パッとしない伯爵令嬢に転生しましたが、前世の縁故採用で王城女官になりました

碧りいな

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文官になってみた

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 それにしてもこの惨状は一体どうしたことなのか?私が普段行く向こうの倉庫にはこんな場所は一部屋もないし、ジョルジュが言うにはこの棟も他の部屋はきちんと管理されているそうだ。だったらこの地獄絵図がどのように出来上がったかと言うと、このワンフロア仕切りなしという造りの宿命らしい。この部屋なら広いから一旦置いておいて後で片付けよう……この倉庫が建てられて20年、そんな『その場しのぎ』と『やりっ放し』が繰り返され凄まじく雑然とした空間を生み出したのだ。

 ジョルジュは三年前のアレをきっかけに一人この部屋に追いやられた。しかしそこはうだつの上がらないジョルジュのこと、始めの一年はわざわざソファを持ち込みひたすら昼寝をしていたのだそうだ。

 そんな生活をしていたのだから当然といえば当然だが、ジョルジュは夜寝られなくなった。昼夜逆転なのだから睡眠時間は十分だ。しかし小さなソファで丸まって寝るので睡眠の質は劣悪。身体中が痛いし怠くてたまらず疲労困憊だったという。

 「初めの一年は良かったんだ。上官に怒られることもなけりゃ同僚から馬鹿にされることもない。仕事の進み具合なんざ誰も見に来ない。お前のおかげで天国に来られたと感謝したもんだ。だがなぁ、寝たくても寝られないベッドの上で、もんどり打って過ごす夜は辛いもんだ。それなら昼間は眠気覚ましに働いた方がまだマシだ」

 眠気覚ましに……ジョルジュがうだつの上がらない文官である理由がわかった気がするが、それはさておき疲れがたまり我慢の限界に達し、ついにジョルジュは在庫管理を始めた。どうにか四分の三までは終わらせたが次々と搬入される荷物の処理まで追いつかず、結果としてこの四分の一の地獄絵図はどうしてもなくならない。

 何度も増員を申し出たがこの地獄で働きたいと言う者はおらず、ジョルジュが一人で頑張るしかない。ましてやジョルジュが辞めたら残るのはこの地獄だけ。

 だから上官は辞めたいならば在庫管理を終わらせろと命じたのだろう。

 それでもこのワンフロア全体に蔓延っていた地獄絵図をたった一人でここまで縮小させたのだから、この分野、ジョルジュは案外適正があるのだろう。多分コヤツは性格のせいで派手に活躍しようとしたが、そういう能力には恵まれていなかったからうだつが上がらなかったのだ。コツコツ地道に積み重ねる地味な仕事こそ天職なのではないか?

 「差し出がましいですが、あなたって人の上に立つよりも、上に立つ人を支えてこそ輝く類いの人材なんじゃないですかね?」
 「そうなんだよ。認めたくはなかったが、ここに居た3年で僕もそう思うようになった。だけどこの部屋にはもううんざりだ。だから領地に戻って弟の補佐をしようと思ったんだがなぁ……」
 「ん?弟さんの補佐?嫡男はあなたなのにですか?」

 あれ?聞いてたんと違う?デキる弟さんが跡取りにされちゃ困るから、義妹よりも高ポイントのお嫁さんが欲しかったんだよね?

 だけどジョルジュはなにやらデレ始め、ソファの横に置かれたサイドテーブルの上に乗っていた写真立てを持ってきて自慢げに私に突き出した。

 そこに写っていたのは優男ジョルジュとは真逆のワイルドな男性と、ほんわかした丸顔の和み系の女性、そして推定四歳、二歳、生後半年って感じの三人の子どもたち。ジョルジュは写真から顔を上げた私に胸を張ってドヤった。

 「弟と家族だ。どうだ?素晴らしいだろう?」

 素晴らしいと言われても、素晴らしいという評価が家族写真に当てはまるものなのか謎だ。だから『えぇまぁ』という歯切れの悪い返事しかしようがなかったが、ジョルジュはそんなことどうでも良いらしい。嬉しそうに眉尻をぶら下げて勝手に弟一家をベタ褒めし始めた。

