転生お姉さんの主食は百合

スイ

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2話目

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 異世界では時に空から人が降る。よくある事だ。


 ねえよ。






「あ、私これ落下で死ぬんじゃ……?」

  リリの黒髪は青空で踊っていた。いつの間にか着ていた、いかにもな異世界風な村の女性の服がヒラヒラと揺れる。

 ふわりと浮いているとはいえ、このまま足元の森に突っ込めば、怪我どころじゃ済まないだろう。

 異世界転生初手で転落死か。なるほど。お疲れ様でした。





「おいおい、諦めるにゃ。まだ女の子1人にも会ってにゃいだろう」

 鈴のような声に、目を閉じて身を任せていたいたリリだが、即座に体制を整えた。


「こんなところで死ねない!美少女達のイチャコラを見るんだ!!!」

 リリは異世界主人公らしいはつらつとした声で、サイテーの叫びを上げた。

「はいはい、その意気だにゃ」

 声は棒読みでリリの叫びに答える。

「リリ、大丈夫だにゃ。授けられた魔法を使えば、無事に降りることくらい余裕だにゃ」

「失敗したら骨はいちゃラブが見れる女子更衣室に埋めて」

「気持ち悪いから却下」

 リリは誰とも知らない声に、チェっと言い返した。



 次いでそれっぽく右手を地面に突き出した。

「えーっと、んー、クリエイトー!」

 リリが叫ぶと、どこからともなく白い光が集まり、ぽんと間抜けな音をたてた。
 光は、巨大なクッションのようなものに変わり森を覆った。

「さすがだにゃ」

 声は相変わらず棒読みだが、少しだけ明るい声になった。
 声の主は叫ばなくても【創造魔法】は使えることを知っていたが、教えなかった。なんか面白そうだから。


「【創造】、まさかこんなことに使うとは」

「逆に、何に使うつもりだったにゃ?」

「そりゃもう、世界中の少女にドレスを着せるためよ。あとは(自主規制)とか(自主規制)とか作って配り歩くためよ」

「他の魔法も、そういうことのために使うつもりかにゃ?」


 リリは落ちながら空にむかって親指を立てた。
 声は、ぶれないにゃあと欠伸を浮かべた。



 ぽふん、と白い布はリリの身を包んだ。リリが立ち上がると、布はしゅるしゅると地面へ溶けるように消えていった。

「思ってたより適応が早くてびっくりだにゃ」

 布が消えていくと、近くにいた猫が顔を出した。

 真っ白な毛並みに金色の目。胸元には、金の飾りの着いたリボンがあしらわれている。
 リリはどこぞの神様を思い出した。
 先程から話しかけてきたのは、この猫の声に間違いないだろう。

「猫さん、あなたは誰?」

「んにゃ~?俺は、」

 猫の話を遮るように、別の声が騒ぎだした。

「あー、聞こえるリリ?神だよ!」


 自称神の声はどうやら猫の方からするようで。猫に近づくと、リボンの飾りに、先程まで自分が神と会話していた部屋が映っていた。

「やほやほ、見えてる~?この白猫は友達のニャル。何かあったら助けてくれるから、可愛がってやって」

 ニャルと呼ばれた猫は、ペシペシと自分のリボンを叩いた。

「俺はまだそんな約束一言も交わしてないにゃ。しかも友達じゃ無いにゃ」

「じゃあツナ缶に鰹節でどう?ニャル?」

「仕方ないマブダチだにゃ」

 自称神はニャルの言葉を聞くとガッツポーズを浮かべて、そのまま直ぐに消えてしまった。
 ひとり置いてけぼりのリリは、はぁ、と声にならない声を漏らした。

「って訳で、困ったことがあれば俺に聞くにゃ。面白そうなら助けてやるにゃ」

 ニャルはペシペシとリリの足を叩いた。

「私が百合漫画王国創りたいって言ったらどうする?」

「ぶれないにゃあ……定期的に男に突入させて遊ぶかにゃ」

 リリもニャルもお互い、ダメだこいつという目で見つめあった。



「あ、ああ、あ、あ」

 リリとニャルが無駄話に花を咲かせていたころ。もうひとつの影が、森のしげみに居た。

「ほ、本物だ。本物の魔法使い様だ……」

 消えていく布切れを、キラキラした瞳で見つめていた。

 自由恋愛で混血が進んだこの世界。魔法が使える者は、ちらほらしか居ないのだ。

「すごいなあ……あ、猫ちゃんもいる」

 影から見ていた少女は、自分の頭に着いている耳をぴくぴく動かした。

「魔法使い様……かっこいいなあ」

 そう呟いたのが聞こえたのか、偶然か。
 茂みの先に立つ黒髪の女性は、くるりと少女の方を振り返った。

 少女はあわてて森の奥の方へ駆け出した。

 見つかってしまって恥ずかしさとか、盗み聞きしてしまった罪悪感とかで、反射的に走り出していた。


「あひゃ!?」

 足を大きく踏み出した途端、地面のツタに足を取られて、それはそれは派手に宙を舞った。



 リリは宝石を落としたかのように倒れた少女の元に猛ダッシュした。すぐさま腕で持ち上げ、顔の泥を払う。

「え?リアル猫耳少女?私今日死ぬかもしれない」

 リリは呟いた。
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