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第四章 通りすがりのダーティーエルフ編
第96話 ─ 君が思うよりずっと僕は君が嫌い ─…ある男の独白
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「そこに居るのは、兄貴……か!?」
その声は砂埃の向こうから聞こえてきた。
相棒と俺様は慌てて入れ替わる。
砂埃が落ち着いてないので、まだお互いに姿を確認できる状態じゃあない。
魔物も砂埃が無くなる前に、煙をあげながらすぐに蒸発した。
相棒と入れ替わった俺様は、顔の前を手で扇ぎ、砂埃を払っている。
砂埃が晴れると、ミトラが怪訝な顔で立っていた。
「マロニー? 何でオメーが……。いやそれよりも、今ここに誰か居なかったか?」
「砂埃でよく分からんかったが、多分俺様だけだったと思うがな」
そんな俺様の言葉を聞いた風も無く、ミトラは周囲をキョロキョロと見渡す。
その後、俺様の顔を訝しげに睨んできた。
「このゴミと兄貴を間違えた? まぁ、ゴミ同士で間違える事はあるか」
何かムカつく納得のされ方をした。
相棒も、感情を抑えているが腹を立てているのが分かる。
そしてミトラは俺様に訊ねてきた。
「ところで埃でよく見えなかったが、出た魔物はそこそこ強力な感じじゃなかったか?」
「さあな。必死で退魔銃を撃ってたら倒れた。俺様が倒せたんだから大したヤツじゃなかったんだろ。それか当り所が良かったか」
「ふーん。ま、確かにオメーの言う通りだな。オメーみたいなゴミムシが強え魔物をマトモに倒せる訳が無えか」
ミトラが俺様に偉そうにそう言った直後、何かに気がつく。
俺様がミトラの視線を追っていくと、建物の壁に張り紙が二、三枚。
そのうちの一番新しい紙を見た時、再びドキリとした。
そこに貼られているのは、この男の……いや、俺様の顔。賞金首の手配書だった。
ミトラはのんびりとした口調であざ笑いながら言う。
「ははは! 何だ兄貴、テメーがお尋ね者になっちまってるじゃねえか。俺様に逆らうから天罰が下ったんだな」
“国家反逆罪の割に賞金額がかなり少ない。ベイゼルが……俺の元上司が頑張って抑えてくれたんだな”
ひたすら自分の兄を馬鹿にしてこき下ろすだけのミトラと、冷静に状況を分析・推測する兄。
どう考えても、勝ち組と負け組が逆だとしか俺様には思えなかった。
「なあそう思うだろ、マロニー?」
突然、馬鹿笑いしながら急に話を俺に振り、ミトラがこちらに向き直る。
一瞬、既に分かっていて当て擦りで笑っていたのかと身構えた。
だが違った。ミトラは再び紙に視線を戻すと、笑い続けながら言う。
「はははははは! マロニー、オメーも俺に逆らうと巡り巡って、こんな風に落ちぶれるからな、覚えとけよ。ははは!」
馬鹿笑いしている無防備な後ろ姿を見て、ある不穏な考えがよぎる。
ほぼ同時に、相棒も全く同じ事を考えていた。
──“今なら、銃で撃ったら殺れる”
身体が自然と動き、ミトラの後頭部へ銃を突きつける。
そしてトリガーを躊躇いも無く引いた。
ガギン!
妙な音が手元から響き、見ると退魔銃が動作不良を起こして弾詰まりしていた。
その音に気が付き、ミトラはまたもこちらへ振り返ると、俺様の手元の銃を見る。
見る間に怒りが顔に満ちるミトラ。
「あぁ!? なに舐めた事してやがんだテメー!!」
右の裏拳が顔面に飛んできた。
咄嗟に両手でガード。
防いだと同時に、下へ手を下ろして腹部をガード。ガードの上にミトラの蹴りが飛んできた。
俺様の身体が、まるでミトラの攻撃が分かっているかのように動いて防いでいく。
だがミトラが更に表情を歪めて一瞬攻撃を止めたかと思うと、突然動きが変わった。
こちらのガードをすり抜けて攻撃を当ててくる。やたら動きが良くなった。
相棒の呻くような思考が伝わってくる。
“元の世界と同じだ。あの一瞬止まる時に何か秘密があるんだろうが……!”
