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第二章 異世界編
第14話 “行倒”…偽りのダークヒーロー編
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ギラギラと照りつける太陽。
揺らめく地平線。
暴力的な陽射しを遮るものなど何も無い、茫漠たる荒野。
全てが彼の体力と精神力を消耗させる。
ミトラはエンジンの焼け付いたバイクを押しながら、荒野のハイウェイを歩いていた。
バイクを押しているこの選択が正しいのか、あの場に置いてきた方が良かったのか。
この先の何処かにある次のガススタンドや修理施設に向かう今のが正解なのか、引き返して最後に給油したガススタンドへ向かった方が正しかったのか。
暑さに溶けそうになる頭で、ミトラは延々とそんな思考の堂々巡りを続けていた。
最後に、さっきのジャンプ台にされたピックアップトラックが通り過ぎてから、一切何も通らない。自動車もバイクも。
やがてミトラは思考の堂々巡りすら出来なくなり、何のためにバイクを押しているのだろうかと、一瞬考えるのが少しずつ増えてくる。
そしてそのうち暑さで考える事すら出来なくなり、ただ呆然とバイクを押しているだけになった
そんな状態に陥ったミトラが、じきに体力の限界を迎えて、バイクと共に地面に倒れ伏すのも時間の問題かつ当然の帰結だった。
そして見渡す限り、自動車の影もバイクの影も存在しなかった。
*****
ガタゴトと乗り心地の悪い振動を感じてミトラは目を覚ました。
口元が少し湿気た感覚がある。
ミトラは身体を起こそうとするが、あちこちが痛んで思わず呻き声をあげた。
「気がついたかい。まだ起きない方がいいよ。とりあえずコレでも飲みな。ひと口ずつ、ゆっくりとだよ」
そう言って運転手は、呻き声をあげたミトラにミネラルウオーターのペットボトルを投げてよこした。
ペットボトルは身動きの取れない彼の腹の上にボスっと落ちる。
思わず息が詰まって、別の呻き声をあげた。
「ああ、ごめんごめん。動くなって言ったの私だったよね」
そう言ってアハハと運転手は笑った。
声からすると女性だ。
おそらく若くても二十代後半だろうとミトラは判断する。
ミトラは苦労して身体を起こし、ペットボトルを手に取り水をひと口飲んだ。
そのひと口の量が随分多かったのは仕方がない。
そして人ごこちついたミトラは、バックミラー越しに運転手を見た。
ミラーに映る目元から推測出来る年の頃は、三十歳前後といったところか。
さっきの予想はさほど外れていなかったようだ。
ふとミトラは、フロントガラスにくっきり付いたタイヤ痕に気がついた。
「ガラスと天井……大丈夫だったか」
「たぶん、今のところは…ね。
それよりも、街がヤバい事になってそうだけど、教えておくれよ。身体がマシになってからで良いからさ。……あと、アンタが追っかけっこしてた事とか」
あのオフロードバイクのジャンプ台になったピックアップトラックだったのか。
遠くから街の様子のおかしさに気付いて、引き返してきた……といったところか。
そうミトラは推測した。
「バイクも後ろに積んでるよ。私の家に着いたら、バラして見てやるよ」
一瞬、後ろをチラリと見て、ニカっと女運転手はミトラに笑った。
彼にとっては……ミトラにとっては良くある事だ。困った事が起こっても、大体は何とかなるのは。
今回もまた彼女が助けてくれて、何とかなった。
なぜならミトラは……いわゆる「転生者」だからだ。
エルフの村に生まれついたとき、それに気がついた。俺は日本で事故で死んで、この世界に転生した、と。
目には見えないが、頭の中でハッキリと知覚できていた。俺は強運と最高の魔力を持って転生出来たと。
その強運は自らの成長と共にいつしか“主人公属性”なる名前に変化していた。
そう、俺は物語の主人公なのだ!
