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第2章
2.王城の庭師
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新婚旅行から帰ってきて、一週間が経った。
ソウもわたしも、帰宅したその日から溜まった仕事を片付けはじめ、ようやく落ち着きを取り戻してきたところだ。
それでもやはり王の仕事は膨大で、今日もソウは国の重鎮と朝からずっと会議を続けているらしい。わたしはといえば、午前中で仕事をほぼ終えてしまい、午後は何をしようかと考えていた。
机の上を片付けながら思案していると、控えめなノックの音がする。どうぞ、と応えるとなんだかうきうきした様子のリサが部屋に入ってきた。
「ユキ様、今からってお時間空いてますか?」
「うん! 仕事終わったから暇してたの。リサちゃん、今日はお休み?」
「はい、そうなんです。さっき偶然タカミさんに会って、暇だって言ったら庭でお茶会でもどうですか、って提案して頂いたんですけど、ユキ様もいかがですか?」
「わあ、楽しそう! 行こう行こう!」
魅力的な誘いに、二つ返事で応じた。いそいそと少しだけ良い服に着替えて、廊下で待っているリサのもとへ急ぐ。
「タカミさんも今日はお休みらしいんですけど、やることがなくて仕事してたんですって。ちゃんと休まなきゃだめですよ、って言ったらこんな提案を」
「庭でお茶会だなんて素敵! さすがタカミさんだね」
「ですよね、トーヤあたりだったら絶対思いつきませんよ」
「確かに!」
二人でくすくす笑い合っていると、ちょうど話題に上ったトーヤが廊下の向こう側から歩いてくるのが見えた。仕事用の制服を着ているが、一応誘ってみることにする。
「お疲れ様、トーヤ! 今からお仕事?」
「あ? なんだ、ユキとリサか。いや、夜勤が終わって部屋に戻るとこだ」
「今からタカミさんと庭でお茶会するんだけど、トーヤもどう? あ、でも夜勤明けじゃお茶なんて気分じゃないか」
確かに、トーヤは眠そうにあくびをしている。それにお茶会で出されるのはお菓子だろうから、夜勤明けのトーヤには足りないだろう。
しかし、意外にもトーヤは頷いて誘いに応じてくれた。
「俺も行く。明日は休みだし、部屋に帰ってもどうせ寝るだけだからな」
「ほんと? じゃあ一緒に行こう!」
嬉しくなって、トーヤの手を取って庭へ急ぐ。あんまり引っ張るな、と言いながらトーヤもなんだか嬉しそうだ。
ここ最近、旅行に行っていたこともあってトーヤともゆっくり話していない。三人で他愛のない話をしながら、タカミの待つ庭へと向かった。
*
「おや。みなさん、一緒に来られたんですね。もう準備はできていますよ」
「わあ、すごい……! タカミさん、ありがとうございます!」
「私は提案しただけですよ。お菓子やお茶は侍女の方が準備してくれました」
城の中庭は広い花壇になっていて、季節ごとに様々な花が咲く。自然が好きだったソウの母がこつこつと花を集めて作ったのだと、以前ソウが教えてくれた。その大切な花壇を残すために、今では庭師を雇って綺麗な中庭を保っているのだ。
「それでは、みなさん座ってください。紅茶は私が淹れますから」
「おいタカミ、ちゃんと淹れられんのかよ?」
「ふふ、まあ見ててください」
トーヤが疑わしげに尋ねたが、タカミは手慣れた様子でカップを温め茶葉を入れている。その一つ一つの所作が洗練されていて、わたしたちはそれに見入った。
そのうち、綺麗な色をした紅茶がカップに注がれ、良い香りが鼻をくすぐる。
「はい、入りましたよ。熱いのでお気を付けて」
「すごい……タカミさんて、何でもできちゃうんですね」
「……ふん、俺だって紅茶ぐらい淹れられるっての」
「あら、ほんと? じゃあ次はトーヤに淹れてもらいましょうか」
「はあ!? お、俺はその……あれだ、またいつかな、いつか!」
二人のやり取りを見て笑いながら、カップに口を付ける。渋みのない、ほどよい甘さの紅茶に思わず笑顔になった。
「おいしい……!」
「それはよかった。以前、ヒナミ国王が贈ってくださった茶葉が残っていたので使わせて頂きました」
「あ、そういえば。ヒナミ国王が、明日か明後日あたりカトライアにいらっしゃるそうですよ。さっき急ぎの手紙が届いたって陛下が言ってました」
「えっ、そうなんだ! どんな人かなぁ、楽しみ」
「ソウと仲良いんだったら、きっとろくな奴じゃねえぞ」
美味しい紅茶を飲みながら、みんなで談笑する。こんなにも穏やかで楽しい時間を過ごせるのが、何より幸せだった。夜寝る前に、ソウに今日のことを話そうと心に決めながら、紅茶をもう一口啜る。
