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始まった嫌がらせ
しおりを挟む騒ぎが大きくなり、他部署の人たちが集まってきて、上層部の人まで駆けつける事態に発展してしまった。
問題が大きくなったせいで、他部署の上長たちにも事情を聞かれるはめになったが、お互いの意見が食い違っていて双方それを証明する術はない。
ただ、分からない状況であるにも関わらず一方的に理沙が多数の男性たちから責められるのはおかしいと言ってくれて、その場で男性たちをとがめ謝罪をするよう注意した。
もちろん理沙にお咎めはなく、むしろ騒ぎを大きくした男性たちが注意を受ける結果になった。
麗奈は他社の人間なのだからこれは会社間の問題だと話をまとめ、補償問題などあれば会社間で交渉するから個人が口を出さないようにと部長が釘をさしてくれたおかげでその場は収まった。
総務部がこの件を引き取りコーヒーサービスの会社とやり取りをした結果、あちらからは補償を求めるどころか全面的に麗奈の非を認め、会社を代表して正式な謝罪が来た。
理沙にも相手会社から謝罪があった。
どうして全面的に麗奈が悪いとなったのかというと、どうやら麗奈はマニュアルを逸脱した作業をしていたらしく、本来サービスを提供する場所でないところにいたらしい。
もちろんこちらの社員が招き入れたのだけれど、本来いるべきない場所で麗奈が業務外のことをしていたのは事実であるから、麗奈に非があるとあちらのほうから言ってくれたのだ。
会社間で解決済みと報告を受け、社内の人々もそれで納得して問題は収束したはずだった。
……だが、一部の人たちはその報告に納得がいかなかったらしい。
納得がいかない人たちが、理沙へ嫌がらせを始めたのだ。
***
「最低女」
オフィスですれ違った人がぼそりと呟いて通り過ぎていく。
理沙に向けて言ったのか分からないくらいの声で言われ、ぎくりと身を竦ませる。
麗奈と揉め事があった日以来、こうして地味な嫌がらせを受けることが増えた。
嫌な言葉を吐かれたり強めに肩をぶつけられたりするという分かりにくいやり方でチクチクやられるため、抗議しづらい状況でうんざりする。
先日の揉め事で麗奈の言い分を信じている者たちが、何のお咎めもない理沙に対し不満を持って嫌がらせに及んでいるようだ。
「田中主任。先日お渡しした書類、まだ承認がいただけていないんですが……」
「書類? 受け取っていないが?」
「三日前に社内メールで主任に送りましたし、念のためプリントアウトしたものもお渡ししたはずなんですが、ご覧になってないですか?」
「受け取っていないと言っているだろう。出し忘れた言い訳か? 自分の仕事のミスをひとのせいにするのは社会人として恥ずべき行為だぞ」
「……でも」
メモをつけて主任に手渡ししたのに、絶対に渡していないと言い張られて何か言おうとする言葉を冷たく遮られてしまった。
作成したデータは部署共有のストレージボックスに落としてあるため、もう一度プリントアウトして今すぐ手渡ししてやろうとしたら、あるべき場所にデータがなくなっていた。
「削除されてるし……」
この部署のデータベースにアクセスできる誰かが意図的に削除したのか。ありえないと思いたいが、主任がわざとそうした可能性をどうしても考えてしまう。
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