やがて顎を打ち抜かれて地面に倒れ、そこへ更に腹を蹴られた。
腹の中のものが地面にぶち撒けられる。
ミトラはその吐瀉物を避けると捨て台詞。
「ケッ、俺に銃なんざ効かねえよ。今みたいにジャムるからな。ゴミムシの分際で身の程を知りやがれ」
そう言って地面に転がる俺様に唾を吐き捨て、ミトラは行ってしまった。
俺様はヨロヨロと立ち上がると、服の袖でミトラの唾を拭う。
“……怪しまれない為に……黙ってたけど……アイツはフェイントに……弱いんだ……”
──怪しまれても良いから……早く言えよ。
“……まあ次回の参考に……痛てて……してくれ……痛ってー。痛みもある程度共有かよ”
やれやれ、だ。
*****
この街の上層階級が主に住んでる住宅街。
その中の小さな一軒家がシャーロット・ポートの家だ。
小さな離れも建っている。
──この街に滞在している時は、シャーロットはあの離れに昼間は大抵居る。カウンセリングの真似事をしているよ。
“あのシャーロット嬢ちゃんがカウンセリング? 大丈夫か”
──真似事だからな。やってる事は怪しいセミナーへの勧誘からの、自分の主催する宗教団体に加入させる事さ。
“宗教団体? “騎士団”か?”
──何だその組織。そんな名前じゃなかったな。
“自前で既に宗教団体作ってたのかよ、あの嬢ちゃん……どんだけお山の大将が好きなんだか”
俺様達は、動作不良で使えなくなった退魔銃を何とかしてもらう為に、シャーロットの元へ来たのだが……。
遠くそのシャーロットの家が見えたかと思うと、母屋の玄関が開けられた。
さりげなく立ち止まって様子を伺う。
出てきたのは、この街のボス。
そうか、今日はコイツが来る日か。
気のせいか少し乱暴な歩き方をしている気がする。
すると玄関からシャーロットが慌てて飛び出して来た。シャーロットはボスに縋り付くが、ボスに邪険に払われる。
何度か同じ行為を繰り返すが、やがてシャーロットが諦めて蹲り、ボスはそのまま乱暴な足取りで俺様達とは逆方向に歩いて行った。
──どうやら不味い状況に出くわしたみたいだな。
俺様は遠巻きにその修羅場を眺め、相棒にそう考えを伝える。
だがいつの間にか身体の主導権を相棒が握り、遠く去っていくボスをいつまでも見つめていた。
足が勝手に動いて、シャーロットに近づいていく。
──おい、どうした相棒!? おいって!!
シャーロットの傍まで来た時に、俺様の思考にハッと我に返る相棒。
すまん、と俺様に伝えて奥に引っこむ。
何だったのだろうか。ボスをひたすら見続けていたが……。但し、あまり良い感情を相棒は持ってはいなかった。
ミトラ以外にも仇が居たのだろうか?
──何だったんだ?
“分からん。もう少し調べてみないと何とも言えん。それまでちょっと待ってくれ”
──それ、映画だとせっかく真実掴んでも、口封じに殺されて闇から闇へ葬られるパターンだぜ。
“それでも、だ。待ってくれ”
──ふぅん。まぁアンタがそこまで言うんなら、任せるよ。
足元で気配がする。
見下ろすと、シャーロットがノロノロと俺様を見上げていた。涙で化粧が崩れて、せっかくの美人が酷い顔だ。
「あんたは……マロニー!? 何でこんな所に!」
泣きはらした顔が、一気に怒りの形相に変化する。
呻くように独り言ちた。
「よりにもよって、アンタなんかに!」
「い、いや俺様は……」
シャーロットは俺様の話を聞きもしないで家に駆け戻る。
雇っている専属ハウスキーパーの名前を呼びながら。
「カリラ!? カリラ!! 家の前にゴミが落ちているわ!! 掃除しておかないと駄目じゃない!! 本当にグズね!!」
シャーロットは家の中に入る。
中でシャーロットがヒステリックに叫びながら、何かをバシンバシンと叩く音が聞こえた。
やがて、家の中から一人の小柄な女が出てきた。パッとしない冴えない顔立ちの、白人。
彼女は頭から水を被って、紙屑やホコリもくっついている。
シャーロットにまたやられたか。
