略奪は 奪い取るまでが 楽しいの

エイ

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デート風打ち合わせ

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 最初、酔った勢いでとんでもないことを頼んで悪かったと言って依頼をひっこめようとしたのだが、むしろ圭司のほうが積極的に計画を進める提案をしてきてくれて、計画を考えるのが楽しかったというのもあり、本当に偽装彼氏を実行しようと話が進んでいる。

 トイレに立った時に簡単に返事を打つ。

『大丈夫だよ。今日はよろしくね』

 ポン、と猫が喜ぶ可愛いスタンプが送られてくる。
 圭司が今日は会えるかと連絡をくれたため、終業後に会う約束をしたのだ。
 あえて理沙の会社の最寄り駅を待ち合わせにしたのは圭司からの提案だった。今から新カレの存在をにおわせておいたほうがいいということらしい。

 とはいえ、あんまり張り切っていると思われるのも恥ずかしいので、いつも通りの服装で化粧も控えめにして待ち合わせ場所に向かった。
 駅前の待ち合わせ場所に向かうと、周囲から頭一つ分抜きんでて背の高い圭司が立っている姿が遠くからも確認できた。

「もう来てたんだ。待たせたかな? ごめんね」
「おー、お疲れ。んじゃ行こうぜ。店、俺のチョイスでいい?」
「うん、って……」

 自然な流れで腰を抱かれて歩き始める。
 さすが女慣れしているなと感心していると、視線に気づいた圭司がニコリと微笑みかけてきた。

「せっかくだから恋人っぽい雰囲気で歩こうぜ」

 あまりにも手慣れた圭司の振る舞いに、恋人というかホストと客かと思われたどうしようと心配になる。
 だが今日の圭司の恰好は落ち着いた色味のスーツでアクセサリも付けていない。髪色は派手だが、ギリギリ自由な社風の会社員に見えないこともない。
 理沙に会わせて服装を選んでくれたのだろう。こういう気の付くところが人に好かれる要素なんだなあと感心してしまう。

 連れていかれたのは創作料理の店で、席は全て半個室になっている。
 オシャレな店内にちょっと驚いていると、ここは圭司の親が経営している店のひとつだと教えられた。そして圭司が企画立案して作った店でもあると言われ驚く。

「いいだろこの店。最近はこういうちょっと特別な雰囲気を味わえる店がうけているんだよな。半個室だから話しやすいかと思ってここにしたんだ」
「うん、素敵だね。女子会でここチョイスしたらすっごく喜ばれそう。圭司はもうこんなすごい仕事をしてるんだ。すごいなあ」

 半円の珍しいソファに座ると、圭司のおススメだという季節のフルーツカクテルを頼んだ。
 他に食べ物をいくつか注文してから乾杯すると、気が付けば圭司がすぐ隣に座ってお互いの肩が触れている。そういえば、向かい合う席じゃないからカップルシートみたいだな……と思うとちょっと恥ずかしくなってきた。

「恋人とは、こーやってくっついて座りたいだろ? だからこのソファは俺のこだわり」

 するりと腰に手を回されて、ひゃっと声が出てしまう。女子会向けかと思ったが、確かにこれはカップルが喜ぶなと変に納得する。

「そ、そういえば圭司は今彼女いないんだよね? すごいモテそうなのに……。もしかして、特定の彼女は作らないようにしているの?」
「うーん、まあ。色々思うところあってさ。それに今仕事が楽しいし」

 ふいと目を逸らされた。あまり聞かれたくない話題なのだろうと思い、届いた飲み物の話を振ってみた。
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