とがびとびより、ロニーの物語

ヒトヤスミ

文字の大きさ
35 / 39
光道真術学院【マラナカン】編

三十五

しおりを挟む
 ロニーとマクシミリアンは学院を出て工業区をひた走る。
「しかし、ひどい惨状だな、比較的ダメージが少ないだろう工業区もこの感じだと……」
 見渡す王都の現状、遠い場所では交戦中か光道真術の光が数か所で散る。ふとマクシミリアンが肩を掴んでロニーを留める。
「どうした?」
「真直ぐは無理ね、道が塞がれているわ……こっち、少し遠回りになるけど」
 光道真術で赤く光る眼を大きく開けマクシミリアンは道程を変更した。
「なんかおかしいのよね……」
「何が?あたま?」
 パンっと響く音と頭を抱えるロニー。
「次ふざけたら金玉蹴り上げるから」
「……はい」
 救済害より身近に身の危険を感じる。
「静かすぎない?A級救済害ってもっと暴れまわるものじゃないの?」

「災害にもよるよ、ランクが上がるほど凶暴になる場合もあるけど……狡猾さが増す場合もある」
 ロニーが辺りを見渡す、確かに彼女の言う通り静かすぎる。
「これは後者のタイプかもしれないな……」
「考えてもしょうがない、いくわよ」
 マクシミリアンの指示で再び動き出した。

≪≫≪≫≪≫

「了解しました、救済害の居場所を補足次第、出来るだけ保管庫より引き離します」
 連絡用の無線機を切り、再び移動を開始するイルシオニスタ。
 彼女はすでに工業区に到着していた。しかし、未だに救済害の居場所を特定できてはいない。
「(A級救済害が二体……それに加え知能型、厄介極まりない。まずは捕捉、次に引き離し、最後に応援が来るまで一人で持ちこたえる……やるしかないです」
 決意を新たに彼女は前を向く。

≪≫≪≫≪≫

 ロニーとマクシミリアン、二人は順調に保管庫に近づいていた。
「どうだミリー、救済害の居場所はつかめたか?」
 首を振る。
「……いえ、そんな気配も感じないわ」
「(ミリーでも居場所を掴めないのか……)」
「まぁ、進むしかないんだし。さっさと行くわよ」
 現状をのみ込み、出来る限り二人は気配を絶ち慎重に歩を進め、ゆっくり目の前の角を曲がる。

≪≫≪≫≪≫

 イルシオニスタも保管庫に近づいていた。あと二つほど角を曲がれば保管庫に着く。
 自身の気配を消し慎重に進む。未だ救済害の位置は把握できず少々の焦りが汗となり頬を伝う。
 曲がり角の前で、一度後ろを振り返り、異変がないことを確認、おもむろに曲がり角から身体を出す。

「きゃっ!」
「すいません」

 マクシミリアンとイルシオニスタの正面衝突。互いに気配を極限まで消した者同士であり、対人間の意識はなかった。後ろに居たロニーは慌てて身構え、前に、そこには懐かしい顔。
「……イルシオニスタ」
「……っ」
 久しぶりの再会は何とも間の抜けた展開で事を成した。
「よお、久しぶりだな」
「……」
 再開の挨拶は空を切る。
「元気だったか?」
「……」
 通常の挨拶も空を切る。
「飯食ったか?」
「……」
 冗談は勿論、空を切る。
「おい、ミリー。俺、今凄い無視されてる」
「……そうね、されてるわね」
 見ればわかることをわざわざ告げんでも良いとマクシミリアンは肩を竦める。
「ごめんなさい。えーと、イルシオニスタさんね、私は【光道真術学院・マラナカン】で教師をしているマクシミリアン、宜しくね」
「はい、存じ上げております。【一桁騎士団・ナンバーズ】四番隊副隊長イルシオニスタ・アルバセテです。これより先は保管庫まで警護いたします。」
「そう。ありがと」
「では、行きましょう。保管庫まですぐですので」
「そうね」
 二人は軽く自己紹介を済ませると足早に保管庫に向かった。

「(……えーーーー!)」
 一人置いてけぼりなロニーが心で叫ぶ。

≪≫≪≫≪≫

 何のことはなく無事に保管庫にたどり着いた三人。応援の騎士団はまだ到着していないようだが、なんとなく拍子抜けの様相を呈す。
「先に中の確認をしちゃいましょう」
 マクシミリアンはそう言うと、組合長から渡されたキーを扉にはめ開錠の番号を押し光道力を注ぐ。
 「ピー」と音が鳴り、扉は開錠され、三人は保管庫の中に足を踏み入れる。
 保管庫の中は暗く前が見えない、事前に組合長から聞いていた電飾のスイッチを付けようとロニーが踏み出した瞬間、後方の扉が大きな音を立て彼らの退路を塞ぐかのように閉じる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
 お人好しで動物好きな最上悠は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏も、寿命から静かに息を引き取ろうとする。 「助けたいなら異世界に来てくれない」と少し残念な神様と出会う。  転移先では半ば強引に、死にかけていた犬を助けたことで、能力を失いそのひっそりとスローライフを送ることになってしまうが  迷い込んだ、訪問者次々とやってきて異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...