聞いた風も無く、ミトラは周囲をキョロキョロと見渡す。
 その後、俺様の顔を訝しげに睨んできた。

「このゴミと兄貴を間違えた? まぁ、ゴミ同士で間違える事はあるか」

 何かムカつく納得のされ方をした。
 相棒も、感情を抑えているが腹を立てているのが分かる。
 そしてミトラは俺様に訊ねてきた。

「ところで埃でよく見えなかったが、出た魔物はそこそこ強力な感じじゃなかったか?」

「さあな。必死で退魔銃を撃ってたら倒れた。俺様が倒せたんだから大したヤツじゃなかったんだろ。それか当り所が良かったか」

「ふーん。ま、確かにオメーの言う通りだな。オメーみたいなゴミムシがつええ魔物をマトモに倒せる訳がえか」

 ミトラが俺様に偉そうにそう言った直後、何かに気がつく。
 俺様がミトラの視線を追っていくと、建物の壁に張り紙が二、三枚。
 そのうちの一番新しい紙を見た時、再びドキリとした。

 そこに貼られているのは、この男の……いや、俺様の顔。賞金首の手配書だった。
 ミトラはのんびりとした口調であざ笑いながら言う。

「ははは! 何だ兄貴、テメーがお尋ね者になっちまってるじゃねえか。俺様に逆らうから天罰が下ったんだな」

“国家反逆罪の割に賞金額がかなり少ない。ベイゼルが……俺の元上司が頑張って抑えてくれたんだな”

 ひたすら自分の兄を馬鹿にしてこき下ろすだけのミトラと、冷静に状況を分析・推測する相棒
 どう考えても、勝ち組と負け組が逆だとしか俺様には思えなかった。

「なあそう思うだろ、マロニー?」

 突然、馬鹿笑いしながら急に話を俺に振り、ミトラがこちらに向き直る。
 一瞬、既に分かっていて当てこすりで笑っていたのかと身構えた。
 だが違った。ミトラは再び紙に視線を戻すと、笑い続けながら言う。

「はははははは! マロニー、オメーも俺に逆らうと巡り巡って、こんな風に落ちぶれるからな、覚えとけよ。ははは!」

 馬鹿笑いしている無防備な後ろ姿を見て、ある不穏な考えがよぎる。
 ほぼ同時に、相棒も全く同じ事を考えていた。

──“今なら、銃で撃ったられる”

 身体が自然と動き、ミトラの後頭部へ銃を突きつける。
 そしてトリガーを躊躇いも無く引いた。

 ガギン!

 妙な音が手元から響き、見ると退魔銃が動作不良ジャムを起こして弾詰まりしていた。
 その音に気が付き、ミトラはまたもこちらへ振り返ると、俺様の手元の銃を見る。
 見る間に怒りが顔に満ちるミトラ。

「あぁ!? なに舐めた事してやがんだテメー!!」

 右の裏拳が顔面に飛んできた。
 咄嗟に両手でガード。
 防いだと同時に、下へ手を下ろして腹部をガード。ガードの上にミトラの蹴りが飛んできた。
 俺様の身体が、まるでミトラの攻撃が分かっているかのように動いて防いでいく。

 だがミトラが更に表情を歪めて一瞬攻撃を止めたかと思うと、突然動きが変わった。
 こちらのガードをすり抜けて攻撃を当ててくる。やたら動きが良くなった。
 相棒の呻くような思考が伝わってくる。

 “元の世界と同じだ。あの一瞬止まる時に何か秘密があるんだろうが……!”

 やがて顎を打ち抜かれて地面に倒れ、そこへ更に腹を蹴られた。
 腹の中のものが地面にぶち撒けられる。
 ミトラはその吐瀉物を避けると捨て台詞。

「ケッ、俺に銃なんざ効かねえよ。今みたいにジャムるからな。ゴミムシの分際で身の程を知りやがれ」

 そう言って地面に転がる俺様に唾を吐き捨て、ミトラは行ってしまった。
 俺様はヨロヨロと立ち上がると、服の袖でミトラの唾を拭う。

“……怪しまれない為に……黙ってたけど……アイツはフェイントに……弱いんだ……”

