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指摘
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「……なんだってんだ?緑原のやつ。
おい桜川、お前何した?」
「なーんにも?
ただ、緑ちゃんに時々個人的な贈り物をしてるだけ」
クスッと微笑んで紅茶を優雅に飲む桜川はご機嫌そのものだ。
全てうまくいっていると言わんばかりの仕草に俺は顔を顰めた。
「アレが緑原の弱みってことか。
……お前、いつか誰かに刺されるぞ」
「あは! 僕を刺すことができる人なんて、玲人くらいだよ。
そうそう、会長きいてよー、玲人ってほんと料理上手でさ! お味噌汁も作ってくれるんだけど、お出汁のとり方も本格的で……」
惚気のような会話を始める桜川に、おお、そりゃすごいと相槌を打ちながら、俺はつい思ったことを口にする。そう、いつもの悪いくせだ。
「そういえば、さっきの件だが。風林寺が襲われて、助けられてるのはいいとして。
普通さ、助けてくれる人のこと好きにならないか?」
「え? なに? どういうこと?」
桜川が何を言っているのかよくわからないと言う目で俺を見る。
「いやさ、女の子とかって、ヒーローを好きになるもんだろ。いつだって自分が襲われそうな時に駆けつけて、助けてくれる人がいたら、そいつを意識するようになるんじゃないか?
ほら、なんか心理学でもある吊り橋効果的な……」
「な、ななな、なに、そんな、 、そんなわけ」
考えもしなかったのか、桜川は呆然として顔色を失っている。いつも自分が栗原をアゴで使ってるから気づかなかったのか?
「で、でも!!ほら! 玲人はノーマルだし!?」
「それ、自分で言ってて悲しくないか?」
「ゔっっっ」
「いやほら、お前はずっと風林寺が好きだったのはわかるんだけどさ。だからこそ、同室にまでなったことで満足しちゃってるというか。
まあ、徐々に魅了していく予定があるんだろうし、その自信もわかるが……。
風林寺ってそう言うの通じなそうというか。
まあただの俺の勘だが」
ぼんやりとくりくりの焦茶の目をした可愛い姿を思い出す。可愛らしいが、案外ああいう子は芯がしっかりしていて外野に左右されにくいもんだ。
「もし、ノーマルな風林寺が好意を持つとしたらさ、そりゃノーマルが恋に落ちやすい、いわゆるいつも助けてくれる人素敵、なんじゃないのか?」
「う、そうそ、、、そんな、、! 会長みたいな色恋に興味ない大雑把な人間に、わかったみたいな風な口きかれても、、! いや、、もしかして、ノーマルだからこそわかるってこと……?
そんな、僕の、、壮大な計画が、、」
どんどん俯いていった桜川が頭をかかえて髪をぐしゃぐしゃと掻き回している。
緑原といい、桜川といい、今日は長年の幼馴染たちのあまり見ない姿が見れて楽しい。
そんな俺は性格が悪いんだろうか?
「ちょっと!僕もう帰る!
会長、また明日ね!」
ガバッと顔をあげたかと思うと、急に桜川は飛び出して行った。
「おう、風林寺によろしくな」
言葉は緑原の時と同様、閉まるドアに吸い込まれた気がしたけど、礼儀は大事だな、うん。
せめて洗い物はして帰ろうと、普段は触ることのない緑原のコレクションの茶器を奥の流しで洗う。
もし緑原がいたら洗い方にも文句を言われるんだろうけど。まあこんなもんだろ。
テーブルをふきんで軽く拭き、洗ってタオル干しにかける。
部屋を出ると、陽は沈み早くも初夏の夕暮れの匂いが立ち込めていた。
ああ、いい晩だ。
目を閉じて鼻歌をうたってしまう。
いつも大雑把でのんきと言われるが、のん気はいいぞ。
色々な思いが渦巻く学園で、1人楽しそうな生徒会長は、更け行く夜を味わいながら、ゆっくりと歩いて自室に戻ったのだった。
おい桜川、お前何した?」
「なーんにも?
