拝啓、傷ついたあなたへ……

梅木流

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陸でエラ呼吸

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ピピッ
『20☓☓年○月○日、午前11時録音データ1件、再生シマス。』

  ――恐怖は最も原始的な感情である。

 あぁ~、誰だったかな?
 なんか、そんなこと言ってた気がするわ。

 え? 私の怖いもの?
 いっぱいあるで、そんなもん。

 人の視線、言葉、満員電車、生物学上人間の雄、重複したタスク、期待、目標、締切、貧困……

 まぁ、あげだしたらキリないわな。
 でもさ、怖いもんが多いのって悪いことではないと思うんよな。生きづらいけど。

 私バカだからさ、語彙も乏しいし表現のしかたがわからないけどさ恐怖って死なないためにあるんやろ?

 だったらいいんちゃう?
 毎日「死にたい」って口癖みたいに言ってるけどさ、多分自分は死にたいわけじゃないんだよな。
 だって死んだら葬式代とかかかるし、遺品整理にも金がかかるし、遺産はないけど誰に何を渡すかとか揉めそうだし。
 あ、金の話ばっかやな。他にももちろんあるで。
 悲しむ人は居ると思うし、職場も一応は私いなくなったら暫くの間は穴が空いて誰かがその穴埋めを負担するはずだし。あとはまぁ、思いつかね。

 でもさ、もし、もしもやで?
 もしも「最初から私が存在してなかった世界」が明日やってきて、私の存在が完全に消えてなくなってしまう分にはいいかなって思う。
 だって、そしたら誰も悲しまないし、金もかかんないし、仕事にも穴があかない。
 そんで私も消えてなくなってるから私の思考も感情も何もかもなくなるわけだから誰にも迷惑かけないし、私自身も悲しくも怖くもないわけ。

 よくさ「あなたよりもつらい人がいるよ」って言うやついるじゃん。大嫌いだわ。
 不幸比べすんなよ。みんなしんどいんだよ。よりもじゃなくて、みんなつらいんだよ。
 あと「生きたかった人が生きれなかったのに死にたいって言うのはその人達に失礼だよ」って言うやつ。嫌いだわ。
 うるせー、私の人生やろがい。何が失礼じゃ。私の人生を私がどう思おうが勝手だろうが。

 でもふと思ったんよな。これ、口に出さんかったらいちいち他人にどうこう言われんなって。
 だから黙るようにしたんよな。私は失言も多いし、言葉遣いもきれいじゃないし、別に大したこと考えてないし。

 そしたらさ「もっと自分のこと喋りなよ」って。
 自分のことペラペラ話すやつなんて迷惑なだけやろがい。みんな誰かに話し聞いてほしくてたまらないんやろ?
 だから聞き手に回ってるってのに今度はそれかよ。

 あぁ~もう、ホンマに他人って面倒だわ。
 向き合っても結局傷つくだけやしさ、隠居してぇ。

 あと、視線もやっぱ嫌いだわ。目は口ほどになんちゃららって言うやん?
 ホンマにそう思う。

 相手の目を見て話したら、こっちが何考えてるかも見透かされそうで怖くて無理だわ。からっぽなんバレてまうやん。
 えぇ歳こいた大人が何も考えてない空っぽとか、あまりにも惨めや。

 しかもさ、ただ道歩いてるだけやのにどいつもこいつも視線をよこしてくるんや。
 やめてくれよ。私は好きな服きてるだけやん。勝手に認知すんなよ。んで、勝手に話しかけてくんな。

「きれいですね」

 ――あたりまえやろ。自分のためにおしゃれしてるんやから。

「前から話してみたかったんです」

 ――チラチラみてたもんな。私は話したくなかったから無視しとったんやで。

「今度食事しませんか?」

 ――私の貴重な時間を親しくもないあなたに使うのは嫌や。

 嫌になる。
 ある人は私を美人だと言うし、ある人は私をブスだという。

 どっちでもいい。
 私は私のこと大嫌いだけど、認めてはいるんだ。
 いちいち外野が口出すな。

 そういや、最近は恐怖よりも敵意が勝ってきたなぁ。

 とまぁ、ここまで自分語りしといてアレやねんけどさ……。

 ――ホンマにこんなのカウンセリングになるわけ?

ブツッ、ザァァァァ……。
    
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