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第二章 異世界編
第30話 “夜更けの月明かりの下に”その2…偽りのダークヒーロー編
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「ふふふ、漸く来たかヘネシー。我が「花嫁」よ。待ちかねたぞ」
隠し階段の先は、意外なまでに広大な空間に造られた地下墓地だった。
その空間の一番奥に、古めかしい貴族の黒い衣装を纏った男の姿があった。
目は横一文字に刀傷が醜く走り、視力があるようには見えない。
その男の前には、白いワンピースを身に付けたヘネシー。
頭にはヴェールがかかっているので、簡易ながらの花嫁衣装のつもりらしい。
そしてその彼女の後ろに「夫」と「息子」が、まるで人形のように立っている。
「許せ。本来なら正式な花嫁衣装を着せるところであるが、邪魔をする無粋な輩が紛れ込んでいるからな」
そう“領主様”が呟いた時、地下墓地の入り口から、その「無粋な輩」の叫び声が響いた。
「色ボケも大概にしとけジジイ!!」
だが黒衣の“領主様”は、そんなミトラを鼻で笑うと、自分の爪でヘネシーの首を軽く引っ掻いた。
うっすらと滲み出す血潮。
それを己の舌で下品に舐め取ると、満足気な笑みを浮かべた。
「毎夜、こうしてお前の甘い血を味わいながら、時間をかけて我が眷属に変えていってやろう。久し振りに迎える妻だ。大事に血を啜ってやるぞ」
そして入り口の方へ顔を向け、何か力を込める。
すると潰れた目が、みるみるうちに再生していった。
その紅い目でミトラを睨むと、怪訝な表情を浮かべた。
「誰だ貴様は!? 我が目を潰したあの男ではないな!」
「お前こそ誰だよ。悪いが女を返してもらうぜ。バイクのメンテが終わってねえんだ!」
ミトラは、広大な地下墓地の最奥に屹立する、黒衣の貴族風の男に叫び返した。
「この女は以前から我が花嫁として目を付けていたのだ! この町も我の所有物よ! 所有物をどうしようと我の勝手!」
貴族風の男の顔が険しくなり、口が耳まで裂けたかのように大きく空いた。その口の中には巨大な犬歯。
黒衣の貴族風の男は、憤怒の表情を顔に貼り付けて、ミトラに叫んだ。
「だがそれを邪魔だてし、あまつさえ我が眼を潰したあの男! 決して許す訳には行かぬ。眼が再生した以上は地の果てまで追い詰めて死を与える!
今宵まずは前菜に、あの男と同じ匂いを持つ貴様を血祭りにあげてくれる!」
ミトラの持つ魔剣が低く唸り、彼に魔剣の思考が流れ込んでくる。
“ようやくまともな食事にありつけるか。此奴の手下風情では腹の足しにもならぬ”
──ヤツは死に損ないの吸血鬼だぞ?
“我は生者だろうが死者だろうが構わず喰ってしまう混沌の魔剣ぞ”
ミトラが思考のみで、魔剣とそんなやりとりをしている姿は、黙って硬直しているかのようだった。黒衣の吸血鬼は嘲笑い叫んだ。
「ようやく己が愚かさに思い至って、怖気付いたか。だが楽に死ねると思うな!
このS・O・Q・グレンタインを愚弄した大罪、地獄の苦しみの中で後悔しながら死ぬが良い!!」
「ゴタクを喚いてないで、とっととかかって来い。怖気付いたのか、グレンタインちゃん!?」
「……! この攻撃を受けて、骨もチリも残さず消し飛ぶが良い!
全翼型爆装攻撃「告別」!!」
“領主様”ことグレンタインの背中から真っ黒な蝙蝠の羽のようなものが、一瞬のうちに地下墓地の全てを覆い尽くした。天井も床も壁も。
その部屋を覆い尽くす黒翼から一斉に光弾が四方八方から打ち出されてくる。
ミトラがその光弾を弾こうと魔剣をひと振りすると、魔剣が通った場所の光弾が全て掻き消えた。
魔剣が光弾を「喰った」のだ。
魔剣から僅かずつエネルギーがミトラに流れ込んでくる。
部屋を覆い尽くす黒翼が僅かに薄れる気配。
その事実に驚愕したグレンタインは、焦りの表情を浮かべて攻撃の方法を密かに変化させる。
ミトラは少しずつグレンタインとの距離を詰めてきていた。
グレンタインは、エネルギーが奪われる事を承知の上で光弾の数を増やす。さすがに足が止まり、ミトラは光弾の処理に手一杯になる。
そしてその時、ミトラの視界の死角から、黒翼が変化した触手が彼に絡みつき、拘束して動けないようにしてしまった。
魔剣を振って光弾を喰うことが出来なくなったミトラに、降り注ぐエネルギーの塊。
闇のオーラが、常人を遙かに超える防御力を彼に与えているが、徐々に彼の額が割れ、肉が抉られて傷が増えていく。
「ハハハハハハ! そのまま跡形も無く消し去ってくれる!」
そう言ってグレンタインが、地下墓地に影が無くなるほどの光弾を発生させる。
ミトラは未だ拘束を振りほどけない。
「死ね──」
ザンッ!