 弟のお嫁さんは気立てが良くて働き者で。天使のように愛らしい子どもたちは、元気一杯でとてもお利口さんで。そしてそして……

 「弟は子どもの頃から優秀だったんだ。勉学だけじゃなく剣の筋も良いし乗馬の腕も確かだ。性格は穏やかで思いやり深く優しさの塊みたいな男で、しかも見ての通りの男前。どうだ、この精悍な顔立ちを!だが弟夫婦は円満だからな!うっかり惚れたら無駄だぞ?」

 タイプは違うがこれはアレだ。誰かさんと張り合うくらいのブラコン兄貴だ。

 「失礼ですねっ、よそ様の旦那さんになんて惚れませんて!」
 「こんなところでうろついていたんだ。どうせお前、嫁に行くアテもないんだろ?」
 「…………あれ?」

 どうせお前、嫁に行くアテもないんだろう……確かに今そう言ったよね?

 胸の中にモクモクと恐ろしい速さで真っ黒い雲が広がって行く。もしかしてもしかしたらだけど、絶対に的中して欲しくないけど、今私、凄い嫌な予感がしまくっているんですが……

 「あの、私のこと、何か聞いてません?」

 恐る恐る尋ねると『はぁ?』と腑抜けた声を上げたジョルジュが鼻で笑った。すんごいムカつくんだけど。

 「どうしてお前のことを気にしなきゃならないんだ?僕はお前なんかどうなろうとどうでも良いし、興味もないぞ」
 「……っていうか、ずっとここに籠もっていたせいで、ほとんど人と接していないんじゃ……」
 
 ジョルジュはプンプンの少女のようにほっぺを膨らませた。どうやら的中なのだろう。

 「ここからだと食堂は遠いですよねぇ?」
 「あぁ、すこぶる遠い。往復するだけで一運動で食事をして戻って来た頃には眠くなる。だから僕はお弁当持ちだ」
 
 なるほど、とことん人と接触していないんだな。だからあれだけ必死にPRしたにも関わらず、肝心のジョルジュには何も伝わっていないのか。

 うう……あの努力は何だったんだ!努力が全く報われなかった虚しさで、涙が滲むんですけどっ!

 私は呆然と天井を見上げた。殿下め、何が僕の騎士団優秀でしょ!だ。こんな基本的なことすら把握できていないじゃないか!これじゃあの小っ恥ずかしいあれやこれやもただの黒歴史。私だけじゃない、アレンだって心底不本意なのに任務だからと我慢して、真面目で馬鹿正直だからアホみたいに細かいところまで拘って、それで最終的に……

 「おい、お前。大丈夫か?ぼーっとしているし顔色がおかしいぞ?」
 「ん?悪いじゃなくておかしいってナニ?」
 「赤くなったかと思えば青なくなって、でまた真っ赤ってどうなってんだ?」

 イライラの赤と黒歴史爆誕の青と、それから真っ赤は……

 もういいっ、どうでもいい!
あんなの綺麗さっぱり忘れてやるんだからっ!

 確なる上はこの話題から離れようと、私はさっき浮かんだ疑問について尋ねてみることにした。

 「あ、あの。弟さんが優秀だっていうのは良くわかりましたけれど、補佐をするってどういうことですか?」
 「僕はずっと家督を継ぐのは弟であるべきだと主張していたんだ。でも父が頑として譲らず、逃げる為に文官になってみた」
 
 相当なブラコンみたいだからそんな思考になるのはわかる気がする。けれどもねぇ。ふうん、なってみたのか……とイラっとした気持ちを押し込めて、私はそうでしたかと真顔で頷いた。

 「文官として一旗上げれば父も諦めてくれるだろうと、そう思ったんだ。だが一旗上げるどころかいかに自分が文官に不向きなのかを思い知らされた。そうこうしている間に弟の優秀さが周りの認めるところとなり、父も家督を継ぐのは弟の方がと考え直すようになったんだ。それなのにこの部屋のせいで上官は僕を辞めさせてくれない。どんなに頼んでも在庫管理を終わらせろと言うだけだ」

 床に座り込んで途方にくれたように遠い目をしたジョルジュを眺めながら、私は思いっきり顔をしかめていた。

 これ、聞いてた話と随分違うんじゃないですかね?と言うよりも、ほぼ間違った情報じゃないか!どうしてくれるんだ、第三近衛騎士団めっ!