──怪しまれても良いから……早く言えよ。

“……まあ次回の参考に……痛てて……してくれ……ってー。痛みもある程度共有かよ”

 やれやれ、だ。


*****


 この街の上層階級が主に住んでる住宅街。
 その中の小さな一軒家がシャーロット・ポートの家だ。
 小さな離れも建っている。

──この街に滞在している時は、シャーロットはあの離れに昼間は大抵居る。カウンセリングの真似事をしているよ。

“あのシャーロット嬢ちゃんがカウンセリング? 大丈夫か”

──真似事だからな。やってる事は怪しいセミナーへの勧誘からの、自分の主催する宗教団体に加入させる事さ。

“宗教団体? “騎士団”か?”

──何だその組織。そんな名前じゃなかったな。

“自前で既に宗教団体作ってたのかよ、あの嬢ちゃん……どんだけお山の大将が好きなんだか”

 俺様達は、動作不良ジャムで使えなくなった退魔銃を何とかしてもらう為に、シャーロットの元へ来たのだが……。
 遠くそのシャーロットの家が見えたかと思うと、母屋の玄関が開けられた。
 さりげなく立ち止まって様子を伺う。

 出てきたのは、この街のボス。
 そうか、今日はコイツが来る日か。

 気のせいか少し乱暴な歩き方をしている気がする。
 すると玄関からシャーロットが慌てて飛び出して来た。シャーロットはボスに縋り付くが、ボスに邪険に払われる。
 何度か同じ行為を繰り返すが、やがてシャーロットが諦めて蹲り、ボスはそのまま乱暴な足取りで俺様達とは逆方向に歩いて行った。

──どうやら不味い状況に出くわしたみたいだな。

 俺様は遠巻きにその修羅場を眺め、相棒にそう考えを伝える。
 だがいつの間にか身体の主導権を相棒が握り、遠く去っていくボスをいつまでも見つめていた。
 足が勝手に動いて、シャーロットに近づいていく。

──おい、どうした相棒!? おいって!!

 シャーロットのそばまで来た時に、俺様の思考にハッと我に返る相棒。
 すまん、と俺様に伝えて奥に引っこむ。
 何だったのだろうか。ボスをひたすら見続けていたが……。但し、あまり良い感情を相棒は持ってはいなかった。
 ミトラ以外にも仇が居たのだろうか?

──何だったんだ?

“分からん。もう少し調べてみないと何とも言えん。それまでちょっと待ってくれ”

──それ、映画だとせっかく真実掴んでも、口封じに殺されて闇から闇へ葬られるパターンだぜ。

“それでも、だ。待ってくれ”

──ふぅん。まぁアンタがそこまで言うんなら、任せるよ。

 足元で気配がする。
 見下ろすと、シャーロットがノロノロと俺様を見上げていた。涙で化粧が崩れて、せっかくの美人が酷い顔だ。

「あんたは……マロニー!? 何でこんな所に!」

 泣きはらした顔が、一気に怒りの形相に変化する。
 うめくように独り言ちた。

「よりにもよって、アンタなんかに!」

「い、いや俺様は……」

 シャーロットは俺様の話を聞きもしないで家に駆け戻る。
 雇っている専属ハウスキーパーの名前を呼びながら。

「カリラ!? カリラ!! 家の前にゴミが落ちているわ!! 掃除しておかないと駄目じゃない!! 本当にグズね!!」

 シャーロットは家の中に入る。
 中でシャーロットがヒステリックに叫びながら、何かをバシンバシンと叩く音が聞こえた。

 やがて、家の中から一人の小柄な女が出てきた。パッとしない冴えない顔立ちの、白人。
 彼女は頭から水を被って、紙屑やホコリもくっついている。
 シャーロットにやられたか。

 その冴えない白人女で、シャーロット専属のハウスキーパーであるカリラは、俺様の元へやってきた。
 そして言いにくそうに話す。

「あのう、マロニーさん。申し訳ありませんが、この家の前から移動してもらえませんでしょうか?」

 そう言ってから、専属ハウスキーパーとは名ばかりのシャーロットの奴隷、カリラは俺様に頭を下げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

処理中です...