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Side:圭司5
しおりを挟むあの時に圭司は、もう二度と同じ過ちは繰り返さないと心に誓った。
女子とは告白されたら付き合うけれど、重くなってきたらすぐ別れる。そういう適当な付き合いをしていれば、特定の女の子が標的になる事態にはならない。
そう思って、特別な子を作らないように気を付けていたのに、彼女たちは理沙と自分が一緒にいる姿を見ただけで何かを感じ取ったようだった。
ここで自分が理沙に近づいて関わり続けたら、過去の二の舞になってしまう。
理沙は派手な女子とは別の意味で目立つ美人だから、周囲の反感を買いやすい。
ふたりが別れた時も明らかに裕太に非がある話だったのに、それでも理沙をよく思っていない一部の女子たちは彼女の悪口を言って笑っていた。
(……自分が関わったら理沙に迷惑をかけてしまう)
少し距離を詰めるだけでも女子たちは目ざとく気づいて理沙を放っておかないだろう。だったらもうこれ以上近づくことはできない。
「……始まる前に、終わったなあ」
好きだと自覚した次の日に、終わらせることが決まった恋。
そもそも裕太のことですでに十分傷ついている理沙に対して、身勝手に自分の感情を押し付けるなんてできるわけがない。
幸いまだそこまで感情が育っていたわけじゃない。この時に理沙への気持ちは消すと決めた。
それからは距離をとって関わらないようにしていたのに、裕太があのあとも「理沙のせいで別れた」とか「嫌がらせを受けた」などと、今カノと別れた原因が理沙にあると触れ回り始めてしまった。
しかたなく部活仲間で裕太を叱って止めるように諫めたら、そのまま部活を辞めて、圭司とも絶交状態になりそれ以降は無視される始末。
裕太の件で萌絵がお礼を言いにきてくれて、その時に理沙の様子も少し教えてくれたが、彼女は元カレの豹変ぶりに相当落ち込んでしまって、傷心につけこもうとする男子からアプローチされても全て断っているらしい。
それから何度か理沙に言い寄る男もいたようだが、彼女は新しい恋人を作ることはなく、圭司もクラスメイトとしての距離を保ったまま卒業していった。
それからずっと、理沙のことは心のどっかに引っかかっていたけれど、卒業後はクラス皆で集まる機会を設けても理沙は一度も参加しなかったため、会える機会はなかった。
「理沙は今度も不参加?」
『あー、うん。クラス会みたいなのは気が進まないみたい。裕太のことがトラウマみたいで、思い出したくないんだって』
女側の幹事をよく引き受けてくれた萌絵に理沙のことをそれとなく訊ねてみたが、萌絵とはよく会うがクラスの全員が集まるような場には来たくないと断られている。
「あー、高校のメンバーに会いたくないのか。じゃあしょうがないよな」
『バレー部つながりでは普通に会ったりするけど、クラス会みたいな場だと行きたくないみたいね。まあ理沙とは別で会うから、何か用があれば伝えておくよ』
裕太のことがトラウマになっているのなら、その友人だった圭司の顔も見たくないだろう。
卒業して、いろんなしがらみがなくなった今なら理沙と会えるだろうかと考えていたが、この話を聞いて『ああ、だめだな』と諦める決心がついた。
高校時代の青臭い恋心をいつまでも引きずるほどロマンチストでもない。
真面目な恋愛とかはきっと自分には向いていない。
今までもそうしてきたように、条件の合う気楽な相手とだけ付き合っていけばいい。
幸い、実家の両親は結婚や子どものことについて口を出してくるタイプではないため、勉強だけ真面目にやっていればいいと放任してくれていた。
圭司自身、将来やりたいことがはっきりしているから大学で遊び惚けて単位を落とすなんてことはなく、ほどほどに遊んで大学生生活を楽しんでいた。
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