その冴えない白人女で、シャーロット専属のハウスキーパーであるカリラは、俺様の元へやってきた。
そして言いにくそうに話す。
「あのう、マロニーさん。申し訳ありませんが、この家の前から移動してもらえませんでしょうか?」
そう言ってから、専属ハウスキーパーとは名ばかりのシャーロットの奴隷、カリラは俺様に頭を下げた。
その声は砂埃の向こうから聞こえてきた。
相棒と俺様は慌てて入れ替わる。
砂埃が落ち着いてないので、まだお互いに姿を確認できる状態じゃあない。
魔物も砂埃が無くなる前に、煙をあげながらすぐに蒸発した。
相棒と入れ替わった俺様は、顔の前を手で扇ぎ、砂埃を払っている。
砂埃が晴れると、ミトラが怪訝な顔で立っていた。
「マロニー? 何でオメーが……。いやそれよりも、今ここに誰か居なかったか?」
「砂埃でよく分からんかったが、多分俺様だけだったと思うがな」
そんな俺様の言葉を聞いた風も無く、ミトラは周囲をキョロキョロと見渡す。
その後、俺様の顔を訝しげに睨んできた。
「このゴミと兄貴を間違えた? まぁ、ゴミ同士で間違える事はあるか」
何かムカつく納得のされ方をした。
相棒も、感情を抑えているが腹を立てているのが分かる。
そしてミトラは俺様に訊ねてきた。
「ところで埃でよく見えなかったが、出た魔物はそこそこ強力な感じじゃなかったか?」
「さあな。必死で退魔銃を撃ってたら倒れた。俺様が倒せたんだから大したヤツじゃなかったんだろ。それか当り所が良かったか」
「ふーん。ま、確かにオメーの言う通りだな。オメーみたいなゴミムシが強え魔物をマトモに倒せる訳が無えか」
ミトラが俺様に偉そうにそう言った直後、何かに気がつく。
俺様がミトラの視線を追っていくと、建物の壁に張り紙が二、三枚。
そのうちの一番新しい紙を見た時、再びドキリとした。
そこに貼られているのは、この男の……いや、俺様の顔。賞金首の手配書だった。
ミトラはのんびりとした口調であざ笑いながら言う。
「ははは! 何だ兄貴、テメーがお尋ね者になっちまってるじゃねえか。俺様に逆らうから天罰が下ったんだな」
“国家反逆罪の割に賞金額がかなり少ない。ベイゼルが……俺の元上司が頑張って抑えてくれたんだな”
ひたすら自分の兄を馬鹿にしてこき下ろすだけのミトラと、冷静に状況を分析・推測する兄。
どう考えても、勝ち組と負け組が逆だとしか俺様には思えなかった。
「なあそう思うだろ、マロニー?」
突然、馬鹿笑いしながら急に話を俺に振り、ミトラがこちらに向き直る。
一瞬、既に分かっていて当て擦りで笑っていたのかと身構えた。
だが違った。ミトラは再び紙に視線を戻すと、笑い続けながら言う。
「はははははは! マロニー、オメーも俺に逆らうと巡り巡って、こんな風に落ちぶれるからな、覚えとけよ。ははは!」
馬鹿笑いしている無防備な後ろ姿を見て、ある不穏な考えがよぎる。
ほぼ同時に、相棒も全く同じ事を考えていた。
──“今なら、銃で撃ったら殺れる”
身体が自然と動き、ミトラの後頭部へ銃を突きつける。
そしてトリガーを躊躇いも無く引いた。
ガギン!
妙な音が手元から響き、見ると退魔銃が動作不良を起こして弾詰まりしていた。
その音に気が付き、ミトラはまたもこちらへ振り返ると、俺様の手元の銃を見る。
見る間に怒りが顔に満ちるミトラ。
「あぁ!? なに舐めた事してやがんだテメー!!」
右の裏拳が顔面に飛んできた。
咄嗟に両手でガード。
防いだと同時に、下へ手を下ろして腹部をガード。ガードの上にミトラの蹴りが飛んできた。
俺様の身体が、まるでミトラの攻撃が分かっているかのように動いて防いでいく。
だがミトラが更に表情を歪めて一瞬攻撃を止めたかと思うと、突然動きが変わった。
こちらのガードをすり抜けて攻撃を当ててくる。やたら動きが良くなった。
相棒の呻くような思考が伝わってくる。
“元の世界と同じだ。あの一瞬止まる時に何か秘密があるんだろうが……!”