「おや、今日はみんなでお茶会かい? 楽しそうだねえ」
ふと、花壇に生い茂った木の隙間から声がした。驚いてそちらの方を見やると、剪定ばさみを持った老人がにこにことこちらに近づいてくる。
「おや、カンジさん! 今日は庭の整備の日でしたか。お邪魔してすみません」
「久しぶりだねえ、タカミくん。いや、いいんだよ。こうやって中庭を使ってくれたら、わしも手入れのし甲斐があるってもんだ」
親しげにタカミと話すその老人は、どうやら庭師のようだ。月に一度か二度だけ庭の整備にやってくると聞いていたが、こうして会うのは今日が初めてだ。挨拶をしようと立ち上がる。
「初めまして、ユキと申します。いつも庭を綺麗にしてくださって、ありがとうございます」
「おお、なんと王妃でしたか! これは失礼、気が付きませんで。庭師のカンジです」
「いいえ、こちらこそ挨拶が遅れてごめんなさい。いつも綺麗にお花が咲いてるので、ずっとお礼が言いたかったんです」
「いやあ、それは嬉しいね。王妃様は覚えていないだろうが、小さい頃何度か陛下と遊んでいるときに会っているんだよ。すっかり大きくなっちゃって、わしも年取るはずだよ」
「あ……そうだったんですね。では、カンジさんがずっとこの庭の整備を?」
「ああ、そうだよ。陛下のお母上がまだご存命だった頃から何かと手伝っていてね、その縁で今でもずっとさ」
ふう、と大きく息をついてから、カンジが自分の腰を数回叩いた。長い間外で仕事をしているせいであろう、肌が日に焼けている。
「明日あたりヒナミ国王がいらっしゃるって聞いてね。それで今日は陛下に呼ばれたんだけど、歳のせいか腰が痛くてね、なかなか捗らないんだ」
「それはいけない。腰は一度痛めると癖になりますよ、あとで医務室に来てください」
「そんな、タカミくんに診てもらうほどじゃないよ。い、痛てて……!」
「だ、大丈夫ですか!?」
腰をかばうように、カンジが背を丸めて屈みこんでしまった。慌ててその体を支えるが、どうやらずっと痛みをおして作業をしていたらしい。疲れもあってか、立てなくなってしまったようだ。
「じーさん、大丈夫か? ほら、医務室まで運んでやるから。俺に掴まってくれ」
「わ、悪いねえ……」
「遠慮すんなって。タカミ、手伝ってくれ」
「はい。カンジさん、だいぶ無理しましたね。これはしばらく安静にしてもらわなくては」
トーヤとタカミが、カンジを両脇から支えて医務室へ運ぶことになった。
当然お茶会もお開きになって、わたしとリサも一緒に医務室へと移動した。
ソウもわたしも、帰宅したその日から溜まった仕事を片付けはじめ、ようやく落ち着きを取り戻してきたところだ。
それでもやはり王の仕事は膨大で、今日もソウは国の重鎮と朝からずっと会議を続けているらしい。わたしはといえば、午前中で仕事をほぼ終えてしまい、午後は何をしようかと考えていた。
机の上を片付けながら思案していると、控えめなノックの音がする。どうぞ、と応えるとなんだかうきうきした様子のリサが部屋に入ってきた。
「ユキ様、今からってお時間空いてますか?」
「うん! 仕事終わったから暇してたの。リサちゃん、今日はお休み?」
「はい、そうなんです。さっき偶然タカミさんに会って、暇だって言ったら庭でお茶会でもどうですか、って提案して頂いたんですけど、ユキ様もいかがですか?」
「わあ、楽しそう! 行こう行こう!」
魅力的な誘いに、二つ返事で応じた。いそいそと少しだけ良い服に着替えて、廊下で待っているリサのもとへ急ぐ。
「タカミさんも今日はお休みらしいんですけど、やることがなくて仕事してたんですって。ちゃんと休まなきゃだめですよ、って言ったらこんな提案を」
「庭でお茶会だなんて素敵! さすがタカミさんだね」
「ですよね、トーヤあたりだったら絶対思いつきませんよ」
「確かに!」
二人でくすくす笑い合っていると、ちょうど話題に上ったトーヤが廊下の向こう側から歩いてくるのが見えた。仕事用の制服を着ているが、一応誘ってみることにする。
「お疲れ様、トーヤ! 今からお仕事?」
「あ? なんだ、ユキとリサか。いや、夜勤が終わって部屋に戻るとこだ」
「今からタカミさんと庭でお茶会するんだけど、トーヤもどう? あ、でも夜勤明けじゃお茶なんて気分じゃないか」
確かに、トーヤは眠そうにあくびをしている。それにお茶会で出されるのはお菓子だろうから、夜勤明けのトーヤには足りないだろう。
しかし、意外にもトーヤは頷いて誘いに応じてくれた。
「俺も行く。明日は休みだし、部屋に帰ってもどうせ寝るだけだからな」
「ほんと? じゃあ一緒に行こう!」
嬉しくなって、トーヤの手を取って庭へ急ぐ。あんまり引っ張るな、と言いながらトーヤもなんだか嬉しそうだ。