主人公ならばピンチがあるのは当然だ。そしてそのピンチを乗り越えられるのも当然だ。
信じられない偶然に助けられる事だって当たり前だ。
まさに今回のように。
しかしまさか、転生元のこの世界に舞い戻ることになろうとは。
しばらくはこの女の元で世話になる事にしよう、とミトラは考えて再び目を閉じた。
揺らめく地平線。
暴力的な陽射しを遮るものなど何も無い、茫漠たる荒野。
全てが彼の体力と精神力を消耗させる。
ミトラはエンジンの焼け付いたバイクを押しながら、荒野のハイウェイを歩いていた。
バイクを押しているこの選択が正しいのか、あの場に置いてきた方が良かったのか。
この先の何処かにある次のガススタンドや修理施設に向かう今のが正解なのか、引き返して最後に給油したガススタンドへ向かった方が正しかったのか。
暑さに溶けそうになる頭で、ミトラは延々とそんな思考の堂々巡りを続けていた。
最後に、さっきのジャンプ台にされたピックアップトラックが通り過ぎてから、一切何も通らない。自動車もバイクも。
やがてミトラは思考の堂々巡りすら出来なくなり、何のためにバイクを押しているのだろうかと、一瞬考えるのが少しずつ増えてくる。
そしてそのうち暑さで考える事すら出来なくなり、ただ呆然とバイクを押しているだけになった
そんな状態に陥ったミトラが、じきに体力の限界を迎えて、バイクと共に地面に倒れ伏すのも時間の問題かつ当然の帰結だった。
そして見渡す限り、自動車の影もバイクの影も存在しなかった。
*****
ガタゴトと乗り心地の悪い振動を感じてミトラは目を覚ました。
口元が少し湿気た感覚がある。
ミトラは身体を起こそうとするが、あちこちが痛んで思わず呻き声をあげた。
「気がついたかい。まだ起きない方がいいよ。とりあえずコレでも飲みな。ひと口ずつ、ゆっくりとだよ」
そう言って運転手は、呻き声をあげたミトラにミネラルウオーターのペットボトルを投げてよこした。
ペットボトルは身動きの取れない彼の腹の上にボスっと落ちる。
思わず息が詰まって、別の呻き声をあげた。
「ああ、ごめんごめん。動くなって言ったの私だったよね」
そう言ってアハハと運転手は笑った。
声からすると女性だ。
おそらく若くても二十代後半だろうとミトラは判断する。
ミトラは苦労して身体を起こし、ペットボトルを手に取り水をひと口飲んだ。
そのひと口の量が随分多かったのは仕方がない。
そして人ごこちついたミトラは、バックミラー越しに運転手を見た。
ミラーに映る目元から推測出来る年の頃は、三十歳前後といったところか。
さっきの予想はさほど外れていなかったようだ。
ふとミトラは、フロントガラスにくっきり付いたタイヤ痕に気がついた。
「ガラスと天井……大丈夫だったか」
「たぶん、今のところは…ね。
それよりも、街がヤバい事になってそうだけど、教えておくれよ。身体がマシになってからで良いからさ。……あと、アンタが追っかけっこしてた事とか」
あのオフロードバイクのジャンプ台になったピックアップトラックだったのか。
遠くから街の様子のおかしさに気付いて、引き返してきた……といったところか。
そうミトラは推測した。
「バイクも後ろに積んでるよ。私の家に着いたら、バラして見てやるよ」
一瞬、後ろをチラリと見て、ニカっと女運転手はミトラに笑った。
彼にとっては……ミトラにとっては良くある事だ。困った事が起こっても、大体は何とかなるのは。
今回もまた彼女が助けてくれて、何とかなった。
なぜならミトラは……いわゆる「転生者」だからだ。
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目には見えないが、頭の中でハッキリと知覚できていた。俺は強運と最高の魔力を持って転生出来たと。
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そう、俺は物語の主人公なのだ!
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信じられない偶然に助けられる事だって当たり前だ。
まさに今回のように。
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