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桂【閑話】その3
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ピコーン
小さな音がして、手の中の小さな機械を見る。
『今日はもう大丈夫そうです。寝る部屋は別々だし。いくらなんでも、桂さん心配しすぎですよ!
にーちゃんが記憶を失くしていた時のことをあの双子さんが話したので、嘘ついてたのがバレて怒られました……自業自得ですが(ノω・、)
もう遅いのでお休みします。桂さんもゆっくり休んでくださいね(^-^)』
クスッ
丁寧すぎる文章が可愛らしくて笑みが漏れる。
今日は色々なことが上手くいった日だった。
……特に大事な1点を防ぐことができなかったのは悔やんでも悔やみきれないけど。
まさか、俊がそんなに早く行動に出るとは思わなかった。
引越しの片付けで、妹であることはバレるだろうと予想はついていたので、敢えて今日、突然訪問したというのに。
『引越し、俊のこと。一番疲れてるのは振り回される立場のユウちゃんだと思う。無理しないで、少しでもいいので頼ってくれると嬉しいです。
おやすみなさい。
追伸、念のために鍵をかけて寝るんだよ』
メッセージを返信し、ため息をつく。
……俊の暴走、か。
ユウちゃんの言葉では何をされたかはわからなかったけど。記憶が戻るきっかけになるような行為ね。
想像するだけで胸がモヤモヤする。
何だろうこの感覚。感じたことない、焦りと不快感。
遊んでいた甥っ子、姪っ子をお菓子で釣った父と母に奪われた時の気持ちに似ている。
俊が今まで通りの兄妹に普通に戻れるならいいけど……正直、心配だ。
俊の気持ちがわかってる分、余計に。
大事な宝物の自慢をするようだった、過去の俊が蘇る。あの笑顔を、真っ直ぐにぶつけられたら、、、
負けるかもしれない。が、俺も負けない。
考えを巡らせながら、風呂上がりの半乾きの髪をかき上げ、ベッドに横たわる。
まあ、俺なりの保険はかけた。ユウちゃんに信用してもらうことには成功したんだ。彼女に近付くという、当初の目的は果たした。
……今日もユウくん、いや、ユウちゃんは(もうどっちでもいい。可愛いから)眩しいくらい魅力的で、いつまでも撫で撫でしていたかった。。
そのやわらかくて暖かい感触を思い出して、空間に手を伸ばす。
……もっと触っていたかった。
にしても、双子を連れて行って正解だったな。
唇がニヤリと歪むのは仕方ない。俊を遮るための障壁として、双子は実に役に立ってくれた。彼らの働きによってスムーズにユウちゃんの連絡先を手に入れることができたのだ。
双子のヒロとリヒトは人情家ですぐ熱くなるタイプの扱いやすい二人で、高一の時、あまりに多い合コンへの誘いを回避するために、俊が男が対象、と口にした嘘を信じていた。
男が対象と知ってからより頻繁に、嬉々として俊の側にいる二人には理解に苦しむところが多々あったが、彼らが幸せなら何も言うまい。
俊の引越しに気落ちしていたが、引越しの片付けを手伝いに行かないか?と伝えると、すぐに乗り気で付いてきた。
今日俊が、男が好きと言ったのは嘘だと認めたワケだが。二人は変わらずニコニコと俊に絡んでいた。
俊は、むしろそっちに進んでくれてもいいかもしれない。邪魔者がいなくなる。
今後の傾向と対策をゆっくりと頭の中で練り上げる。
あの幸せな生き物を手に入れるなら、親友の俊と騙し合いをするのもやむを得ない。
俊、俺を応援してくれないかな?
俺が俊の弟になるの、喜ばしいだろ?
不穏な考えはいつしか睡魔に包まれて、薄い笑いを浮かべながら俺は眠りについたのだった。
小さな音がして、手の中の小さな機械を見る。
『今日はもう大丈夫そうです。寝る部屋は別々だし。いくらなんでも、桂さん心配しすぎですよ!
にーちゃんが記憶を失くしていた時のことをあの双子さんが話したので、嘘ついてたのがバレて怒られました……自業自得ですが(ノω・、)
もう遅いのでお休みします。桂さんもゆっくり休んでくださいね(^-^)』
クスッ
丁寧すぎる文章が可愛らしくて笑みが漏れる。
今日は色々なことが上手くいった日だった。
……特に大事な1点を防ぐことができなかったのは悔やんでも悔やみきれないけど。
まさか、俊がそんなに早く行動に出るとは思わなかった。
引越しの片付けで、妹であることはバレるだろうと予想はついていたので、敢えて今日、突然訪問したというのに。
『引越し、俊のこと。一番疲れてるのは振り回される立場のユウちゃんだと思う。無理しないで、少しでもいいので頼ってくれると嬉しいです。
おやすみなさい。
追伸、念のために鍵をかけて寝るんだよ』
メッセージを返信し、ため息をつく。
……俊の暴走、か。
ユウちゃんの言葉では何をされたかはわからなかったけど。記憶が戻るきっかけになるような行為ね。
想像するだけで胸がモヤモヤする。
何だろうこの感覚。感じたことない、焦りと不快感。
遊んでいた甥っ子、姪っ子をお菓子で釣った父と母に奪われた時の気持ちに似ている。
俊が今まで通りの兄妹に普通に戻れるならいいけど……正直、心配だ。
俊の気持ちがわかってる分、余計に。
大事な宝物の自慢をするようだった、過去の俊が蘇る。あの笑顔を、真っ直ぐにぶつけられたら、、、
負けるかもしれない。が、俺も負けない。
考えを巡らせながら、風呂上がりの半乾きの髪をかき上げ、ベッドに横たわる。
まあ、俺なりの保険はかけた。ユウちゃんに信用してもらうことには成功したんだ。彼女に近付くという、当初の目的は果たした。
……今日もユウくん、いや、ユウちゃんは(もうどっちでもいい。可愛いから)眩しいくらい魅力的で、いつまでも撫で撫でしていたかった。。
そのやわらかくて暖かい感触を思い出して、空間に手を伸ばす。
……もっと触っていたかった。
にしても、双子を連れて行って正解だったな。
唇がニヤリと歪むのは仕方ない。俊を遮るための障壁として、双子は実に役に立ってくれた。彼らの働きによってスムーズにユウちゃんの連絡先を手に入れることができたのだ。
双子のヒロとリヒトは人情家ですぐ熱くなるタイプの扱いやすい二人で、高一の時、あまりに多い合コンへの誘いを回避するために、俊が男が対象、と口にした嘘を信じていた。
男が対象と知ってからより頻繁に、嬉々として俊の側にいる二人には理解に苦しむところが多々あったが、彼らが幸せなら何も言うまい。
俊の引越しに気落ちしていたが、引越しの片付けを手伝いに行かないか?と伝えると、すぐに乗り気で付いてきた。
今日俊が、男が好きと言ったのは嘘だと認めたワケだが。二人は変わらずニコニコと俊に絡んでいた。
俊は、むしろそっちに進んでくれてもいいかもしれない。邪魔者がいなくなる。
今後の傾向と対策をゆっくりと頭の中で練り上げる。
あの幸せな生き物を手に入れるなら、親友の俊と騙し合いをするのもやむを得ない。
俊、俺を応援してくれないかな?
俺が俊の弟になるの、喜ばしいだろ?
不穏な考えはいつしか睡魔に包まれて、薄い笑いを浮かべながら俺は眠りについたのだった。
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