言いかけたグレンタインの動きが止まる。
ミトラの拘束も消滅した。
訝しげにミトラがグレンタインを見ると、グレンタインは左の肩口から大きく縦に断ち割られていた。
「──現場に到着したぞベイゼル。例の『死に損ない』も確認。
ああ!? アンノウンと呼べだぁ? どうでも良いだろ! そんなこと!!」
そう苛立たしげに叫ぶ、聞き覚えのある声。
隠し階段の先は、意外なまでに広大な空間に造られた地下墓地だった。
その空間の一番奥に、古めかしい貴族の黒い衣装を纏った男の姿があった。
目は横一文字に刀傷が醜く走り、視力があるようには見えない。
その男の前には、白いワンピースを身に付けたヘネシー。
頭にはヴェールがかかっているので、簡易ながらの花嫁衣装のつもりらしい。
そしてその彼女の後ろに「夫」と「息子」が、まるで人形のように立っている。
「許せ。本来なら正式な花嫁衣装を着せるところであるが、邪魔をする無粋な輩が紛れ込んでいるからな」
そう“領主様”が呟いた時、地下墓地の入り口から、その「無粋な輩」の叫び声が響いた。
「色ボケも大概にしとけジジイ!!」
だが黒衣の“領主様”は、そんなミトラを鼻で笑うと、自分の爪でヘネシーの首を軽く引っ掻いた。
うっすらと滲み出す血潮。
それを己の舌で下品に舐め取ると、満足気な笑みを浮かべた。
「毎夜、こうしてお前の甘い血を味わいながら、時間をかけて我が眷属に変えていってやろう。久し振りに迎える妻だ。大事に血を啜ってやるぞ」
そして入り口の方へ顔を向け、何か力を込める。
すると潰れた目が、みるみるうちに再生していった。
その紅い目でミトラを睨むと、怪訝な表情を浮かべた。
「誰だ貴様は!? 我が目を潰したあの男ではないな!」
「お前こそ誰だよ。悪いが女を返してもらうぜ。バイクのメンテが終わってねえんだ!」
ミトラは、広大な地下墓地の最奥に屹立する、黒衣の貴族風の男に叫び返した。
「この女は以前から我が花嫁として目を付けていたのだ! この町も我の所有物よ! 所有物をどうしようと我の勝手!」
貴族風の男の顔が険しくなり、口が耳まで裂けたかのように大きく空いた。その口の中には巨大な犬歯。
黒衣の貴族風の男は、憤怒の表情を顔に貼り付けて、ミトラに叫んだ。
「だがそれを邪魔だてし、あまつさえ我が眼を潰したあの男! 決して許す訳には行かぬ。眼が再生した以上は地の果てまで追い詰めて死を与える!
今宵まずは前菜に、あの男と同じ匂いを持つ貴様を血祭りにあげてくれる!」
ミトラの持つ魔剣が低く唸り、彼に魔剣の思考が流れ込んでくる。
“ようやくまともな食事にありつけるか。此奴の手下風情では腹の足しにもならぬ”
──ヤツは死に損ないの吸血鬼だぞ?
“我は生者だろうが死者だろうが構わず喰ってしまう混沌の魔剣ぞ”
ミトラが思考のみで、魔剣とそんなやりとりをしている姿は、黙って硬直しているかのようだった。黒衣の吸血鬼は嘲笑い叫んだ。
「ようやく己が愚かさに思い至って、怖気付いたか。だが楽に死ねると思うな!
このS・O・Q・グレンタインを愚弄した大罪、地獄の苦しみの中で後悔しながら死ぬが良い!!」
「ゴタクを喚いてないで、とっととかかって来い。怖気付いたのか、グレンタインちゃん!?」
「……! この攻撃を受けて、骨もチリも残さず消し飛ぶが良い!
全翼型爆装攻撃「告別」!!」
“領主様”ことグレンタインの背中から真っ黒な蝙蝠の羽のようなものが、一瞬のうちに地下墓地の全てを覆い尽くした。天井も床も壁も。
その部屋を覆い尽くす黒翼から一斉に光弾が四方八方から打ち出されてくる。
ミトラがその光弾を弾こうと魔剣をひと振りすると、魔剣が通った場所の光弾が全て掻き消えた。
魔剣が光弾を「喰った」のだ。
魔剣から僅かずつエネルギーがミトラに流れ込んでくる。
部屋を覆い尽くす黒翼が僅かに薄れる気配。
その事実に驚愕したグレンタインは、焦りの表情を浮かべて攻撃の方法を密かに変化させる。
ミトラは少しずつグレンタインとの距離を詰めてきていた。
グレンタインは、エネルギーが奪われる事を承知の上で光弾の数を増やす。さすがに足が止まり、ミトラは光弾の処理に手一杯になる。
そしてその時、ミトラの視界の死角から、黒翼が変化した触手が彼に絡みつき、拘束して動けないようにしてしまった。
魔剣を振って光弾を喰うことが出来なくなったミトラに、降り注ぐエネルギーの塊。
闇のオーラが、常人を遙かに超える防御力を彼に与えているが、徐々に彼の額が割れ、肉が抉られて傷が増えていく。
「ハハハハハハ! そのまま跡形も無く消し去ってくれる!」
そう言ってグレンタインが、地下墓地に影が無くなるほどの光弾を発生させる。
ミトラは未だ拘束を振りほどけない。
「死ね──」
ザンッ!
言いかけたグレンタインの動きが止まる。
ミトラの拘束も消滅した。
訝しげにミトラがグレンタインを見ると、グレンタインは左の肩口から大きく縦に断ち割られていた。
「──現場に到着したぞベイゼル。例の『死に損ない』も確認。
ああ!? アンノウンと呼べだぁ? どうでも良いだろ! そんなこと!!」
そう苛立たしげに叫ぶ、聞き覚えのある声。
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