ただ、緑ちゃんに時々個人的な贈り物をしてるだけ」
クスッと微笑んで紅茶を優雅に飲む桜川はご機嫌そのものだ。
全てうまくいっていると言わんばかりの仕草に俺は顔を顰めた。
「アレが緑原の弱みってことか。
……お前、いつか誰かに刺されるぞ」
「あは! 僕を刺すことができる人なんて、玲人くらいだよ。
そうそう、会長きいてよー、玲人ってほんと料理上手でさ! お味噌汁も作ってくれるんだけど、お出汁のとり方も本格的で……」
惚気のような会話を始める桜川に、おお、そりゃすごいと相槌を打ちながら、俺はつい思ったことを口にする。そう、いつもの悪いくせだ。
「そういえば、さっきの件だが。風林寺が襲われて、助けられてるのはいいとして。
普通さ、助けてくれる人のこと好きにならないか?」
「え? なに? どういうこと?」
桜川が何を言っているのかよくわからないと言う目で俺を見る。
「いやさ、女の子とかって、ヒーローを好きになるもんだろ。いつだって自分が襲われそうな時に駆けつけて、助けてくれる人がいたら、そいつを意識するようになるんじゃないか?
ほら、なんか心理学でもある吊り橋効果的な……」
「な、ななな、なに、そんな、 、そんなわけ」
考えもしなかったのか、桜川は呆然として顔色を失っている。いつも自分が栗原をアゴで使ってるから気づかなかったのか?
「で、でも!!ほら! 玲人はノーマルだし!?」
「それ、自分で言ってて悲しくないか?」
「ゔっっっ」
「いやほら、お前はずっと風林寺が好きだったのはわかるんだけどさ。だからこそ、同室にまでなったことで満足しちゃってるというか。
まあ、徐々に魅了していく予定があるんだろうし、その自信もわかるが……。
風林寺ってそう言うの通じなそうというか。
まあただの俺の勘だが」
ぼんやりとくりくりの焦茶の目をした可愛い姿を思い出す。可愛らしいが、案外ああいう子は芯がしっかりしていて外野に左右されにくいもんだ。
「もし、ノーマルな風林寺が好意を持つとしたらさ、そりゃノーマルが恋に落ちやすい、いわゆるいつも助けてくれる人素敵、なんじゃないのか?」
「う、そうそ、、、そんな、、! 会長みたいな色恋に興味ない大雑把な人間に、わかったみたいな風な口きかれても、、! いや、、もしかして、ノーマルだからこそわかるってこと……?
そんな、僕の、、壮大な計画が、、」
どんどん俯いていった桜川が頭をかかえて髪をぐしゃぐしゃと掻き回している。
緑原といい、桜川といい、今日は長年の幼馴染たちのあまり見ない姿が見れて楽しい。
そんな俺は性格が悪いんだろうか?
「ちょっと!僕もう帰る!
会長、また明日ね!」
ガバッと顔をあげたかと思うと、急に桜川は飛び出して行った。
「おう、風林寺によろしくな」
言葉は緑原の時と同様、閉まるドアに吸い込まれた気がしたけど、礼儀は大事だな、うん。
せめて洗い物はして帰ろうと、普段は触ることのない緑原のコレクションの茶器を奥の流しで洗う。
もし緑原がいたら洗い方にも文句を言われるんだろうけど。まあこんなもんだろ。
テーブルをふきんで軽く拭き、洗ってタオル干しにかける。
部屋を出ると、陽は沈み早くも初夏の夕暮れの匂いが立ち込めていた。
ああ、いい晩だ。
目を閉じて鼻歌をうたってしまう。
いつも大雑把でのんきと言われるが、のん気はいいぞ。
色々な思いが渦巻く学園で、1人楽しそうな生徒会長は、更け行く夜を味わいながら、ゆっくりと歩いて自室に戻ったのだった。
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