ここ最近、旅行に行っていたこともあってトーヤともゆっくり話していない。三人で他愛のない話をしながら、タカミの待つ庭へと向かった。
*
「おや。みなさん、一緒に来られたんですね。もう準備はできていますよ」
「わあ、すごい……! タカミさん、ありがとうございます!」
「私は提案しただけですよ。お菓子やお茶は侍女の方が準備してくれました」
城の中庭は広い花壇になっていて、季節ごとに様々な花が咲く。自然が好きだったソウの母がこつこつと花を集めて作ったのだと、以前ソウが教えてくれた。その大切な花壇を残すために、今では庭師を雇って綺麗な中庭を保っているのだ。
「それでは、みなさん座ってください。紅茶は私が淹れますから」
「おいタカミ、ちゃんと淹れられんのかよ?」
「ふふ、まあ見ててください」
トーヤが疑わしげに尋ねたが、タカミは手慣れた様子でカップを温め茶葉を入れている。その一つ一つの所作が洗練されていて、わたしたちはそれに見入った。
そのうち、綺麗な色をした紅茶がカップに注がれ、良い香りが鼻をくすぐる。
「はい、入りましたよ。熱いのでお気を付けて」
「すごい……タカミさんて、何でもできちゃうんですね」
「……ふん、俺だって紅茶ぐらい淹れられるっての」
「あら、ほんと? じゃあ次はトーヤに淹れてもらいましょうか」
「はあ!? お、俺はその……あれだ、またいつかな、いつか!」
二人のやり取りを見て笑いながら、カップに口を付ける。渋みのない、ほどよい甘さの紅茶に思わず笑顔になった。
「おいしい……!」
「それはよかった。以前、ヒナミ国王が贈ってくださった茶葉が残っていたので使わせて頂きました」
「あ、そういえば。ヒナミ国王が、明日か明後日あたりカトライアにいらっしゃるそうですよ。さっき急ぎの手紙が届いたって陛下が言ってました」
「えっ、そうなんだ! どんな人かなぁ、楽しみ」
「ソウと仲良いんだったら、きっとろくな奴じゃねえぞ」
美味しい紅茶を飲みながら、みんなで談笑する。こんなにも穏やかで楽しい時間を過ごせるのが、何より幸せだった。夜寝る前に、ソウに今日のことを話そうと心に決めながら、紅茶をもう一口啜る。
「おや、今日はみんなでお茶会かい? 楽しそうだねえ」
ふと、花壇に生い茂った木の隙間から声がした。驚いてそちらの方を見やると、剪定ばさみを持った老人がにこにことこちらに近づいてくる。
「おや、カンジさん! 今日は庭の整備の日でしたか。お邪魔してすみません」
「久しぶりだねえ、タカミくん。いや、いいんだよ。こうやって中庭を使ってくれたら、わしも手入れのし甲斐があるってもんだ」
親しげにタカミと話すその老人は、どうやら庭師のようだ。月に一度か二度だけ庭の整備にやってくると聞いていたが、こうして会うのは今日が初めてだ。挨拶をしようと立ち上がる。
「初めまして、ユキと申します。いつも庭を綺麗にしてくださって、ありがとうございます」
「おお、なんと王妃でしたか! これは失礼、気が付きませんで。庭師のカンジです」
「いいえ、こちらこそ挨拶が遅れてごめんなさい。いつも綺麗にお花が咲いてるので、ずっとお礼が言いたかったんです」
「いやあ、それは嬉しいね。王妃様は覚えていないだろうが、小さい頃何度か陛下と遊んでいるときに会っているんだよ。すっかり大きくなっちゃって、わしも年取るはずだよ」
「あ……そうだったんですね。では、カンジさんがずっとこの庭の整備を?」
「ああ、そうだよ。陛下のお母上がまだご存命だった頃から何かと手伝っていてね、その縁で今でもずっとさ」
ふう、と大きく息をついてから、カンジが自分の腰を数回叩いた。長い間外で仕事をしているせいであろう、肌が日に焼けている。
「明日あたりヒナミ国王がいらっしゃるって聞いてね。それで今日は陛下に呼ばれたんだけど、歳のせいか腰が痛くてね、なかなか捗らないんだ」
「それはいけない。腰は一度痛めると癖になりますよ、あとで医務室に来てください」
「そんな、タカミくんに診てもらうほどじゃないよ。い、痛てて……!」
「だ、大丈夫ですか!?」
腰をかばうように、カンジが背を丸めて屈みこんでしまった。慌ててその体を支えるが、どうやらずっと痛みをおして作業をしていたらしい。疲れもあってか、立てなくなってしまったようだ。
「じーさん、大丈夫か? ほら、医務室まで運んでやるから。俺に掴まってくれ」
「わ、悪いねえ……」
「遠慮すんなって。タカミ、手伝ってくれ」
「はい。カンジさん、だいぶ無理しましたね。これはしばらく安静にしてもらわなくては」
トーヤとタカミが、カンジを両脇から支えて医務室へ運ぶことになった。
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