 これは非常に非常に由々しき事態である。だってジョルジュには言われていたような動機がないのだから、かけられていた容疑の辻褄が合わないのだ。

 「つかぬことを伺いますが……」

 念の為確認しておこうと何喰わぬ顔で尋ねた。

 「令嬢達にラブレターを送って、ルストッカ庭園に呼び出しましたよね?」

 ジョルジュは見る見る表情を凍りつかせた。流石にそこまで杜撰な捜査ではなかったのか、これに関してはどう見ても完全にクロだ。だったら動機は何なのだ?

 「どうしてお前が知っているんだ?」
 「えーと……そ、そう、噂話ですよ。ほら、私の職場女社会ですもの」

 女の噂好きには思い当たる節があるのか、ジョルジュは渋いながらも納得した顔をした。

 「だけどどうして僕が出した手紙だってわかったんだ?差出人の名前は書かずに送ったのに」
 「えっ?!」

 驚きのあまりすっとんきょうな大声を張り上げた私を、ジョルジュは不審そうに睨んだ。いや、だってそうでしょう?ジョルジュの容疑は殿下の名を騙ったことなのに、差出人の名前を書いていないなんて。

 私は殿下に渡された手紙を思い浮かべた。封蝋は確かに王太子印璽を使ったと見せかけた偽物だった。でも……

 思い返せば手紙のどこにも殿下の名はなかったのだ。

 「あなた、毎回待ち合わせ場所の噴水に行ったでしょう?それを見ていた人がいたみたいですよ」

 私の口からどこまで明かして良いものか?ジョルジュは絶対にそんな大それた容疑がかけられているなんて思っていないし、驚いて突発的におかしな事をされても困る。だけど私は思いっきりとばっちりを受けて黒歴史を作ってしまったのだ。冗談じゃない。何がどうなったらこうなるんだ!

 私の心の奥底で眠っていた……というか爆睡していた好奇心もいよいよ目を覚ましたようだ。自分の身にどんな重大な嫌疑がかけられているかなんて夢にも思わずに、『はーん、なるほどな』なんて腑抜けた返事をするジョルジュから、聞き出せるだけの情報を全て聞き出してやろうじゃないか!

 「さあさあ、始めましょうか。それで私は何をすれば良いんですか?」

 腕捲りをしながらやる気漲る笑顔を浮かべる私に、ジョルジュは頼もしそうに上気した顔を向けた。
 
 山と積まれた箱を開け中身を確認し帳簿に品名と数を記録し分類してまとめる。単純と言えば単純な作業だけれど一人ではなかなか捗らない。それが帳簿の記入を私がするだけで進み具合がこんなにも違うとは、ジョルジュの予想を遥かに越えていたようだ。しかも忘れちゃならないのは前世の私が備品管理がメインワークと言っても過言ではない総務課のOLだったこと。前世の記憶持ちなのにそんなもの一切活かすことなくのんべんだらりと過ごしてきたが、いよいよ時が来たのだ。総務課OLの底力、転生者の実力を今こそ発揮しようではないか!

 箱を開け中身を確認し数を数え、私が指示した項目毎に纏められた場所に移動していくジョルジュは、石炭を焚べられた蒸気機関車みたいに無我夢中だ。作業はサクサクと捗りジョルジュの勢いは増すばかり。そんなジョルジュに世間話でもするかのように何気なく話を聞き出せば、深く考える事もなくペラペラと答えてくれる。ジョルジュには拷問も自白剤いらなけりゃ、東尋坊の崖の上っていうシチュエーションも必要ないのである。

 さぁ、ジョルジュの独白タイムの始まりだ。
 
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