やがて顎を打ち抜かれて地面に倒れ、そこへ更に腹を蹴られた。
腹の中のものが地面にぶち撒けられる。
ミトラはその吐瀉物を避けると捨て台詞。
「ケッ、俺に銃なんざ効かねえよ。今みたいにジャムるからな。ゴミムシの分際で身の程を知りやがれ」
そう言って地面に転がる俺様に唾を吐き捨て、ミトラは行ってしまった。
俺様はヨロヨロと立ち上がると、服の袖でミトラの唾を拭う。
“……怪しまれない為に……黙ってたけど……アイツはフェイントに……弱いんだ……”
──怪しまれても良いから……早く言えよ。
“……まあ次回の参考に……痛てて……してくれ……痛ってー。痛みもある程度共有かよ”
やれやれ、だ。
*****
この街の上層階級が主に住んでる住宅街。
その中の小さな一軒家がシャーロット・ポートの家だ。
小さな離れも建っている。
──この街に滞在している時は、シャーロットはあの離れに昼間は大抵居る。カウンセリングの真似事をしているよ。
“あのシャーロット嬢ちゃんがカウンセリング? 大丈夫か”
──真似事だからな。やってる事は怪しいセミナーへの勧誘からの、自分の主催する宗教団体に加入させる事さ。
“宗教団体? “騎士団”か?”
──何だその組織。そんな名前じゃなかったな。
“自前で既に宗教団体作ってたのかよ、あの嬢ちゃん……どんだけお山の大将が好きなんだか”
俺様達は、動作不良で使えなくなった退魔銃を何とかしてもらう為に、シャーロットの元へ来たのだが……。
遠くそのシャーロットの家が見えたかと思うと、母屋の玄関が開けられた。
さりげなく立ち止まって様子を伺う。
出てきたのは、この街のボス。
そうか、今日はコイツが来る日か。
気のせいか少し乱暴な歩き方をしている気がする。
すると玄関からシャーロットが慌てて飛び出して来た。シャーロットはボスに縋り付くが、ボスに邪険に払われる。
何度か同じ行為を繰り返すが、やがてシャーロットが諦めて蹲り、ボスはそのまま乱暴な足取りで俺様達とは逆方向に歩いて行った。
──どうやら不味い状況に出くわしたみたいだな。
俺様は遠巻きにその修羅場を眺め、相棒にそう考えを伝える。
だがいつの間にか身体の主導権を相棒が握り、遠く去っていくボスをいつまでも見つめていた。
足が勝手に動いて、シャーロットに近づいていく。
──おい、どうした相棒!? おいって!!
シャーロットの傍まで来た時に、俺様の思考にハッと我に返る相棒。
すまん、と俺様に伝えて奥に引っこむ。
何だったのだろうか。ボスをひたすら見続けていたが……。但し、あまり良い感情を相棒は持ってはいなかった。
ミトラ以外にも仇が居たのだろうか?
──何だったんだ?
“分からん。もう少し調べてみないと何とも言えん。それまでちょっと待ってくれ”
──それ、映画だとせっかく真実掴んでも、口封じに殺されて闇から闇へ葬られるパターンだぜ。
“それでも、だ。待ってくれ”
──ふぅん。まぁアンタがそこまで言うんなら、任せるよ。
足元で気配がする。
見下ろすと、シャーロットがノロノロと俺様を見上げていた。涙で化粧が崩れて、せっかくの美人が酷い顔だ。
「あんたは……マロニー!? 何でこんな所に!」
泣きはらした顔が、一気に怒りの形相に変化する。
呻くように独り言ちた。
「よりにもよって、アンタなんかに!」
「い、いや俺様は……」
シャーロットは俺様の話を聞きもしないで家に駆け戻る。
雇っている専属ハウスキーパーの名前を呼びながら。
「カリラ!? カリラ!! 家の前にゴミが落ちているわ!! 掃除しておかないと駄目じゃない!! 本当にグズね!!」
シャーロットは家の中に入る。
中でシャーロットがヒステリックに叫びながら、何かをバシンバシンと叩く音が聞こえた。
やがて、家の中から一人の小柄な女が出てきた。パッとしない冴えない顔立ちの、白人。
彼女は頭から水を被って、紙屑やホコリもくっついている。
シャーロットにまたやられたか。
その冴えない白人女で、シャーロット専属のハウスキーパーであるカリラは、俺様の元へやってきた。
そして言いにくそうに話す。
「あのう、マロニーさん。申し訳ありませんが、この家の前から移動してもらえませんでしょうか?」
そう言ってから、専属ハウスキーパーとは名ばかりのシャーロットの奴隷、カリラは俺様に頭を下げた。
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